秋学期の授業が目前に迫ってきて、焦りを感じています。今学期は久しぶりで現代日本経済史(=戦後史)の授業を受け持つことになり、夏休み期間中は、戦後史の文献を勉強していました。
 経済学部で学ぶみなさんにとって戦後史は、明治・大正・昭和戦前期に比べると、取り組みやすいのではないかと思います。というのも、最近20年くらいの出来事は、自らが経験していることであるし、復興〜高度成長期のエピソードに関しても、祖父母やご両親から間接的に聞く機会があるからです。戦後史について学ぶことは、自身、ご両親、祖父母の3世代がどのような時代を生きたかを知ることであり、今後私たちが進むべき道を探る上でも、極めて有意義であると考えています。
 まず現在20歳前後で私の講義の受講生は、2000(平成12)年前後の生まれです。この20世紀と21世紀の変わり目の頃は、世界がITバブルに沸いていました。情報通信技術の発展が目覚ましく、情報が瞬時に世界を駆け巡り、eコマースが普及し、インターネットで生産者と消費者が直接結びついて、従来のビジネスモデルが激変します。産業構造は、造船・鉄鋼・石油化学といった重厚長大型から、軽薄短小に移行し、ITに象徴される知識集約型の企業が急成長してゆきました。しかしITバブルは長続きせず、2000(平成12)年末に崩壊し、景気は悪化してゆきました。
 2001(平成13)年4月、小泉純一郎内閣が誕生し、2006(平成18)年6月まで続きます。小泉首相は「聖域なき構造改革」をキャッチフレーズに競争を促進し、郵政民営化も実現しますが、経営基盤の脆弱な企業は次々と淘汰され、格差拡大が深刻になってゆきました。
 一方世界情勢に目を向けると、2001(平成13)年9月11日、アメリカで同時多発テロが勃発しました。アメリカ繁栄のシンボルである世界貿易センタービルが炎上し、倒壊してゆく光景を目の当たりにした私たちは、計り知れない大きな衝撃を受けました。同年10月よりアメリカのアフガニスタン侵攻が始まり、中東情勢は混迷を極めます。
 2008(平成20)年9月、リーマンショックが世界を襲い、「100年に一度の不況」と呼ばれるほど景気が落ち込みました。このリーマンショックと時を同じくして麻生太郎内閣が成立し、様々な対策を打ち出し、景気を立て直そうとしますが、小泉内閣時代の競争促進政策により、家計も企業も疲弊しきっており、厳しい逆境に耐えられるだけの抵抗力は残っていませんでした。
 国内の政治動向に話を戻しますが、小泉首相退任後、自民党の短命政権が続きます。第1次安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各政権は、ほぼ1年で幕を閉じ、政治の不安定さが大問題となりました。
 格差拡大、自民党政権の迷走が続く中、国民の支持は次第に自民党から離れてゆきました。民主党の鳩山由紀夫代表は、小泉氏とは180度異なる「友愛」をスローガンとし、「温かさとやさしさ」で経済を立て直すことを訴えて国民の共感を得、2009(平成21)年9月、民主党・鳩山由紀夫内閣が誕生しました。鳩山氏は「戦後行政の大掃除」を旗印に、マニフェストで細かく政策を定めてゆきました。中でも、子ども手当や高速道路の無償化は目玉政策として注目されましたが、財源の裏付けがなく、すぐに行き詰まりました。さらに「コンクリートから人へ」の理念のもと、公共事業を大幅に削減しますが、乗数効果の大きな公共事業の削減は、景気を冷え込ませることになりました。鳩山氏の退陣後、菅直人、野田佳彦と民主党の首相が続きますが、いずれも短命に終わっています。