先日のキャンプで仲間のY氏が古いシングルストーブを持ってきていた。
前から漠然とヴィンテージなストーブには惹かれてはいたのだが、古いカブ同様、古いストーブは手入れがメンドーそうだ、という理由で見て見ぬフリをしていた。
しかもガソリンということもあって、点火もひと手間必要になる。

ガソリンストーブは点火する前にポンピングやプレヒートと言われるガソリンを気化しやすいようにタンクを温めてやる「儀式」が必要だ。
イマドキの優秀なガスストーブのように真冬でもワンプッシュで一発点火というわけにはいかないが、その手間は便利な世の中においては味わいとなる。

そして古いストーブは材質は真鍮で、使い込むと風合いが増す。
もちろん磨けば輝きを取り戻すことも可能。

今まで古いストーブは雑誌などの写真でしか見たことがなかったので、ホンモノを目の前にした時はその質感と、燃焼音に興奮を隠すことができなかった。

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ちなみにオプティマスの123Rは今でも新品で買うことができる。
驚いたことに100年以上前からほとんど構造は変わっていないらしい。
それが今でも新品で手に入るってすばらしい。

どんなモノでもそうだが、メーカーは常に新しいモノを生み出すことも大切なのはわかるが、昔ながらの商品もテクノロジーとしてひとつの完成形である場合、ファンがいる限りは少量でもいいので生産を続けてほしい。
それはメーカーがブランド化するには必要不可欠ではないかと考える。
日本のメーカーはジャンルは問わずとも一流メーカーは数多く存在するが、ブランドがほとんど存在しないのは、新製品を出すたびに旧製品をすぐに絶版化していることが理由としてあるのではないかと思う。
ブランドとは必ずしも性能の良し悪しだけではなく、歴史の重みも含まれると思っている。

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ヴィンテージストーブ。
耽美な響きである。

Y氏によると、旧ソ連製だったか旧東ドイツ製だったかの8R(かつてオプティマスが製造していた名ストーブ)を模した軍用のヴィンテージストーブが火力も強くオススメだと言っていたので、家に帰ってヤフオクで探してみた。

ジャンク品から未使用品まで色々な銘柄のヴィンテージストーブが出品されていて、当然値段もピンキリだ。

僕は完全な素人なので、個人が出品している妖しい品は避けて、店舗が出品している信頼性の高そうな品を中心に物色していた。
教えてもらった旧ソ連軍のものらしきストーブも出品されていた。
しかし同じページに掲載されていた古いプリムスのものが気になった。

プリムスは昔の探検本を読んでいると必ず出てくると言っても過言ではないストーブブランドだ。
人類が一度も足を踏み入れたことのない地理的な空白がまだまだ存在していた頃から活躍するストーブ。
そんなブランドに惹かれて、最新のガスストーブはプリムスを買うことに、前から決めていたのだが、今目の前にヴィンテージストーブが出品されており、クリックすればそれが手に入る状況を前に、僕はフリーズしていた。

旧ソ連や旧東ドイツのような共産圏の軍が使用していた道具に、怪しげな魅力を感じるのは認めるところではある。
戦争はあってはならないのは言うに及ばずだが、人間が極限の精神状態で使う道具には美しさを感じてしまう人が多いのは、ミリタリーマニアが多いことからも用意に想像できる。

しかし今回ははじめてのヴィンテージモノ。
東側諸国の妖しくマニアックなモノよりも、メジャーどころの正統派を選ぶほうがいいと判断した。

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で、今回手に入れたのが№71というモデル。
1938年ぐらいから製造されており、年代によってビミョーにカタチは違う(3種類ある)らしいが、僕が手に入れたモノは戦後のモデル。
プリムスの製造・販売元がヨート社から名前を変更してバーコ社になった時のものだ。
バーコ社は1955年から1962年までプリムスの製造権を持っていたので、その間に製造されたモノになる。

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戦前のモノと見た目の違いで一番わかるのは、缶に貼られたロゴ。
それと缶自体のデザインはヨート社時代のものと違い、縦にスリットが入っている。

ちなみにバーコ社は1962年にガソリンストーブの製造権をオプティマス社に譲渡した。
その影響でオプティマスの№80というモデルには、缶のロゴはオプティマスと書かれているが、ストーブにはプリムスの刻印が入っているモノもあったりして、けっこうややこしいことになっている。

オプティマスの№80は前期モデルと後期モデルがあり、後期のものは刻印がデカールに変更されていたりするらしい。
このあたりの「ビミョーな形の違いで、ある程度年式がわかる」というのは、古いカブと同様、色々な事情を想像できる楽しみもあるので、奥が深い世界だ。

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まあ、そんな感じの歴史を持つストーブなのだが、実はまだ点火すらしていない。
ぶっつけ本番でキャンプ時に使う方がワクワク感があってネタになりやすいだろうから、それまで点火はおあずけにします。