北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は2018年4月20日、「我々にはいかなる核実験、中長距離や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射も必要がなくなった。北部核実験場も自己の使命を終えた」と述べ、核実験とICBM試射を中止し、咸鏡北道豊渓里(ハムギョンブクトプンゲリ)の核実験場を廃棄することを宣言しました。これまでの情報発信は韓国を通じた間接的なものでしたが、今回は正恩氏が自らの言葉で国際際社会に対して公約した点は意義深いと思います。
 さらに6月はじめまでに行われる見通しの米朝首脳会談を成功させたいという強い意図も窺えます。アメリカ本土に届くミサイルと核の拡散は、アメリカが最も懸念する問題です。北朝鮮はトランプ大統領との会談前に、非核化の意思を示しておきたかったとみられます。もっとも総会では、具体的な非核化措置には触れられませんでした。
 党中央委総会では、正恩氏の報告を受け、経済改革と核開発を同時に進める「並進路線」が完成したことを宣言し、新たな政策決定を行いました。総会が採択した政策決定書は、核兵器や運搬手段としてのミサイルが完成したことを確認、4月21日から核実験とICBM試射を中止することを宣言しました。
 なお「核実験中止の透明性を確保する」として、豊渓里の核実験場の廃棄を宣言しています。すなわち、核による挑発がない限り核を使用しないことや核不拡散を約束することが核軍縮の重要な過程というわけです。
 しかし注意が必要なのは、すでに所持している核と大量のミサイルを手放すとは言っていないことです。米韓の対応をさらに見極める狙いがあるものと思われます。豊渓里の核実験場は、軍部隊が駐屯を始めた1980年代末から整備されてゆきましたた。2006年10月から昨年(2017年)9月まで計6回の核実験が行われたといいます。また韓国政府によれば、正恩氏が2011年末に権力を継承して以降、計61回に及ぶ弾道ミサイルの試射を行っているそうです。具体的な非核化措置の表明がないかぎり、北朝鮮の脅威がなくなったとはいえません。北朝鮮が米朝協議の長期化を狙い、核保有の既成事実化を目指す懸念も捨てきれないのです。
 北朝鮮の方向転換でいまひとつ注目すべきは、今後、経済発展と人民生活向上に集中し、朝鮮半島と世界平和のため、周辺国や国際社会との対話や連携を積極的に進めるとしたことです。正恩氏がこうした路線の実現を真剣に求めるのなら、国連決議による経済制裁の緩和が不可欠です。完全で検証可能な非核化の道を早期に示すことが肝要です。
 この点について正恩氏は、訪朝したポンペオ米中央情報局(CIA)長官に「完全な非核化の意思」を伝えていたとのことです。アメリカは、米朝首脳会談での合意に、具体的な非核化の措置を盛り込むよう水面下で交渉していたのです。
 北朝鮮の核実験中止宣言にトランプ大統領は、自身のツイッターで、「北朝鮮と世界にとって、とても素晴らしいニュースだ。大きな前進だ。我々の米朝首脳会談を楽しみにしている」と歓迎しました。そして6月上旬にも予定される米朝首脳会談の実現に強い意欲を示した。にじませました。