寺本益英の日記

 関西学院大学で日本経済史を担当する寺本益英の身辺雑記です。経済、歴史、お茶、フードシステムの話題を中心に、思い立ったことを綴ります。受講生の質問にも答えます。

大学生活

2017年卒 大学生・大学院生が就職したい企業は?

 2017年卒の大学生・大学院生に対する経団連加盟企業の面接選考が今日1日解禁されました。面接活動が一斉に始まりました。昨年よりスケジュールが2ヶ月早くなり、人手不足による売り手市場というのが今回の特徴です。おそらくどの企業も、好感を持った学生は早くおさえようとするため、短期のうちに内々定(=採用予定通知)をもらえる学生も多くいると考えられます。
 さて2017年卒の学生たちは、どのような企業に就職したいと思っているのでしょうか。少し前ですが5月12日付の『日本経済新聞』に、文系、理系別に載っていましたので、ご紹介します。

2017年卒の大学生・大学院生 就職企業人気ランキング

文系総合                  理系総合 
 。複圍促哀襦璽廖             〔の素 
◆〜監本空輸              ◆‥貽本旅客鉄道 
 エイチ・アイ・エス            資生堂 
ぁ‘本航空                ぁ.肇茱深動車 
ァ〇杏東京UFJ銀行          ァ.汽鵐肇蝓璽曄璽襯妊ングス 
Α‥豕海上日動火災保険       Α.ゴメ 
А〇旭羹四Ф箙圈            А〔声グループ
─‥邸…漫                 ─。裡圍團如璽拭
➈ 博報堂                 ➈ 山崎製パン 
 みずほフィナンシャルグループ    ソニー

 当然ながら、文系と理系で事情が異なりますが、文系は、旅行、運輸(空運)、銀行、広告が人気です。それに対して理系は、食品、鉄道、化粧品、ITといった部門です。
 文系・理系に共通しているのは、製品やサービスにブランド力があり、ふだんの生活のなかで接することが多い企業といえるでしょう。
 私がやや意外に思ったのは、例えば電子部品や工作機械など、世界的に優れた技術を持ちながら、日常生活で接点が見出しにくい企業がランクインしていないことです。また高齢化社会の到来を見越し、医療、製薬、福祉サービスなども成長の余地があると思っていましたが、存外見過ごされています。
 上記でランクインしている企業は、華やかでスマートでカッコいいというイメージがあり、誰もが憧れる理由がわかるような気がします。ただし応募が殺到し、「狭き門」であることは確実です。
 ところで私は閑があったら、よく『日経 会社情報』を見ています。気合を入れて読んでいるわけではありませんが、これまでに知らなかった企業、珍しいものを作っている企業にいくつも出会いました。無数の企業から各自に最適の企業を選ぶのは至難の業ですが、知名度ばかりではなく、業務の内容、時代との適合性、将来性など、様々な評価基準を取り入れることが重要だと考えます。日経テレコンを利用した企業情報の収集なども、後悔のない進路を決める上で、日々心がけたい取組です。

思考力を測ることの難しさ ー大学入試改革の課題−

 2月4日の記事で述べたように、私たちの関学・経済学部は10パターンの入試を実施し、先日これらがすべての合格発表が終わりました。正月以来の長い入試との闘いがやっと終わりました。入学者数が確定するまで予断を許しませんが、あとは運を天に任せるほかありません。
 さて今日は、入試スタイルの大幅変更について話題にしたいと思います。文部科学省の高大接続システム改革会議は、今大学入試の大改革を検討しており、2020(平成32)年、現行の大学入試センター試験を廃止し、もっと思考力や問題解決能力を測る方式(大学入学希望者学力評価テスト)に改めます。
 さて大学入学希望者学力評価テストでは、「記述式」の問題が重視されます。確かに「記述式」の問題は、マークシートのように「まぐれ当たり」はなく、思考力を正しく評価できるかもしれません。ただし、難しい課題も出てくるでしょう。まずは採点の問題です。限られた時間で、何千枚もの答案をどうして採点するのでしょうか。公平な採点基準を決めるのも至難の業です。高大接続システム改革会議は「学力評価テスト」の記述問題の採点に時間をかけられるよう、試験実施を10月頃としし、翌年1月にマーク式、そして2月〜3月にかけて、各大学の個別入試というスケジュールを想定しているようです。ということは、私たち大学教員は秋学期はまるごと入試業務に忙殺されることになります。
 「思考力を測る問題」というのは、作るのも難しいと思います。例えば日本史でも、教科書の範囲が限られている以上、そんなに様々な問題は作れません。10年もすれば、ネタ切れになりそうです。また解釈が分かれるような問題はふさわしくなく、できによって1点とか2点の差をつけるのも困難です。
 高校生のうちから「考える力」を身につけ、それを大学入学後もスムーズに生かせるようにという理念はよくわかりますが、試験の実施は容易ではありません。そのため、様々な問題を抱えながらも、現行のマーク中心、必要に応じて短い記述を併用したスタイルに落ち着いてきたといえます。受験生の「選抜」の方式はこれまでも何度も変更されてきましたが、理想からかけ離れているというのが、率直な感想です。
 大学教育は「選抜」ではなく、学習指導要領で範囲も縛られていないので、私自身は取組やすいと感じています。日本経済史の場合、やはり史実が重要ですから、基本的な歴史の流れ、人物を把握します。その知識をもとに、思考力・判断力を身につけます。戦前から今日までの日本経済発展の要因の検討、政策の成功と失敗の分析など、日本経済史研究の重要課題の解明は、思考力・判断力を総動員しなければできません。
 そして学びの最終目的は、学んだことを自身の一生、経済・社会の幸福につなげることです。歴史の出来事から様々な教訓を得ること、偉人の思想や行動を学び実践することこそが、幸福の条件だと考えます。
 大学入試の選抜の方法は色々課題が残りますが、大学教育における歴史研究であれば、工夫次第でうまくやってゆけるのではないかと思いました。もうすぐ新学期、経済史関係の科目がフル稼働の忙しい年度が始まります。





入試が山場を越えました

 本日、経済学部が実行責任を負う入試が終了し、入試業務が山場を越えました。私は昨年のインターホン係に続き、ベル押し係に当たり、朝の7時半から午後3時まで時計の前に張り付いていました。科目ごとに、予鈴、本鈴、終鈴を鳴らす役割です。ちょっと目を離したすきに、定刻から10分過ぎてしまいましたというのでは、取り返しがつきません。時計を2つ並べ、その前から一歩も動くことができませんでした。ふだんの生活での1時間はあっという間に過ぎるのに、試験時間中の1分はものすごく長く感じます。秒針が12を出発し、また12に戻ってくるまで、結構時間があることがわかりました。それが60回繰り返されると1時間になります。1時間を有効に使えば、ずいぶん色々なことができそうな気がしました。時計の前でじっと座り、秒針が1回転する光景を唯々210回(合計の試験時間が英語90分+選択科目2科目120分で210分)見ていると、平素の時間の使い方がいかにまずいかわかり、深く反省しました。それにしても、試験開始・終了のリーンというベルの音、インターホンのブーというブザーの音はけたたましすぎます。急に鳴ったらびっくりして飛び上がってしまうと、誰もが口をそろえて言っています。心臓マヒが起こりそうです。やさしい音色のメロディーに変えてもらえないものでしょうか。インターホン係もベル係ももう当たることはないと思いますが、関学へ勤めて最も緊張する業務を経験した2年間でした。
 さて最近の入試、実にタイプが多く、合格者も入試ごとに細分化して発表するのが特徴です。私が受験した30年前は、指定校推薦入学制度すらなく、(高等部経由を除き)大学から関学に入学するには、1回きりの入試を受けて合格するほかありませんでした。それが今では、実に多様な試験形態が準備されています。具体的には次のパターンがあります。

1. 全学日程
英語 200点 国語200点  選択科目 日本史・世界史・地理・数学 150点
2. 学部個別日程
英語 200点 国語150点  選択科目 日本史・世界史・地理・数学 150点
3. 関学独自方式
英語・数学型 
関学英語200点 関学数学200点
関学英語+センター入試 
関学英語200点 センター国語150点 センター数学または理科または地歴・公民100点
関学数学+センター入試 
関学数学200点 センター英語150点 センター国語または数学または理科または地歴・公民100点
4.センター利用
1月出願5科目型
英語 200点 国語200点 数学200点 理科または地歴・公民100点
1月出願3科目型
英語 200点 国語200点 数学または理科または地歴・公民200点
3月出願4科目型
英語 200点 国語、数学、理科、地歴・公民より3科目選択 300点
3月出願英数型
英語 100点 数学 200点
3月出願3科目型
英語 100点 国語、数学、理科、地歴・公民より2科目選択 200点

 以上を整理すると、入試のタイプは10パターンになります。ひとりひとりの受験生が、経済学部の入試としていくつ受験しているか、さらに関学内では他のどの学部を受けているか、さらには関学以外のどの大学を受けているかと考えると、気が遠くなってしまいます。入試制度を細かく分けるほど、合格者数もきめ細かに推計しなければいけません。それは針の穴を通すような神経を使う仕事です。しかも合格者のうち何%が実際に入学してくれるのかも全く読めません。どのラインで線引きをするかは、1年後の株価や為替レートの予測と同程度に難しい課題で、すべての大学で苦労しているに違いありません。

2015年度 成績評価が完了しました

 2月1日より入試が始まりますので、連日準備に追われ、忙しく過ごしています。同時並行で成績評価も行わなければならず、苦労していましたが、採点やレポートを読む作業もどうにか終えることができました。
 さて本日は、答案やレポートを読んで感じたことを書いてみます。何よりも、出席状況とテストの得点には密接な関係があります。出席状況が良好な学生の答案には、講義内容が反映されており、こちらが望むポイントが正確に述べられています。反面講義に出席していないと思われる学生の答案は、授業で全くふれた覚えのないことが書かれていたり、不正確な記述が見受けられます。例えば円高とすべきところを円安と書いてみたり、歴史的事実の時期や順序で致命的な誤りを犯しています。
 次に詳しさも重要な評価基準です。「原発は事故が起こったとき、取り返しのつかないことになってしまう」、「若者の意見を政治に反映させるため、選挙年齢の引き下げは必要である」といった主張は当然すぎます。出題・採点者が知りたいのは、原発事故によって経済・社会にどのような打撃が及のかや、若者が政治に対して何を望んでいるのかといった具体的な話なのです。具体例をまじえて明快に議論を展開できる人とそうでない人の差がはっきり出ているように思います。
 答案の詳しさは、分量(長さ)に象徴されていますが、60分の試験では、(1行書くのに1分として)60行を目安に書いてほしいと言ってきました。早く切り上げて退席する人の答案は、詳しさ・丁寧さにおいて、不十分です。
 レポートに関しては、やはりテーマ選びが重要です。先行研究をよく調べ、基本的な分析の枠組みを踏襲しつつ、自分なりの工夫が加わっていることがよい論文の条件です。経済学には様々な分析手法が用いられており、理論分析、実証分析、歴史分析といった具合に基本スタイルがあります。できるかぎり多くの論文や文献に当たり、先行研究のエッセンスを取り入れた論文には、説得力があります。
 大学生として身につけておかなければならない最も重要な能力は、論理的思考力や問題解決能力だろうと思います。これらは、社会に出てからも、ビジネスの様々なシーンで求められることは確実です。一朝一夕で習得できるものではなく、1コマ、1コマの講義に対する真剣な取り組みと、自宅での学習が大切になってきます。

2015年度 日本経済史供…蟯試験を行いました

 連日厳しい寒さが続いていますが、お変わりなくお過ごしですか。本日、日本経済史兇猟蟯試験を行い、下記のような問題を出しました。受講生が少なかったため、半年間、ゼミのような雰囲気で講義を進めることができました。


【1】 第一次世界大戦期から国際連盟脱退に至るまでの間のわが国の対中国政策について、次の事項を手がかりに説明しなさい。10点×4=40点
(1) 第一次世界大戦中
(2) ヴェルサイユ条約締結時
(3) ワシントン体制下
(4) 蒋介石による北伐開始から国際連盟脱退まで 

【2】 浜口雄幸内閣の井上準之助蔵相によって展開された経済政策(井上財政)と、犬養毅内閣の高橋是清蔵相によって展開された政策(高橋財政)をめぐり、次の設問に答えなさい。 20点+20点=40点
(1) 井上財政は、しばしば「暴風雨に向かって雨戸を開け放った政策」と評価され、深刻な昭和恐 慌を引き起こしました。この政策の概要と問題点を指摘しなさい。20点
(2) 高橋財政に関し、次のAまたはBのどちらか一方を選択して解答しなさい。20点
A 高橋是清の実施した政策の概要と、昭和恐慌からの脱出メカニズムについて論じなさい。
B 高橋是清は国債の日銀引き受け方式を採用し、財政支出拡大をはかりました。そこで、IS−LM分析を用い、国債の日銀引き受けの効果を、民間引き受け(市中消化)のケースと比較して論じなさ い。

【3】 次の(1)、(2)の設問より1問選択して解答しなさい。20点

(1) 若者の「歴史離れ」の背景を指摘し、日本経済史研究の意義について論じなさい。
(2) 1938(昭和13)年、近衛文麿首相は3度にわたり、対中国政策に関する声明を発表します。それらの内容について述べなさい。

ディベート大会 2戦2勝の快挙!

 本日、経済学部の目玉行事であるディベート大会が行われ、私たちの基礎演習10組は、2戦2勝の快挙を成し遂げました。課題となったテーマは、原発再稼働と成人年齢の引き下げで、前者は肯定側、後者は否定側の立場で意見を述べることになりました。
 どちらのチームも周到に準備して臨み、終始優位を保っていたので、安心して聞くことができました。相手チームに比して、私たちが勝っていたと思うのは、猪瀬元都知事ではありませんが、ファクト(事実)とエビデンス(証拠)に基づいて、議論が進められたことです。両チームとも自身の主張を裏付けるデータや図表を準備し、相手から多様な質問が飛んできても、手堅く返答できたのがよかったと思います。
 さらにチームワークのよさも、なかなかのものでした。回答者が特定の学生に偏らず、チームメンバー全員が入れ替わり立ち代わり発言し、審査員に対して全員で協力して勉強したというところを印象づけられたのではないでしょうか。
 ディベート大会において雌雄を決するのは、鋭い質問力と正確な回答力です。質問に際しては、「具体例は?」とか、「裏付けとなるデータはありますか?」と尋ねたとき、相手が答えに窮する場面が見受けられました。一方私たちは、すべての質問に根拠を提示しながら回答できたことが、一番の勝因だったように感じます。
 例年に比べ、かなり質の高いディベートができ、学びの成果を実感しています。8月6日、1日研修旅行を実施して結束力が高まったのが功を奏しました。さらに翌7日の水島昇先生による特別セミナーで、飛躍的な前進がありました。本番直前まで、水島先生の資料を徹底的に勉強し、論点整理や質疑応答の訓練を重ねてきました。夏休み以来のたゆまぬ準備が実を結び、水島先生に晴れて勝利の報告ができるのは、感慨一入です。
 ひとつ後悔しているのは、学生に「2勝すればどんな願いも叶える」と、約束してしまったことです。私は1勝1敗を想定し、甘く見ていました。すでに膨大な累積赤字を抱える私の家計では対処しようもない法外な要求を突きつけられています。本当に迂闊なことを言ってしまいました。債務不履行だけは避けたいと思いますが、平身低頭大幅な減額を懇願するしかありません。

2014年度 総合コース528 「仕事のやりがいと幸福」 今日からスタートです

 2014年度 総合コース528 「仕事のやりがいと幸福」、今日から始まりました。初回講義ですので私が導入の話をすることにしました。受講者数は正確にはわかりませんが、150名〜200名の間だと思います。1年生の受講生が圧倒的に多く、学部別では、経済学部生と文学部生がたくさん受講しているように感じられました。法学部生と商学部生はほとんど見当たりません。
  講座開講の目的についてあらためてご紹介しておくと、私たちは人生の半分の期間、何らかの仕事に携わり、社会に貢献しなければならないという現実が大前提にあります。したがって、学生時代に自身に最適の仕事を見出し、就職後は主体的に仕事に取り組むことが重要です。仕事のやりがいは、人生の充実・幸福に直結するため、学生に早期から注意を促す必要性を感じ、開講に踏み切った次第ですが、大学生活をはじめて間もない1年生の学生を中心に、「仕事のやりがいと幸福」について考える場を提供できるのは、大変意義深いことだと思います。
 初回講義なので、講師をお引き受けいただいている先生方の見学もあり、いささか緊張しましたが、「社会で活躍できる人材になるための心構え」について、日々考えていることを述べてみました。当たり前のことですが、なかなか実践できていないのが現状です。
 「社会で活躍できる人材になるため」に何よりも重要なのは、目的意識を持って日々の大学生活を送ることです。「大学へ入学しない」という選択肢もあったはずですが、どうして大学生になったのでしょうか。その意味をよく考えてみてほしいと訴え、日々の講義で何を学ぶか、大学生活で何を身につけるかをいつも意識してほしいと強調しました。
 次に確かな判断基準を磨くことの大切さも強調しました。よくありがちなことですが、根拠のないうわさや、他人から聞いた情報を丸呑みにして、重要な意思決定をする人がいます。これは大変まずいことで、失敗したからといって、情報を流した人に責任をとってもらうことはできません。やはり自分で情報を集め、何事も自力で判断し、行動できる訓練を重ねておく必要があります。
 3番目に様々な経験を積むことも大事だと思います。それは、「人脈を広げること」と言い換えられるかもしれません。同世代の親友はもちろん、自分の将来について、親身になって相談に乗ってくれる人を方々につくっておくことが大切です。大学生活では、高校までとは比較にならないほど「世界」が広がります。自身の成長の手助けをしてくれる人脈を、うんと広げておくよう、注意を促しました。
 さらに、様々な経験から何を教訓としたか。教訓を生かしてどのような行動をとったかが問われます。例えば感銘を与えるようなエピソードを、就職の面接の際に話すことにより、面接官にその会社や社会に貢献できる人材であることを強くアピールできるのではないかと述べました。
 学生のみなさんは、目前の試験やレポート提出に追われるばかりで、大学生活の根本的な意義、自身の将来設計にまで、考えが及んでいないかも知れません。個々の専攻の知識の集積よりも、仕事のやりがいとは何か、仕事を通じて幸福感、満足感を得られる条件は何かといった根本的なテーマに取り組むのが本講座のコンセプトです。来週からの豪華講師陣のお話が楽しみです。

社会再生学会第5回特別勉強会のご案内

 社会再生学会第5回特別勉強会を7月2日(水)、午後6時半より、関西学院大学上ヶ原キャンパス池内記念館第2研究会室で行います。
 7月を迎え、2014年も後半に入りました。春学期の講義はやがて全日程が終了です。特別研究期間の昨年度と比較して、5倍速以上で時間が経過していったような気がします。
 さて特別研究会、一応今回で春学期の最終回にしたいと思います。以前にも話しましたが、4名のメンバーには、準備が整い次第、社会再生学会で話題提供してもらうつもりです。今回はその準備もかねて、経済をテーマとするすぐれた論文の書き方を研究します。テーマの設定のしかた、議論の展開の方法、分析手法、結論のまとめ方などについて考えてみます。論文にも型(基本スタイル)があり、それを踏襲していない「自己流」は他から評価されません。
 さらに「型」を知っているだけでは不十分で、「実戦」で効果をあらわしてこそ意味があります。そこで、具体的テーマを決め、推敲を重ね、書き進めてゆくことが重要になります。年度後半は、ディスカッションのみならず、専門的な論文を自信を持って書けるよう、トレーニングしてゆきたいと考えています。長澤君の言葉を借りて言うと、ガンガン読み倒すものは、新聞記事にとどまらず、文献や論文が加わります。入学して間もない今のうちから、文献、論文、新聞記事をガンガン読み倒し、それらを参考に、オリジナリティの高い論文が作成できることを目指すのは、大変有意義なことです。

【プログラム】

第1部 話題提供
18:30〜20:30  寺本益英 (関西学院大学経済学部)
「評価の高い経済論文の書き方」

第2部 夏季休暇中の企画、スケジュールなどについて懇談  
20:30〜  「無制限一本勝負」

社会再生学会第4回特別勉強会のご案内

 社会再生学会第4回特別勉強会を6月25日(水)、午後6時半より、関西学院大学上ヶ原キャンパス池内記念館第2研究会室で行います。 長澤君によれば、新聞記事をガンガン読み倒し、ビックリな質問まで飛んでくる大変な研究会のようですが、和気藹々とした雰囲気の中、順調に回を重ねているのは嬉しいことです。
 さて夏休み中の重要な取り組み事項が、11月8日(土)に行われるディベート大会の準備です。したがって今回は、ディベート大会を意識した勉強会を企画したいと思います。
  ディベート大会では勝ち負けが出るため、これまでの傾向をみていると、どうしても相手が答えに窮するような質問に固執しがちでした。さらに双方が自分に好都合な主張だけを繰り返し、議論が全くかみ合あないというシーンも多くありました。典型はTPP問題ですが、賛成派は製造業の輸出拡大のメリットばかりを主張し、反対派は農業崩壊の危機だけを煽ります。製造業の立場から農業に触れることも、農業の視点で製造業を分析することは皆無でした。結局実りある議論ができないまま終わってしまいました。
 私たちはそうした収穫の少ないディスカッションを避け、双方の主張を融合し、有益な政策提言に結びつくような機会にできればと考えています。
 その訓練のため、今回は集団的自衛権行使容認をめぐって議論してみたいと思います。個別的自衛権で対応できないのか、平和憲法はどうなるのか、日米安保体制をどうみるか、東アジアの緊張関係の高まりにいかに対応すべきかといった難しい課題に対し、どのような主張をすれば多くの人が「なるほど」と感じる説得的な説明にたどりつけるでしょうか。じっくり討論するつもりです。

【プログラム】

第1部 話題提供
18:30〜20:30  寺本益英 (関西学院大学経済学部)
「集団的自衛権行使容認をめぐる関学生の意見」

第2部 社会再生学会版 安保討論会:集団的自衛権行使を容認すべきか否か  (意見交換とディベート)  
20:30〜  「無制限一本勝負」

社会再生学会第3回特別勉強会のご案内

 社会再生学会第3回 特別勉強会を6月4日(水)、午後7時より、関西学院大学上ヶ原キャンパス池内記念館第2研究会室で行います。
  6月に入って初回の研究会です。経済学をモノにしたいという気持ちが極めて強い4名のメンバーの熱心さには驚くばかりです。大人数の講義と異なり、十分な意見交換ができる点、疑問点があってもすぐに解消できる点、自分の言葉で発言したり、自分の手を動かしてメモをとるので、学んだ事項が確実に頭へ入ってくる点にこの研究会のメリットがあります。理想的な展開です。
 もちろん、私にも絶えず緊張感が走ります。学生から尋ねられたことには、的確に回答できなければなりません。 議論の方向性があらかじめ決まっているわけではなく、話の成り行きで、どういう方向に動くかわかりません。スリル満点です。日頃からできるだけ多くの新聞記事に当たり、時代の流れに乗り遅れないよう心がけています。
 今月末には、経済学部の恒例行事となっているディベート大会の話が出てくると思います。それに合わせ、本日の研究会では、司会者、賛成派、反対派それぞれの立場に立って、実りある討論ができるためには、どのような留意が必要か、考えてみましょう。後半の第2部では、日本経済の強さと弱さをめぐり、社会再生学会版 景気討論会を行ってみたいと思います。


【プログラム】

第1部 話題提供
19:00〜20:30  寺本益英 (関西学院大学経済学部)
「経済問題について、有意義なディベートの方法を考える ― 司会者、賛成派、反対派の立場と役割 ―」

第2部 社会再生学会版 景気討論会 :日本経済の強さと弱さ  (意見交換とディベート)  
20:30〜 「無制限一本勝負」

社会再生学会第2回特別勉強会のご案内

 社会再生学会第2回特別勉強会を5月28日(水)、午後6時半より、関西学院大学上ヶ原キャンパス池内記念館第2研究会室で行います。
 社会再生学会の分科会的な位置づけで21日より特別研究会をスタートさせましたが、第1回目からかなり有意義な議論を行うことができました。この調子で、継続的に実施してゆきたいと思っています。
 前回は『日本経済新聞』の記事を手がかりに、最新の景気動向を分析し、色々と議論を深めました。今回は記事をさらに丁寧に読み進めてゆきます。
 新聞記事はいうまでもなく一般人を対象にしたものですが、本文中に例えば、「業況判断指数(DI)」、「名目と実質」、「デフレーター」、といった経済用語が登場します。どういった概念か説明できますか?
 新聞記事は字面を追うだけなら簡単ですが、ひとつひとつの用語の意味や背景知識などを念頭に置いて「深く読み込む」となると、かなり熟練が必要です。しかしその熟練技術を身につけ、的確なプレゼンテーションを行ったり、まわりの人に経済動向をわかりやすく説明できる能力を備えた人は、経済学部の出身者といえども、存外少ないのです。そこで今回は、景気関連記事を事例として、新聞記事の精読法を学び、聞き手が内容をよく理解できるよう報告する方法について考えてみましょう。
 その後第2部ではアベノミクス「三本の矢」について丹念に検証しながら、今後の景気はどのように推移してゆくか、話し合いたいと思っています。
 ところで21日の勉強会は、いったんは午後9時に終了したのですが、時間内におさまりきらなかったテーマで30分ほど延長戦が行われました。9時30分になり帰りが遅くなるので「もうここまで」と、研究館の玄関まで行ったのですが、名残惜しく、そこでまた30分立ち話が続きました。メンバー全員話題が豊富で、集まれば何時間でも議論が尽きないという活発な雰囲気です。どうやら終了時刻を決めるのは無意味なようです。今後第2部は、「無制限一本勝負」とします。

【プログラム】

第1部 話題提供
18:30〜20:00  寺本益英 (関西学院大学経済学部)
「景気関連記事の精読法」

第2部 アベノミクス「三本の矢」と今後の景気動向をめぐって (意見交換)  
20:00〜  「無制限一本勝負」

社会再生学会第1回特別勉強会のご案内

  社会再生学会第1回特別勉強会を5月21日(水)、午後6時半より、関西学院大学上ヶ原キャンパス池内記念館第2研 究会室で行います。
 社会再生学会はこれまで社会人の方を中心メンバーとして10回にわたって研究会を開催し、11回目を予定どおり6月1日に開催いたします。一方で私が担当する1年生の基礎演習のクラスに所属する気鋭の4名から、少しでも早く経済分析の能力を身につけ、論文作成やディベートなどの実践に生かしたいという声が上がってきました。大変嬉しいことです。本年度は私の多忙もあって、どの程度実施できるかわかりませんが、こうした熱心な学生の期待にできるかぎり応えようと、社会再生学会の中に勉強会を設置することにし、早速5月21日より活動を始めるはこびとなりました。詳細は下記の案内をご覧ください。
 「勉強会」のほうでは、専門的な論文の精読能力、理路整然とした文章作成・報告能力、説得的なデータ分析力などの向上を目指し、トレーニングを積み重ねます。そして、経済分析のブロフェッショナルとして、それぞれの分野で活躍できることが目標です。さらに経済分野にとどまらず、政治、外交、文化など、周辺分野の関心も高めてもらうつもりです。
 勉強会を立ち上げた4名のメンバーは、もちろん従来の社会再生学会の新メンバーとしても活動します。私たちの学会も高齢化問題に頭を悩ませていたのですが、歯止めがかかりそうです。やがて第3年度を迎えますが、それまでにもう少しメンバーを増やし、色々な活動を展開してゆきたいと思います。引き続きみなさんのご協力をお願いいたします。

【プログラム】

第1部 話題提供
18:30〜20:00  寺本益英 (関西学院大学経済学部)
「景気分析の基礎 ―日銀短観とGDP統計の読み方―」


【報告概要】

 「日本経済の現状はどうなっているの?」という質問は、様々なシーンでよく耳にします。しかし漠然と「よい」、「悪い」と答えるのでは、説得力がありません。私はいつも景気分析の基本中の基本である日銀短観とGDP統計に注目し、景気の状況を説明しています。
 今回はその最新版である2014年4月発表の3月期の日銀短観と、5月発表の1〜3月期のGDP速報に基づき、消費税導入前の景気状況を確認します。
 データに基づいて景気動向を見極め、政策を立案するのは、医師が検査データをもとに、治療方針を立てるのと同じです。経済の「名ドクター」になるつもりで、景気分析の基礎について勉強します。

第2部 景気の現状と今後の経済政策についての意見交換 20:00〜21:00 

TOPIX Core30 構成企業リンク集 (2013年10月現在)

 早いもので春学期の講義も半分が終わり、後半にさしかかるところです。校務が超多忙で、昨年度と比べると天国と地獄の差です。おまけにゴールデンウイークも容赦なく講義実施日で、息をつくひまもありません。
 さて2クラス担当している基礎演習の講義では、日本経済の基本的な見方を教えています。話の成り行きで、しばしば企業の話題が出ます。日本を代表する自動車会社は?、電機メーカーは?、銀行は?といった感じです。
 具体的な企業名を挙げるとき、私がいつも基準にしているのは、TOPIX Core30 を構成する企業です。下記のリンクをご参照ください。2010年4月21日の記事では、2009年9月現在の30社を紹介しているので比較してみてください。最新版では、東京電力、関西電力が消えてしまっているのが印象的です。任天堂も姿を消しました。
 時代の移り変わりとともに、日本の代表的企業も変化してゆきます。就職する企業選びの難しさを痛感します。

TOPIX Core30企業一覧 (2013年10月現在)
1  2914  日本たばこ産業
2  3382  セブン&アイ・ホールディングス
3  4063  信越化学工業
4  4502  武田薬品工業
5  4503  アステラス製薬
6  5401  新日鉄住金
7  6301  小松製作所
8  6501  日立製作所
9  6752  パナソニック
10  6758  ソニー
11  6902  デンソー
12  6954  ファナック
13  7201  日産自動車
14  7203  トヨタ自動車
15  7267  本田技研工業
16  7751  キヤノン
17  8031  三井物産
18  8058  三菱商事
19  8306  三菱UFJフィナンシャル・グループ
20  8316  三井住友フィナンシャルグループ
21  8411  みずほフィナンシャルグループ
22  8604  野村ホールディングス
23  8766  東京海上ホールディングス
24  8801  三井不動産
25  8802  三菱地所
26  9020  東日本旅客鉄道
27  9432  日本電信電話(NTT)
28  9433  KDDI
29  9437  エヌ・ティ・ティ・ドコモ(NTTドコモ)
30  9984  ソフトバンク

2013年度 特別研究期間のご報告 (3)

 以上のような政治・外交史は、吉川弘文館の『歴代内閣・首相事典』を基本に、講談社の『日本の歴史』シリーズ、中央公論新社の『日本の近代』シリーズなどを参照し、必要に応じてこれらの文献に挙げられている参考文献を手がかりに研究を進めました。
 さらに文献研究に加えて有意義であったのは、博物館における展示見学です。満蒙開拓平和記念館、長崎原爆資料館、沖縄県立博物館、沖縄県立平和祈念館を訪れ、よく整理された展示や資料、証言のテープなどを聞くことによって、近代史の流れを明確に把握することができました。また2014年3月15日、日本学術会議の公開シンポジウム「大学教育における分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準:歴史分野」に参加しましたが、議論はほぼ本研究の主旨と合致していました。準備が整い次第、史実の紹介にとどまらず、「豊かさ・幸福」の視点から日本の近代を顧みる書物を完成させたいと意気込んでいます。
 最後にあらためて本研究の結論をまとめると、戦前の日本は経済の近代化に成功しましたが、精神的価値の近代化には失敗しました。明治以降の指導者たちが、民主主義や自由な思想の浸透に積極的であれば、政治的にも文化的にも近代化が進み、幸福を享受できていたに違いありません。凄惨極まりない戦争を経験する必要もなかったと思われます。 

2013年度 特別研究期間のご報告 (2)

 次に政治・外交に関しては、歴代内閣に焦点を当て、政治動向や外交政策を整理しました。まず明治はじめの自由民権運動の動きと政府の対応に注目し、両者の立場の違いを明らかにしました。明治六年の政変後、板垣退助らを中心に立志社が設立され、民権運動が高揚しますが、政府による厳しい言論弾圧によって挫折してしまいます。さらに1880年代はじめには、国会開設に備え、板垣退助を党首とする自由党や、大隈重信を党首とする立憲改進党といった政党が結成されたのですが、両党の対立や、民権運動家たちの足並みが揃わなかったことから行き詰まり、民主主義の定着に至らなかった状況をみました。
 一方で明治十四年の政変を契機とし、1889(明治20)年に大日本帝国憲法が制定されるまでの経過を跡づけ、天皇と行政府に強大な権限が与えられたことが、その後の日本にいかなる影響を及ぼしたかについても考察しました。
 さらに明治〜昭和戦前期の日本は、近代化と並行して海外膨張を試み、台湾、朝鮮、中国などアジア諸国の植民地化を推進してゆくプロセスにも注意を払いました。日清戦争後の下関条約の帰結、日露戦争後のポーツマス条約調印から韓国併合までの経過、20世紀初頭以降本格化した満州進出なども丁寧に追跡しました。
 昭和のはじめ日本は、当時満州の実権を握っていた張作霖と友好関係を結び、満州における権益拡大をはかろうとしたのですが、彼が必ずしも協力的な態度を示さなかったため、爆殺しました。この事件を契機に中国の対日感情は一気に悪化します。その後柳条湖事件を経て満州事変が起こり、満州国の建設に至ったのですが、日本は国際社会からの孤立を深めてゆくことになります。
 この頃の国内の動向に目を向けると、軍部の暴走に歯止めがかからなくなり、1932(昭和7)年の五・一五事件のあと、政党内閣制は崩壊しました。
 1937(昭和12)年勃発した日中戦争は、当初の予想に反し、中国の強い抵抗にあって泥沼化してゆきました。こうした日本の動きをアメリカは、同国の東アジア政策に対する挑戦と受け止め、対日経済制裁を強化してゆきました。もっとも日本はなるべくアメリカとの全面的な敵対は避けたいと考えていたのですが、対米交渉は成功せず、ついに太平洋戦争開戦に至り、はかり知れない犠牲を払い、1945(昭和20)年8月15日、ポツダム宣言を受諾して降伏を余儀なくされました。

2013年度 特別研究期間のご報告 (1)

 7日から新年度の講義が始まり、最初の1週間が経過しました。講義を担当したのは1年ぶりですが、どの科目も熱心な受講生に恵まれ、よいスタートが切れたと喜んでいます。ところが今年度は、たくさんの委員も引き受けることになりました。その中には、自分が主体になって動かなければならない超ハードな仕事もあり、想定以上に大変なことがわかりました。半沢さんの「倍返し」どころでは済まず、例年の「100倍返し」の忙しさに耐えていると、ふだんの付き合いが深い知人全員に窮状を訴えています。特別研究期間の昨年度は、思いのままに調査に出かけることができ、立ち止まって研究の構想を頭に思い描く機会が得られ、「楽園」で過ごしたような気分でした。(講演に行く前には地獄の思いのときもありましたが。)
 今日は昨年度の貴重な研究期間に、どのようなことを調べたり、考えていたか述べてみたいと思います。
 私はかねてから人類共通の課題である「豊かさ・幸福の追求」の視点から、戦前における日本の歩みを評価することを研究目標にしてきました。もちろんこれまでの研究でも、大まかなイメージを描くことはできましたが、昨年度まとまった研究期間を与えられたことにより、あらためて政治・経済・外交の視点から総合的にわが国の近代史をたどり、政策に対する意味づけを行ったり、帰結から教訓を導くなど、新たな成果を得ることができました。
 最初に経済的側面については、本格的な経済発展の基礎固めに重要な役割を果たした地租改正や新貨条例の制定など維新の制度改革、交通・通信網の形成や株式会社制度の導入といった殖産興業政策について近代史の通史を扱った研究書を熟読し、経過と意義について整理しました。
 続いて大川一司氏をはじめとする一橋大学の研究グループや、中村隆英氏が行った景気循環研究の時期区分を手がかりに、1880年代後半から1930年代後半に至るまでの約50年間の経済動向を再検証してみました。日清戦争・日露戦争・第一次世界大戦と、戦争を経るごとに工業化が進展し、高橋財政期の1933(昭和8)年には、金属・機械・化学工業の生産額が、繊維工業を上回るに至ります。その意味で戦前の日本経済は、産業構造の高度化をともないながら、極めて順調に発展したといえるのではないでしょうか。
 もっとも戦前の日本経済は、日露戦争ブーム崩壊による慢性不況や大正バブル崩壊を引き金とし、昭和恐慌が終息するまでの10年あまりの長期停滞局面も経験しています。経済的にどのようなメカニズムが働き、好況局面から不況局面に転じたのかに関しても、多角的に考え直しました。

2014年度 入学式

 関学のキャンパスは桜が満開でとてもきれいです。つい先日まで肌寒く感じる日もあったのですが、ここ数日で一気に暖かくなりました。さすがにコートはもう必要ないでしょう。
 さて今日2日は経済学部の入学式が行われました。私は今年度新入生のクラス(基礎演習)を2つ担当することになっています。直後のオリエンテーションで、対象の学生たちと顔を合わせましたが、「元気いっぱいの若者たち」です。ちなみに、私の入学は1986年。何と28年前です。学生との年齢差が10歳程度の時期もあったのに、いつの間にか、親子ほどに差が開いてしまいました。びっくりです。
 基礎演習ははじめて経済学を学ぶひとに経済学を好きになってもらえるかどうかの鍵を握る科目なので、責任重大です。経済学の初学者に対するアプローチは色々な方法があると思いますが、私が目標にしたいのは、受講生が他学部の友人やご家族に、「今の経済はどうなっているの?」と尋ねられたとき、あらゆる角度から相手が納得のゆくよう説明できようになるまでトレーニングすることです。
 下準備として基本的な経済学の論理を学び、専門用語をおさえておく必要があります。同時並行で「実践」も行います。例えば「アベノミクスの現状と課題」、「消費税率引き上げの影響」、「原発再稼働の是非」といったテーマは、誰がどう見ても最重要トピックスです。特殊なテーマは専門のゼミに入ってから扱うとして、新聞の一面に取り上げられるような問題について議論を深め、しっかり基礎を固めるつもりです。
 特別研究期間で1年間講義を免除されていたため、教壇に立つのは久しぶりです。もし研究だけの1年を送っていたら、1年のブランクはとても不安ですが、定期的に社会再生学会を開催し、会員のみなさんと活発な意見交換をしてきたため、講義から遠ざかっていたという感じがしません。今回の基礎演習も、社会再生学会と遜色ない、アカデミックな講座にできればと期待しています。

成績評価が完了しました

 ついこの間お正月を迎えたばかりで、今年はまだたっぷり時間があると思っていましたが、早くも1月の最終日となってしまいました。1ヶ月をこんな感覚で12回繰り返すだけで、1年などすぐにが終わってしまうことを肝に銘じ、時間を有効に使わなければいけないと、いつも自身に言い聞かせているつもりです。
 ところが日々送っている実際の生活と理想の間には大きなギャップがあって、ついつい都合のよい理由づけをして、大切な仕事を先送りしてしまいます。喫茶文化史の研究、日本の近現代史の研究、ホットな政治・経済問題の研究等々、ずいぶん以前に本にまとめたいと決意しながら、何年出版社の方を待たせてきたかわかりません。ここで何とか挽回すべく、2013年度の特別研究期間のうちに、たとえ1テーマでもクリアーしたいものです。
 さて今日は、ここ2週間ほど続いていた過酷な成績評価の仕事から、めでたく解放された日です。対象者数が最も多い日本経済史Bの採点で感じたことですが、よくできている学生は、もう一度講義の機会を設け、みんなの前で表彰してあげたいと思うくらいです。反面、講義でひと言もふれたことのないようなことが書かれていて、話にならない答案もあります。全く準備なしで試験を受け、運が良ければ単位がとれると思っている学生がいることも事実です。
 以前総合教育研究室という部署で高等教育について研究していたとき、大学生は4つのタイプに分かれるという話を聞きました。それは東京大学が5万人近くの大学生を対象に行った調査の結果で、最近の大学生は、高同調型、独立型、受容型、疎外型の4つに類型化できるというのです。高同調型は高い目的意識を持ち、大学の教育目標と一致する学生、独立型は個人としては大人であるが、大学教育には期待していない学生、受容型は自己・社会認識は未発達であるが、大学教育には期待を寄せている学生、疎外型は、自己・社会認識は未発達で、大学教育にも期待していない学生です。
 私の担当講義の学生も、確かにこの4タイプがいます。高同調型ばかりであれば、講義もしやすいのですが、他の3類型に対してどのような工夫をすればよいのか、なかなか頭の痛い問題です。また、独立型、受容型、疎外型の学生を意識した講義は、高同調型の学生には不満でしょう。教育の理想をいえば、タイプ別のクラス編成が必要なのですが、容易ではありません。

経済学の学びの基本スタイル

 1月もやがて終わりですが、連日只管卒業論文と基礎演習のレポートを読み、日本経済史Bの試験の採点をしています。日本経済史Bは、1割くらいの学生が、非の打ちどころのない立派な答案を書いています。講義で伝えたかったことが受講生に理解され、答案に反映されているのは、何よりも嬉しいことです。
 1割のすぐれた答案を書いた受講生の共通点は、経済学の考え方の基本スタイルを、忠実に会得していることです。今学期の講義で扱った景気変動のメカニズム、金融政策の手段と効果、デフレとインフレ、日本の農業保護政策などは、それこそ経済学の「一丁目一番地」のテーマです。これらについて、耳を澄ませて講義を聞き、基本的な論点を確実に理解し、頭に叩き込まれているという印象を受けました。
 以前冷泉為人先生の講義で、「型」の文化についてお聞きしました。その骨子は、茶道、華道、書道、武道など、日本の伝統文化は、「型」の体得に重点を置いてきたというものです。「型」とは基本スタイルです。自分の知識になっておらず、インターネットを手当たり次第に調べただけとすぐわかるお粗末な答案、うる覚えで不確かな答案と比べると、高得点の答案はきちんと「型」ができています。研究、芸術、スポーツなど、どんなことに取り組む場合でも、基本をしっかりマスターしておかないと、独創性が生まれたり、複雑な問題を解決できるはずがありません。
 冷泉先生はその後、「守・破・離」についても丁寧に解説してくださいました。弟子は師匠からまず基本形を教わり(=守)、やがて枠を飛び出し(=破)、自分なりの境地を得る(=離)というのがその内容です。
 経済学の学びについてあらためて考えると、講義で扱えるのは「守」の部分だけです。「守」からぬけ出して「破」に至り、さらに「離」まで到達するには、講義を超越した、たゆまぬ努力が必要です。講義が欠席がちで、自宅でも復習せず、「守」の部分が固まっていない学生は、いつまでたっても経済学の考え方が身につきません。大学で学ぶ意義もなくなってしまいます。完璧な答案と、まとまりがなく、筋道も立っていない答案を見比べ、このような感想を持ちました。

今年の入試も「理高文低」のようですが ………

 関学の定期試験は後半にさしかかりました。定期試験が終わると2月からすぐ入試期間に突入です。毎年2回くらい監督業務に当たりますが、試験会場の何とも言えない張りつめた雰囲気はどうも苦手です。
 さて1月19日付の『日本経済新聞』(夕刊)に今年の入試傾向の分析が載っていました。やはり「理高文低」で、資格が取りやすい薬学・看護・保健学部、就職内定率が比較的高い理系学部が人気だそうです。反対に不振なのは、法学部と経済学部で、全般に受験生が減っています。就職につながるか不透明のため敬遠されるのだと言います。
 受験生に経済学部が魅力に乏しい学部という印象を持たれているのは大変残念です。ニュースなどで、安倍首相のコメントをよく耳にしますが、「安倍政権は政策の一丁目一番地を経済の再生と位置付けています」と言っているのを何回聞いたかわかりません。
 首相が政策の中で経済再生が最も重要と訴えているのですから、受験界に大きなリアクションが起こらなければいけないはずです。今の経済のどこに問題があるのか、どのようにして立て直してゆけばよいのかを、経済学部へ入って勉強しようという受験生が増え、経済学部が一番人気の学部になってもらわなければ困ります。
 それから今日のビッグニュースといえば、政府・日銀がデフレや円高の克服に向け、前年比2%の消費者物価上昇率を目標に掲げる共同声明をまとめたことです。さらに金融緩和の新手法を導入することも決めました。その内容は、2014年から無期限で月13兆円の国債などを購入し、資産買い入れ基金の残高を14年中に111兆円に増やすというものです。この金融政策決定会合の結果は、どの新聞社のホームページでも、号外で報じられたほどです。
 日々の新聞報道に注目すれば、経済学部へ行って経済を学ぶことがいかに重要かは明白です。高校や予備校の先生には、受験生に経済再生が政策の一丁目一番地であり、それを経済学部で勉強することの大切さをもっと強調してもらいたいと思います。
 一方受け入れる側の大学の経済学部も責任重大です。枝葉末節の細かい議論は後回しでよく、一丁目一番地の経済学をわかりやすく教えなければいけません。私はすでに日本経済史や兵庫医療大の講義、公民館の市民講座で取り組んできましたが、今度は社会再生学会で是非挑戦したいと思っています。

2012年度 兵庫医療大学 「経済学」最終試験を行いました

 今日は非常勤で行っている兵庫医療大学で経済学の最終試験を行いました。経済問題、毎年違った形で新聞の1面に掲載されるようなビッグニュースが登場しますが、今年度は特に民主党政権が解散に追い込まれ、自民党が政権に返り咲き、政治も経済もダイナミックに動いたのが印象的でした。選挙の最大の争点が「景気回復」、「経済再生」であったことからも明らかなように、経済問題は私たち市民にとって、最も注意を払わなければいけないテーマであるといえます。経済学部生にではなく、医療大学で経済学を講義するのは新鮮味があって、貴重な体験になりました。経済学を受講してくれた学生には、引き続き経済と政治がどう動いてゆくか、注意を払ってほしいと願っています。
 さて今日の試験は、次のような問題を出しました。予告どおりの出題ですから、きちんと準備してきた学生は、高得点をとれるはずです。

【1】 民主党政権をめぐる以下の設問に答えなさい。  計50点
(1) 2009年8月に行われた第45回衆院選では民主党が圧勝しました。その一因として、前政権(自民党政権)下における格差拡大に対し、国民の不満が爆発したことが挙げられます。そもそも格差はなぜ生じ、拡大してゆくのでしょうか。講義内容に即して説明しなさい。20点
(2) 格差是正を目指し、民主党は2009年のマニフェストで「目玉政策」を打ち出しました。子ども手当、高速道路無料化、農家の戸別所得補償に焦点を当て、各政策の内容と問題点を指摘しなさい。30点

【2】 景気動向に関する次の問に答えなさい。 計50点
(1) ここ数年の日本経済停滞の原因は、「デフレの悪循環」にあります。「デフレの悪循環」とはどのような現象か説明しなさい。 8点
(2) 日本経済の実力を超えた円高も、輸出産業の収益を圧迫してきました。円高が輸出産業に与える影響について、簡単な数値例を用いて説明しなさい。10点
(3) デフレを脱却するため、安倍晋三首相は「アベノミクス」と呼ばれる諸政策を掲げています。その内容と問題点について論じなさい。25点
(4) 円高を是正するため、安倍首相が構想中の政策について説明しなさい。7点

近現代史学習の重要性 (1)

 あらためて述べるまでもありませんが、私は近現代史を専攻しており、大学の講義では、明治維新〜現代を扱っています。少人数の講義の際、何かの拍子で学生に戦前の有名な事件や首相を尋ねることがありますが、あまり知られていないようです。最近では、尖閣問題や竹島問題が大きくクローズアップされています。尖閣や竹島をめぐり、なぜ中国・韓国と摩擦が起きるのかについて質問してみましたが、明確な答えは返ってきませんでした。これでは若い世代の日本人が、中国や韓国の若者と議論しても話がかみ合いませんし、感情的に相手を攻撃したり、無関心のまま、冷却した関係がいつでも続くことになるだろうと心配していました。11月25日付『日本経済新聞』の社説のテーマは、「近現代軸に開かれた歴史教育を」というもので、若者にしっかり近現代史を学ばせることの重要性を説いています。私のモットーとぴったり合致し、心強く思いました。
 社説では今後の歴史教育の方向性として、「中国などの反日教育の向こうを張り、戦争を美化してナショナリズムをあおるような教育を推し進めるのは不毛だ。逆に、戦前の社会をいたずらに重苦しいものととらえるのもよくない。歴史を冷静に、多面的に考える姿勢こそが周辺国との相互理解につながるだろう。開かれた歴史教育を心がけるべきである」と述べています。さらに、「なぜ、そうなったのか、そのとき、もし別の道を歩んでいたら……。歴史教育で本当に大切なのは、こういった思考力や、意見をたたかわせるディベート力だ」とも書かれています。そもそも歴史学習は、年号と事件を機械的に結びつけるだけ能力や、きわどい言い回しの文章の正誤判定力を求めているわけでもありません。しかし短期間で合否判定を出さなければいけないマンモス私大の入試問題は、暗記中心の出題とならざるをえず、対社会的にみると、本来鍛えるべき歴史能力とは異なる能力を求めているように受け止められているのではと懸念しています。入試が誤まったメッセージを発信しているとしたら、早急に改める必要があります。

よい論文の条件

 社会再生学会の活動、回を重ねるごとに充実してきたように感じます。これまでの研究会には、コンスタントに15〜20名の出席者があり、高出席率です。また来年5月開催予定の第7回研究会まで、報告者が決まっています。当初は報告者が途切れたらどうしようかと心配していましたが、杞憂に終わりそうです。すでに2回目の報告に備え、スタンバイしてくださっている会員もいるほどで、嬉しいかぎりです。
 さて今週土曜日から12月に突入です。秋学期の講義は、3分の2消化したことになります。私の担当科目では、1年生の基礎演習の学生には進級レポートを、4年生の研究演習兇粒慇犬砲蓮卒業論文を提出してもらうことになっています。決して焦らせるわけではありませんが、提出期限がもう1ヶ月あまり先に迫っています。
 この時期よく受ける質問は、「よい論文を書くにはどうしたらよいか」というものです。答えにくい質問ですが、私が思い描いているよい論文とは、次のような条件を備えた論文です。
 まずはじめがきに、問題意識が明確に述べられていることが重要です。簡潔にいえば、なぜそのテーマを選んだのかを明らかにし、各章で論じる内容をあらかじめ提示しておくと、非常に読みやすくなります。さらに先行研究の整理も忘れてはなりません。すぐれた研究成果は出典を明記して取り入れ、自分が新たに付け加えたり、工夫した部分を強調すると、メリハリがつきます。
 本論では最初の問題設定に対し、適切な分析手法を使って「答え」を導いてゆきます。資料や文献を用いながら、丁寧に実態を解明してゆく場合もあれば、データに統計処理をほどこして、新事実が発見できることもあります。インタビュー調査で、貴重な証言が得られるケースも考えられます。ともかく本論では、あらゆる方法を総動員し、自らが設定した「問い」に対する「答え」を見出さなければならないのです。
 最終章には結論を持ってくるのが普通で、「はじめがき」とも整合的でなければいけません。本論の分析結果をあらためて要約し、最終的に何がわかったのかを明快に述べる必要があります。そして残された課題にもふれてあれば、配慮の行き届いた論文という印象を受けます。
 最後に絶対やってはいけない「反則」、「ルール違反」について述べておきます。それは誰かの文章のまる写しです。本のまる写しは、字を打たなければいけないのであまり見かけませんが、インターネットからの切り貼りは、あとを絶ちません。しかし他人の文章の寄せ集めほど見苦しいものはありません。文意も通っていないし、明らかな誤りもしばしば見受けられます。関学経済学部においては、剽窃が発覚した場合、試験のカンニングと同様に処分を下すという話が出ています。文章力や考察力が全く身につかず、「不正行為」の汚点が残るだけです。
 反対に、独創性を出すのだと言って、とんでもないテーマを設定したり、先行研究を無視して自己流で原稿を書く人がいますが、これも困ったことです。経済の論文には経済の論文のスタイルや分析手法があるので、そこから全く外れた型破りの論文は、評価のしようがありません。たくさんの文献や論文に接している人なら、経済論文の基本形は、無意識のうちに理解できているはずです。

深刻な大学生の就職難

 田中真紀子文部科学相は今日8日、秋田公立美術大学、札幌保健医療大学岡崎女子大の3大学の開設認可を決裁しました。大学設置・学校法人審議会の答申どおりに決着し、3大学は無事来年春から開学できるようになりました。
 田中大臣は2日唐突に3大学の開学は現在の設置認可の仕組みのもとでは不認可としました。しかし3大学は猛烈に反発し、世論もこんな理不尽なことはないという厳しい反応でしたので、6日に新たな基準を設けて再審査する考えを示しました。しかしそれも、7日には全面撤回した次第です。
 このような迷走に対し、自民党など野党には、参院での問責決議案の提出の可能性を示唆し、野田首相の任命責任を追及すべきだという意見が出ています。
 今回の騒動で3大学の関係者に大きな混乱を招いたことは事実ですが、大学の乱立と学生の質の低下問題には、正面から取り組まなければなりません。ブログをご覧のみなさんもお読みになっているかも知れませんが、『日本経済新聞』に11月1日より5回シリーズで「シューカツ受難」という連載がありました。その第1回目の見出しが、「供給過剰の大学生」です。記事によると、1985年に26.5%だった大学進学率は2012年には50.8%に上昇したといいます。その結果、毎年の卒業生は37万人から55万人に急増しました。一方大手企業の採用は増えたものの15万人程度で、卒業生の3割未満という厳しい状況です。中小企業にまで対象を広げればかなり就職しやすくなるのですが、依然として大企業にこだわる傾向が強いようです。入口(入学)と出口(就職)は同じ幅の広さでなければならないはずですが、入口は広く入りやすい反面、出口がとても細くなってなっており、就職できない大学生が大学に滞留してしまうという構造になっているのです。卒業生をしっかり吸収できるだけの就職口が準備されていないのが大きな問題です。
 就職難の背景には、不況が長引き、企業が採用基準を厳しくしているという事情もあるかも知れません。日本人にこだわらず、優秀なら外国人でも採用するでしょう。日本人同士の競争ではなく、外国人も巻き込んだ熾烈な競争が始まっています。
 個人的には中長期の視点で大学生の数を絞ってゆかなければいけないと考えています。そしてもっとキメ細やかな指導をして、大学生の質を高めなければいけないと感じています。1クラス300人も400人もいる講義で、行き届いた教育はできません。もっと人数を減らし、報告や議論のできる雰囲気づくりが大切です。その点で、私は社会再生学会に望みを託しています。 
 企業への注文もあります。それは大学時代にどんな能力を身につければよいのか、採用基準を明確にしてもらいたいということです。やる気とかコミュニケーション能力などでは曖昧です。例えば卒業研究の報告内容で採用を決めてもよいと思います。自分の専攻分野をどれだけ深く究めているかで採用が決まれば、学生はもっと真剣に学業に取り組むはずです。資格試験ばかりではなく、普通の大学での学びがもっと評価されてよいと思います。

2013年度開設予定の3大学の認可見送り

 田中真紀子文部科学相は2日、2013年度の開設を申請していた3大学について認可を見送りました。3大学は、秋田市の秋田公立美術大学、札幌市の札幌保健医療大学、岡崎市の岡崎女子大学です。
 これらの大学に関しては、1日に文部科学省の「大学設置・学校法人審議会」が来年春の開設を認可すると答申したばかりでしたので、準備を進めてきた関係者は、さぞかし困惑していることでしょう。ホームページを調べてみると、秋田公立美術大学は芸術系、札幌保健医療大学は兵庫医療大と同じような看護師養成、岡崎女子大学は子ども教育の学部をつくろうとしていたようです。どの大学も、入学定員はたったの100人です。
 認可見送りの理由は「大学開設の認可のあり方を抜本的に見直すため」だといいます。4年制大学の数は、20年前の1992(平成4)年には523校であったのが、今年783校と大きく増えています。
 なぜこれほど大学が増えたのでしょうか。注目したいのは2002年の方向転換です。規制緩和の流れをくみ、中央教育審議会が大学新設に関し、「事前規制」から「事後チェック」に舵を切りました。文部科学省も大学設置基準を見直してハードルを下げ、短大から四年制への転換や、自治体主導による大学開設が相次ぎました。少子化になるのはわかっていたのに、なぜこんな政策をとったのでしょうか。
 大学が増えすぎて様々な問題が表面化してきました。何よりも深刻なのは学生の質の低下です。また競争も激化して、経営が成り立たなくなっている大学や杜撰な経営を行う大学が出てきています。
 一方大学開設が適切かどうかを審査している審議会ですが、委員は大半を大学関係者が占めています。大学同士なので遠慮があり、新設に関し、厳しことは言いにくいという雰囲気もあるようです。申請すればめったに不認可とはならず、乱立につながったといえます。
 しかしいったん審議会がOKを出せば、大臣はその決定を尊重するのが普通で、これまでに決定が覆された例はありません。田中大臣でなければ、こんなことにはならなかったでしょう。権力の乱用というほかありません。新設を認めないのなら、もっと早い段階に通告すべきです。あまりにも場当たり的な決定です。施設やカリキュラムを整え、教員の手配もし、オープンキャンパスや入試の準備を進めてきた当事者は、到底承服できないだろうと思います。大学設置行政や、大学教育の質低下問題に対し、抜本的な対策は必要ですが、上記3大学の手続きに落ち度はないのですから、切り離して考えるべきです。

社会再生学会第2回研究会を行いました (2)

 昨日の鈴木さんのお話しの中で、京菓子司・末富の山口富蔵社長がお作りになったラプソディ・インブルーという銘のお菓子が出てきてなつかしく思いました。以前(多分7〜8年間)、私がコーディネートしていた総合コースの講義に来ていただいていました。ご自身が創作された数々のきれいなお菓子をスライドで見せていただき、それぞれにぴったりの銘がついていて、詳細に説明していただきました。銘は、日本人特有の繊細さや美意識を反映したもの、季節感を感じされるもの、古典作品に裏打ちされたものなど、すべてよく工夫されています。和菓子の世界の奥深さを感じました。
 さて今回の研究会は1報告のみでしたので、後半はこれから学会全体としてどういう取組を行ってゆくか、話し合いを行いました。そのベースとなる話題提供をしてくださったのが、神戸市立神港高校教諭・島田融先生で、「社会再生と人間学、そして新しい日本ルネサンスの創造へ」というテーマで資料を作成し、お話しいただきました。島田先生は、スタート間もない本学会の認知度がどうすれば高まるか、あの手、この手を考えてくださっています。
 さて島田先生が社会再生の中心と考えていらっしゃるのは、「人間論」です。つまり、人間らしく生きるとはどういうことか、振る舞いや考え方を問い直さなければいけないという問題提起です。
 島田先生のお話しを聞いて私の頭に浮かんだのは、かねてから関心を持っていた幸福の研究です。根底にあるのは、金銭的豊かさ(GDPの量的拡大)とは異なる価値観があってよいのではないかという発想です。2011年4月8日の記事の再掲になりますが、ブータンでは、GNH(Gross National Happiness 国民総幸福量)という独自の経済指標を作成し、国づくりを進めています。その構成項目は、/翰的幸福、健康、6軌蕁↓な顕宗↓ゴ超、Ε灰潺絅縫謄ー、Г茲づ治、╂験菴綵燹↓自分の時間の使い方 です。確かに金銭的にどれだけ満たされていても、これら9項目の何かに問題があれば、豊かで幸福な社会とはいえないでしょう。
 ふだんから島田先生とはよく意見交換していますが、私たちの学会では、GDPよりGNHに力点を置いて研究を進めてゆくことで考え方が一致しています。
 今後の進め方としては、基本的にまず全メンバーに話題提供してもらおうということになります。それだけで1年はかかります。同時並行で、何か特定のテーマに照準を絞り、個別に研究を進めてゆくべきだというご意見もありました。早く成果を出すためには、具体的なテーマに取り組んでゆくことも重要だろうと考えています。
 第3回の研究会は11月25日(日)に開催します。次回も大変楽しみです。またせっかくの島田先生のご提案も、是非実現してゆきたく思っています。正式な研究会とは別に、「人間論」あるいはGNHについて、会員のみなさんと議論する場ももちたいところです。

社会再生学会第2回研究会を行いました (1)

 9月30日に中止した社会再生学会第2回研究会を無事開催することができました。午前中はまだ雨が残っていましたが、昼すぎにはあがったので安心しました。見学者も含め18名の参加がありました。その中から新メンバーに吉本里美さんが加わってくださいました。たびたび総合コースを聴講してくださっている方で、野沢久信さんと親しくされています。新メンバーの入会は、会のさらなる活性化につながり、大変嬉しいことです。
 今回は都合により、株式会社淡平の鈴木壮さんの「“シニセ”から学ぶこと」というタイトルの1報告だけでしたが、1時間あまりの話題提供に対し、約1時間の意見交換を行うほど盛り上がりました。私たちが考えなければいけない論点がたくさん盛り込まれた素晴らしい発表でした。
 鈴木さんの会社(淡平)が創業したのは1884(明治17)年だそうです。この年は私にもピンとくる年で、前年偽茶の対米輸出が急増して日本茶の評価が急落したため、その対策として中央茶業組合本部が設立された年でもあります。また1880年代前半は松方財政期とも重なります。日本銀行が設立されたのは、1882年です。淡平さんの創業者は、松方正義と同時代人だったのかと思いながら、お話しを聞いていました。
 鈴木さんは「老舗」と呼ばれるための条件を様々な角度から分析してくださいました。「老舗」と聞いて私たちがまず思い浮かぶのは、歴史が長い、伝統があるということですが、それはその間の様々な苦難を乗り越えてきた証明でもあるわけです。その他、信頼が厚いこと、品質がよいこと、技術・顧客を伝承していることなどを挙げられました。
 老舗といえども伝統を守るだけでは生き残ってゆけません。時代に対応したイノベーションを求められていることは言うまでもありません。興味深かったのは、千葉県銚子市にあるヒゲタ醤油の技術開発です。バイオロジカル・ウール・ハーベスティングと言い、上皮細胞成長因子(Epidermal Growth Factor, EGF)と呼ばれるたんぱく質を羊に注射すると、羊毛の成長が一時的に止まり、バリカンなしで羊毛が刈りとれるということです。ヒゲタ醤油はこのEGFの量産に成功しました。醤油醸造業といえば代表的な伝統産業のようなイメージを持ちますが、。ヒゲタ醤油の場合、実は最も先端をゆくバイオ企業でもあるわけです。とても意外感のある事例紹介でした。
 最後に老舗の弱点としてマーケティング力が不十分であることを指摘されました。私が研究しているお茶にも通じますが、リーフ茶の小売店は、大手飲料メーカーのように自販機を大量に設置できるわけではなく、全国的なスーパー、コンビニの販売ネットワークも持っていません。人気タレントにコマーシャルをやってもらうだけの資金力もありません。このようなハンディを克服しながら、いかに存在感を出すかが問われています。
 最近の経済の低迷の一因は、企業のモラル低下にあります。不祥事があとを絶たず、「不信社会」といっても過言ではありません。老舗に限らず、企業全般の規律を考える上でも、貴重なお話しでした。「企業再生」という観点から、学会全体でも取り組みたい課題です。

あべのハルカス高さ300mに 横浜ランドマークタワーを抜く

 近畿日本鉄道が大阪市阿倍野区で建設している超高層ビル「あべのハルカス」の鉄骨が今日30日、完成時の高さ300mに到達したそうです。高さ296mの「横浜ランドマークタワー」を抜いて日本一の高さのビルになりました。なお世界一の超高層ビルは2010年1月に開業したアラブ首長国連邦・ドバイの「ブルジュ・ハリファ」で高さは828mです。
 ハルカスには近鉄百貨店本店や大阪マリオット都ホテル、オフィス、美術館などが入ります。大阪市立大病院など医療機関を集めた「メディカルフロア」もでき、58〜60階は展望台になる予定です。
 それにしても大阪市内に見渡すと、ビルというより「タワー」がたくさん目立つようになりました。用途の中心は、オフィス、マンション、ホテルなどです。まずオフィスですが、大阪中心部の空室率は9ヶ月連続で改善し、10.01%にまで低下しています。好調の背景にあるのは、企業が本社を郊外から中心部に移動させていることです。ただ新築のオフィスタワーへ注目が集まる一方で、既存のビルはテナント流出の危機に直面し、賃料値引きなどで何とかつなぎとめようとしている状態です。全体的な需給バランスからいうと、供給過剰かも知れません。
 マンション市場は活況で、特に一等地のタワー物件が大人気です。大阪市の人口は夜間を100とした場合、昼間は132になるそうです。これは職場と自宅が離れていることを意味しています。私も時々朝夕のラッシュ時の電車に乗ることがありますが、ぎゅうぎゅう詰めです。このような電車に1時間以上乗って通勤・通学しなければいけない人は、大変だろうと思います。都心のマンションの供給が増えると、大阪市の昼夜人口の格差は、だんだん縮小してゆくものと予想されます。
 ホテルは外資系を中心に、激しい顧客の争奪戦が起こりそうです。梅田周辺にはすでに、リッツ・カールトン、ヒルトン、ウエスティンがありますが、JR大阪駅北口に、インターコンチネンタルホテル大阪が開業予定です。ほかに中之島にはリーガロイヤルがあり、本町ではセントレジスが営業しています。そして上述のように、あべのハルカスへは大阪マリオット都ホテルが進出します。外資系ホテルはいずれも高級感を磨き、外国客をターゲットにしています。熾烈なサービス競争の幕が切って落とされました。
 相次ぐ新築のタワービルの建設は、関西経済の活性化につながるのでしょうか。活況は10年後も続いているか、周辺都市の地盤沈下が進まないか、今後の動向をよく観察してゆきたいと思っています。

様々な工夫を凝らす大学の学食

 定期試験が始まり2週間が経過しました。学生はすべての試験が終了し、これから待望の夏休みを迎えることになります。うらやましいかぎりです。一方私の採点は、まだまだゴールがみえません。枚数の多さに加え、たくさんの会合に出なければならず、100%採点に集中できなかったのも一因です。遅れを取り戻すべく、命懸けで毎日を過ごしているという感じです。
 さて少し前(7月5日)の『日本経済新聞』で、大学の学生食堂が様々な工夫を凝らしているという記事が載っていました。昔の学食は、低価格だけが魅力で、味はいまひとつという印象でしたが、今は相当高級化しているようです。例えば、インド人シェフによる本格カレーやイタリア人シェフが調理するこだわりパスタの店が大学内に進出しています。メニューも多彩になり、地元の食材を使った郷土料理や、本場の味が楽しめるようになっています。パンやコーヒーなどのありふれたメニューでも、焼きたてや専門店の豆からひいたものを出すことによって、ずいぶん人気が高まるそうです。さらに健康への配慮もなされていて、カロリーや塩分オーバーにならないようなメニューも登場しているといいます。
 学生が喜ぶ食堂の条件は、「きれい」、「楽しい」、「おしゃれ」だそうです。メニューのおいしさだけではなく、雰囲気をよくしたり、面白い企画を打ち出すことも学生を引きつける重要な要素になっています。そして学食に独自性を持たせ、他大学ではまねのできないサービスを提供している大学は、大学全体のイメージアップにも成功しています。
 話は変わりますが、先般の社会再生学会の会合のとき、病院の環境を快適にするためには、どのような改善が必要か議論したいというご意見が出ました。病院の最も重要な評価基準は、高度な医療技術を持ち、患者の病気を早く治せるかどうかですが、院内諸施設の環境の良し悪しも看過できないはずです。典型例は食堂です。単に食事をするだけなら、近隣のファミリーレストランで済ませても同じです。しかし安全・安心の食材を使った健康メニューを提供したり、栄養バランスのとれた食生活を学ぶセミナーを開催したりすれば、病院にふさわしい食堂になり、注目を浴びることになるでしょう。近いうちに是非アイディアを出し合ってみたいものです。

企業はどのような人材を求めているか (2)

 ちょっと嬉しいニュースですが、グーグルの検索用語の中に、「社会再生学会」が定着しているみたいです。ひらがなで「しゃかいさ」と入力しただけで、「社会再生学会」に変わったので驚きました。9月30日の2回目の会合に向けて着々と準備が進んでいるところですが、もう少しメンバーを増やしたいと思っています。
 さて昨日の続きです。学生時代の経験・実績のうち、高く評価できる項目は何かという質問に対しては「専門の勉強に打ち込んだ」が圧倒的に多く、「サークル・クラブ活動で実績を残した」、「語学力を高めた」と続きます。時折、「大学で学んだことなど、実社会では役立たない」という人がいますが、とんでもない誤解です。企業の採用者は、大学での学びを最も重視しているのです。アカデミックな訓練をせず、企業で活躍できるはずはありません。
 以上のほか、「物事に対して真剣に取り組んだ経験」、「目標達成のため困難を乗り越える経験をした」、「目標に向かって努力し、自己成長できていること」などが評価されます。
 我田引水になってしまいますが、経済学の学びを通じ、幅広い能力を磨くことができると思います。基本は現状分析で、日本経済・世界経済の実態はどのようになっているか、どんな問題を抱えているか、解決策は何かをしっかり説明できるようにします。
 その後、理論分野を鍛え、論理的思考力を養います。同時に計量分析も習得し、データを用いながら説得的に説明できるようトレーニングします。
 歴史や思想も大いに役立ちます。過去の出来事から教訓を導いたり、偉大な経済学者や大事業を成し遂げた企業家の生き方、考え方から様々なヒントを得ることができるからです。 
 きわめてシンプルなことですが、例えば経済学部生なら経済学といった具合に、自分の専攻分野の学びに全力を傾けるのが、最も効果的な就職対策です。自己アピールのうまさとか、プレゼンテーションの巧拙は、それほど重要な評価基準ではありません。

企業はどのような人材を求めているか (1)

 とにかく暑いですね。関東を中心に気温が上がり、群馬県館林市で39.2℃、同県伊勢崎市でも39.1℃を記録したそうです。ちょっと外を歩いただけでへとへとになってしまいます。
 さて私は採点にとりかかりました。経済と経済学の基礎は必修科目です。答案の厚みをこわごわはかってみたら、何と6cmもありました。700枚以上の採点は前途多難ですが、いずれしなければならない仕事です。覚悟を決めて、たとえ1枚でも前進するようがんばりたいと思います。
 7月16日の『日本経済新聞』に「人事トップが求める新卒イメージ調査」という記事があり、採用したい大学新卒者の人材像の具体的な項目が挙げられていました。記事によると、1位「コミュニケーション能力」、2位は「チャレンジ精神」、3位「主体性」、4位「行動力」となっています。簡単にまとめると、受け答えが的確にできて、どんなことにも前向きにチャレンジする姿勢が評価されるということでしょうか。
 学生時代、話せる能力を身につけておくのは、とても大切です。社内で企画を考えたり、取引先から仕事を獲得するには、対話を繰り返すことがきわめて重要だからです。ゼミで尋ねたとき「わかりません」とか「特にありません」としか答えられない学生は、企業が求めている人材とはいえません。
 またきちんと話せるためには、色々なことをよく知っていなければいけません。ホットな政治・経済・外交問題に関し、実態を把握し、自身の考えを述べられるよう準備しておく姿勢が求められています。
 「チャレンジ精神」は例えば講義で着席する位置からも判断できます。教室の前のほうがあいていても、最後列へ座る学生の心理はよく理解できません。教員の目の届かないところで、ほかごとをしたいのでしょう。筆記用具を手放さず、板書以外のことまでメモしている学生と、携帯電話片手に教室を出入りしたり、私語が多かったり、机に顔を伏せて寝ている学生では、歴然と差がつきます。人間性は日頃の態度の積み重ねで形成されるため、急に「企業が求める人材」に変身しようと思っても、絶対に無理です。

2012年度 経済と経済学の基礎Cと日本経済史Aの定期試験を行いました

 今日から定期試験期間に入りました。それにしても週が明けたとたん、酷暑がやってきました。学生たちは試験勉強、教員は採点と、普段よりはるかに無理をしなければいけない時期に、この厳しい暑さは堪えます。体調管理に要注意です。
 さて試験期間の初日ですが、早速担当科目で2つ試験を行いました。下記のような問題を出しました。両科目とも基本的なところを出題したつもりです。

【経済と経済学の基礎C】

【1】 封建制社会、絶対王政、市民革命をキーワードに、それぞれの時期の特徴を整理し、民主主義が定着するまでの過程を論じなさい。(10行程度) 20点
【2】 次の(1)、(2)の設問のどちらか一方を選択し、5行程度で述べなさい。 10点
(1) プロト工業化の展開過程について。
(2) 19世紀イギリスにおける鉄道の発展と、その経済的効果について。

【日本経済史A】

【1】 第一次世界大戦以降、昭和恐慌に至る時期の政治・経済・外交について、以下の設問に答えなさい。60点
(1) 第一次世界大戦の勃発により、日本経済の様相はそれ以前と大きく変わります。1914〜18年頃の経済状況について説明しなさい。20点
(2) 第一次世界大戦の勃発により、ヨーロッパ諸国が中国問題に介入する余裕がないことに乗じ、日本はどのような対中国政策をとりましたか。ヴェルサイユ条約締結頃までの状況を述べなさい。20点
(3) 第一次世界大戦ブームの崩壊により、日本経済は深刻な停滞期に突入します。昭和初期の金融恐慌、昭和恐慌に焦点を当て、景気悪化の要因を論じなさい。20点
【2】 次の(1)、(2)の問題のどちらか一方を選択し、解答しなさい。20点
(1) 東学党の乱から日清戦争開戦までの経過について論じなさい。
(2) 義和団事件から日露戦争開戦までの経過について論じなさい。
【3】 次の(1)、(2)の問題のどちらか一方を選択し、解答しなさい。20点
(1) 1897(明治30)年の金本位制の導入が日本経済に与えた影響について、貿易、為替レート、賃金・物価の動向に留意しつつ論じなさい。
(2) 明治後半期における重工業の形成について、特に鉄鋼業と造船業に焦点を当てて論じなさい。

2012年春学期の講義が終了しました

 今日で2012年春学期の講義が終了しました。いよいよ16日から定期試験が始まります。
 今学期は例年にないハードスケジュールで、月〜金まで休みなしでした。一番大変だったのは、経済と経済学の基礎Cで、1クラス9回の講義を週2回体制で行い、3クラス同じ内容を繰り返すというものです。ふだん15回で開講している経済史の講義を3分の2程度に圧縮し、前近代社会から近代社会への移行について取り上げました。クラスの規模が大きく、エネルギーの消耗の激しい講義で、研究室に戻ると完全にダウンしていました。解放されてほっとしています。
 日本経済史Aの講義は、月曜日5限の開講で、明治〜昭和初期の政治・経済・外交についてみてきました。豊かさ・幸福の観点から戦前の日本の歩みを振り返ると、経済面では順調に発展したけれども、民主主義を定着させるのに失敗し、軍部の台頭を阻止できず、太平洋戦争の敗戦という最悪の結末を迎えたというストーリーです。高等学校で十分日本史を学習しないまま大学へ入学してくる人が増えているようですが、私は、過去を厳しく見つめ直さずに、将来の展望は開けないと確信しています。その意味でこれからの時代を担う若者たちに、戦前の日本の歩みを伝えられたのはよかったと思っています。なお時間切れで太平洋戦争の経過をみることはできませんでしたので、秋学期にまわすつもりです。数名の学生は欠席ゼロ、最前列で熱心に聴講してくれました。社会再生学会にも入会し、これから一緒に活動してゆけるのが楽しみです。
 木曜日4限の「医療と経済」は大変充実していました。医療の最前線でご活躍の先生方に、医療崩壊、長寿と高齢化社会の問題、社会保障と税の一体改革など、重要課題について論じていただきました。プロ野球でいえばオールスターゲームのような豪華講師陣により、新しいタイプの講義を提案できたのではないかと思います。抽象的・理論的な内容ではなく、医療現場がどんな問題を抱え、どような解決策が求められているか、詳しく学べたのが収穫です。来年度以降もさらなる発展を目指したいところです。
 以上が今学期の講義科目に対するコメントです。いよいよ定期試験ですが、受講生のみなさんには、試験をプラス志向で乗り越えてほしいと思っています。そもそも試験の好きな人など誰もいません。しかし試験がなかったら、講義内容の定着率は格段に下がってしまいます。これまで学んできたことを真剣に復習し、体系的に頭に叩き込むのは意義深いことです。よく理解できたときの満足感、高得点をとったときの達成感は、平素の厳しいトレーニングを乗り越えてきた人だけが実感できるものだと思います。

社会再生学会 順調な船出 (2)

 今回の会合は、初回にもかかわらず5名もの方が報告を申し出てくれました。まず私がお願いしたのは、ニチレクの西村正美さんシニア自然大学の堤正克さんです。西村さんとは、昨年11月、私が関学食文化研究会で講演の機会をいただいたとき以来お世話になっています。何度も研究室を訪ねてくださり、この学会のコンセプトについて意見交換してきました。自己をよく見つめ直す、身体と精神の健康促進、幸福の政治・経済学など、今後私たちが取り組んでゆくべき指針を明確に示してくださいました。また堤さんとは、昨年度1年間、国土交通省近畿地方整備局のはなやか関西〜文化首都年〜「茶の文化」で、喫茶文化振興の仕事を進めてきました。せっかくできたはなやか関西〜文化首都年〜「茶の文化」の基盤を維持してゆくため、「茶の文化」連絡協議会の設立をご提案になり、近日中に発起人の会合を開催する予定です。社会再生学会のメンバーにはお茶の愛好者が多く、はなやか関西「茶の文化」連絡協議会と連携しながら、いくつかのイベントが開催できるのではと期待しています。
 コンセプトワークショップをコーディネートしてくださったのは、神戸市立神港高校の島田融先生です。最初にTEDX Osakaの橋本祐樹さんが、TED流のプレゼンテーションについて、お話ししてくださいました。スティーブ・ジョブズ氏のスピーチやプレゼンに重なりますが、わかりやすく、聞き手に感動を与えるような話し方をしなければいけないと痛感しました。さらに最新のITを駆使した情報発信の方法についても述べていただきました。私の滅法弱い分野ですが、「アラブの春」の原動力がソーシャルメディアであったことを思い出しながらお聞きしていました。
 有限会社JEC代表取締役の寺石章人さんは、聴覚から得る情報の影響力の大きさについて語ってくださいました。これまで私たちは視覚ばかりに注目してきましたが、音楽が販促やブランドづくりにつながるというお話は、新鮮味があって驚きでした。「音育」のご提案も、大変興味深いものでした。
 最後に島田先生はこの学会が目指す方向性について、明快に整理してくださいました。先生は、人間の創造性と自然の創造性に焦点を当て、「社会再生」にアプローチすべきであると主張されます。またよく考えてみると、現代社会の病理は、人と人、人と自然の関係性喪失にあるといっても過言ではありません。人間の絆を深め、環境と調和した経済発展についても意見交換してみたいところです。またこの学会の機能として、「学び」と「親睦・交流」を提案してくださいましたが、学会では、厳密でアカデミックな議論を行うのではなく、サロン風の楽しい学びの場を目指したいと考えています。先生の言葉を借りると、この学会は、「楽問」(=楽しく学問する)の場なのです。
 充実した5本の報告をお聞きした後、懇親会を行いました。お互いはじめてという方も多かったのですが、同じ思いを持って集まっていただいた方ばかりなので、すぐに打ち解けられました。次回研究会は、9月30日(日)の開催です。来年の今ごろ、1年を振り返ってみたとき、確かな手応えを感じられるようがんばりたいと思います。

社会再生学会 順調な船出 (1)

 本日午後、社会再生学会の第1回会合を行い、盛況のうちに終えることができました。当初は10名あまりの小さな会を想定していましたが、神戸市立神港高校の島田融先生が、直前まで多方面に声をかけてくださり、趣旨に賛同してくださる方が20名を超えたことを大変嬉しく思っています。
 社会再生学会の設立で、ようやく私が理想とする学びのスタイルが実現しそうです。それは、一般市民、学生、研究者が同じ場に集まって、細かい専門的な議論ではなく、幸福や社会再生につながるアイディアを出し合い、発信してゆくという構想です。やむをえないことですが、大学の講義は、人数が多すぎて、教員と学生の密なコミュニケーションはとれません。科目をしぶしぶ受講している学生も多く、学ぶ姿勢があまり伝わってこないことも事実です。また社会人の方にも、これまで総合コースの講義を受講していただきましたが、やはり「講義」の限界があり、十分な意見交換ができませんでした。そして学生と社会人の方の接点も少なかったように思います。同じ意識を持った一般市民、学生、研究者が一堂に会し、とことん徹底的に議論したり、親しく交流できる場をつくりたいとかねてから思っていました。今日その夢が現実になって、感慨一入です。
 会員になってくださった方からのご指摘もあったように、社会再生学会は会員の量的拡大を目指すのではなく、質の面で実績を重ねてゆきたいと思っています。もちろん趣旨に納得して入会してくださるのはありがたく大歓迎ですが、強引にメンバーを増やすつもりは毛頭ありません。それよりも会員相互の交流頻度を高め、社会に貢献できるような発信を行ったり、実践活動を活発化したいと願っています。以下でご紹介する5報告からも窺えるように、学会メンバーの発想や構想力には、目を見張るものがあります。こんな素晴らしいアイディアを、埋もれさせておいては勿体ないというのが率直な感想です。

社会再生学会 1

佐賀大学の山本長次先生が研究室を訪ねてくださいました (2)

 山本先生にいただいた2冊目の冊子は、『佐賀地域経済研究会 地域課題調査報告書』(第3号)で、具体的なタイトルは、『温泉・食・文化を併せ持つ観光地の構築』です。佐賀大学経済学部の先生方が様々な視点で嬉野市の観光促進について分析・提案されています。その中で山本先生の論稿のテーマは、「嬉野茶を活かした温泉観光」です。問題意識はきわめて明確で、観光市場が飽和化する中で、嬉野は他の観光地にはない魅力をどのようにアピールし差別化をはかってゆくべきかについて論じられています。その基本コンセプトは、温泉と茶を組み合わせ、嬉野ならではの素晴らしさをアピールすることです。
 ここで論稿の内容についてご紹介します。最初先生はリクルート社の『じゃらん』のアンケート調査をもとに、嬉野温泉の認知度について述べておられます。私はこのような調査が行われていることを知りませんでしたが、最新版は下記のリンクのとおりになっています。ベスト3は、箱根、由布院、草津となっています。嬉野は第31位。今後の目標は、観光客の心を引きつけるような仕掛けを色々と工夫し、順位をあげてゆくことです。
 続く第2節では、嬉野温泉の歴史がコンパクトに整理されています。私が特に注目したのは、江戸時代です。興味深いことに、ケンペル、ツュンベルク、シーボルトら日本を訪れた外国人が日記などで嬉野温泉を取り上げています。彼らは日本史の教科書の「洋学の発達」のところで登場する有名人ですから、十分話題性があります。さらに嬉野は長崎街道の宿場町であったことも看過できません。長崎街道は、幕府のある江戸と外交の窓口・長崎とを結ぶ重要な街道で、多様な商品・技術・文化が行き交ったと考えられます。歴史面では他の温泉地とは比較にならいほどセールスポイントを備えており、この点を粘り強くPRしてゆくべきだと考えています。
 最後の第3節では、「うれしの茶ミット」など茶を題材にしたイベントについて紹介されています。新茶をふるまったり、釜炒りや手揉みの実演や体験、物品の販売など、盛りだくさんの内容です。イベントの特徴は、主催者(お茶関係者)と消費者が直接出会い、双方向のコミュニケーションが成立ことです。イベントでは来場者が直接モノやコトにふれることができ、感動、喜び、新たな発見のチャンスが提供できます。来場者の反応をよく観察しながら、来年もまた参加したいと思ってもらえるよう仕掛けを工夫することが大切だと思います。
 大変嬉しかったのは、山本先生はこの論文を作成する際、昨年佐賀大学にお招きいただいたときの講演資料や、このブログの記事を参照してくださったことです。大きな励みとなり、嬉野活性化のために一層がんばらなければと、決意を新たにしました。

『じゃらん』人気温泉ランキング2012

佐賀大学の山本長次先生が研究室を訪ねてくださいました (1)

 昨日、今日と2日間にわたり、佐賀大学の山本長次先生が研究室を訪ねてくださいました。山本先生には今年1月、佐賀大学にお招きいただき、「佐賀県の茶業史と茶文化」というテーマで講演の機会をお授けくださいました。嬉野茶業の熱心な担い手のみなさんもたくさんご紹介くださり、楽しく有意義な2日間を過ごさせていただきました。(詳しくは、1月17日〜22日の記事をご参照ください。)山本先生とはそれ以来お目にかかっていませんでしたが、このたび関学で先生の関係されている学会が開催されたので、お忙しい中時間をつくり、研究室へ立ち寄ってくださいました。ちょうど半年ぶりの再会になります。
 久しぶりだったので余計ということもありますが、そうでなくても山本先生とはいくらでも話したい話題があります。特に嬉野を中心とした地域活性化に精力的に取り組んでいらっしゃり、数々の興味深いお話しをお伺いできるのです。また佐賀大学経済学部の就職委員長を務めていらっしゃることもあり、企業との幅広いネットワークもお持ちです。色々な企業の方とお話しになったときのエピソードをお聞きするのも、大変有意義でした。
 さて今回山本先生に2冊の充実した内容の冊子を頂戴しました。佐賀大学経済学部地域経済研究センターが発行している報告書です。1冊目は、『佐賀地域経済研究会報告書』(第13号)です。1月、佐賀へお邪魔したとき大変お世話になった元佐賀県茶業試験場場長・村岡実さんの講演記録「佐賀の茶 −現状と課題−」は、大変興味深い内容でした。茶のフードシステム、様々な用途について説明された後、佐賀の茶業の推移・実態・将来展望をデータに基づいて鮮やかに分析されていました。またお茶を単なる飲料と考えるのではなく、コミュニケーションや絆を深める手段として位置づけていらっしゃることに深い共感を覚えました。そして講演は次のように締めくくられています。
 「現在も生産や流通販売などの業種ごとの組織はありますが、生産者から流通業者、消費者、文化団体まで包括した、お茶を共通項とした集まり、組織は今のところできていないように思います。そこで、従来の業種ごとの縦割り的な、たこつぼ的組織ではなくて、消費者も加わった佐賀県茶業振興協議会(仮称)を設立し、ここを拠点としていろんな関係団体との連携を進めてゆくことが特に重要と考えています」
 素晴らしい提言です。私は佐賀県茶業振興協議会の使命は、文化としてのお茶の振興、産業としての茶業の活性化、研究発表の場の提供、会員相互の親睦促進などだと考えています。村岡さんの主宰されている「脊振山茶談義」をベースに発展させてゆくのが一番手堅い方法だと思います。今学期は講義負担が多く、なかなか参加できませんが、時間ができれば積極的に関わってゆくつもりです。

社会再生学会の打ち合わせ

 このブログでも何度か取り上げてきましたが、近々社会再生学会をスタートさせる予定です。賛同してくださる方がどの程度集まるか、全く見通しが立っていませんし、運営方法も手探りで決めてゆかなければなりません。色々不安もありますが、まずはふだんよく接している気心の知れた方にメンバーになってもらい、実現可能性の高いことから始めてゆこうと思っています。
 そうした折、神戸市立神港高校の島田融先生と、そのお知り合いでTEDX Osaka を運営されている橋本祐樹さんが研究室を訪ね、この学会の活動が順調に進むよう、素晴らしいアイディアを提案してくださいました。
 島田先生の構想は、社会再生を人々の絆の再生によって実現しようというものです。したがってこの学会が果たすべき役割は、参加メンバーの学際的コミュニケーションを充実させ、「心豊かな絆」を創造することだと提案してくださいました。表現は違いますが、ニチレクの西村正美さんに出していただいたアイディアとも重なります。(4月22日の記事をご参照ください。)この学会に求められていることは何か、目指すべき方向性はだいぶ固まってきたように思います。そして具体的なテーマとして、茶育・音育、医療問題を挙げてくださいました。確かにこのテーマなら、企画の準備も始めやすそうです。
 上記のような島田先生のご提案を具体化するとき、まずは身内だけの小規模な会合を重ねてゆくことが大切だと考えています。しかし活動が軌道に乗ってくれば、もっと大きな規模でイベントを開催できればそれにこしたことはありません。そこで橋本さんに色々とご支援をいただくはこびになりました。
 さてTED(Technology Entertainment Design)というのは、アメリカのカリフォルニア州モントレーで講演会を主催しているグループのことです。TEDが主催している講演会をTED Conferenceといって、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の関係者がプレゼンテーションを行っています。このTEDの精神で世界各都市に多くのコミュニティができているそうですが、大阪を中心としたコミュニティを統括されているのが橋本さんです。橋本さんはTEDX Osaka の盛大なイベントを成功させた実績をお持ちですので、社会再生学会に関与していただけるのは、大変ありがたいことです。
 社会再生学会は、学術的な議論を深めるところではありません。それよりも、会合や活動の参加者の心を豊かにする場を提供したいと考えています。7月8日(日)の午後、初回の会合を開きます。学会の趣旨に賛同してくださる方は、是非声をかけてください。

「経済学の常識を再考する」 (2012 チャペルトーク)

 今週は綱渡りの毎日が続いています。火曜日は神港高校で授業、そして今日はチャペルトーク、あさって日曜日には東南アジア学会で報告です。講義がない時期でもこれだけイベントが重なると大変なのに、結構多くのコマ数をこなしながらの原稿作成は非常に堪えます。特に今日のチャペルトークはどんな話をしようか悩みに悩み、わずか3,000字の原稿が完成したのは朝7時でした。2時間余りの睡眠で本番に臨みました。テーマは、「経済学の常識を再考する」としました。
 具体的な内容は、パナソニックやソニー、シャープなど、素晴らしい製品開発力を備え、日本経済を牽引してきた企業が何千億という巨額の赤字を計上しなければならい経済環境の変化に大きな衝撃を受けたというものです。そこで今日のチャペルでは、企業の行動原則と市場第一主義について再考しなければならないのではという私の思いを述べてみました。
 企業の行動原則は教科書的には、競争に打ち勝つこと、あるいは利益を追求し、株主価値を最大にすることです。しかし順調な経済成長が望めなくなり、アジア勢との競争が熾烈を極めている昨今、この行動原則は考え直す必要があると感じています。まず参考になるのは利益追求と道徳の合一を説いた渋沢栄一の経済思想です。利は「自己のみに偏せず、公利を害せぬやうに心掛け、道理に照らし義に従うて事を行へば他より怨(うら)まるるはずなし」と道徳に基づいた経済活動を説いています。しかし今の経営者はわれ勝ちに自社の利益を得ることだけに汲々とし、社会全体はどうなってもよいと思っていないでしょうか。「私利を追わず公益を図る」が本来の企業の存在価値です。
 またハーバード白熱講義で有名なサンデル教授も、最近の『日本経済新聞』に「市場第一主義と決別を」というコラムを掲載していました。市場主義の議論からは、生きる価値や社会の共通善、正しい社会、よき社会とは何かといった課題への解答は得られません。家族やコミュニティで確かな絆を感じ、相互に責任を持てる社会はどうあるべきかといった問題は、経済成長や市場主義の徹底などで解決することはできないのです。
 私は経済学を学ぶ究極の目的は、幸福が感じられるような社会をつくることだと思っていますが、そこには経済理論だけではなく、道徳的・宗教的信念が必要だと考えています。家計・企業・政府の最適化行動の条件を数式的に導くだけでは無味乾燥です。それよりも、哲学的な基盤の上で議論してみる必要があるのではないでしょうか。私たちひとりひとりが善き社会とは何かを構想し、健全な議論に根差した言説を形成してゆくことが大切だと思っています。またこういったテーマに対し、しっかりした見解を述べられる点で、「関学生らしさ」を発揮してほしいと願っています。
 聞き手は舟木先生ひとりだけと覚悟してゆきましたが、40名くらいの学生が来てくれました。そして最後に大きな拍手をいただきました。拙い話を熱心に聞いてくださった参加者のみなさんには、感謝の気持ちでいっぱいです。

大学の新しい取組

 来週9日からいよいよ講義開始です。担当科目をどんな学生が受講してくれるのか、期待と不安が錯綜しています。1コマ90分の講義15回分を体系的にわかりやすく組み立てるのがまず第一の目標です。そのためには、多くの文献に目を通し、説明のしかたを練り、きちんと準備した上で教室に向かわなければなりません。新聞記事検索システムを利用したホットなトピックスのチェックも欠かせません。
 春休み期間中も新聞記事の整理は怠らないようにしてきました。政治・経済問題に加え、大学教育にまつわる記事も多く目にとまりましたので、今日はそのコメントをしたいと思います。興味深かったのは、『日本経済新聞』に3月27日から30日まで連載された「挑戦 静岡の大学」です。学生の就職難や少子化による入学希望者の確保の難しさなど、大学を取り巻く環境は年ごとに厳しくなっていますが、その克服のため、各大学がどのような取組を行っているかというレポートです。
 このレポートで強烈に印象づけられたのは、大学の存在価値が根本から問われているということです。すなわち、今後大学が生き残ってゆくためには、研究と教育さえ行っていればよいわけではなく、産学連携地域に根差した試みが不可欠であると述べられていました。全く同感です。私はみなさんに協力を呼びかけている社会再生学会をそのような場にしたいと意気込んでいます。主役はもちろん現役の学生ですが、そこに一般市民のみなさんや企業や役所にお勤めの方、高校生たちも加われば、どれほど活気が出るでしょうか。また「はなやか関西」の事業継続は、重要な産学連携です。論文の数を増やすために細かい研究テーマに深入りするよりは、楽しく学べる場を提供することに力を注ぎたいと考えています。このような構想は、この記事に出会う前から親しい方たちにお伝えし、協力体制も整ってきています。ねばり強くがんばりたいと思っています。
 いまひとつ看過できないのは、就職活動を有利に進めるのに相当なエネルギーを割いている点です。企業が採用時に重視する学生の資質・能力は、「明るさ・元気」「一般常識・マナー」「協調性」「挑戦意欲」などです。これらをきちんと身につけさせるためのカリキュラムが整えられ、教職員・学生が一丸となって様々な取組を行っているそうです。大学は学問を教えるところで、〜論といった専門科目のメニューさえそろっていればよいというのは、時代遅れの発想です。関学生もこうした訓練を受けた他大学の学生と競争しなければならないので、少人数のクラスでは、就職を意識した対策も行わなければならないと痛感しています。
 いよいよ2012年度が本格的に動き出しましたけれども、今年度がいつもと異なるのは、学内・学外の同じ志を持った方たちのお力添えもあり、新しい大学生活のスタイルができつつあることです。はじめから派手に大規模に活動するのは無理ですが、ミニ企画をコンスタントに継続することからやってみたいと思います。みなさんのご支援、よろしくお願いいたします。

暴風雨の中の入学式

 今日は午後から関西学院大学経済学部の入学式でした。750名近くの新入生を迎えることになったと聞いています。前日の天気予報で覚悟はしていましたが、大型台風並みの暴風雨で、外を歩くのが大変でした。新入生のみなさんも、たくさんの配付物を抱え、傘をさして方々の会場へ移動するのは、さぞかし苦労したと思います。
 今年度私は久しぶりで1年生のゼミ(基礎演習)を担当することになりました。学生カードをみると、今年の新入生は1992〜93年の生まれで、親子ほどの年齢差があることに気づき驚きました。学生との年齢差は、勤め始めた頃は10歳程度であったのに、現在では25歳くらいに拡大してしまいました。好み、考え方、ライフスタイルなど、どこまで理解できるのか不安な気持ちです。
 さて基礎演習(12組)の授業は毎週火曜日の5限目に行うことになっています。早速10日から始まりますが、4年間の大学生活を有意義に過ごすための方向性をきちんと示すのが、このクラスの最大の使命と考えています。いつも強調していますが、経済学部で学ぶ究極の目的は、自分自身の未来予想図を確実に描き、幸福な生き方をさぐること、もう少し範囲を広げると、経済・社会の問題点をしっかり洗い出し、解決の方策を提案できるようにすることです。卒業の際、自分が最も力を発揮できる仕事が発見できなかったり、十分な検討もせず、行き当たりばったりで進路を決めるのはよくありません。また、新聞やニュースで頻繁に議論されている重要なトピックスについて、何もコメントできなかったとしたら、経済学部に在籍する意味はないと思います。
 30名のメンバー全員が、ひとりひとりの持ち味を生かし、大きな付加価値をつけて卒業し、社会で活躍してほしいと願っています。基礎演習の目的はその第一歩を踏み出すことであり、1年間の授業を通して将来の道筋がはっきり見えてくるよう、クラスの運営を工夫するつもりです。

「日常の〈ことば〉から見えてくる韓国の人びと」 (柳圭相先生講演会を開催)

 今年は閏年で、2月29日まであり1日だけ得をしました。講演も終わり、「はなやか関西」の意見交換会も無事終了し、ほっとしていますが、今日はコーディネーターとしての役割を果たす日で、柳圭相先生に「日常の〈ことば〉から見えてくる韓国の人びと」というテーマでご講演いただきました。 
 私は韓国語や韓国の文化について、ほとんど知りませんでしたが、今回柳先生のお話をお聞きして、たくさんのことを学ばせていただきました。キーワードとなったのは、「ウリ」です。辞書的には、〇笋燭繊我々、∋笋燭舛痢我々の、わが、うちの という意味です。しかし「ウリ」の中には、辞書的な意味を超えた、仲間意識とか愛情がこめられているそうです。この点について、親族呼称、コマーシャル、商品のネーミングなど、多様な切り口から分析していただきました。
 「ウリ」という言葉から、韓国の社会構造や韓国人の国民性を窺うことができます。すなわち、‐錣暴乎弔琉谿としての立ち位置や行動規範が問われる、厳格な上下関係があり、守らなければならない暗黙のルールが存在する、8い情や絆で結ばれ、助け合う、しかしそれによって、じ朕佑琉媚屬篌由が制限されることもあるという特徴が浮かび上がってきます。
 本当の国際理解とは、単に言葉を使えるようになるだけではなく、今日の柳先生のお話のように、「人間関係の感覚」にまで踏み込むことだと思いました。しかしこのような奥深い知見は、旅行で数回訪れたくらいでは得られないでしょう。柳先生のご研鑽の結晶である成果を、わかりやすい言葉で丁寧に解説していただいたからこそ理解できたことです。濃密で充実した講演会を開くことができ、嬉しく思っています。

2012年度の講義準備

 入試期間が終わり、キャンパスはふだんの状態に戻りました。推薦入試などですでに合格の決まっている人もいますが、一般入試はこれから合格発表が始まります。来年度は1年生向きの講義も担当するため、新入生との出会いが楽しみです。
 どこの大学でもそうだと思いますが、新入生は3タイプに分かれます。まずは関学に憧れ、第一志望で合格した人、二番目は同レベルの大学に合格しており、関学に強いこだわりもないが、家から近いなどの理由で何となく入学を決めた人、そして最後に、他大学が第一志望だったけれども不合格となり、浪人もしたくないのでしぶしぶ入学する人という3パターンです。一番目の人が多いことを願っていますが、現実には、二番目、三番目の人も相当数いるのを念頭に置かなければいけません。それからたとえ第一志望でも、入学の決め手が「キャンパスの景観がきれいだから」だけでは困ります。
 新入生を迎える大学にとって、とりわけ重要な使命は、多様なバックグランドを持つすべての入学者に、大学で学ぶ意義をしっかり理解させ、4年間真剣に学業に励み、将来社会で貢献するための土台を築けるよう方向性を示すことだと考えます。
 約700名の新入生のうち、私が直接に接することができるのは、ゼミ(基礎演習)を担当するわずか25名前後にすぎません。しかしごく一部の学生に対してだけでも、「大学で学ぶことの意味」を徹底させなければと思っています。
 最近学生と話したり答案・レポートを見て感じるのは、筋道を立てて論理的に議論する能力の欠如です。インターネットからの切り貼りが常態化しているため、他人の文章の寄せ集めのぎこちないレポートをよく見かけます。自分の頭で構成を考え、読み手が理解しやすい丁寧な文章を書く訓練がほとんどできていないようです。これを改善しなければいけません。
 次に重視したいのは判断力です。例えば「いかに景気を回復させるか」というテーマに取り組む場合、財政政策を優先するのか。金融政策に期待をかけるのか、新しい産業を振興するのか様々な方策があります。判断力とは、先を読みながら、いくつかの選択肢の中から最適のものを選ぶ能力だといえます。私たちの日常生活や仕事の中でも絶えず判断力が求められ、極端な場合、人生を左右することになるかも知れません。経済問題の中には、判断力を磨くのに適したものがたくさんあります。適当なテーマをさがし、色々な考え方を提示し、どれを選択すればよいか意見交換できるような準備を整えているところです。
 最後に関西学院大学のスクール・モットー“Mastery for Service ”を浸透させることも忘れてはいけません。具体的には、大学生活の中に、命への尊厳、他者への思いやり、感動する心など、人間性を豊かにする要素を取り入れることです。これについては、歴史や文化の研究を通じて出会った人物の生き方や考え方、平素よくお会いしたり連絡をとり合っているみなさんのご活躍や心打たれるエピソードをなるべくたくさん紹介できればと思っています。

2011年度 兵庫医療大学 「経済学」最終試験を行いました

 17日の佐賀大学での講演資料、何とか準備が整い、お送りしました。11日の午前中から、今日の昼頃まで、一度も目をつむることなく原稿を作成し、やっと出来上がった次第です。昨年10月30日のブログで、萬福寺の魚梆(かいばん)の写真を掲載し、気合いを入れたつもりですが、24時間以上目をあけているのは、並大抵のことではありません。時間が不足して追い詰められてくるといつも、1日中目をあけていられる魚になりたいという気持ちに駆られます。
 2時間ほどうつらうつら眠った後、兵庫医療大へ向かい、経済学の最終試験を行いました。下記のような問題を出しました。合格は100点のみ、99点以下は不合格・再履修と脅すと、「え〜っ、どうしよう」と言って、一応怖がるジェスチャーはしてくれました。その後、「世界中のエライ経済学者が解決できない問題を、私たちにわかるわけないやん、難しすぎるわ!」と言われ、ギクッとなりました。「難しい問題に取り組むのが経済学や!」と答えておきましたが、なかなか鋭い指摘です。冷静に考えてみると、今の日本経済、世界経済が抱えている課題は、深刻で解決の見通しが立たないものばかりです。しかしだからこそ、やりがいがある研究分野ともいえます。
 全体的に、比較的よくできているのではないかと期待しています。

【1】 2011年7−9月期のGDP速報に基づき、需要項目別に動向を述べ、景気の現状がどのようになっているか説明しなさい。また長期低迷が続く日本経済再生のため、どのような産業を振興すべきか、理由も添えて論じなさい。 30点

【2】 ヨーロッパの政府債務危機について、次の問に答えなさい。 計35点

(1) 危機の震源地となったのはギリシャです。ギリシャ経済はどのような問題を抱え、それがどのような形で表面化したか説明しなさい。 15点

(2) ヨーロッパの銀行は資本不足に陥り、自己資本比率が低下しています。そこで自己資本比率を改善するための対策がとられていますが、うまくゆきそうにありません。自己資本比率の定義式から出発し、自己資本比率を高めるために行われる対策の内容と問題点について論じなさい。 20点

【3】 社会保障と税の一体改革について、次の問に答えなさい。 計35点

(1) 社会保障と税の一体改革が今なぜこれほど大きくクローズアップされているのか、詳しく説明しなさい。 20点

(2) 税収のアップはどのような形で実現させればよいと思いますか。あなたの意見を理由を添えて述べなさい。 15点

2012年入試の傾向(2)

 今日から関学の講義も始まり、キャンパスが賑やかになりました。とはいえ講義期間は1週間ほどで、今月半ばにはもう定期試験期間を迎えます。以前書いたかも知れませんが、大学の定期試験は平素の普通の勉強で80点以上はとれるはずです。何といっても範囲が狭く、90分講義15回分から出題されるに決まっているからです。たいていの先生は、どんな問題を出すか、事前に教えてくれるでしょう。定期試験は「注意深く講義を聞いていたかどうかの確認」という性格が強く、解答も記述式が主流なので、書き方にもある程度の幅が認められます。それに引き換え入試は、範囲が広いばかりではなく、紛らわしい選択肢の中からひとつだけ正解を選ばねばなりません。問題自体も素直とはいえず、クセがあって、なかなか取り組みにくいものです。出題者の仕掛けた落とし穴にはまらないように、慎重に慎重に解いてゆかねばならないため、神経をすり減らします。ちょっとした思い違いが命取りになり、1年を棒に振らなければならない人も出てくるのが、入試の怖いところです。一方大学の試験(研究発表の論文なども含めて)も、正確な知識と理路整然とした文章力が求められますが、与えられたテーマに対し、色々な議論の進め方があるし、出題者の心理の裏の裏まで読み取る必要はありません。入試で要請されるのは独特の特殊能力で、オーソドックスなものではないと感じています。
 さて昨日の話の続きですが、経済学部が精彩を欠いている理由は、経済学部の出身者が職場においてプロフェッショナル性を発揮できていない点にあるのではないかと思います。プロフェッショナル性とは、目に見える資格を言うのではなく、例えば『日本経済新聞』の記事を同僚に明快に説明できるとか、企業・産業の動向に精通しているとか、データ分析の優れた能力を持っているとかいった感じです。ようするに、他学部出身者とは明らかに違う、経済分析面でのキラリと光る才能を示しきれていないのが原因だろうという気がします。
 きわめて当然のことですが、経済学部の人気を回復させるには、4年間の学部教育の中で、経済分析ができる人材を育て、世の中に送り出すことが一番重要です。2010年8月28日に紹介した井上ひさしさんの名言の再引用になりますが、「(経済について)むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでもゆかいに」語れることが、経済問題のプロフェッショナルの条件であり、そういう人が活躍してこそ、経済学部の存在価値を認識してもらえるのではないかと考えました。関学経済学部で学んでいる学生には、特にがんばってほしいと思います。

2012年入試の傾向(1)

 関学よりひと足早く、兵庫医療大の講義が再開され、神戸へ出かけました。今年の初外出です。医療大の講義は今日が最後で、次回最終試験を行って全日程が終了です。持ち込みOKで、出題範囲も明確にしてありますので、受講生のみなさんは万全の準備で臨み、高得点をとってください。
 秋学期の講義が終わると、間もなく入試シーズンを迎えます。定期試験はどんな問題が出るか予想がつきますが、入試は広い範囲のどこから出題されるか全くわからないため、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。私はいつもこの時期になると、自分の受験生時代を思い出します。入試会場の何ともいえない重苦しい雰囲気が頭をよぎり、ゾクッとなります。すでに時効が成立しているので告白しますが、関学経済学部の入試、散々でした。英語も国語の現代文も古文も何が書いてあるかさっぱりわからず、落胆して帰ったのを覚えています。唯一、日本史だけ手応えがありました。それでも、英語と国語のできの悪さから考えると不合格は当然と覚悟していましたので、合格通知が届いたときは信じられず、飛び上がって喜びました。ただ未だに合格水準の正解を導けたという感覚はなく、マークシートの読み取り機が奇跡を起こしてくれたと解釈する以外、説明のしようがありません。25年あまり前の失態を暴露するような恥ずかしい話しなので、このエピソードは誰にも言わず、秘密にしてきました。
 さて4日付の『日本経済新聞』に今春の入試の傾向が載っていました。大学生の就職難を受け、理系学部や資格取得・職業との結びつきが強い学部の人気が高まっているそうです。特に看護と保健系の大学・学部は軒並み10〜22%増と人気が高いらしく、兵庫医療大の学生は先が楽しみです。その一方で法・経済など、文系学部の人気は低迷しているということです。関学はどうなるのでしょうか。逆境にあっても、何とか踏ん張らなければいけません。
 経済学部の魅力が低下傾向にあるのは残念です。景気対策、社会保障と税の一体改革、TPP参加の是非、超円高、ヨーロッパの政府債務危機等々、毎日のように新聞・ニュースのトップで取り上げられているテーマは経済問題といっても過言ではありません。これらの課題の検討はすべて、幸福で豊かな社会を構築するために、何をどう改めてゆけばよいかを考えることにつながり、経済学部の使命だとも思うのですが、受験生にあまり理解されていないような気がします。

2013年春に卒業する大学生の就職活動がスタート

 再来年春卒業する大学生の就職活動がいよいよスタートしました。経団連は倫理憲章を見直し、これまで10月に始まっていた採用のための広報活動を12月以降に行うよう改めたため、2ヶ月遅い開始です。なお面接や試験などの選考は、来年4月より実施されるので従来と変わりません。
 大学生は本来4年間、しっかり勉強してから社会に出てほしいと思っていますが、3年生の秋学期から4年生の秋学期までまる1年会社説明会に費やし、やっと決まったところは不本意な企業で、卒論作成にも力が入らないという学生もしばしば見受けます。実際、4年間のうち2年半しか大学生らしく過ごせていない学生が結構多いのではないでしょうか。
 就職活動中の学生をみながら感じるのは、名前の通った大企業志向が強すぎることです。自動車や家電、食品や流通などの分野の企業はよく知っていますが、機械、化学、電子部品など、生活と直結していない企業は最初から候補に入っていません。知名度が低くても素晴らしい技術やノウハウを持った企業はたくさんあり、これらを第一志望とする学生が増えれば、特定の業種、企業に応募者が殺到するのを軽減できるのではないかと考えます。私の接する学生には、「就職活動は入学式の翌日から始まる」と過激な発言を繰り返していますが、新聞記事検索システムで、企業・業界研究を重ねることにより、選択肢が広がり、好条件でやりがいを感じて働ける企業と出会えると確信しています。早い時期からの情報収集は、最も成功確率の高い就職対策といえます。
 企業に対して注文したいのは、出身大学や年齢ばかりではなく、多様な選抜方式や評価基準を設けてほしいということです。特に時期が問題で、「新卒一括採用」で4〜5月に選考が集中し、そこで内定をもらえないと、以後チャンスが激減してしまいます。なかなか内定がとれず、就職活動が長期化すると、学業がおろそかになり、自分に自信が持てなくなってしまいます。そういう学生が増えるのは、好ましくありません。大学は一般入試だけではなく、指定校推薦やAO入試など、色々なタイプの入試を実施し、持ち味のある学生を集める努力をしています。企業には思い切った改革を決断してもらいたいです。
 私のゼミ生も期待と不安を交錯させながら「就活」に臨みます。よい結果を出してほしいと願うばかりです。安易に妥協せず、自身がやりがいを感じる仕事、社会に貢献できる仕事を見つけてもらいたいと思います。

IT技術の使いこなし方

 今日29日付の『日本経済新聞』(電子版)をチェックしていると、IT(情報技術)に関する教員の指導力と学校インフラの充実度で全国トップの自治体は、私の郷里、三重県伊賀市であるという記事が目にとまりました。私は中学卒業まで伊賀市で過ごし、高等学校は愛知県江南市の滝高校に通い、1986年4月の関西学院大学入学後、ずっと西宮市で生活しています。西宮生活が定着してからも、たまに帰省していますが、伊賀市の特徴は、昔と変わらず伊賀忍者、伊賀焼、松尾芭蕉に象徴される「歴史の街」であって、近代的なITが充実した街というイメージは、全く持っていませんでした。それだけに今回の記事はとても意外に感じました。
 IT分野、私が最も苦手とするところですが、IT日本一の自治体出身の研究者として、このままでは恥ずかしいと痛切に思いました。そこで私なりのIT活用について、決意表明を行います。
 まず私が一番使いそうなシーンは、経済データの分析です。景気関連の諸指標、食や農に関するデータを中心に、様々な角度から計量分析を試みたいと思っています。分析手法ももっと覚えなければいけませんし、それに応じたソフトウエアの操作にも精通する必要があります。さらにグラフ作成機能なども使いこなせると、説得力あるプレゼンテーションが行えるだろうと思います。かなり時間がかかりそうですが、計量分析の技を少しずつ磨いてゆくつもりです。
 2番目の目標は、映像処理をうまくできるようになることです。お茶の文化史をテーマにした講演を行う際は、なるべく図録からとった画像を見ていただくようにしています。図録をコピーして編集し、パワーポイントに移す操作、苦労してやっとできるようになったのですが、なかなかスムーズにはゆきません。スピードアップをはかるとともに。お気に入りの作品を集め、パソコン上に「映像資料館」をつくるのが、ささやかな抱負です。
 最後に多少自信を持っているのは、新聞記事検索システムの活用です。これは私の研究生活の命綱で、講演・講義の準備には不可欠です。キーワードを入力し、情報量豊富な読み応えのある記事をさがす作業は、回を重ねるごとに上手になってきました。関学の恵まれた環境に感謝しています。身近に接する学生にはいつもすすめていますが、新聞記事検索システムを十分活用できるか否かで、学生生活の充実度が変わるといっても過言ではありません。
 IT技術は、買物やチケットの予約など、より便利で快適な生活を送ることに貢献しています。例えばコンビニにある端末(Loppi)を、若者が手慣れた感じで操作しているのをいつも遠目でうらやましく見ています。しかしあの機械で何をやっているのか、見当もつきません。病院でのお金の支払いも機械化されました。対面で行うよりスピーディーで、おつりの間違いなどもないのがメリットなのでしょうか。しかし私はずいぶん戸惑いました。
 IT技術が発展し、複雑なデータ処理を手軽にできるようになったのはありがたいのですが、今まで人間に話しかけて行っていた支払いや予約を機械操作でしなければいけないことには違和感を覚えます。一概には言えませんが、高齢者を中心に、IT機器と接する機会の少ない世代にとっては、逆に生活しにくい世の中になっているようにも感じます。IT技術が進展すればするほど、それを使いこなせる者と使いこなせない者の間で格差が生じます。このデジタルデバイド問題への対応も、絶えず念頭に置かなければいけないと思います。

今年も卒業論文作成のシーズンです

 関学の秋学期の講義も今日から始まりました。講演準備に追われて連日忙しく、だいぶ不規則な生活スタイルになってしまいましたが、今日から講義があることを前提として、軌道修正しなければいけません。とはいえ、来月も2つ講演があり、試練はまだまだ続きます。10月5日(水)は、尼崎市立立花公民館の「ひかり学級」で、「3・11以降、どうなる私たちのくらし」と題した講演、ほぼ1週間間隔をおいて、10月13日(木)は、尼崎市立大庄公民館の地域・現代学講座において、「これからどうなる日本の食料と農業」というタイトルでお話しすることになっています。主催者や、わざわざ聞きにきてくださる聴衆のことを考えると、手抜きは許されず、ギリギリまで粘ってわかりやすく説得力のある筋書を考えなければいけません。しかしそれが簡単ではなく、いつも悩んでいます。
 さて関学では、毎週火曜日の5限は研究演習兇魍講しています。4年生の秋学期は、何といっても卒業論文の作成がメインになります。私は卒業論文を、4年間の経済学の学びの集大成と位置付けています。作成に当たってまず考えなければいけないのは、テーマです。そしてテーマ選定の際に大切なのは、強い動機を持っていることだろうと思います。例えば私が喫茶文化振興や、お茶のフードシステムを研究しているのは、喫茶文化の素晴らしさを多くの人に伝え、リーフ緑茶離れを食い止めたい、茶業界を何とか活性化したいという気持ちからです。政治・経済や日本史の研究目的は、日本の経済・社会が抱える問題をしっかり認識し、問題解決の方向を学生や一般市民のみなさんと議論したいと思うからです。
 よい論文を完成させるには、調べるテーマに対して、情熱を持つことが大切だと強調しました。情熱があれば、研究はスムーズに進むものです。もちろん経済学部の論文ですから、経済理論的分析、データを用いた実証分析、史料を駆使した歴史分析が要請されるのは言うまでもありません。
 論文をまとめるのはエネルギーのいる仕事です。1冊でも多くの文献を読み、理路整然としたストーリーを組み立て、詳細な分析を行い、説得的な結論を導くという流れが理想ですが、なかなか思うようにゆかないのが普通です。多少ぎこちなくても、時間をかけてよく調べたことが伝わってくる論文、インターネットや誰かの本のまる写しではなく、自分のことばで訴えようという気持ちがあらわれている論文に期待しています。ひとりひとりのゼミ生の顔を思い浮かべながら、どんなよい論文を完成させてくれるか楽しみにしています。

2011年度 兵庫医療大の講義が始まりました

 関学の秋学期開始よりひと足早く、今日から兵庫医療大で経済学の講義が始まりました。スタートは午後5時で90分授業。今のうちはいいのですが、冬至あたりになると、開始から真っ暗です。それでも、週1回神戸の空気を吸えるのは嬉しいことです。また7月から市立中央病院が移転したそうで、最寄駅の駅名が「市民病院前」から「港島」に変わっていました。旧病院のがらんとした大きな建物が残っていて、駅前の人通りがだいぶ少なくなっています。
 初回の講義ですからなぜ経済学を学ぶのか、具体的にどのようなテーマを扱うのかを話しました。どの講座でも強調していることですが、経済学を学ぶ一番の目的は、「豊かさと幸福の追求」です。私は、経済の安定は豊かさ・幸福を実現するための基本的条件と考えています。適度なスピードでGDPの規模が拡大し、物価上昇率が1〜2%以内におさまり、失業率が低い状態が望ましいことは言うまでもありません。加えて生産活動や国民生活が滞りなく行われるには、資源・エネルギー・食料などの安定供給が不可欠です。さらに巨額の財政赤字を抱えていれば、政府は十分な公共サービスを提供できなくなるので、財政の健全度を向上させることも重要です。
 しかしここ数年の世界と日本の状況を振り返ると、私たちは幸福から程遠い経済状況で生活しているといわざるをえません。世界中の景気が停滞し、金融市場が極めて不安定になっています。東日本大震災からの復興、原発事故の収束という日本固有の厳しい問題も、解決の方向性がみえていません。産業界は円高、高い税負担、遅れるTPPへの参加表明、製造業派遣の原則禁止に象徴される労働規制、温暖化ガスの削減、電力不足の「六重苦」を抱え、悲鳴をあげています。
 日々のニュースや新聞でよく取り上げられる問題を思い起こしてみても、以上のように難問山積です。しかしだからこそ経済学の存在価値があるのです。以前紹介したかも知れませんが、あらためて1885年、マーシャルがケンブリッジ大学の初代経済学教授に就任したときの演説の一文を引用します。
 「社会的苦悩を克服するために、自らの最善の能力を進んで捧げようとする冷静な頭脳と温かい心情を持つ人々の数を、一人でも多くすることが、私の念願である」
 マーシャルが述べたように、「冷静な頭脳と温かい心情」を持って「社会的苦悩を克服」することこそが、人類にとっての究極の目標となる豊かさ・幸福の追求につながるといえます。そう考えると、経済学を勉強するのがいかに意義深いことかわかってもらえると思います。医療系の学部ですが、受講生のみなさんにはしっかり経済学のセンスを磨いてほしいものです。
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