寺本益英の経済コラム

2012年03月08日23:05

カテゴリ: 日本経済; 産業・企業

ＳＵＭＣＯの増資とリストラ加速

　今日８日付の『日本経済新聞」にシリコンウエハーの製造で世界第２位のＳＵＭＣＯ（1999年に三菱マテリアルと住友金属工業の事業統合で誕生）の増資とリストラの記事が載っていました。
　私の頭の中では、この分野において信越化学工業と肩を並べる優良企業という認識でしたが、テレビやパソコン向け半導体の需要不振で半導体材料（シリコンウエハー）の市況悪化に対応しきれず、拠点数や人員過剰も足かせとなって経営が苦しくなったようです。
　リストラ計画はすでに発表されています。まず、旧世代の直径200ミリのウエハーを生産する生野工場（兵庫県朝来市）と、現在主流の同300ミリのウエハーを生産する長崎県大村市の子会社工場を閉鎖します。そして生産を主力の伊万里工場（佐賀県伊万里市）や台湾などの工場に集約し、稼働率を高める予定です。
　さらに太陽電池向けウエハー事業からも撤退するそうです。中国や台湾などで低価格の太陽電池が普及した結果、高価な原料を使うＳＵＭＣＯ製品の需要は低迷し、事業継続は困難になりました。
　拠点閉鎖などにともない、全従業員約9,000人の１割強に当たる人員削減を行います。このようなリストラ費用計上で大幅な最終赤字が生じ、自己資本が減ってしまいます。このため資本増強で財務基盤を強化することになりました。
　そこで三菱マテリアル・住友金属工業に加え、三菱東京ＵＦＪ銀行など３メガ銀行と三菱商事などが共同出資する企業再生ファンド「ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ」（ＪＩＳ）がそれぞれ150億円ずつ、合計で450億円調達し、上記の構造改革に備えることになりました。
　月末、牧瀬高幸さんのご厚意で生野銀山を案内していただくことになっています。生野銀山は1896（明治29）年三菱合資会社に払い下げられ、国内有数の鉱山として稼働してきましたが、1973(昭和48）年、資源枯渇のため閉山しました。その後ＳＵＭＣＯ生野工場が建設されたのですが、今回のリストラで閉鎖されてしまうのは、とても残念です。

ＳＵＭＣＯ

kgyasuhide

2012年02月25日23:50

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

１万円台乗せが視野に入ってきた日経平均株価

　週末（２月24日）の日経平均株価は、前日比51円81銭高の9,647円38銭で取引を終えました。証券会社のアナリストたちのコメントをみても、「１万円台乗せもあり得る」という強気論が増えています。
　株価堅調の背景にあるのは、14日に発表された日銀の追加金融緩和で、日本の金利低下が進み、円高懸念が遠のいたことです。円相場は一時、対ドルで、１ドル＝81円台、対ユーロで１ユーロ＝109円台まで円安が進みました。

kgyasuhide

2012年01月27日23:30

カテゴリ: 日本経済; 産業・企業

任天堂　2012年３月期、650億円の最終赤字に

　今日27日付の『日本経済新聞』に、任天堂の2012年３月期の連結最終損益は、650億円の赤字になるという記事が載っていました。赤字は1981年に連結業績の開示を始めてからはじめてだそうです。逆境に強い優良企業というイメージが強かったので、大変驚きです。
　不振の原因はアメリカ市場です。アメリカのゲーム市場は日本の約2,5倍の大きさで、任天堂の海外売上高比率は８割に達します。「マリオカート７」など人気作の発売が日本より遅れ、顧客への訴求がふるいませんでした。
　「３ＤＳ」の通期の販売台数は1,400万台と当初計画を200万台下回る見通しです。最大市場のアメリカでの不振が解消されないかぎり、収益好転は厳しそうです。
　そのほか、据え置き型ゲーム機「Ｗｉｉ」も競合する米マイクロソフト「Ｘｂｏｘ　360」に押されています。Ｗｉｉに関しても、通期の販売計画を1,200万台から1,000万台に引き下げました。Ｗｉｉは2006年12月華々しくデビューしましたが、発売から５年以上が経過し、目新しさも感じなくなっているようです。絶えず斬新な商品を投入し続けなければいけないところに、ゲーム業界の厳しさがあります。
　苦境脱出策として、据え置き型の次世代機「Ｗｉｉ　Ｕ」を、今年の年末商戦期に投入するそうです。また、インターネットを利用したゲームの配信など、ネット時代の新戦略も模索中です。
　株価も低迷しています。2007年11月１日に、７万3,200円をつけたのに、現在は１万円ちょっとです。予想外の業績不振に唯々驚いています。

kgyasuhide

2012年01月19日23:45

カテゴリ: 日本経済; 産業・企業

テルモが山口県に医療機器の新工場を建設

　今日19日付の『日本経済新聞』によると、テルモが山口県に医療機器の新工場を設けるそうです。総投資額は約300億円で、2015年春に稼働させる予定です。テルモは採血用注射器などの汎用品はフィリピンやベトナムなど海外への生産移管を進める一方で、高度な技術が必要な製品は国内での生産を維持する方針を打ち出しています。新しくできる山口工場では、市場拡大が見込める心臓血管治療関連機器や薬剤入り注射器などを生産します。
　テルモの国内工場は静岡・山梨の両県に集中していましたが、西日本にも拠点を分散させます。これは静岡や山梨の工場が東日本大震災で被災し、医療機器の生産が一時ストップし、その後も停電や原材料の調達難に陥った経験を教訓にしたものです。
　話は変わりますが、製薬会社や医療機器メーカーの間では、生産拠点や部品や原材料の調達を分散化する動きが強まっています。モノづくりが順調に行われるためには、各地のサプライヤーから適切なタイミングで部品や原材料を調達できなければいけません。しかし東日本大震災やタイの洪水のような予期できない自然災害で、サプライチェーンが寸断されることがあるのです。製薬会社や医療機器メーカーの場合、サプライチェーン寸断にともなう生産停止は、人命に影響を与えることになり、絶対に回避しなければいけません。

kgyasuhide

2011年12月10日21:02

カテゴリ: 世界経済; 金融・株式

安全網を１兆ユーロ超に拡大したＥＵの債務危機対策

　ＥＵ（欧州連合）首脳会議は昨日９日、ユーロ圏の政府債務危機への総合対策を盛り込んだ議長総括を採択し閉幕しました。ここではまず、常設の安全網として、当初は2013年に創設を予定していたＥＳＭ（欧州安定メカニズム）を2012年７月に前倒しで稼働することが決定しました。なおＥＳＭの資金枠は5,000ユーロです。さらに、ＩＭＦを活用した総額2,000億ユーロ（約21兆円）の支援制度の構築も決まりました。すなわち、ユーロ圏各国の中央銀行が1,500億ユーロ、日本や中国などその他の国も協力して500億ユーロをＩＭＦに融資し、緊急時の財源として使うことができるようになりました。
　安全網の資金をあらためて整理すると、既存の欧州金融安定基金（ＥＦＳＦ）4,400億ユーロに加えて、ＥＳＭ資金が5,000億ユーロ、ＩＭＦ資金が2,000億ユーロとなり、財政悪化国への支援余力は単純合計で１兆1,400億ユーロとなります。
　１兆ユーロを超える安全網を準備しておけば、ＰＩＩＧＳ（ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン）諸国の2012年中の債務償還額やスペイン一国の債務残高を上回っており、ひとまず安心できる金額といえます。ただし、ユーロ圏第３位の経済規模であるイタリアの債務残高は1.8兆ユーロに達しており、債務危機がイタリアに及べば、この程度の金額だけでは対応は難しくなります。
　また、ＥＳＭの稼働が前倒しさたといっても、これから半年以上後のことであり、各国による資本の払い込みが段階的に進むため、当初から5,000億ユーロの規模で支援を実施できるわけではありません。一方ＥＦＳＦは既に支援に使われた分などを除くと、支援余力は2,500億ユーロ程度とされています。ＥＦＳＦは外部投資家の資金を呼び込んで支援余力を増やそうとしているが、債務不安を払拭できる規模を調達できるかどうかは不透明な状勢です。

kgyasuhide

2011年12月09日23:25

カテゴリ: 世界経済; 金融・株式

ＥＵ（欧州連合）域内の銀行、総額1,147億ユーロの自己資本不足に

　ＥＵ（欧州連合）域内の銀行を監督するＥＢＡ（欧州銀行監督局）は８日、域内銀行の財務状況を査定しました。債務危機にともなう国債価格の下落を反映したところ、域内約70銀行が必要とする資本増強額は、総額1,147億ユーロ（約11兆8,000億円）に達するという結果となりました。この額は、普通株と内部留保で構成される中核的自己資本比率が９％を下回らないために必要な額とされています。
　国別の資本不足額は、ギリシャ－300億ユーロ、スペイン－262億ユーロ、イタリア－154億ユーロ、ドイツ－131億ユーロ、フランス－73億ユーロ、ポルトガル－70億ユーロ、ベルギー－63億ユーロ、オーストリア－39億ユーロ、キプロス－35億ユーロと算定されています。銀行別では、スペインのサンタンデール銀行が153億ユーロと突出して多くなっています。
　各銀行は増資計画を2012年１月20日までにＥＵ当局に提出するよう求められています。中心的な対応策として考えられているのは、株式発行による増資や、配当や賞与の抑制、非中核事業の売却などです。
　なお自己資本比率は、資産、すなわち融資を削減しても高められますが、貸し渋りを誘発して景気悪化に拍車をかけるため、今回は認められていません。

kgyasuhide

2011年11月25日23:30

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

日経平均株価、４営業日連続で今年の最安値を更新

　今日25日の日経平均株価は、前日比５円17銭安の8,160円01銭と、４営業日連続で今年の最安値を更新しました。
　ポルトガル国債の格下げが問題となり、欧州危機の一層の深刻化が懸念され、株価は一時、取引時間中の年初来安値となる8,135円79銭まで下落する場面もありました。
　債券市場に注目すると、長期金利の代表的な指標となる新発10年物国債の流通利回りが、前日終値比0.035％高い年1.03％まで上昇（債券価格は下落）しました。

kgyasuhide

2011年11月14日23:50

カテゴリ: 日本経済; 景気動向

2011年７－９月期のＧＤＰ速報　

　内閣府が今日14日発表した７－９月期のＧＤＰ（速報値）は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.5％増、年率換算では6.0％増となりました。プラス成長は４四半期ぶりです。
　ここで需要項目別に動向を確認しておきます。まず個人消費が1.0％増となりました。自動車購入が伸びたほか、旅行やレジャーなどサービス消費が持ち直しました。百貨店の美術・宝飾・貴金属などの売上も好調で、「自分が価値を認めた商品は高くても買う」という傾向が芽生えています。ただし、地上デジタル放送移行後のテレビ販売は大きく落ち込み、日用品や食料品もふるいません。飲料や紙おむつなどは、震災後の買いだめで「家庭内在庫」が積み上がっている状況です。
　次に投資に注目すると、住宅投資は5.0％増加で堅調です。住宅金融支援機構が民間金融機関と共同で取り扱う長期固定金利型住宅ローン「フラット35」の金利優遇策、住宅ローン減税、住宅版エコポイント制度など、政府の住宅購入支援策が功を奏しました。設備投資も1.1％増を示しました。自動車メーカーが投資を積極化させ、復旧・復興需要で建設用クレーンの投資も伸びています。
　公共投資は2.8％減でした。前期大きく伸びた復旧・復興需要の反動が出ています。もっとも今年度第３次補正予算案が成立すれば、再び復興関連事業が景気を押し上げる可能性は高いと思います。
　輸出は、自動車が急回復して6.2％増加しました。一方輸入は、国内の生産回復や火力発電用の液化天然ガス（ＬＮＧ）の調達増で3.4％増となっています。

kgyasuhide

2011年11月10日23:05

カテゴリ: 世界経済; 金融・株式

イタリア国債の利回りが一時７％を突破

　９日、イタリアの10年物国債利回りが通貨ユーロ導入後の最高（国債価格は最低）を更新し、一時7.4％まで上昇しました。７％突破は中長期の財政運営の持続性が危ぶまれる水準といわれていますが、もしユーロ圏第３位の経済大国が破綻すれば、ＥＵ経済ばかりではなく、世界経済全体に大きな衝撃が走るでしょう。８日夜にはベルルスコーニ首相が辞意を表明しているのですが、投資家の売り圧力は、とどまるところを知りません。

kgyasuhide

2011年10月28日15:57

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

日経平均株価、２ヶ月ぶりに9000円台を回復

　今日28日の日経平均株価は、前日比123円93銭高の9050円47銭で取引を終えました。終値ベースでは、９月１日以来、ほぼ２ヶ月ぶりに9000円台を回復しました。
　9000円台回復の背景としてまず挙げられるのは、ヨーロッパの債務問題に多少明るい兆しが見えてきたことです。ＥＵがギリシャ債務削減において、民間の負担増で合意し、金融機関への資本増強でも意見が一致したため、当面の危機が回避できるという楽観見通しが広がったのです。27日のダウも堅調で、前日比339ドル51セント高の１万2208ドル55セントと、７月末以来約３ヶ月ぶりの高値で終えています。

kgyasuhide

2011年10月22日17:35

カテゴリ: 経済と政局; 構造改革

橋下徹大阪府知事辞職表明　「大阪都構想」は実現するか

　橋下徹大阪府知事が辞職を表明し、「大阪都構想」を掲げ、11月27日に投開票される大阪市長選への出馬宣言を行いました。
　橋下氏はかねてから、大阪府と大阪市がともに強い権限を持ち、同じような行政や公共投資を行い、「二重行政」の無駄が多いと主張してきました。現在大阪府の予算規模は約５兆円、大阪市は約３兆9,000億円ですが、両者のばらばらな運営が、大阪経済を停滞させているというわけです。例えば府・市がそれぞれ運営している産業政策や都市開発や交通整備事業を大阪都に集約し、投資を集中させ効率化をはかる方向に改革すべきだと考えています。
　橋下構想では現在人口267万人の大阪市を８つ９つの「特別自治区」に分割し、区長は公選制で選び、議会を設置します。いま、大阪市には24の行政区がありますが、区長は市役所の職員です。委ねられた予算の裁量は平均で東京23区の630分の１どまりです。しかし公選制がとられると、他の政令市の行政区より予算などの権限を強められます。
　一方で平松邦夫大阪市長は、橋下構想では市がばらばらになってしまうと、強く反対しています。分割しないで市がまとめて種々のサービスを提供するほうが効率がよいと考えています。そして将来的には、「特別自治市」を目指すといいます。「特別自治市」になれば、ハローワークや職業訓練の業務、旅券の発給などの権限が道府県から移譲され、都市計画や河川管理、一般国道整備など広域行政も担えるといいます。
　大阪の将来像はどのようになるのか、「大阪都」でも「特別自治市」でも過去に例がない試みなので、この先様々な紆余曲折がありそうです。
　関西に住む我々の共通の思いは、大阪の衰退を何とか食い止めたいということではないでしょうか。企業の本社がどんどん東京へ移転していることからも明らかなように、近年東京一極集中の傾向が一段と強まっています。「統治のかたちをどうするか」に加え、効果の大きい活性化策についての議論の活発化も期待したいところです。

kgyasuhide

2011年09月28日23:40

カテゴリ: 日本経済; 財政問題

東日本大震災　臨時増税額９兆2,000億円をどのように調達するか

　昨日の記事で、民主党はどのような根拠で東日本大震災の復興財源を確保するための臨時増税額を９兆2,000億円と見積もったのかわかっていただけたと思います。今日は民主党の税制調査会が決めた増税案の具体的内容をみてゆきます。その骨子は、基幹税と呼ばれている所得税・法人税を中心に、住民税とたばこ税も加えて賄うというものです。以下で税別に詳細を確認しておきます。
①　所得税
　納税額に４％上乗せ。景気に配慮し、2013年１月から実施。期間は10年間。例えば年収500万円の夫婦と子供２人の家族の年間負担増は、3,100円。１ヶ月あたりに換算すると、258円程度。
②　法人税
　2011年度税制改正で予定していた５％減税（年7,800億円）を３年間先送りし、約２兆4,000億円を捻出）。実施は2012年４月から。
③　住民税
　１年あたり５００円、５年間で2,500円の負担増に。実施は３年後の2014年６月から。
④　たばこ税
　2012年10月から国税分は10年間、地方税分は５年間で実施。国税と地方税で増税期間が異なるため、当初の５年間の増税は１本あたり２円、その後の５年間は１円となる。
　８月11日の記事でも指摘したように、今年６月末の「国の借金」残高は943兆8,096億円に達します。増税は避けられません。しかし一方で欧州の信用不安などを背景に、日本経済の先行きには不透明感が蔓延しています。このような経済状況の中での増税には多くの困難が伴います。増税幅の一層の圧縮の方策はないか、また想定外の景気悪化に直面した場合は、増税時期や期間を柔軟に変更するという配慮も重要ではないでしょうか。

kgyasuhide

2011年09月27日23:30

カテゴリ: 日本経済

東日本大震災からの復興　臨時増税額が９兆2,000億円と決まるまでの経過

　民主党は今日27日、東日本大震災の復興財源を確保するための臨時増税額を９兆2,000億円と決定しました。今日はこの９兆2,000億円という金額がどのようにして算出されたのか、経過をたどります。
　東日本大震災による損害は、道路や橋などの社会インフラだけでも最低19兆円と見積もられています。政府は７月、「復興基本方針」を定め、今年度からの５年間を集中復興期間と位置づけました。その際復興財源の調達は、歳出の削減、国有財産売却、特別会計の剰余金など税以外の収入、さらに基幹税を中心にした臨時増税によって実施すると明記しました。
　集中復興期間の５年間の財政出動は19兆円程度と考えます。そのうち、既に第１次・第２次補正予算で、６兆円の財政措置がとられていました。したがって今後予算措置が必要なのは、残りの13兆円となるわけです。なおこの財源の大部分は、ひとまず復興債の発行によって賄う方針が示されました。
　ここで問題となるのは、復興債をどのように償還するかです。政府税制調査会は、13兆円のうち５兆円は歳出削減や政府保有株を含む国の資産売却、それに特別会計の剰余金など税以外で確保する方向性を打ち出しました。
　ただし第１次補正において、基礎年金の今年度の国庫負担分２兆5,000億円分を復旧対策の非常措置として流用しています。さらにＢ型肝炎対策の7,000億円の支出も緊急性が高く、復興増税で対応することになりました。こうした経過より、全体の増税額は、８兆億円＋２兆5,000億円＋7,000億円＝11兆2,000億円で、いったん了承されました。
　その後民主党内でさらに議論が行われ、税外収入を５兆円から７兆円に拡大し、増税規模を２兆円圧縮して９兆2,000億円とすることが決定しました。民主党はこの２兆円を、日本たばこ産業（ＪＴ）株の完全売却などによって捻出する意向ですが、異論も多く、税外収入の上積みが可能かどうかは予断を許しません。

kgyasuhide

2011年09月09日23:50

カテゴリ: 日本経済; 食料・資源・エネルギー問題

電力使用制限令が解除されました

　今日９日、電力使用制限令が解除されました。電力使用制限令とは、電気事業法27条に基づく措置で、東京電力と東北電力管内における契約電力500キロワット以上の大口需要家に対し、７月１日に発動されたものです。昨夏の使用最大電力の15％削減を義務付け、悪質な違反者には100万円以下の罰金を科すという内容です。ちなみに発動は、第１次石油危機の1974年以来37年ぶりのことです。
　一方、500キロワット未満の小口需要家や一般家庭では、自主的な節電要請にとどめられていました。
　東電管内では当初、制限令を９月22日まで実施する予定でしたが、余裕があるため終了日を今日９日に前倒ししました。東日本大震災などの被災地域は２日で解除されています。
　東電管内で制限令が適用された期間は２ヶ月あまりでしたが、幸い計画停電など、経済を大きな混乱に陥れる事態には至りませんでした。
　成功の背景には、様々な企業努力がありました。例えば自動車業界では、休日を木・金曜日にずらし、取引先にも同調を求めた結果大幅な節電が実現しました。昼間の稼働率を引き下げ、夜間操業のウエイトを高める工場も出現しました。商業施設では、売り場の照明を暗くしたり看板を消灯する措置をとっています。鉄道会社は昼間の運転本数を減らす「節電ダイヤ」を実施しました。こうした取組が大きな効果をあらわしたといえます。東電は当初、今夏の最大需要見通しを5,500万キロワットと見積もっていたのですが、5,000万キロワットを超えた日はなく、最大は８月１８日の4,922万キロワットでした。
　節電目標達成にともなう代償も看過できません。企業によっては、土・日曜に出勤するうえ、代わりの休日である木・金曜も完全に休めないことがあったといいます。さらに、蓄電池や自家発電設備の新増設に巨額のコストをかけた企業も見受けられました。大企業ならまだ抵抗力がありますが、中小企業にとっての負担は重く、死活問題になっています。
　過度の節電・省エネを避けながら、ふんだんに電力を使用してきたこれまでの仕事や生活のスタイルを改めてゆくことが今後の課題です。ピーク時を避けて電力を使用すれば、料金が安くすむような体系に改め、時間帯による需要を平準化する工夫も求められています。

kgyasuhide

2011年09月06日23:15

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

東日本大震災直後の水準を下回った日経平均株価

　今日６日の日経平均株価は、東日本大震災直後の３月１５日に付けた年初来安値（8,605円15銭）を下回り、前日比193円89銭安の8,590円57銭で取引を終了しました。
　最近の下落は、電機、自動車、金融の３分野で激しいのが特徴です。ソニー、パナソニック、トヨタ自動車など、日本を代表する製造業の株が、軒並み大きく売り込まれ、年初来安値をつけています。背景にあるのは、円高と世界経済の減速懸念なのでしょうか。銀行・証券など金融株不振の原因は、やはり外部環境の悪化によるものです。米国債格下げ、欧州債務問題、世界景気の二番底懸念など、日本一国ではどうにもならない世界経済全体のリスクが大きな影響を与えていると考えられます。
　トヨタ自動車の株は今日2,602円まで下がりました。リーマンショックの最悪期に2,585円をつけたことがあります。しかし世界経済の現状は、リーマンショック時と同程度に悪いとは思えません。
　もうひとつびっくりしたのが、野村ホールディングスの株価が300円割れを起こし、290円をつけたこと。バブルの最盛期には、5,990円まで買われた株です。今や20分の１の価値しかありません。言葉を失ってしまいます。
　一方で比較的下っていないのが内需株です。ＮＴＴ、ＮＴＴドコモといった通信系、武田など薬品系、ＪＲなど鉄道系は、このような悪い環境の中で、よくがんばっているなという感じです。
　日本経済の目標ははっきりしています。それは、経済成長と財政再建の両立です。個々の企業は必死の取組を行っているのに、経済環境を改善する有効な政策は打ち出されていません。市場参加者の不安心理を取り除くような政策を期待したいところです。

kgyasuhide

2011年08月30日23:40

カテゴリ: 日本経済; 経済と政局

民主党代表選、野田佳彦氏を代表に選出

　菅内閣の退陣で、民主党政権誕生後、わずか２年間に、３人目の総理大臣を選ぶことになりました。以前短命の自民党政権を、「無責任で、政権をたらい回ししていると強烈に批判していた民主党が、同じ運命をたどることになったわけです。代表選挙には、前原誠司前外相、馬淵澄夫前国土交通相、海江田万里経済産業相、野田佳彦財務相、鹿野道彦農相の５氏が立候補しました。告示が８月27日、投開票は29日と、選挙戦はたった３日間行われただけでした。
　今回の選挙も「脱小沢」対「親小沢」という構図になりました。マニフェスト堅持を主張する小沢・鳩山グループは海江田氏を推し、海江田氏１回目の投票で、投票総数395票のうち143票を獲得して首位になりました。以下の得票数は、野田氏102票、前原氏74票、鹿野氏52票、馬淵氏24票という順です。
　１回目の投票で過半数をとった候補者が出なかったため、海江田氏と野田氏の間で決選投票が行われました。その結果は、野田氏215票、海江田氏177票（無効３票）となり、野田氏が逆転で菅氏の後継代表に選ばれた次第です。
　野田氏の勝因は、２位以下連合が功を奏した点にあります。多くの所属議員は、小沢・鳩山連合が財源の裏付けのないマニフェストを推進しようとしていることに危機意識を持ったのでしょう。
　こうした中で成立した野田内閣には、まず党勢の回復が求められます。その他、震災復興、円高対策、エネルギー政策、社会保障と税の一体改革、巨額の財政赤字削減など、難問が山積しています。

kgyasuhide

2011年08月12日23:55

カテゴリ: フードシステム; 食料・資源・エネルギー問題

2010年度の食料自給率　40％割れ

　昨日11日付の『日本経済新聞』夕刊によると、農林水産省が発表した昨年度のわが国の食料自給率（カロリーベース）は、39％だったそうです。カロリーベースの自給率は、１人１日当たり国産供給カロリー／１人１日当たり供給カロリー　で計算します。
　2010（平成22）年度の場合、分子が946キロカロリー、分母が2,458キロカロリーなので、自給率約39％となります。ちなみに、40％割れは2006年度以来４年ぶりのことです。
　コメの年間１人当たり消費量は、2009年度より１kg増え、59.5kgとなったようです。ただこれはコメ離れに歯止めがかかったというわけではなく、震災の影響で、コメを買い急ぐ消費者が増えた結果と考えられています。コメ消費が増えた反面、昨年の猛暑のため、小麦やてんさいの生産量が約15％落ち込みました。自給率低下の主な要因となりました。
　今年度は、東日本大震災発生にともなう原発事故のため、放射性物質による汚染が牛肉やコメに広がっており、消費減少が予想されます。したがって自給率はさらに下がる可能性があると指摘されています。

kgyasuhide

2011年08月11日23:10

カテゴリ: 日本経済; 財政問題

国の借金残高が943兆円を超えました

　今日11日付の『日本経済新聞』によると、国債や借入金などを合わせた６月末の「国の借金」の残高が943兆8,096億円になったそうです。３月末に比べ、19兆4,500億円増加し、過去最悪を更新したもようです。
　厳密にいうと「国の借金」とは、国債、借入金、政府短期証券の総額です。６月末の内訳をみると、普通国債や財投債を含む内国債が９兆3,753億円増の767兆9,443億円、借入金が9,265億円減の54兆793億円、政府短期証券が11兆12億円増の121兆7,860億円でした。
　なお国民１人あたりの借金額は約738万円になります。政府は今後、東日本大震災の復興に向けて国債の一種である復興債を10兆円以上発行する予定で、借金はまだまだ増加しそうです。

kgyasuhide

2011年07月30日23:20

カテゴリ

ＮＹダウ　６日続落

　29日のＮＹダウは、前日比96ドル87セント安の１万2143ドル24セントで取引を終えました。６月27日以来、約１ヶ月ぶりの安値となりました。

kgyasuhide

2011年07月06日23:40

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

日経平均株価７日続伸　１万円台回復

　今日６日の日経平均株価は、2009年７月以来約２年ぶりに７日連続で上昇し、１万円台を回復して取引を終えました。終値は前日比110円２銭高の１万82円48銭で、東日本大震災が発生した３月11日以来の高値水準となりました。
　株価回復の背景として、いくつかの理由が考えられます。まず東日本大震災の影響で、株価が割安に放任されていたことです。しかしサプライチェーンの再建が予想以上に早く進み、生産回復が確認され、企業収益改善の見通しが立ってきたことです。
　一方海外経済に目を向けると、当面の危機であったギリシャ問題が一服したことも追い風になりました。

kgyasuhide

2011年07月01日23:15

カテゴリ: 日本経済; 景気動向

2011年６月の日銀短観

　今日１日発表された６月の日銀短観によると、大企業製造業のＤＩはマイナス９となり、前回３月調査から15ポイント悪化しました。
　大企業製造業は16業種に分類されていますが、このうち11業種がマイナスです。東日本大震災のダメージがいかに大きかったかがわかります。悪化が際立っていたのは自動車で前回のプラス23からマイナス52、そのほかのセクターでも、電気機械がプラス１からマイナス16、業務用機械がプラス11からマイナス13、石油・石炭製品がプラス40から０といった具合に、落ち込み幅が大きくなっています。
　このような事情の背景として、岩手・宮城・福島・茨城で多数の工場が被災し、部品調達がストップしたことや計画停電など、供給サイドの制約のため、生産が大きく減退したことが考えられます。
　次に大企業非製造業に注目すると、ＤＩはマイナス５で前回より８ポイント悪化しています。12業種中８業種で景況感が悪くなり、特に電気・ガス、宿泊・飲食サービスの落ち込みが顕著です。
　先行きに関しては明るい見通しが示されています。大企業製造業の３ヶ月先のＤＩはプラス２で、今回より11ポイント改善すると考えられています。とりわけ自動車業界はＶ字回復を見込み、３ヶ月先のＤＩはプラス６と、今回より58ポイントもの改善が期待されています。
　今後の注目すべきは、まず外国経済の動向です。中国やアメリカ市場への輸出は、日本経済回復の牽引役ですが、両国とも景気減速感が広がりつつあります。さらに電力不足も気がかりです。原発再稼働のメドが全く立っておらず、電力不足は来年以降も続く可能性があります。そうなると、製造業は海外へ生産拠点を移すため、産業空洞化を引き起こす可能性もあります。
　震災から日本経済を１日も早く立て直すには、電力不足を解消する必要があります。安全性をしっかり確かめた上で原発を再稼働させるのか、当面は地球温暖化に目をつむり、火力発電を活用するのか決めなければいけません。将来的には、太陽熱や風力などのウエイトを高めるべきですが、現時点ではコストが高すぎて普及に限界があります。原発依存度を低めるという方針であれば、自然エネルギーを安価に提供できるような技術革新を促すため、政府としてどのような支援をしてゆくのか、明確にしてほしいところです。

kgyasuhide

2011年06月09日23:50

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

円相場2ヶ月半ぶりの高値

　昨日８日の東京外国為替市場において、円相場が一時、１ドル＝79円75銭を記録し、同市場としては約２ヶ月半ぶりの円高水準となりました。
　日本経済は依然停滞しており、政局の混迷も加わって円を買う理由は見当たりません。昨日の円高・ドル安の大きな原因は、アメリカ経済の減速懸念が広がったためです。米連邦準備理事会（ＦＲＢ）のバーナンキ議長は７日の講演でアメリカの景気回復は「いらだつほど緩慢」と発言しています。投資家たちはアメリカの緩和的な金融政策は当面続くと判断しており、ドルを買う動機が乏しいわけです。
　もっとも一本調子で円高・ドル安が進むという見通しはあまり聞かれません。政府・日銀による円売り・ドル買い介入への警戒感があるからです。

kgyasuhide

2011年06月01日23:10

カテゴリ: 日本経済; 経済一般

2010年の合計特殊出生率　２年ぶりに上昇

　厚生労働省は１日、人口動態統計を発表しました。それによると、2010年の合計特殊出生率（＝１人の女性が生涯に産むとされる子供の人数でその年の15歳～49歳の女性が産んだ子供の数をもとに算出される）は1.39でした。2009年の1.37から0.02上昇しました。もっとも人口を維持できる値は2.07程度とされていますので、上昇したといってもまだまだです。一方、出生数から死亡数を引いた自然増減数は、マイナス12万6,000人でした。わが国の人口は、４年連続で減少したことになります。
　ところで人口減少は日本経済にどのような影響をもたらすでしょうか。まず深刻なのは、15～64歳の生産年齢人口の減少です。生産年齢人口が減少すれば、経済全体の供給力が落ち込むと当時に、需要の減少も引き起こすでしょう。さらに少ない働き手で多くの高齢者を支えなければならず、種々の社会保障制度の維持も困難になってきます。
　またこれまでの社会資本整備は人口が増加することを前提に進められてきましたが、現段階でその前提は崩れています。社会資本は過剰ぎみで、補修などの維持コストだけでも、大きな財政負担となってしまいます。
　日本経済の活力を維持するためにも少子化対策は急務です。ただ、民主党が目玉政策とする子ども手当ではあまり効果は期待できません。それよりも保育所の増設、企業の育児休暇の拡大など、女性が働きながらでも出産、子育てをできる環境整備が大切です。加えて若者が安定した職につけるようにし、彼らの将来不安を取り除くような施策も求められています。

kgyasuhide

2011年04月30日23:15

カテゴリ: 日本経済; 経済と政局

民主党マニフェスト、見直しを検討

　民主、自民、公明３党は昨日、民主党がマニフェストで掲げた目玉政策の見直しを検討することで合意しました。民主党としては自公両党の主張を受け入れた形の重大な決断であり、当然、反執行部派の反発も予想されますが、2011年度１次補正予算案と関連法案の早期成立を確実にするためには、他の選択肢はなかったという気がします。
　ここで４月30日付『日本経済新聞』の記事により、具体的な合意内容を見ておきます。
　①子どもに対する手当の制度的なあり方や高速道路料金割引制度、法人税減税の扱いを各党で早急に検討する。
　②基礎年金の国庫負担割合の維持財源は、２次補正予算編成の際に見直しを含め検討する。
　③赤字国債発行法案について各党で成立に向け検討を進める
　④復旧復興財源は歳出削減と国債発行などで賄う。
　⑤復興のための国債は別管理し、消化や償還を担保する。
　⑥政府・与党は社会保障と税の改革案を速やかに示す。

kgyasuhide

2011年04月28日23:55

カテゴリ: 日本経済; 景気動向

2011年３月の鉱工業生産指数　過去最大の落ち込み

　経済産業省が今日28日に発表した３月の鉱工業生産指数は、前月比15.3％低下の82.9となりました。水準は、2009年７月の81.9以来の低水準です。また前月比マイナス幅はリーマン・ショック後の2009年２月でさえ8.6％でしたから、震災のダメージがいかに大きなものであったかが窺えます。ちなみに15.3％もの急激な落ち込みは、1953年１月の統計開始以来、過去最大の大きさです。
　次にマイナス幅を地域別に見ると、被災地は31.9％、被災地以外は13.5％となっています。また業種に注目すると、輸送機械が前月比46.4％の減少で、際だって大きくなっています。普通乗用車と小型自動車の減産率は50％を超え、深刻な影響を受けました。一般機械工業もこれまで堅調に推移していましたが、マイナス14.4％の低下を示しています。半導体製造装置の工場は全国の３分の２が被災地に立地し、34.1％の減産を余儀なくされました。
　最後にリーマン・ショック時との違いについて、簡単にふれておきたいと思います。当時は史上最悪の金融危機のため、需要が世界的に萎縮しました。つまり、需要不足が生産の縮小を招いたと言われています。それに対し今回は、供給側のショックであり、工場設備が回復しサプライチェーンが元通りになれば、生産は上向くとみられています。もっともその前提は、新興国の経済情勢が堅調に推移すること、そして電力不足に陥らないようあらゆる手段を講じることです。

kgyasuhide

2011年04月06日21:53

カテゴリ: 日本経済; 産業・企業

ＪＲ東日本、３月の鉄道営業収入が大幅減

　ＪＲ東日本は５日、３月の鉄道営業収入発表しましたが、東日本大震災の影響は甚大で、前年同月比26.8％減となり、1987年に同社が発足以降、最大の落ち込みを記録してしまいました。
　とりわけ深刻だったのは東北新幹線が運休に追い込まれたことです。３月５日、高級グリーン席「グランクラス」を売り物に新型車両の「はやぶさ」が運転を始めたばかりだったのですが、１週間と続きませんでした。東京電力が計画停電を実施し、在来線の間引き運転を行っていることもマイナスです。
　さらに頭の痛い問題は、震災で被害を受けた駅舎や橋梁などは43線区で6,000箇所を超えるといいます。復旧作業は８割程度済んでいるそうですが、被害総額がどの程度になるのか、まだわかっていません。ちなみに阪神大震災のとき、ＪＲ西日本は復旧費用と運休による収入減で約1,600億円の損害を受けています。しかし今回は震災の範囲が広いため、その程度の額では済まないと考えられています。
　みなさんも東京へ出かけると感じると思いますが、ＪＲ東日本の強みは山手線はじめ首都圏に強力な路線を持っていることです。込み具合はハンパじゃありませんよね。首都圏で思い切り稼ぎ、地方の赤字ローカル線を補うというのが、ＪＲ東日本の経営スタイルです。会見で清野智社長は、復旧の見通しが立っていない路線も廃線にはしないと述べています。
　ＪＲ東日本の財務基盤が強固なこともよく知られています。2010年３月期の連結純利益は1,200億円に達します。同期の現金・預金も840億円持っています。こうした豊富な手元資金を活用し、債務を増やさずに復旧を目指すということです。

kgyasuhide

2011年03月30日23:10

カテゴリ: 日本経済; 財政問題

2011年度予算が成立

　昨日29日、2011年度予算が成立しました。一般会計の総額は92兆4,116億円で過去最大規模となります。
　いうまでもありませんが、今最も重要なのは東日本大震災への対策です。道路や住宅への直接的な被害額は16兆～25兆円に達すると言われています。阪神大震災のときの損害額は約10兆円と言われていますが、今回はそれをはるかに上回る大きさです。
　政府はまず2011年度第１次補正予算案の編成作業に着手し、がれき撤去、仮設住宅の建設、原発事故の処理などに２兆円を準備し、４月中の国会提出を目指しています。なおこの財源は2011年度予算に計上した１兆１1,600億円の予備費を活用し、不足分は2011年度予算の歳出見直しで捻出します。
　次の段階では、被災地の道路、港湾といったインフラ整備、街づくり、被災者の生活・雇用の支援などにお金が必要です。補正予算を順次編成し、最終的な規模は10兆円を超えると考えられています。
　復旧・復興には巨額の資金が必要ですが、いったいどうして工面するつもりでしょうか。震災の影響で経済活動の縮小は確実で、税収は明らかに落ち込むでしょう。個人的には、子ども手当、高速道路無料化、農家の戸別所得補償など、緊急度の低い支出は最小限にとどめるべきだと考えます。また法人実効税率５％引き下げも、このような状況下では先延ばしせざるをえません。
　それでもまだ財源は不足するでしょうから、あとの手段は増税か国債発行です。ただ巨額の財政赤字を抱えている現状でこれ以上国債を発行するのが難しいことも事実です。日本の財政が信用を失えば国債の価格は暴落し、金利上昇が起こります。これは復興の足かせとなります。かといって増税すれば、景気の落ち込みに拍車をかけることになるでしょう。財政運営はますます厳しさを増してきています。
　間違いなくいえるのは、大震災が発生した３月11日以降経済状況が一変したということです。非常時の大胆な政策運営が求められています。

kgyasuhide

2011年03月23日22:45

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

2010年12月末時点の家計金融資産残高

　今日の『日本経済新聞』夕刊の記事からです。日銀が本日発表した2010年第４四半期（10～12月期）の資金循環統計（速報）によると、家計が保有する金融資産残高は12月末時点でで1,489兆2,881億円で、１年前に比べて0.1％減少したそうです。前年同月末比での減少は３四半期連続です。
　2009年末と比べると、円相場が10円以上円高方向に進み、日経平均株価も小幅に下落しました。影響で家計の金融資産の中で、債券が前年同月末比で5.7％減少し、投資信託も同5.5％減少しました。その一方で、金融資産全体の55％を占める現金・預金はは1.3％（10兆2,796億円）増加し、残高は過去最高の821兆円となりました。家計の豊富な資金が銀行などの金融機関に回り、それが政府の資金調達を支える構図は継続しています。
　さらに、民間非金融法人企業の現金・預金は昨年12月末で196兆9,143億円で、前年同月末比4.0％増えています。企業の手元資金は潤沢な状態で、震災後の設備の復旧や当面の資金繰りはそれほど心配なさそうです。
　なお『資金循環統計』の概要は下記のリンクもご参照ください。

日本銀行・資金循環統計

kgyasuhide

2011年03月08日23:40

カテゴリ: 日本経済; 産業・企業

テルモがカリディアンＢＣＴを買収

　６月から開講するＫＧ梅田ゼミ「これからどうなる日本の食と農　―フードシステムの視点から―」で、テルモからも講師をお招きすることになっており、企業動向に大変関心を持っています。そのテルモに関し、昨日ビッグニュースが飛び込んできました。
　報道によるとテルモは、アメリカ・コロラド州の医療機器メーカーカリディアンＢＣＴを買収するそうです。テルモはカリディアンに全額出資するスウェーデンの大手医療機器メーカー、ガンブロからカリディアンの全株を取得する契約を結びました。買収額は26億2,500万ドル（約2,150億円）です。
　現在テルモの事業の柱は心臓カテーテル（医療細管）です。2009年度の売上高は1,300億円で、全売上高の40％を占めています。ほかに輸血用の血液を採取する事業を行っていますが、2009年度の事業売上高は240億円で世界第５位（シェア12％）の地位です。ちなみに首位はフェンフォーケルでシェア24％、第２位はヘモネティクスでシェアは20％です。しかしこの買収によって、カリディアンの売り上げが加わって（カリディアンのシェアは20％）約700億円に増加し、輸血関連事業で世界首位の座（シェアは32％）を獲得することになります。なお輸血関連事業とは、採決→遠心分離→保存→輸血までの事業を指します。テルモは成分を問わず採取する器具の製造がメインですが、カリディアンは成分ごとに採決する装置に強みがあります。
　ところでこのところ新興国の生活水準が上昇し、医療サービスに対する需要が拡大しています。新興国では、従来型のテルモの器具の販売拡大が見込めます。一方先進国においては、がんの治療時に不足する血小板の輸血需要が増大しそうなので、カリディアンの事業にも追い風となっています。
　テルモのねらいは、カリディアンが持つ採血技術や顧客基盤を獲得すれば、世界的に拡大する輸血需要の取り込みを強化することです。そして心臓カテーテルと並ぶ新たな成長のエンジンとして育成してゆこうとしています。

テルモ

kgyasuhide

2011年01月22日23:35

カテゴリ

尖閣ビデオ流出事件、元海上保安官が起訴猶予処分に

　今日22日付の『日本経済新聞』に、尖閣ビデオ流出事件、元海上保安官が起訴猶予処分になったという記事が載っていましたのでご紹介します。
　昨日21日、東京地検は一色元海上保安官の起訴猶予処分としました。東京地検は、「流出映像は刑事事件の証拠であり、公開されれば関係者の名誉や人権の保護に欠けるおそれがある」として、保護すべき実質的な「秘密」に該当すると認定、元保安官が職務上知り得たと判断しました。
　その上で処罰の必要性を慎重に検討したところ、①海保の管理が不十分、②映像の入手方法は悪質でない、③利欲的な犯行ではないといった点を考慮、海保の処分を受け依願退職していることも踏まえ「刑事処分は妥当ではない」と結論づけたのです。
　一方那覇地検は、中国人船長も起訴猶予処分としました。その理由は、①既に中国へ帰国している、②逃走するためには巡視船に衝突してもいいという程度の意思しか認められず、計画的ではない、③巡視船の損傷は、航行に支障がなく、乗組員にもけががなかった、というものでした。元保安官の処分とのバランスを考え、慎重に判断した結果ともいえます。
　こうして、日中関係を揺さぶった一連の事件の捜査が終結しました。

kgyasuhide

2010年12月30日17:27

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

2010年　大納会

　東京株式市場は今日2010年最後の取引となりました。円相場が１ドル＝81円台前半と、11月上旬以来の水準に上昇したことが嫌気され、ホンダやソニーなど、輸出関連株を中心に利益確定売りが出たため、日経平均株価は前日比115円62銭安の１万228円92銭で終わりました。昨年大納会の終値との比較では317円52銭安と、約３％下落したことになります。
　今年の日経平均が最高値をつけたのは、４月５日で１万1408円17銭でした。この頃には、企業収益の改善、アメリカ経済の回復への期待が高まり、株価は堅調でした。しかし大型連休を迎えると、ギリシャなどユーロ圏の財政・金融不安が再燃してきました。こうした中、外為市場で比較的安全とされた円を買う動きが活発化して円高基調となり、輸出企業の採算の悪化が懸念されました。こうしな背景があって株価は冴えず、９月１日には8,796円45銭の最安値を記録したのです。
　しかし秋に実施された日米の追加金融緩和が株価反発の契機を作ります。日銀は10月に上場投資信託（ＥＴＦ）などの買い入れを含む、大胆な金融緩和策を打ち出しました。米連邦準備理事会（ＦＲＢ）も11月に米国債の追加購入を決め、株式市場への資金流入を促しました。日米追加緩和の正式発表後、１ドルが70円台に突入する円高が起こらなかったのも市場関係者の安心感につながり、株価は再び回復してきました。
　相場の格言によると、「卯年は跳ねる」だそうです。1951年以降、卯年の日経平均は、上げが４回、下げが１回で４勝１敗です。格言が当たるための条件として、新興国経済が順調に拡大し、企業収益が向上すること、アメリカの金融緩和が継続されることなどが挙げられます。

kgyasuhide

2010年12月15日23:45

カテゴリ: 産業・企業; 金融・株式

大塚ホールディングスが上場

　大塚製薬グループの持ち株会社である大塚ホールディングス（ＨＤ）が今日15日、東京証券取引所第１部に新規上場しました。公募価格は2,100円ですが、ここから算出した上場時の時価総額は１兆1,700億円となります。第一三共１兆2,900億円やキリンホールディングス１兆1,700億円などに匹敵する大型銘柄となります。

kgyasuhide

2010年11月24日21:40

カテゴリ

北朝鮮が韓国を砲撃

　23日午後２時34分ごろ、韓国が黄海上の南北軍事境界線と定める北方限界線に近い延坪島（ヨンピョンド）付近において、北朝鮮が海岸砲と呼ばれる沿岸地域に設置した兵器を使い、断続的に少なくとも数十発砲撃しました。その一部が同島内の軍施設や市街地に着弾しました。韓国軍も応戦し、緊張は一気に高まりました。韓国軍兵士２人が死亡、16人が重軽傷を負い、同島の民間人３人が負傷しました。

kgyasuhide

2010年11月10日23:40

カテゴリ: 日本経済; 国際関係・外交

ＴＰＰ（環太平洋経済連携協定）協議　閣議決定

　政府は９日の閣議で、環太平洋パートナーシップ協定（ＴＰＰ）について「関係国との協議を開始する」と明記した包括的経済連携に関する基本方針を決定しました。ＴＰＰへの参加は、関税を原則撤廃することです。最も懸念されているのは、国内農業への打撃で、菅直人首相は同日の閣僚懇談会で、農業予算に関する４大臣会合（議長・玄葉光一郎国家戦略相として、仙谷由人官房長官、野田佳彦財務相、鹿野道彦農林水産相で構成）の設置を指示しました。ここで2011年度予算での戸別所得補償制度などについて検討するようです。
　菅首相は閣議で「農業再生を念頭に置きながら『国を開く』という我が国のあり方にとって重大な基本方針だ」と強調しています。なおＴＰＰ参加の判断時期について、仙谷氏は閣議後の記者会見で、首相を議長として新設する「農業構造改革推進本部」が農業対策の基本方針を決める来年６月前後になるとの見通しを示しました。
　経済連携に関する基本方針の骨子は次のとおりです。（『日本経済新聞』11月10日を参照）
○ＴＰＰは情報収集を進めながら対応し、関係国との協議を開始。
○「アジア太平洋自由貿易圏実現に向けた閣僚会合」を開催。
○「農業構造改革推進本部」（仮称、議長・菅直人首相）を設置。
○関税措置のあり方を見直し、透明性の高い納税者負担制度への移行を検討
○非関税障壁撤廃に向け、行政刷新会議で１１年３月までに規制改革の具体的方針を決定。

kgyasuhide

2010年11月02日23:10

カテゴリ: 日本経済; 産業・企業

住生活グループが社名変更し、ＬＩＸＩＬ（リクシル）に

　今日２日の『日本経済新聞』によると、昨日、住生活グループはトステムやＩＮＡＸなど傘下の事業会社５社を来年（2011年）４月１日付で統合すると発表したそうです。存続会社はトステムで、ＩＮＡＸ、新日軽、東洋エクステリア、戦略立案会社ＬＩＸＩＬ（リクシル）の４社が吸収合併され、新たに「ＬＩＸＩＬ」と社名変更します。なおＩＮＡＸや東洋エクステリアはブランド名は維持しますが、会社は解散となります。新会社には社内カンパニー制が導入され、国内営業、海外営業、金属建材、水回り設備、管理の５部門に分かれます。
　ところで住生活グループは、10月、グループ統一ブランド「ＬＩＸＩＬ」の知名度を向上させるため、プロ野球の横浜ベイスターズの買収に名乗りを上げました。しかしベイスターズの株式を保有するＴＢＳホールディングスとの交渉が決裂し、買収を断念しました。

kgyasuhide

2010年11月01日23:15

カテゴリ: 日本経済; 経済と政局

菅内閣の支持率が40％に急落

　今日から11月です。『日本経済新聞』の１面に同社が10月末実施した世論調査の結果が載っていました。菅内閣の支持率は40％と、前回９月の調査から31ポイントの急落となりました。反対に不支持率は24ポイント上昇して48％となりました。６月の菅内閣発足後、不支持率が支持率を上回ったのははじめてです。
　菅内閣への不信の背景は、沖縄の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件への対応や、民主党の小沢一郎元代表の政治資金問題に関する国会招致への対応のまずさです。９月、民主代表選で小沢氏を破って再選を果たした直後には70％を超える支持率を保っていたのに、１ヶ月あまりのうちに、大きく信頼を失ったことが窺えます。
　それにしても民主党政権の外交政策、このままで大丈夫なのでしょうか。まず何よりも日米関係ですが、米軍普天間基地移転問題で同盟関係が揺らいでいます。鳩山前政権は、すでに合意済みの県内移設を否定して唐突に県外移転を打ち出したため、関係は冷え切ってしまいました。
　日米同盟関係悪化の足元を見透かして、今度は中国が尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件において、かなり強硬な態度を示しています。
　そして今日、さらに追いうちをかけるように、ロシアのメドベージェフ大統領が、日本側の中止要請を無視して、日本との係争地である北方領土の国後島訪問を強行しました。前日まで菅首相、前原外相らはハノイでの東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）関連会議に出席していましたが、この会議にはメドベージェフ大統領、ラブロフ外相らロシア関係者も出ていました。にもかかわらず、ロシアに対し、大統領の北方領土訪問への懸念を伝えることはなかったそうです。
　日米・日中関係に加え、日露関係にも懸念事項が持ち上がりました。旧ソ連時代を含め、ロシアの最高指導者が北方領土に入ったのははじめてです。ロシアは民主党政権の外交無策につけこみ、国後島・択捉島を返さないという意思を鮮明にしてきたといえます。
　普天間基地移設問題が暗礁に乗り上げて以降、外交は悪化の一途をたどり、八方ふさがりの状態に陥ってしまいました。

kgyasuhide

2010年10月27日23:35

カテゴリ: 日本経済; フードシステム

ＴＰＰ参加は日本経済にとってプラスかマイナスか　－乱立する試算－

　今日27日付の『日本経済新聞』夕刊に、アメリカなど９ヶ国が交渉を進めている環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定（ＴＰＰ）に関する内閣府・経済産業省・農林水産省の試算結果が掲載されていたので、ご紹介します。なお以下の試算は、2008年度の数値をもとに行われたものです。
　まず内閣府は、ＴＰＰに参加した場合、実質ＧＤＰを0.48％～0.65％（2.4兆～3.2兆円）成長させると見込みます。反対に日本がＴＰＰに不参加で、韓国が先行する場合を想定すると、2018年度あたりで、実質ＧＤＰは0.13～0.14％（0.6兆～0.7兆円）減少すると推計しています。
　次に経済産業省は、参加しなかった場合、2020年に自動車、電機・電子、産業機械の３業種において、ＧＤＰ相当で10.5兆円のマイナス効果が発生し、雇用も81.2万人減ると、危機感を募らせています。
　最後に農林水産省は、コメ、麦など主要農産品19品目について、すべての国と関税を撤廃すれば、現在約40％の供給熱量ベースの自給率は14％に低下し、毎年農産物の生産額が4.1兆円減少すると主張しています。さらに、農業と食品など関連産業への影響をみると、実質ＧＤＰが７兆9,000億円減少し、就業機会は340万人減ると見積もっています。そして環境保全など、農業の多面的機能を金額換算すると、３兆7,000億円が喪失すると主張しています。
　試算は各部署がそれぞれの立場で、様々な仮定を置いて行われたため、大きな食い違いがみられます。

kgyasuhide

2010年10月05日23:10

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

ゼロ金利復活

　日銀は今日５日開いた金融政策決定会合において、政策金利を現在の年0.1％から「０～0.1％」に引き下げ、ゼロ金利を容認する追加金融緩和を決定しました。ゼロ金利は実に2006年７月以来、４年３ヶ月ぶりです。また、１％程度の物価上昇が見通せるまでゼロ金利を継続することも約束しました。さらに、国債や社債など５兆円規模の資産の買い取りも表明しています。

kgyasuhide

2010年09月25日23:45

カテゴリ: 国際関係・外交; 経済と政局

尖閣諸島沖における中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件　逮捕の中国人船長を釈放

　尖閣諸島沖における中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件で、24日、那覇地検は逮捕した中国人船長を処分保留で釈放すると発表しました。那覇地検による処分保留の理由は、巡視船の損傷が航行に支障が出るほどではなく、負傷者がいなかったというものです。その上で「日本国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄を拘束して捜査を続けるのは相当でない」とも述べ、中国の強硬な反発が判断に影響したことを示唆しました。なお拘置期限前に釈放を決めた理由は「所要の捜査を終了する見通しが立ったため」ということです。
　こうして船長は釈放され、中国政府のチャーター機で25日未明に出国しました。
　それにしても那覇地検の釈放決定はあまりにも唐突で、理解しがたいものです。逮捕後船長は容疑を否認し続けてきましたが、漁船を故意に巡視船にぶつけたのは明白であり、否認を続けても起訴できる証拠は十分整っていたはずです。一般の司法手続きに従うと、検察が犯罪行為があったと認定しているのに容疑者が否認し続ける場合は、20日の拘留期間を使って調べを続けます。そして、否認のままで起訴となれば、初公判までの間も身柄を拘束するのが普通なのです。にもかかわらず、なぜこの一般的な司法手続きを途中で中断してしまったのでしょうか。ここには、政治的な判断が加わったと判断せざるをえないし、日本は圧力をかけ揺さぶれば、司法手続きを中断するというメッセージを国際社会に送ったことになります。今後の外交・安全保障に対し、重大なマイナス影響を及ぼすことが懸念されます。

kgyasuhide

2010年09月07日23:15

カテゴリ: 日本経済; フードシステム

2010年　農林業センサス

　農林水産省は今日７日、2010年の「農林業センサス」（速報値）を発表しました。この調査は、国内農林業の就業構造や農山村地域の実態を把握するため、1950年以降５年ごとに行われているもので、今回が13回目となります。
　今回のセンサスによると、２月１日現在の農業就業人口は2005年の前回調査時点より75万人減少し、260万人となりました。減少率は22.4％で、同手法で調査を開始した1985年以降で最大を記録しました。ちなみに1985年の就業人口は543万人であったので、25年間でみると、半減しています。
　一方農業就業者の平均年齢は、95年調査では59.1歳、前回調査が63.2歳、今回65.8歳と、年ごとに上昇しています。これは高齢化が進み農業をやめる人が増大しているにもかかわらず、若い後継者が育っていないことの反映ともいえます。販売農家数は前回から16.9％減少し、163万1,000戸になりました。
　さらに農家と法人組織を合わせた「農業経営体」の数も16.6％減の167万6,000でした。ただし、１経営体当たりの耕地面積は1.9haから2.2haに拡大しています。したがって経営の大規模化は進展しているようです。それでも、アメリカの83ha、フランスの37ha、ドイツの32haなどと比較すると話にならず、生産効率の悪さは否定できません。なお法人化している経営体数は16.0％増の２万2,000でした。
　それから、過去１年以上にわたって作付けされず、今後も利用される見通しのない耕作放棄地の面積は、2005年より１万ha多い40万haに達しました。これは滋賀県と同じ面積に相当します。
　みなさんもよくご存じのとおり、民主党政権は、戸別所得補償制度を目玉政策とし、農業再生を目指しています。個々の農家に税金を直接交付し、農業の崩壊を防ぐという発想です。今年度は総額5,600億円を投じ、コメ農家に10aあたり一律１万5,000円を補助することになっています。2011年度からは麦や大豆などの畑作へも拡大する方針です。
　農家に一定の所得を与えて離農を防ぐという計算ですが、これが農業の競争力強化や、担い手の確保につながるかどうかは不透明です。

kgyasuhide

2010年09月04日20:11

カテゴリ: 世界経済; 景気動向

2010年８月　アメリカの雇用統計

　アメリカの労働省が３日発表した８月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数（季節調整済み）は前月に比べ５万4,000人の減少でした。マイナスは３ヶ月連続ですが、減少幅は前月の改定値と同じでした。減少の要因は前月と同じく、アメリカ政府の国勢調査にともなう臨時職員の減少です。が影響した。一方、民間部門の雇用者数は６万7,000人増となり、プラス幅は前月の10万7,000人より縮小したことになります。失業率は前月を0.1ポイント上回る9.6％に悪化しました。
　このところアメリカの景気は減速し、雇用にも厳しさがあらわれていますが、上記の結果は事前予測ほど悪くありませんでした。非農業部門の雇用者数の減少は12万人程度になると心配されていましたし、民間部門の雇用者数の増加は４万4,000人とみられていましたので、これも予測を上回りました。失業率に関しては、予想通りだったようです。８月は就業者が増えたものの、それを上回る勢いで失業者が増加したということです。
　業種別の雇用者数に注目すると、建設業が前月比１万9,000人増となり、４ヶ月ぶりのプラスでした。教育・医療は４万5,000人伸びましたた。製造業は２万7,000人減り、昨年12月以来８ヶ月ぶりに前月比マイナスを記録しました。
　以上のように大きな注目を集めていた雇用統計がそれほど悪い値ではなく、景気後退の可能性も小さいことから、３日のＮＹダウは前日比127ドル83セント高の１万447ドル93セントで取引を終えました。

kgyasuhide

2010年09月01日23:15

カテゴリ: 日本経済; 経済と政局

民主党代表選告示

　今日から９月となりました。円高・株安がいつ収まるのかという経済問題に加え、政治の行方も全く先が読めなくなりました。
　みなさんも再三ニュースでご覧になったと思いますが、本日民主党代表選が告示され、菅直人首相（63）と小沢一郎前幹事長（68）の２人が立候補を届け出ました。他の立候補はなく、首相と小沢氏の一騎打ちとなります。
　夕方開かれた共同記者会見、私は大きな関心を持って聞きました。争点は、昨年の衆院選マニフェスト（政権公約）を修正するかどうか、小沢氏の「政治とカネ」問題への対応、米軍普天間飛行場移設問題に集約されると思います。
　私が最も注目したのは、マニフェスト（政権公約）の扱いと財源です。菅首相はかねてからマニフェストは現実に合わせて修正も必要という見解を持っており、「消費税は社会保障のあり方と財源を一体で議論する必要がある」と述べていました。ただ参院選での敗北を意識してか、消費税を上げるとまでは言いませんでした。
　一方小沢氏は昨年のマニフェストの忠実な実行を強調し、政策の優先順位をつけ、無駄を省くことで公約達成は可能という考え方です。来年度予算編成をめぐる概算要求を話題にし、財源がないという理由で歳出の一律１割削減の方針が決められたことを批判し、官僚任せを改めるべきだと訴えました。そして私たちは何度も聞いてきましたが、政治家が自らの責任で政策や予算の決定ができる「政治主導」体制の確立を主張していました。
　ところでマニフェストの象徴である子ども手当に対する見解は、菅氏は財源を確保しつつ月１万3,000円から上積みを行う、ただし上積み分は現物支給も検討するというものです。小沢氏は2011年度月額２万円、12年度２万6,000円を支給し、公約を守ると言っています。
　個人的に民主党政権に最も要望したいのは、「バラマキ」を廃止してほしいということです。私は子ども手当も高速道路無料化も高校無償化にも反対です。そんなお金があるのなら、例えば公立学校にエアコンを設置してあげたほうがよほどマシです。教育の充実は、大規模な奨学金制度を整えるほうがずっと効果的であり、財源も少なくて済むはずです。小沢氏は「無駄を省く」ことを強調していますが、私は選挙目的の「バラマキ」こそが無駄だと感じます。菅氏は消費税引き上げも考えているようですが、それは「バラマキ」マニフェストを完全にリセットしてからの話です。

kgyasuhide

2010年08月10日23:45

カテゴリ

国の債務残高が900兆円を突破

　財務省が今日10日発表した情報ですが、国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の債務残高が今年６月末時点で904兆772億円となり、はじめて900兆円台の大台を突破しました。ちなみに、2009年度の名目ＧＤＰは476兆円ですから、およそ1.9倍の大きさです。また７月１日時点の人口推計（約１億2,742万人）で計算すると、国民１人当たりの借金額は、約710万円に達します。
　これほど巨額の借金が積み上がった背景にあるのは、不況対策として大量の国債発行を余儀なくされこと、そしてこれと表裏一体の関係にありますが、税収が落ち込んだことです。

kgyasuhide

2010年07月17日23:10

カテゴリ: 世界経済; 金融・株式

ダウ平均261ドル安　円相場が急伸

　16日のニューヨーク株式市場のダウ平均は大幅に続落し、前日比261ドル41セント安の１万97ドル90セントで取引を終えました。７月の消費者態度指数（速報値、ミシガン大調べ）が市場予想75程度をおよそ10ポイント下回る66.5となり、年後半に米景気が減速するとの懸念が強まったためです。前日には米製造業の業況指数が悪化が報じられていました。さらに米シティグループなど金融大手の４～６月期決算が振るわず、銀行株の下落が目立ちました。また、同日朝発表の決算で売上高が市場予想に届かなかったゼネラル・エレクトリック（ＧＥ）株も売られました。
　もっともダウ平均は14日まで７日続伸しており、利益確定売りが出やすかった面もあります。
　一方、ニューヨーク外国為替市場ではドル売りが加速しました。円相場は急伸し、前日比85銭円高・ドル安の１ドル＝86円50～60銭で終了しました。アメリカ景気の先行きが楽観できず、ドルを売って円やユーロを買う流れが強まったわけです。
　景気の減速でアメリカの長期金利が低下し、日米の金利差が縮小するとの観測も円買い・ドル売りを誘発しました。

kgyasuhide

2010年07月12日23:50

カテゴリ: 日本経済; 経済と政局

第22回参議院選挙　与党過半数割れ

　政権交代後、初の大型国政選挙になる第22回参議院選挙が昨日11日投開票されました。民主党は改選54議席を大きく下回って44議席しか獲得できず、国民新党も含めた与党の議席は過半数を割り込む結果となりました。一方自民党は51議席を確保し、改選議席で第１党になりました。
　菅直人首相は継投する意向を表明していますが、国会は衆参各院で多数派が異なる「ねじれ」状態になり、厳しい政権運営を迫られます。つまり衆院で可決された法案が参院では否決される事態が起こります。参院で否決された法案は衆院で３分の２以上の賛成があれば成立しますが、現与党はそれだけの議席がありません。自公政権とは異なり、衆院再可決の道は閉ざされているのです。
　民主党は参院選直前に鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長が辞任し、支持率は回復したものの、首相の「消費税10％」発言で消費増税が争点化し、苦戦しました。党内では首相の責任を問う声が出ており、９月の代表選に向け、党内対立が激しくなる可能性もあります。
　みんなの党は民主党政権に対する批判票を吸収する形で躍進し、10議席を獲得して存在感を高めました。
　その他公明党９議席、共産党３議席、社民党２議席ですが、３党とも改選議席を下回りました。新党改革とたちあがれ日本はともに１議席でした。
　それにしても３年前の参院選後、当時の安倍晋三首相が置かれていた状況と現在菅直人首相が置かれている状況は極めてよく似ています。2007年の参院選で国民は年金の納付記録漏れや相次ぐ閣僚の不祥事に嫌気がさし、安倍政権に落第点をつけました。その結果参院で与党が過半数割れを起こし、国会運営で行き詰まります。安倍氏は首相継投を表明しますが、党内から責任論が出始め、求心力の低下を招き、結局選挙後１ヶ月あまりの後、政権を投げ出すことになりました。
　今回の菅首相の場合はどうでしょうか。菅氏は野党との関係ばかりではなく、「小沢民主党」対策にも力を注がなければなりません。「しばらくは静かにしていただいたほうが、ご本人にも、民主党にも、日本の政治にとってもいい」と言われた小沢氏が、このままじっとしているはずがありません。
　これから菅首相は、衆参の「ねじれ」と小沢氏との関係の「こじれ」に神経をすり減らすことになりそうです。

kgyasuhide

2010年07月02日23:45

カテゴリ: 日本経済; 景気動向

2010年６月の日銀短観

　日銀が昨日１日発表した６月の短観によると、企業の景況感を示す業況判断指数（ＤＩ）が大企業製造業でプラス１となり、３月の前回調査（マイナス14）から15ポイント改善しました。改善は５期連続のことです。またＤＩがプラスとなったのは、リーマン・ショック前の2008年６月以来、２年ぶりのことです。
　ここで業種別の動向を確認しておきます。まず注目すべきは、自動車が前回のマイナス２からプラス18に20ポイント改善し、電気機械もマイナス12からプラス６へ18ポイント好転しています。これは、日本経済を牽引する主力産業が順調に回復していることを示しています。汎用機械はマイナス19からプラス８へと27ポイントも改善していますが、設備投資の復調を反映した結果と考えられます。繊維はマイナス12でまだ水面下の値ですが、前回はマイナス43とかなり厳しい値だったので、大幅な好転とみてよいでしょう。ようするに、新興国経済の力強い回復に支えられ、主に輸出関連企業の活動が調子を取り戻してきたというわけです。
　内需型産業、すなわち大企業非製造業のＤＩも前回から９ポイント改善してマイナス５を記録しました。特に宿泊・飲食サービスがマイナス38からマイナス17へ大幅改善です。卸売はマイナス13からプラス１へ、小売もマイナス16からマイナス11へと改善しており、商業の景況感もよくなってきています。
　2010年度の設備投資計画は、大企業の製造業が前年度比3.8％増、非製造業が4.6％増でした。前回の調査ではマイナス予想だったのがプラス予想に転じました。設備過剰感も薄らぎ、設備投資も動き始めたようです。この背景には企業収益の回復があります。経常利益は大企業製造業で前年度比43.8％増、非製造業で8.7％増を見込んでいます。
　雇用の過剰感も和らぎつつあります。「過剰」から「不足」を引いた雇用人員判断ＤＩは大企業製造業で前回よりも７ポイント低いプラス10でした。もっとも2011年度の企業全体の新卒採用計画は10年度比で5.5％減の見通しで、本格回復と判断するのは難しそうです。

kgyasuhide

2010年06月22日23:40

カテゴリ: 日本経済; 構造改革

菅内閣　「財政運営戦略」を閣議決定

　菅内閣は今日22日、2020年度までの財政健全化策などを示した「財政運営戦略」を閣議決定しました。特に基礎的財政収支（プライマリーバランス）については、2015年度までに赤字幅を半減し、2020年度までに黒字化する目標を設定しました。しかしこの目標を達成するための具体的な歳出削減や歳入増の手法の明記は先送りされています。また菅首相が表明した消費税率の引き上げ方針も、「税制の抜本改革で早急に具体的内容を決定する」との表現にとどめています。
　一方2011～13年度予算の大枠を示す「中期財政フレーム」では、国債の利払い費などを除く一般歳出を今年度（71兆円）並みに抑制する方針を明記しています。
　2011年度予算での新規国債の発行額は、今年度の44.3兆円を上回らないよう「全力をあげる」と述べています
　加えて新規施策を実施する場合は、恒久的な歳出削減か歳入増で財源を確保するという基本方針を盛り込みました。
　同時に公表したマクロ経済の中長期試算では、３年間歳出を抑制したとしても健全化目標を達成するには、2015年度で約５兆円、2020年度で約22兆円の歳入不足となる見通しであり、もはや増税は避けられない状況です。
　ここであらためて国の債務残高を確認しておくと、国債や借入金などを合計した「国の借金」の総額が2009年末時点で871兆5,104億円に達しています。2008年末に比べ 24兆8,199億円増え、過去最大を更新しました。今年１月時点の推計人口で計算すると、１人当たりの借金は約683万円です。
　このような危機的状況にもかかわらず、10年もかかって財政悪化に歯止めをかけるという悠長な方針で大丈夫なのでしょうか。歳出を抑え、歳入を増やすということは国民に痛みを求めることにほかなりません。この痛みについて全くふれられていないのが気がかりです。また、いつ何％に引き上げるのか、低所得層にどんな配慮を行うのか、増収分の使途は何かなど、肝心な点が不明確で、逃げ腰の色彩が強いように思えます。

kgyasuhide

2010年06月19日23:35

カテゴリ: 日本経済; 経済と政局

菅内閣が発足

　民主党と国民新党による菅連立内閣が今日８日、正式に発足しました。菅直人首相は就任会見で、経済、財政、社会保障を立て直して「最小不幸社会」を目指す考えを明らかにした。
　菅氏はまた、「政治の役割は、貧困や戦争など国民や世界の人が不幸になる要素をいかに少なくしていくかだ」と決意表明しました。
　さらに「強い経済、強い財政、強い社会保障を一体として実現する」という目標を示し、そのための成長戦略として、環境分野や医療・介護分野への重点配分や、アジアの成長を日本経済につなげる考えを強調しました。
　また「第三の道」と呼ばれる新成長戦略を打ち出しました。すなわち公共事業中心の政策（第一の道）と「行き過ぎた市場原理に基づき、供給サイドに偏った生産性重視の政策」（第二の道）を否定し「経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとし、それを成長につなげ」るという方向性を提唱しています。

kgyasuhide

2010年06月02日23:15

カテゴリ: 日本経済; 経済と政局

鳩山由紀夫首相が退陣表明

　鳩山由紀夫首相は今日２日午前、退陣を表明しました。国会内で緊急に開いた党両院議員総会で、沖縄の米軍普天間基地問題の迷走、社民党の連立政権離脱や「政治とカネ」の問題で混乱した責任をとって辞めると述べました。鳩山首相は民主党の小沢一郎幹事長にも辞任を求め、小沢氏も了承しました。民主党は４日に後継首相となる新代表を選出することを決めました。党内では後継に菅直人副総理・財務相らを推す声が出ています。
それにしても2006年以降、日本の首相は５年連続で交代しています。このうち衆院選の結果を踏まえた交代は昨年の鳩山内閣の誕生時だけで、他のケースは（今回も含めて）政権運営が行き詰まり、１年続かずに退陣というものです。
　鳩山首相は高い理想を持っていましたが、現実感覚が全くなく、責任感、判断力に欠けました。経済や外交の課題を正しく把握し、解決策を立案し、無理のないところから着実に実行してゆく統治能力が欠如していました。官邸スタッフに一体感はなく、各自がバラバラの発言をするばかりで、何も決めることはできませんでした。さらには内閣と党の間の意思疎通も欠き、政策は迷走を重ねました。さらに民主党色（政治主導）を出すために官僚を排除し、正確な情報や過去の経緯を分析できずに有効な戦略が立てられなかった点も看過できません。首相の指導力不足がここまで明らかになった以上、退陣はやむを得なかったといえます。

kgyasuhide

2010年05月25日19:54

カテゴリ: 日本経済; 金融・株式

日経平均株価、9500円割れ

　今日の日経平均株価は、前日比298円51銭安の9459円89銭で取引を終えました。300円近くも急落した原因は、まずスペインの中央銀行（スペイン銀行）が22日貯蓄銀行を公的管理下に置き、ヨーロッパの金融システム不安に対する警戒感が台頭しました。この貯蓄銀行はカハスールといいますが、不動産融資の焦げ付きで経営難に陥っていました。スペインでは不動産バブルが崩壊し、カハスールに続く銀行が出るのではと、不信感が広がっています。もっともこのニュースは昨日の取引時間中にも伝わっていたのですが、24日、ドル建て３カ月物ロンドン銀行間取引金利（ＬＩＢＯＲ）が0.51％と、昨年７月16日以来の高水準を記録したため、市場関係者はヨーロッパの債務問題、金融問題が想定以上に厳しいと認識し、株を売り急いだのだと考えられます。
　もうひとつ心配なのは、朝鮮半島情勢です。韓国の哨戒艦沈没事件に対し、李明博大統領は断固たる措置をとると表明しています。これに対し北朝鮮の金正日総書記は、軍部に戦闘の用意を指示したという情報も飛び交っています。朝鮮半島の緊迫を受けて、韓国総合株価指数が一時前日比4.5％まで下げ、ウォンも売られました。
　ヨーロッパにおける財政・金融不安、アジアでは一触即発の朝鮮半島情勢が大変気がかりです。どちらも国際社会が一致しなければ解決できない難問です。

kgyasuhide

Links