寺本益英の日記

 関西学院大学で日本経済史を担当する寺本益英の身辺雑記です。経済、歴史、お茶、フードシステムの話題を中心に、思い立ったことを綴ります。受講生の質問にも答えます。

2005年12月

佳いお年をお迎えください

 いよいよ2005年の最終日となりました。あと1時間足らずで新しい年が始まります。
 大晦日には毎年同じ反省をしますが、年初に立てた計画のほんの一部しか実現できず、1年が終わりました。
 何となく後悔が残る中、野沢久信さんから励ましのメールをいただきました。研究を通し、周囲に希望を与えてほしいというメッセージでした。これは、先日会ったゼミの友人たちの期待とも共通します。どこまでできるかわかりませんが、目標達成のため、精一杯努力したいと思っています。
 ホームページをご覧のみなさんのお健やかなご越年をお祈りいたします。

今年もあと2日

 昨日は夜遅くまで友人と話し、発奮する話題もあったので、反動がきて少々疲れ気味です。
 それでも遅れている原稿があり、研究室で仕事をしています。自己責任とはいえ、仕事納めは12月31日、仕事始めは1月1日という厳しい年末年始を覚悟しました。

久しぶりの同窓会

 今日は私の学部3回生、4回生の2年間をゼミで一緒に過ごした3名の友人と久しぶりで会いました。3名とは特に親しく、卒業後も常に連絡をとっていましたが、全員が揃って会うのは、何年かぶりになります。
 大学を卒業してもう15年も経ち、私たちも40歳近くになってしまいました。とても信じられないのですが、もう人生の折り返し点に到達しているわけです。それでも会って話が弾みかけると、冗談が飛び交い、学生時代と何も変わらない盛り上がりようです。普通のありふれた出来事を懐かしみ、4回生の12月に出かけたシンガポール旅行のエピソードになると、話が止まらなくなってしまいました。私たち柚木ゼミ生は、それほど楽しいゼミ生活を送っていたのでした。
 私たちのゼミが誇りにできるのは、何と言っても帰属意識と結束力の強さです。ゼミを欠席する者はほとんどなく、全員が何らかの役割をになってゼミ運営にあたっていました。お金のかかるシンガポールへのゼミ旅行も自然発生的に出てきたもので、早くから積み立てを行い、ほぼ全員が参加しました。
 また私が一生忘れることのできない素晴らしい思い出を作ってくれたのも、今日会った3名を中心とするゼミの友人たちでした。私が総代で卒業証書をもらいに行ったとき、ゼミ生全員が三角の帽子をかぶり、クラッカーやラッパを鳴らしながら、万歳三唱をしてくれたのです。厳粛な卒業式で前代未聞の派手な演出をするのは相当勇気がいったと思いますが、このときの嬉しさが、その後の私の研究生活における原動力になっています。
 3人の母校への思い入れは今も強く、立派な後輩を育てるための協力も申し出てくれました。私のゼミで全く不十分なタテの関係強化をはかるため、後輩に仕事のやりがい、大学時代に身につけるべき能力など、実体験に基づくアドバイスをしてくれることになったのです。この提案には、大いに感激しました。
 来年私のゼミと研究グループは、彼らのバックアップのおかげで、新しい第一歩を踏み出すことができそうです。ゼミ生を核とした関学ネットワークを充実させ、よい企業によい卒業生をどんどん送り出せるようにしてゆきたいと思っています。今日の同窓会を契機に、私なりの「プロジェクトX」が立ち上がりました。

「プロジェクトX」の最終回

 2000年3月から放送が始まったNHKの人気番組「プロジェクトX」が今日で最終回を迎えました。二部構成でこれまでの印象深いシーンを振り返るという内容で、私も2時間、釘付けになってしまいました。
 「困難に打ち勝つ勇気」、「限りない努力」、「不可能を可能に」といったことがこの番組のコンセプトですが、番組を見たり、番組の内容をまとめた本を読んで、ずいぶん元気づけられたのは確かです。
 もうすぐ2006年がスタートしますが、心機一転、「プロジェクトX」の精神で、講義と研究に取り組まなければと思っています。

企業家史研究の魅力

 卒業論文を作成中のゼミ生から、企業家史についての相談を受けました。その学生は、かねてから商社や財閥について関心を持っていたのですが、就職活動を体験したり、色々文献を読んで勉強をすすめるうちに、会社そのものよりも、会社を動かした人物に魅力を感じるようになったみたいです。
 経営史の隣接分野に企業家史というのがありますが、彼は4年間の研究の総決算として、企業家史の研究にたどり着きました。私がすすめたのではなく、自分で試行錯誤を重ねてこういう結論を導き出したことを嬉しく思いました。
 明治維新以降の日本経済は、敗戦を経て高度成長を達成し、世界の一流国になるまで、幾度も危機に直面しつつもそれを乗り越えてきました。しかし目標達成後、とりわけバブル経済崩壊以降は、昔の日本人が持っていた職業に対する熱い情熱、使命感などが希薄になりました。長期低迷の根本的原因は、経済政策よりはるかに深層にあるモラルの低下に求められるのではないでしょうか。
 企業家史研究の魅力は、先人のすぐれた行動や決断力から、時代を見通す鋭い洞察力を養うことができる点にあると思います。そしてもし私が取り組むとしたら、経営戦略、商品の開発戦略、経営の精神などにスポットを当てるつもりです。今後困難に直面したとき、「あの人ならどう行動するだろうか」とモデルにできるような人をさがし、その人を目標に仕事に取り組めば、一段とやりがいが出るはずです。
 

年賀状を書いています

 年内に仕上げなければならない仕事を気にしながら、たとえ1日30枚でもと、年賀状を書いています。ふだんよく顔を合わせる人からめったに会う機会のない人まで色々ですが、新年に年賀状を交換できるのは嬉しいものです。
 1枚1枚住所を書きながら、それぞれの人との出会いや、お世話になった思い出などが浮かび上がってきます。
 私の全く知らない場所に住んでいる人も多く、時々下記のマピオンのホームページで検索してみます。特に総合コースの先生方は、ずいぶん遠方から来てくださっているのだと、改めて申し訳ない気持ちになりました。

マピオン

プロジェクト Tea

 西島先生の武庫川女子大や、斎藤先生のNTTデータの大企画に触発され、私が関学で取り組んでいる仕事があります。名づけて「プロジェクト Tea」。「プロジェクト Tea」の出発点は、2001年からスタートしたお茶の総合コースです。おかげさまで5年間コンスタントに1000名以上の受講生を集めることができました。
 さて「プロジェクト Tea」は、私のゼミのホームページを通してますます充実度を高めています。先日講義を担当してくださった高野實先生が、「関学をお茶全ての研究のメッカに」とおっしゃってくださり、先生が長時間かけて作成された講義資料や図表を、快く提供していただいたのです。本日の更新では、総合コースのコーナーに貴重なパワーポイントの資料が掲載されています。
 高野先生のご厚意を契機として、お茶の全てがわかるホームページを作るのが私の大きな目標です。本の出版、シンポジウムの開催、研究交流、ホームページを利用した情報発信などにより、「プロジェクト Tea」を今後一層進化させたいと張り切っています。
 最後になりましたが、ゼミのホームページを通し、みなさんにホットな情報をお届けできるのは、卒業生の岡田充晴君のおかげです。岡田君は超多忙な勤務の合間を縫って、ホームページの管理・運営に力を尽くしてくれています。岡田君のサポートがなければ、「プロジェクト Tea」の効果も半減しているところです。

関西学院大学 寺本ゼミホームページ

秦偉君が絶好調!

 今年も残すところあと1週間になりました。ダイアリーを眺めながら、1年の出来事をふりかえっています。
 さてこの1年のうちに急伸したものは何かというと、ひとつは日経平均株価、もうひとつは、ゼミ生の秦偉君の勉学意欲です。このところ特によく質問に来るようになり、日中関係の歴史的な分析からホットな経済問題に至るまで、幅広く関心を持っています。そしてさらに立派だと思うのは、着眼点の的確さ、踏み込んだ考察力です。色々議論していると、あっという間に時間が過ぎ、啓発されることもしばしばです。昨日話題になった野沢さんもそうですが、話せば話すほど同じテーマに興味を持ち、同じ思いでその問題にアプローチしようとしていることがわかってきます。価値観を共有できる学生や聴講生に恵まれ、本当に嬉しく思っています。
 秦君は、留学生とは思えないほどの日本語力で、経済コラムにもよく寄稿してくれます。最近は12月1日から5日までの5回シリーズで「中国におけるベンチャー企業の成功例」というテーマで書いてくれました。中国最大のIT企業百度の成長物語で、とても興味深い内容です。下記のリンク(経済コラム)をぜひご覧ください。
 秦君を見ていると、勢いを感じます。飛行機が離陸して、どんどん高度を上げてゆくようなイメージです。彼のような勉学意欲旺盛な学生のパワーを結集し、研究のレベルアップをはかるウエーブを作り出したいと考えています。

寺本益英の経済コラム
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野沢久信さんのお茶への思い

 今日は毎回熱心にお茶の講義を聴講してくださっている野沢久信さんのコラムをご紹介します。
 野沢さんはこの3月に退職され、4月から週4回のペースで関学に講義を受けに来られています。色々なことにチャレンジされており、週1回はスイミングスクールに通い、月2回、クッキング教室へも行かれているそうです。
 毎週木曜日の講義終了後、野沢さんをはじめ、何人かの社会人聴講生のみなさんとお話するのが、とても楽しみです。講義への反響が大きく、お茶に対する熱い思いを語ってくださるのが、担当者としてはこの上ない喜びです。
 さて以下の引用は、「ゆとりを楽しむ」というタイトルでお書きくださった野沢さんのコラムです。
 
 私が今ほどお茶を意識して生活するのは生まれて初めてです。関学での講義のおかげで、お茶のイメージが、今まで抱いていたものから一新されたのです。
 私が思うのは、料理をするにも、お茶を淹れるにも共通するのは、「手間ひまかける」(時間をかける)ことです。私たちの生活は、「便利さ」(時間をかけないこと)を優先するあまり、「手間ひまかける」ことに無関心になっているのではないでしょうか。
 美味しいお茶を急須で淹れるには、それなりの手順が必要です。自動販売機で買ったペットボトルを味わうのとは全然違うやり方です。その手順を経てゆくうちに、心にゆとりが生まれるのです。
 家族でお茶を味わうのは楽しいものです。それが私たちにとって、家族団欒の秘訣となっています。

 短い文章の中に、「お茶を淹れる」ことの本質が凝縮されており、私も強い共感を覚えました。
 野沢さんにはこの講座、さらには関学全体の活性化のため、貴重なご提案とご支援をいただき、期待をかけてくださっています。そのご期待に少しでもお応えできるよう、何か新しい取組をしなければと考えているところです。 

食マップはすごい!

 今日は西宮では珍しい大雪で、午前中は一時とても外出できないほどの吹雪になりました。あまりの悪天候のため、一瞬は休講措置がとられたのではと「勝手に」思いましたが、昼前には小康状態になったので出かけました。道路はスケートリンクのようで、何度もひっくり返りそうになりました。
 さて今日は年内の講義の最終日で、総合コースの開講日でもあります。こうした最悪のコンディションにもかかわらず、わざわざ横浜からおいでくださったのが、NTTデータライフスケープマーケティング社長の斎藤隆先生です。斎藤先生にはもう10年以上前からお世話になっていますが、最初の出会いは、フードシステム学会で先生の見事なご報告をお聞きし、報告後、私の質問にご丁寧にお答えいただいたときでした。その後、『緑茶消費の現状と今後の展望』を執筆したときにも、貴重なデータを提供してくださいました。
 さて今日の先生の講義を聞いた方はわかったと思いますが、食マップは本当にすごいですよね。これまですっぽりベールに包まれていた日本の食卓事情が、手にとるようにわかるのですから。365日の食卓を観察し、いつ、何が、どのような調理方法で並んでいるかが解明されるというのは画期的です。
 私が研究面でつくづく恵まれていると感じるのは、信じがたいパワーで、実現不可能と思われることを達成されるような方に身近に接しられたことです。斎藤先生の食マップが軌道に乗るまでには、プロジェクトX3回分のエネルギーが必要でした。食マップの開発に比べたら、論文の1本や2本書くのは何でもないと、自分に言い聞かせています。また、先生のマーケティングに対する根本的な考え方は、共感するところばかりです。
 大学の講義は高校までと違い、はるかに世界が広がります。全国的に活躍し、あっと驚く実績をお持ちの先生と接することもしばしばです。受講生のみなさんは、このようなチャンスを見逃さず、講義をよく聞いて、できるだけ多くのことを吸収してほしいと思います。
 最後に斎藤先生のご著書を下記に紹介しておきます。
 『ニッポンの食卓の新・常識 』日経BP社,2005年.
 『365日の食卓マーケティング』NTTデータライフスケープマーケティング,2003年.

NTTデータライフスケープマーケティング



 

関西文化研究の拠点 MKCR

 今日は昨日報告の機会を与えていただいたMKCRについて、ご紹介したいと思います。MKCRは武庫川女子大学関西文化研究センターのことで、正式には(MUKOGAWA Kansai Culture Research Center)といいます。2004年度文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業・学術フロンティア推進事業に採択され、「関西圏の人間文化についての総合的研究 −文化形成のモチベーション−」をテーマに大規模な研究を進めてゆくことになっています。
 私がこのような大プロジェクトに参加させていただけたのは、文学部の森田雅也先生が推薦してくださったからです。森田先生には、もっと前から総合教育研究室の共同研究に加えていただいており、そこで私は京都を中心としたお茶の文化史を調べていました。森田先生をリーダーとする学内の研究は現在も継続中ですが、同時並行でMKCRのプロジェクトにも参加すれば、より一層研究が促進されるだろうということで、声をかけていただいた次第です。
 総合教育研究室の共同研究とMKCRのプロジェクトのメンバーに入ったことで、私の研究領域は大きく広がりました。ライフワークとするお茶について、経済史の視点からだけではなく、文化史的にも分析できるようになったからです。さらに偶然ですが、このような研究の新展開の中で、京都府茶業会議所からもご支援をいただき、歴史的な蓄積を重視した宇治茶業の発展戦略を提案することになりました。
 MKCRの理念は、「関西圏の人間文化がどのような要素をもち、いかなる環境の中で生成されてきたのかを検証し、文化を生み出す元となったモチベーションの生起過程を明らかにすること」にあります。そういった意味では、お茶の文化も関西を出発点とする重要な文化であり、研究の余地は十分にあります。
 下記のリンクをご覧いただいたらわかりますが、MKCRにおける研究テーマは多岐にわたり、研究参加者も100名を超えています。このような壮大なプロジェクトを組織された西島孜哉先生の構想力と実行力には、唯々感服するばかりです。
 関西文化研究の拠点としてMKCRが果たす役割は、年ごとに大きくなることは間違いありません。私もお茶の研究を通してこのプロジェクトに少しでも貢献できるようがんばらなければと、決意を新たにしています。

武庫川女子大学関西文化研究センター


緑茶消費の地域性について −生活文化史からみた関西の特徴−

 いよいよ第26回MKCRセミナーで報告する日がやってきました。昨日の予想どおり午後4時59分59秒にどうにか準備が整い、5時ジャストに会場に到着しました。主催者のみなさんをハラハラさせて、本当に申し訳ありませんでした。
 今日の報告テーマは上記のとおりですが、ようするに歴史的な観点から近畿2府4県における緑茶の消費動向を分析しようと、夏頃から準備を進めていました。具体的な内容は下記のとおりです。
 まず最初に、一般論として食生活を形成する諸要因を検討しました。次に歴史的要因に注目して、平安時代から第二次世界大戦前までの近畿におけるお茶にまつわる出来事を年表形式で整理しました。これが結構手間のかかる作業で、以前にも書きましたが、手持ちの文献・資料を全部読み直して、関連項目を拾い上げてゆきました。その後、10年あまり前に行った戦前(1932年)の全国のひとりあたり緑茶消費量の推計をもとに、戦前期における緑茶消費の地域性をとりまとめました。そして最後に『家計調査』のデータを用い、1980年以降における緑茶消費の動向を競合飲料に注目しながら分析し、近畿地方の特色を明らかにしました。
 緊張して報告に臨みましたが、話し始めると夢中になって、1時間あまりの報告時間はあっという間に終わりました。参加者のみなさんも関心を示してくださり、有意義なご意見もたくさんいただきました。ただ、昨日書きましたように、なぜ近畿の喫茶文化が衰退したのかという、非常に難しい問題を解決しなければいけません。研究はまだまだ続きます。

近畿はコーヒーの文化圏

 MKCRの報告がいよいよ明日に迫りました。この1週間、ほとんど寝る時間がなく、何よりも怖かったのがカレンダーを見ることでした。時間は容赦なく過ぎてゆきます。ともかく、明日の午後4時59分59秒まで、準備を続けるつもりです。
 さてこのコーナーで飲料の話をするのは11月17日以来です。前回は緑茶の競合飲料として紅茶を取り上げましたが、今日はコーヒー・ココアをみることにしましょう。
 飲料費に占めるコーヒー・ココアへの支出割合は、全国第1位の鳥取市が24.1%、最下位の宮崎市で13.9%となっており、緑茶に比べると上下の格差ははるかに小さいことがわかります。
 さて2004年のデータによると、近畿の諸都市では、緑茶よりもコーヒー・ココアに対する嗜好が強いことが明らかになりました。支出割合を調べると、京都市23.9%(第3位)、大津市23.6%(第4位)、大阪市22.9%(第6位)、和歌山市22.7%(第8位)、奈良市22.0%(第13位)、神戸市21.4%(第17位)となっています。6都市すべてで20%を超えており、緑茶への支出の2倍以上を費やしているという実態です。
 なお、静岡市15.6%(第39位)、鹿児島市14.9%(第44位)、宮崎市13.9%(第47位)といった具合に、緑茶への支出割合が高い産地におけるコーヒー・ココアの全国順位は下位の方になっています。
 近畿、とりわけ、京都、奈良、滋賀は栽培の歴史も古く、現在も有力産地です。しかし統計を観察してみると、緑茶よりむしろコーヒーを愛好しているのです。ちなみに戦前は、京都、奈良、滋賀ともお茶の大消費地でした。近畿の喫茶文化はなぜ衰退したのか、この難問を解くのはそれほど容易ではなさそうです。

大学院での研究

 大学院での講義は、学部とはがらっと変わります。何よりも規模が小さくなり、受講者は多くて4〜5名、先生と1対1という場合も珍しくありません。
 私が大学院を担当するとき、いつも意識するのは、オーダーメードの講義です。受講者とよく相談し、研究テーマに直結する知識を要領よく伝える「講義」の要素と、討議や論文作成を通じて報告技術や構想力を高める「研究」の要素を両立させ、最大の成果をあげてもらうことです。
 大学院の研究はある程度自主性に任せられているため、研究時間はかなり確保できるはずです。頻繁に企業へ調査に出かけたり、共著論文を発表することができるのも、学部にはない大学院の魅力です。
 目的意識をはっきりさせて研究に全力投球すると、充実感のある2年間を過ごせるだろうと思います。

大学院進学のすすめ

 ここ1年で、3人のゼミ生から大学院へ進学したいという相談を受けました。ひとりは、秋の入試ですでに合格、もうひとりは、来春の入試を目指し猛勉強中、あとひとりは、まだ少し迷っているみたいです。
 私のゼミや講義を受講して、さらにもう2年間勉強したいという学生が出てくれるのは大変嬉しいことです。日本経済史は経済学の他の分野と比べても、まだまだ開拓の余地があって、オリジナリティの高い研究ができるはずです。
 さて大学院へ入学するにあたり、どうしても避けることのできないのが入学試験です。入試科目は経済学と英語です。特に経済学は、ミクロ・マクロを中心にしっかり基礎を固め、日本経済をめぐる諸問題についても見解を述べられるようにしておかなければなりません。英語は経済向きの英語で、専門用語を丹念におさえることが重要です。
 とにかく、試験範囲は結構広いので、受験勉強の開始は、早いにこしたことはないと思います。
 4年間の勉強でもの足りないと感じたとき、決心を固めて納得がゆくまで大学院で学ぶのは後悔のない選択だといえます。歴史や長期データの分析が好きな人、実地調査に出かけるのが苦にならない人は日本経済史の研究に向いています。進学について、詳しい話を聞きたい学生は、いつでも相談に来てください。

行政区画の変遷

 MKCRの報告準備の副産物として、非常に役に立つサイトを発見しましたのでお知らせします。
 現在私は、手持ちの文献やコピーを全部引っ張り出して、近畿のお茶にまつわる出来事を徹底的に調べ、年表を作成中です。事実を拾うところまではよいのですが、古い行政区分の地名の読み方や、その地域が現在ならどこに当たるのかが全く見当がつきません。例えば河内国茨田(まった)郡というのが出てきたのですが、これは、京阪沿線の守口、門真、枚方あたりを指すようです。
 歴史研究では、地理の知識も不可欠です。その場所がどのあたりかわからないと、理解が深まりませんし、地名の読み方がわからないと歯がゆいものです。そんなとき、役に立つのが下記のリンクです。全国の行政区画の変遷が一目瞭然にわかるように整理されたよいサイトです。みなさんも大いに活用してください。

行政区画の変遷

ニュースだけではわからない 2006年 日本経済の行方

 尼崎市立大庄公民館において上記のテーマで講演しました。先行きを予想すること自体難しいのに、2回目にご連絡をいただいたときには、「ニュースだけではわからない」がくっついていて、ドキッとなりました。何しろ、ニュース以上にわかりやすく説明しなければいけないわけですから、準備にも一段と力が入りました。
 そういえば以前私もこんなことをしたかも知れません。最後の講義で、「テストでは○○という問題を出します」と言っておいて、本試験では、そこへひとひねり加えた出題をしたことです。(誤解のないように言っておきますが、全く別問題は出していません。)きっと戸惑った学生がいたに違いありません。気の毒なことをしてしまいました。もう時効になったので告白しましたが、最近のテストはすべて持ち込みOKで、予告どおりの出題をしているつもりです。安心してください。
 さて講演には約50名の方がご出席くださり、2時間にわたり熱心に聞いていただきました。リピーターの方もたくさんいらっしゃって、講演者としては嬉しいかぎりです。
 日銀短観やGDP統計をふまえた景気動向、郵政民営化や三位一体改革など小泉構造改革の話題、ライブドア VS フジテレビ、楽天 VS TBSに象徴される敵対的買収などを取り上げました。
 2005年もずいぶんたくさんの経済ニュースがありました。構造改革が進み、景気が着実に好転してきているのは、多くの国民が感じていることでしょう。来年は、この流れが一段と加速することを願っています。ただ非常に気がかりなのは、耐震強度偽装事件にみる職業倫理の低下です。モラルの崩壊をいかに立て直すか、日本経済は不況脱出とは別の難問を抱えたまま、越年することになりそうです。
 

『日本茶業発達史』

 MKCRの報告準備をしながら、何度も何度も読み返している文献があります。学位論文執筆のときから数えると、最も開けた回数が多いといっても過言ではない書物が、大石貞男『日本茶業発達史』農山漁村文化協会,1983年 です。
 私は大石先生には、大学院入学以来、お手紙を通し、茶業全般にわたり、至れり尽くせりのご指導をいただきました。先生は、日本全国の茶産地をくまなく調査され、技術史や貿易史にも精通しておられました。質問のお手紙をお出しすると、1週間も経たないうちに、詳細なお答えをいただきました。先生のご指導のおかげで研究がスムーズに運び、私は1998年に博士学位を取ることができました。しかし先生はその前年にご病気で亡くなられてしまったのです。先生に学位論文と著書をご覧いただけなかったことが、今も残念でしかたありません。
 上記の文献は大石先生の研究成果の結晶で、お茶の歴史が、卓抜の構想力と史料実証で明らかにされています。本書も、お茶の研究者の必読文献です。
 その後、大石先生の研究業績をまとめた『大石貞男著作集』が農文協より出版されました。私と谷本陽蔵先生も推薦者になっています。下記のリンクをご参照ください。もちろん、関学の図書館にも所蔵されています。

『大石貞男著作集』

『年表 茶の世界史』

 MKCRでの報告まであと1週間になりました。「早めに準備を終える」というのは事前の努力目標で終わってしまい、これからはつらい徹夜の毎日が続きそうです。
 さて色々文献を読んでいますが、お茶の「名著」としてみなさんにご紹介しておきたい書物があります。松崎芳郎『年表 茶の世界史』八坂書房,1985年 です。本書は紀元前から現代までのお茶にまつわるあらゆる事項を、年表形式でまとめたものです。しかも、日本、中国、西洋と地域も分類されており、比較史の観点から読むこともできます。著者は非常に多くの文献に当たっており、よくこれだけ事実を集められたものだと驚いてしまいます。さらに巻末では、中国、日本、世界の茶史が、要領よく見事に整理されています。
 「モデルとなるような研究をさがし、そこから学び取ること」が私の研究方針です。みなさんも、「名著」にふれて、知識を深めてください。

関学ホームページで紹介してもらいました

 日本経済研究奨励財団の奨励金に選ばれたニュースを、関学のホームページでも紹介していただきました。
 「2005年の奇跡」と言っても過言ではなく、いまだに夢の中にいるようです。ただフードシステムについての研究構想は、お茶の研究をベースに4〜5年にわたって練ってきました。それを審査委員の方々に認めていただけたのは、本当に嬉しいことです。

関学ニュース
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答案の書き方(3)

 いうまでもありませんが、問題用紙が配られたら、まず問題をしっかり読んで、出題意図を確認するのが重要です。簡単なようで、存外見落としていることが多いようです。
 例えば以前、「価格革命の概要を述べ、それによって西ヨーロッパの経済にどのような変化が起こったか説明しなさい」という出題をしたことがあります。ポイントは2つ、すなわち価格革命とはどのような経済現象であるか明らかにすることと、それにともなう経済的変化を列挙することです。それが実際答案にあたってみると、3〜4割は価格革命そのものの説明を省略しています。重要な論点が欠落していれば、評価を低くせざるをえません。
 もう1点付け加えると、「出題の意図」と書きましたが、これはどれだけ授業内容に即しているかという意味です。担当者は毎回の講義をどのように組み立てるか、いつも講義時間の何倍も費やして準備しています。その苦労を忠実に反映している答案ほど高く評価したいと思うのは、当然の心理です。以上の意味で、点数の違いというのは、講義のシーンの再現力の違いだといえるかもしれません。毎回講義に出席することの大切さはここにあります。

総合コース469のテストについて

 総合コースの授業も残り少なくなってきました。受講生のみなさんは、どんなテスト問題が出るのか、気になっているのではないかと思います。
 テストの形式は、今のところカッコ埋め、正誤判定、論述問題を考えています。間違いなく約束できるのは、必ず講義の範囲内から出すことです。また、より具体的な内容のヒントは、そのうち、ホームページで公開するつもりです。「テキストのどこかから出ます」というような不親切なテストにはしないつもりです。とにかく、最後まで講義に集中してください。

答案の書き方(2)

 答案作成時におけるもうひとつ重要なポイントは、「丁寧さ」です。みなさんも感じていると思いますが、大学の定期試験は大きなテーマが与えられます。例えば、「戦前期における日本茶業の発展の要因は」とか、「平成不況の要因は」といった感じです。こうした課題には色々なアプローチの方法があって、議論の進め方も十人十色でしょう。しかし、どういう事実を取り上げ、どのようなストーリーを組み立てるかによって文章の説得力は全然違ってきます。この能力は端的にいうと、「構想力」といえるかもしれません。私は文章をまとめる際、「構想力」が非常に重要であると考えています。
 では構想力はどうして養えばよいのでしょうか。私は自分の研究スタイルに近い人の著作や、評価の高い研究書を繰り返し読んで、ノウハウを学び取る努力をしています。これは伝授不可能な能力で、経験を積み重ねてコツコツと身につけてゆく以外ありません。

答案の書き方(1)

 昨日から試験勉強の話になっているので、もう少し続けます。今回以降、よい答案とは何か、考えてみたいと思います。
 採点者が最も重視するポイントは、「正確さ」ではないでしょうか。そもそも書いてあることが正しくなければ、評価のしようがありません。
 例えば歴史であれば、事件の起こった順序や因果関係、その事件に関与した人物などが正確でなければ、史実と合致しません。事実を正しく述べるのが大原則です。
 また経済学の場合は、直線の傾きが「右上がり」か「右下がり」では正反対の意味になるし、利子率が「上昇する」か「下落する」で、経済に与える影響は全く逆になります。このような点にもよく注意してください。
 さらに、専門用語を適切に使用するのも重要です。どんな分野にも専門用語があるわけですから、要所要所に取り込むことによって、答案の説得力が強くなります。

テスト勉強のしかた

 秋学期の講義も終盤に入りました。あと1ヶ月あまりでテスト期間です。そろそろ対策を練る時期です。
 勉強のしかたですが、まず範囲をしっかり確定するのが大切です。テキストを使っていれば該当箇所を確かめ、ノート講義ならどういう項目が立てられたか、見直してみることです。
 次の段階では、いくつかの想定問題を作って自分で解答を作成します。もちろん解答は、15〜20分で書ける長さに工夫します。これが何よりも重要な作業で、論理的な文章力を高める訓練になります。
 最後の仕上げで、何も見ずに解答が書けるようになるまで、反復練習します。手を動かして「書く」ことにより、理解度が格段に高まります。
 学習したことが頭に定着すると、次のステップへ加速度がつきます。同じならプラス志向に考え、テスト勉強を乗り切ってください。

ドリンクメーカーの動向に強くなる文献

 お茶もひとつの産業であって、研究する以上は業界の動向に精通しておきたいものです。しかし書店に出回っている文献に、なかなか適切なものはありません。それでは茶業界の動向はベールに包まれたままわからないのでしょうか。
 そういうとき、頼りになるのがその方面の専門調査会社(機関)です。全茶連、静岡県茶業会議所、日本茶業新聞に関してはすでにふれましたが、今日は、ドリンクの業界について紹介しおきます。関学図書館で閲覧できる文献で私のおすすめは次の2冊、すなわち、矢野経済研究所『飲料市場の現状と展望』(1999〜2004)、日刊経済通信社『酒類食品産業の生産・販売シェア』(昭和60年〜平成15年度版 2年おきの刊行)です。どちらも業界全般の動向と個別企業の動き、場合によっては個別銘柄の販売促進策やシェアに関してまで記載されています。とても貴重です。
 よい論文を書くには、よい資料を見つけなければなりません。研究機関が発行するレポートや、政府刊行物などは目にとまりにくいかもしれませんが、大切な情報源です。ありがたいことにこの種の文献は、関学図書館を利用すればほとんど不自由はないはずです。よく注意してさがしてみてください。
 
 

フードシステムからみた食生活の変遷と今後の課題

 上記のテーマで日本経済研究奨励財団奨励金を受けることになりました。昨日4日付の『日本経済新聞』第38面に載っています。
 「フードシステム」の分析枠組みを使って、歴史的に食生活がどのように変遷してきたか、データや文献・資料を用いて総合的に検証しようと思っています。
 フードシステム学会に所属して報告を聞き、農林水産政策研究所で古い史料にふれることができたおかげで、いつということなしに、研究のイメージができあがってきた感じです。今日から少しずつ分析を進めてゆきたいと思っています。

最新の茶の情報源(3) 『日本茶業新聞』

 最新の茶の情報源3回目は、『日本茶業新聞』です。日本茶業新聞社は、京都の宇治市にあって、月3回、5日、15日、25日が新聞発行日です。『全茶連情報』や『茶』雑誌は月刊ですから、こちらの方がより速報性があります。常務の大西さんには、かねてから格別のお世話になっており、イベントの案内や、新刊書のお知らせなどを、お願いした直後に掲載していただいてきました。しかもスペースが大きく、紙面半分くらいを使ってくさるのでよく目立ちます。
 もちろん、お茶全般の記事が充実しているのはいうまでもありません。私がいつも興味を感じているのは、日本ユニシス情報が提供する日本茶の売れ筋データ(POSデータ)です。種類、容量、価格が記載されているので、傾向がよくわかります。
 『全茶連情報』、『茶』雑誌、『日本茶業新聞』はお茶研究の「三種の神器」といっても過言ではありません。
 

最新の茶の情報源(2) 『茶』雑誌

 お茶の業界動向に精通するには、静岡県茶業会議所が発行する『茶』雑誌が何よりです。前身となる雑誌は戦前から発行されており、長い伝統があります。
 昨日の記事に書きましたように、12月号に小笠原秀邦先生のコラムを掲載していただきましたし、私も以前、連載記事を書いたことがあります。歴史・文化・マーケティング、保健効果・茶園管理と製茶技術など、ともかくお茶の総合誌です。
 現在の編集長は総合コースの講師もお引き受けしていただいている中小路先生です。中小路先生には、私がお茶の研究をはじめた直後から現在に至るまで、20年近くお力添えをいただいています。
 ここで私の講義の受講者や煎茶道クラブのみなさんへお知らせです。自分の生活とお茶との関わり、お茶の魅力、業界への提言など、自由なテーマでコラムを募集します。興味深いものは、中小路先生にお願いして『茶』へ掲載していただこうと思いますので、どしどしお寄せください。

静岡県茶業会議所

最新の茶の情報源(1)  『全茶連情報』

 お茶の業界団体である全国茶商工業協同組合が毎月発行している『全茶連情報』という冊子があります。11月29日の記事にも書きましたように、11月号に私もコラムを掲載していただきました。
 この冊子の特長は、業界動向はもちろんのこと、食の安心・安全の問題や産地表示など、食料・農業問題全般に関する最新情報がとりまとめられていることです。『全茶連情報』をよく読むと、いま、業界で何が問題になっているか、食料・農業に関する緊急の課題は何か、非常によく理解できます。編集は私が日頃お世話になっている小林さんがお一人でなさっているそうですが、1ヶ月のうちによくこれだけ内容の濃い充実したものがまとめられるものだと驚いてしまいます。勉強したことは、もちろん、講義のときに反映するつもりです。

お茶を淹れることの大切さ

 今年も残り少なくなり、今日から12月です。信じられないスピードで月日が経過し、いよいよ師走を迎えました。
 さて以前、小笠原流煎茶道の小笠原秀邦先生に上記コラムの執筆をお願いしていたのですが、編集部の御高配で、早速今月号の『茶』雑誌に掲載していただきました。2ページの中に、リーフ茶を淹れることの重要性、煎茶文化の歴史が凝縮して書かれており、興味深い内容です。
 部員のみなさんには、次回の稽古の時間にご覧いただけそうです。楽しみにしてください。
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