2-sec.参【気絶したい・・・】

僕が転院してすぐに入った二人部屋は、
仮住まいということだった。


この部屋と、共用トイレとの距離は、
健康な人だったらベッドから10秒で着く。


僕は、
はいずるようにして数分かけて、向かった。


そこまでして・・・と思われる方もいるだろう。
寝ていることが、怖いのだ。


痛みで、とても眠ることなどできない。


このまま、動けなくなるんじゃないか
この痛み、、、逃れたい


思いは揺らめき、結局僕は、トイレという
目標に向かい、歩いていくのだった。


生の執着。
ベッドは墓標だと、形而下的に感じていたのだと思う。
そして、医学への反発。


なぜ、今、僕を救ってくれないんだ・・・僕の時間は、
一秒が10分にも感じられるのだった。



気絶したい。



何も考えたくない・・・



そんな思いにかられると、否定するために決まって考えたのが
彼女の美穂のことであった。


白いうなじ、やわらかい唇。
はっとするような黒い髪に僕はくすぐられ、
彼女の全身をぎゅっと抱きしめる。


幾度も幾度も、僕は彼女の頂点を目指すのだが、
いつしか痛みに対する抵抗へと連れ戻される。


耐え切れなくなった僕は、隣にいる母を呼んだのだった。


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