kichikata

Living in the city :)

4 7月

天井崩壊 その(3)

ついつい、しつこくなってしまいました。

調べてみると次々「気になること」がでて来るもので・・・。

それらの中には、建築設計者として放っておく事の出来ないものも含まれていました。


今日取り上げるのは「日本科学未来館の天井改修工事について」です。


昨日のコラムにも書きましたが、当建物のエントランスホールの天井の一部が崩落し、某大学教授のアドバイスにより、安全性の高い膜天井に改修されることになったということです。このこと自体は特に気になることではなかったのですが、この施設のHPにアップされていた”科学コミュニケーター天井修復レポート”なるPDFファイルに目を通してみると・・・「ちょっと黙っていられない」内容の文章に出くわしたのでした。


それらは、当施設に所属する”科学コミュニケーター”なるスタッフによるレポートで本日の時点で①~⑥まであります。夫々異なるスタッフによって書かれているようです。

http://www.miraikan.jst.go.jp/info/110422166213.html


どのレポートにも共通しているのが、今回採用された「膜天井」の斬新性、安全性を強調している事です。

それ自体は正しいことであり問題は無いのですが、私が先ず「気になった」のは②のレポート中の以下の表現です。・・・「地震が起きても、とにかく命さえ助かればよい。建物が倒壊しなければ、最低限の安全は保たれる。」このようなマインドが専門家の考えの根底にある・・・という件です。


読み方によっては私を含む建築設計者への侮辱とも受け取れる表現です。言うまでも無く、我々はそこで生活する人達の安全を軽視した設計をするつもりはありません。と同時に建築に限らず世の中の「設計(デザイン)」という行為は、利便性、意匠性、経済性、環境への影響、そして安全性等等のバランスを取りつつ行われるべきものです。


さらに同レポートは、・・・某大学教授は、「この考え方」はもう古いと言います。・・・と続きます。こういう考え方で建物を設計することが現時点で一般的であるような言い草です。


さらには、・・・21世紀の地震大国日本が目指すべきものは、命の「安全」が確保されるだけの建築ではなく、大地震が来ても次の日にはそこでまたそれまで通りの日常が送れるような、「安心」できる建築である---これが、某大学教授の提案する新しいマインドです。・・・確かに「壊れてしまった」という現実を突きつけられれば、「これまでの想定は十分でなかった」と再認識せざるを得ません。先ほどのバランスを調整する必要があるということでしょう。その事で、我々の中に「安心」できる建築を求めるマインドが欠けているということにはならないと思います。


続いて、・・・地震が来たとき、また落ちかねない天井に戻しただけでは「安全」の実現すら危ぶまれます。・・・ここまで言われると、何でそんなに「膜天井」に拘るんだ?と、逆に質問してみたくもなります。


昨日も書きましたが、施設設計者の日建設計は天井の設計において国交省仕様以上の内容を採用し、更に今回の事故を受けて、改善した仕様を提案したけれども館長の毛利氏によって却下された・・・とあります。当施設がどの程度の地震力を受けたかは判りませんが、天井崩落が一部で収まったことは、この設計者の配慮に拠るものであったかもしれません。更に、地震による自身の設計した建物の被害状況を見極めた上で提示された「改善案」というものは相当に評価されるべきではないかとも思います。


その辺りの話を明確にすることなく④のレポート では、・・・今回の震災における未来館では、剥がれ落ちた天井はほんの一部分。大部分はそのまま残っているので、その復旧さえ行うのであれば作業は簡単で、4 月にはもう開館しているはずでした。しかし、そこに某大学教授が待ったを掛けま した。「原状復帰では、またいずれ同じ事故が起こる」と。そこで私たちは先生と議論を重ねた結果、使えるはずだった残りの天井も敢えてすべて外し、ゼロから「安全」と「安心」のための膜天井を張ることを選んだのです。・・・と、建物を新しく作る時点での議論であればともかく、ここで余計に掛かる改修工事予算は何処から出てくるものなのでしょうか。これは館長が毛利氏というスーパースターだったから許されることなの?と勘繰って見たくもなります。


そもそもこの建物のエントランスホールは細長い平面形状の割りに天井が高く、一般の利用者にとってはそれが膜であろうが、メッシュ天井であろうが然程気にならないものでもあるでしょう。


現時点で一番新しい⑥のレポート には、・・・未来館で新しく張られる膜天井、最初はアルミで出来た四角い枠に膜を張り、それを上階裏の構造に取り付けるという予定でした。しかし、実際にとっている手法は、向かい合う2 本のアルミのみで膜を張るというものでした。これは何故なのでしょうか。実はこれもまた、某大学教授からの提案でした。アルミというと金属の中では軽いイメージがありますが、それでももし高所から落下することがあれば、人的被害は相当なものになります。そこで、その危険を少しでも減らし、より安全性を高めるために天井にするため、金属材を減らすことを助言されたのです。それは一見、簡単なことのように思えます。しかし、そこには施工上の困難が生じます。四角い枠を用いる手法であれば、あらかじめ枠に膜を張ったユニットを作っておいて、それを取り付けるだけですが、2 本のアルミで両側から支える方法では、それは不可能なのです。そのため、地上25 m という非常に不安定な足場の上で、アルミの取り付けと膜を張ることを同時に進めることになりました。 ・・・少し長い引用になりましたが、詳しい状況の確認に限界がある中での話しですが、四角い枠は危険で二本の棒なら安全というのも理解に戸惑います。自身が⑤のレポート で安全性を認めているベルリン スタジアムのメッシュ天井の話とも整合しません。

 そして今日のこのコラムで私が最も「気になった点」は、その安全性の向上に対する評価が(少なくとも私にとって)曖昧なことを実現させるために、作業員の危険の増大が「かかわった人たちの想い」という言葉に置き換えられている部分です。


一連の記事、レポートを読んで感じたことは、構造計算書偽造の発覚以来、我々建築設計者に対する社会的信頼が如何に失われつつあるかということです。この事は重大な事実として認識し、信頼回復の実現のためには、我々もこれまでのやり方に固執することなく、このコラムに出てくる某大学教授のような科学技術者とも協力し合っていく事が大切なんだろうと思います。


2 7月

天井崩落 その(2)

昨日自分で書いた文章を読み返していて、なんだか一寸ふわふわしていて取りとめが無い感じを覚えたもので・・・今日も引き続きその話題です。


私が昨日のコラムで伝えたかったことの主旨をもう少し補足して説明します。

某大学教授の行った実験にて、人頭模型は強固な架台(H形鋼+鉄板)に固定されています。

この状態だと、天井材が衝突した際に人頭模型に生ずる変位はせいぜい1~2㎜前後でしょう。


では実際にあの勢いで我々の頭に天井材が衝突した場合はどんな感じでしょうか?

実験の様子からは、この人頭模型には首から下が省略されているのが判ります。

現実の我々の体には首だけでなく、背骨、腰、膝、足首・・と多くの可動部分が存在します。


結論から言うと、現実世界においてはあのアニメーションのような形で我々の頭部が衝撃を受け、天井材が粉々に破壊されることは無いということです。

但し、8mの高さから落下した天井材が持っている運動量が相当のものであることに間違いはなく、その衝撃を受けた瞬間、頭部は勢い良く床方向へ移動するでしょう。上手く受身が取れれば幸いですが、バランスを失い頭を床に叩き付けるような危険性も考察されるべきでしょう。


同時に落下する天井材の「落ち方」にも注目する必要があると思います。

ボードの小口、或いは角が我々の頭部を直撃した場合には、先の研究におけるNahum氏の実験以上に荷重が集中する可能性もあるでしょう。その結果、頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷等を引き起こしたという想定も可能であると

思います。


この辺りの検証の手法としては、被害者を治療した医師等へのヒアリングも有効だと思います。


本日読ませていただいた日経BP社のコラムには、同じくこの研究者からのアドバイスにより天井が崩落した日本科学未来館の天井を膜天井に改修するというものがありました。

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20110628/548311/?P=1

それはそれで素晴らしいことだと思います。

ただ、この施設を設計した日建設計が国交省の仕様以上の対策を行い、更に改善する提案を行ったにもかかわらず却下された・・・という部分については、具体的に夫々がどのような物であったのか、説明が無いのが非常に残念です。

この研究者の方については、今後もこの研究内容を極め、より良い建築の実現に寄与してもらえればと思います。


1 7月

半年振りに再開だ!

蒸し暑い東京から、徒然なるままに世の気になることを自分勝手な解釈を含みつつお届けします。

とは言いつつも、自分は建築設計を生業とする技術者の端くれでもあります。

書いたことには責任を持ちますし、自らの工学的判断に則って書いていくつもりです。

あらゆる方面からのご指摘、ご批判も出来る限り対応させていただく所存です。

 

今日のトピックは「天井」です。

震災関連の記事がこの業界を賑わす中、ふと気になる記事に出会ったのです。

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20110624/548234/

日経BP社の配信する ケンプラッツ という建築専門のコラムの一部です。

先日の地震で茨城空港の天井の一部が崩落したことを報じています。

 

実は既にこの記事の読者コメント欄に「kichikata」の名前で投稿しているのが本題です。

 

本題の趣旨は、決して天井材崩落の危険性を否定したり、軽んじたりするものではありません。

記事中の「某有名大学教授の推計によると天井材の崩落による人体頭部への衝撃荷重は約5100Nであり、この値は頭頂骨の崩壊荷重2450Nを優に超える値・・・」というくだりを読んで感じた違和感がきっかけでした。

 

読者コメントへの投稿時に確認できたのは、頭頂骨の崩壊荷重に関する文献でした。

これは記事中の大学教授が自身の論文の中でも引用しているもので、ドロップタワー型の衝撃試験機を用い頭骸骨の強度を検証しているものです。

(因みにドロップタワー型衝撃試験機とは: http://www.instron.jp/wa/product/Drop-Weight-Impact-Testing-Systems.aspx?ref=http://www.google.co.jp/url )

ネットではNahum氏の論文自体は参照できませんでしたが、実験の概要は頭骸骨の実物へ先端が1インチ平方に加工された錘を落下させ、破壊された際の衝撃荷重を測定したものであることが想像されます。

 

私が感じた違和感とは、このような錘と頭骸骨を用いた実験と、崩落した天井材による人体損傷をどうやって関連付けるのだろうか?ということでした。Nahum氏の文献から「頭蓋骨が1インチ平方(直径28ミリの円)に2450Nの衝撃荷重が掛かると陥没骨折、脳挫傷等をもたらす・・・」という事実は把握できましたが、その時点で「崩落した天井材がもたらす衝撃力が約5100Nに及んだ恐れがある・・・」という説明の根拠が何処にも見当たらなかったのです。(天井材がどんな大きさで落ちてくるのか?面に平行に落下するのか、それとも小口面から落ちてくるのか?仮定する事さえ容易でないように思われました。)

 

何か「モヤモヤ」としたものを感じながら、自分のコメントに共感してくれる読者の数が増えている事など気にしていると・・同じケンプラッツのコラムに以下のような記事が追加されていたのです。

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20110628/548313/?P=1

もしかしたら、日経BP社が私のコメントに呼応する形で掲載してくれたのか?とも思い、早速目を通してみると・・・結果は色々な意味で「予想外」なものでした。

 

記事は、九段会館の天井崩落により死亡者が出たこと、天井崩落の危険性をいかに具体的に検証するかが今後の建設現場のあり方に重要な意味をなす・・・という主旨で書かれています。そこで再び引用されているのが、先出の某有名大学の教授の研究でした。そして、その記事の2ページ目を見たとき、「私はこの文章を書かなくてはいけない・・・。」という確信のようなものを感じました。

 

そのページには「アニメーション」が表示され、ガイドワイヤーに沿って落下する90㎝角程度の天井材が、床に固定された頭部模型に衝突し破壊される様子が見られます。確認することが出来なかった「約5100Nの衝撃力」の根拠となる実験はこのようにして行われたようです。

 

ここで私が感じる疑問点を整理すると、次の3点となります。

1.天井材の落下の仕方が不自然。

ガイドワイヤーなど使わずに、自由落下させた場合どうなるのか?

崩落片の大きさの設定は90㎝角で適切なのか?

空気抵抗の少ない方向を向いて落ちる確率は高くならないか?

或いは「風に舞う落ち葉」のように斜め方向から人体へ衝突する危険性は無いか?

先の茨城空港の例ではテレビカメラが回っていたとのこと・・・。より正確な検証を期待します。

2.頭部模型の設置状況が不自然。

実際には、立っていても、座っていても天井材の衝撃を受けた瞬間頭はその方向へ相当量移動します。

衝撃力は、この移動距離に反比例して小さくなります。

3.Nahum氏の実験とは条件が異なり、数字を比較すること自体が無意味。

アニメーションからも判るようにこの実験の衝撃は頭頂部全体に掛かっています。

断言は出来ませんが、この実験では頭蓋骨が陥没骨折することは無いと思います。

 

このコラムを読んでいただいた皆様に、私がお伝えしたいのは

「それってどうなの?」と思える感受性を何時も持っていたい・・・ということです。

 

決して記事中の研究者の行為を否定するものではありません。建築業界において、この分野が未開拓であるのは事実でしょうし、私が確認した論文は2009年のものでしたので、その後改訂されているやも知れません。

ただ、加速度センサーを内蔵したダミー人形は自動車業界では既に一般的に利用されているような状況もあるようです。スーパーコンピューターを用いたシュミレーション技術等も行く行くはこの分野の研究の助けにもなるでしょう。業界の壁を超え、生活者の利益となる研究成果がもたらされることに大いに期待します。

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