今日は湯浅先生の梅田ゼミ第2部をレポートします。第2部は湯浅先生の企画のトレードマークである「氷だし茶」の体験です。関経連でも大好評でした。はじめての方は、「氷水でお茶が出るのですか?」と不思議そうな顔でお尋ねになるのですが、とてもおいしく淹れられます。ただし一晩冷蔵庫に入れておけるわけではなく、全体で約1時間という時間制約がありますので、よい味を出すのは至難の業です。湯浅先生は、1時間のプログラムでおさまり、しかも参加者がびっくりする極上の味を出すために、使用する茶葉の種類、その量、氷と水の量、浸出時間を徹底的に研究してくださいました。実を言うと、氷のかたまり1個、水の量10mlの違いで、味も全然違ってくるそうですね。先生のこだわりにゴールはなく、以前の企画よりさらに一層おいしく淹れるにはどうすればよいか、気の遠くなるような実験を繰り返してくださったのです。
 今回、先生のお茶をご馳走になっての私の心境は、「蓬莱山何れの処にか在る 寺本益英(←ここは玉川子を書き換え)此の清風に乗りて帰り去らんと欲す」(=仙人が住むという蓬莱山はいったいどこにあるのだろうか、私はこの清風に乗って蓬莱山へ行きたいと思う)です。
 残念ながら実際に足を運ぶことができず、図録を持っているだけですが、以前出光美術館で、「ユートピア −描かれし夢と楽園−」という展覧会を開いていました。図録の中に、蓬莱仙境を描いた作品がいくつか収録されており、興味深く鑑賞しました。蓬莱とは、不老不死を象徴する理想郷です。そして蓬莱の図には、長寿をもたらす神・寿老人が登場し、鶴や鹿が迎えられます。天には太陽と月が同時に宿っています。おいしいお茶を賞味した盧同は、感激のあまり、清風に乗ってこんな夢のような世界に行きたいという気持ちになったのです。湯浅先生の冷茶を味わった後の私は、盧同と同じく、えも言われぬ満足感にひたっていました。
 湯浅先生のプログラムに参加し、毎回頭に思い浮かぶのは、『利休七則』です。すなわちそれは、「茶は服のよきように点て」(茶は時と場所に応じて客の気持ちを察してちょうどよい加減になるように点て)、「炭は湯の沸くように置き」(最良の炭の置き方をして、すなわち準備をしっかりして)、「花は野にあるように」(花は咲いていた状態が感じられるように生け)、「夏は涼しく冬暖かに」(夏には涼を冬には暖を感じさせるよう、客を想ってもてなし)、「刻限は早めに」(焦らずゆとりを持って)、「降らずとも傘の用意」(備えを怠らず)、「相客に心せよ」(同席した客に気配りをせよ)というものです。
 会場をきれいに飾り付け、おいしい手作りクッキーを注文し、究極の冷茶を淹れてくださった湯浅先生の心遣いは、「もてなしのバイブル」である『利休七則』の実践にほかなりません。
 今回の講義は体験が含まれるため、いつもの2倍の3時間をとりましたが、参加者はとても楽しそうで、あっという間に過ぎてしまいました。相互のコミュニケーションが深まり、仕事に追われ日々忙しく過ごす私たちの心が和むひとときでもありました。先生と奥様の行き届いたご準備のおかげで、有意義なプログラムが実現したことを本当に嬉しく思っています。ありがとうございました。