2009年11月20日

温突(オンドル)

韓屋

 昔、男三人で韓国の田舎町を適当に巡る旅行をした。確か雪のちらつく1月の寒い季節だった。今の韓国の町の景色とはずいぶん違っていて、電車やバスの曇りガラスから眺める田園と民家は色を失った荒涼たるもの悲しさがあり、田舎町の駅前と言っても、どこか化粧のはげ落ちた陰鬱さがあった。適当に選んだ田舎町に降りて、まずは駅前の旅館をみつけては、泊まり歩いた。旅館はほとんど韓式旅館だった。韓式旅館と言っても、立派な木造韓屋ではなく、日本の駅裏に古くからあるような味も素っ気も無い普通の旅館である。しかし、そういう宿の部屋に入って出会うオンドルのぬくもりは、冬の旅にはとてもありがたいものだった。部屋の床はコンクリートに厚手のビニールのようなシートが貼付けてある感じで、部屋の隅はそのビニールシートがオンドルの熱で割れていたりする。床の隅角はなぜか壁紙が貼られた壁とアールにつながっている所も多い。じゅうたん等は敷かれておらず、部屋には安物の小さな平机と棚がぽつんと置いてあり、部屋の片隅に派手な色の布団がたたんで置いてあるだけで押入れも無く、ただ無表情につるつるとした四角い部屋があるだけだった。(続く)


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 もちろん、ストーブもこたつも無く心細いが、部屋はほんわか温かい。オンドルと言っても、宿は平屋ではないので、伝統的な床下に石板を敷いて釜口で焚いた薪や練炭の煙を這わせるような類いではなく、温水床暖房だと思われる。座布団が無い宿もあり、僕らはオンドルの床にじかに座る。最初は温かさが心地よいが、だんだんとお尻のあたりが熱くなってきて、へたをすると低温火傷状態になるのではと心配し、敷き布団を部屋の真ん中に持って来てそこに座った。布団は薄い。逆に言えば床の温かさを遮断しないためなのだろう。部屋に布団を縦横に並べ三人が寝るのだが、床の熱にはムラがあるところもあって、熱い場所とそうでもない場所がある。布団からうっかり手を出していると手が異常に熱くなる事がある。僕らは床自体が熱を持っている事に慣れていないので、口も乾くし、ごそごそとなかなか寝つけなかったりする。それでいて、明くる朝また再び、雪降る寒い町に歩き出すと、今宵の宿のオンドルをなぜかまた恋しがるのである。


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