片瀬ヒロシの危険な話

今私たちが知るべきことを、広瀬隆さんの著作「危険な話」(1987年発行、新版1989年)と「東京に原発を」(1986年発行)の内容を中心に記事にします。 書籍は古いですが、当時から原発事故の必然性について訴えているパイオニア的書籍で、反原発運動のバイブル的な位置づけです。今こそ再度注目を浴びるべき書籍です。原子力発電に興味ある人は必読です。

奇怪な漁業補償―都市に原発を建てるべき理由 3

都市に原発を建てるべき理由 3
自然環境の保護―奇怪な漁業補償

漁業補償ほどおかしなものはない。実は奇怪なものである。

さる港町で漁業が営まれていたとする。

この町の漁民は当然のことながら、生活を防衛するために漁業権を持つ。この漁業権があることによって、漁場が荒らされないように海を守り、消費者のために魚を確保してくれているのだ。

これが平常の漁港の姿である。

ところがある日、その近くに原発を建てることになった。そうなると漁民は大切な漁場を奪われ、生活が脅かされる。

その見返りとして電力会社は、漁業権を「補償金」の名目で買い取ることになる。これで漁民の生活は保証され、電力会社は原発を運転できる。

しかし、よく見ると、周囲には鉄条網が張り巡らされ、ナチの収容所ばりに電気が流されているではないか。しかもその近くの海では釣りが禁止されている。いつの間にか、電力会社が漁業権を持っているのだ。

電力会社は魚をとらない。まことに奇怪なのは、この状態における漁業権だ。漁民に漁業権が与えられたのは、魚をとるから与えられた権利であって、魚をとらない人間にそのような権利は発生しないはずである。漁民が漁業権を「売った」瞬間に、漁業権はこの世から姿を消してしまう。つまり幻の取り引きが平然とこの世でおこなわれ、漁業が衰退してゆこうとしているのが今日の姿である。

近代の電気生活を守るために、うまい魚を食べられなくなったり、寿司のネタがなくなる、という現象は、本末転倒もはなはだしいことだ。人間の生命を支えるのは食生活である。その食生活を支える一つの手段にすぎない電気が、食生活そのものをおびやかし、その逆行現象に気づかずに漁業が衰退してしまえば、これを黙って見過ごすことはできない。

原発は当然、都会と共存するべき性格を持っている。都会人がそれを「危険だから」と言って拒むなら、なぜ漁民がこれを受け入れられよう。あまりに身勝手な発想である。

「都会人だけが体裁よく生活を楽しんでいればよいのか」

言うまでもなく、そのような考えは成り立たない。甘い汁だけ吸って、あとは知りませんなどと、誰が言えるだろう。しかし、大都会に原発を移せば、そのような良心の呵責に悩む必要もなく、安心して電気を使えるので、精神衛生上きわめて良いのである。

この原子力発電所が人類史上に残す遺産は、計り知れないほど大きなものになろう。これは世界で最初の都市型原発として、エネルギーの免でも、金銭的にも、土地利用の確かさの点でも、さらに人間の良識から考えても、理想的なモデル・ケースになるからだ。

これまでに書いた特筆すべき四つの利点の他に、たとえばこれが東京で完成した場合、東京都の赤字解消に大いに役立つだろうし、ここで示されるエネルギー自給の精神は、物質的繁栄だけでなく、われわれが究極的に求めている精神的繁栄につながる貴重な財産でもある。漁民や農民の犠牲の上に成りたつ繁栄は、二度と繰り返してならないものである。また従来の原発のように、地元の人々の健康を金で買い、不安と恐怖を与えて平然としていられる時代は去らなければならない。どうしても必要だという人間は、原子力発電所を大都会の心臓部に迎えてから語るべきだ。現在はその資格さえない。

完成と同時に、火力発電所は姿を消し、あの亜硫酸ガスと窒素酸化物に汚れた空気は澄みわたり、石油の時代が終を告げるのだ。排気ガスのない電気自動車が走り、工場でも重油用の煙突がなくなり、原発コンビナートによるスチーム給油が、エネルギーの主役になろう。都会だけではない。地方の町や村が本来の自然を取りもどし、新鮮に輝く日がやってくる。

都市に原発を建てるべき理由 おわり

東京原発 [DVD]広瀬隆「福島原発事故と放射能汚染」 [DVD]東京原発 (竹書房文庫)

都市に原発を建てるべき理由 2

都市に原発を建てるべき理由 2
超安値なコスト

広瀬隆さんが、地方ではなく、電気を消費する地元である都市部に<安全な>原発を建てればどんなにメリットがあるか、基本となる3つの理由を整理しています。

都会に原発を作れば、補償金(主として漁業権を買い取るための金)は不要になる。したがってその分だけ電気料金は安くなる。これが第一の経済的な利益である。

第二に、前の項で送電線と変電所が消えると書いたが、こうした設備がいらなくなると、膨大な金が浮いてくる。

仮に青森県のむつ市に、原子力船ではなくて原子力発電所が建設される場合を計算してみよう。東京―むつ市の距離は直線にしておよそ600km である。送電線は直線ではなく上り下りがあり、右折し左折しなければならないから、実際には800km に増えるとしてみる。その結果、送電線変電所建設費用はいくらぐらいを要するだろう。

これを、東京電力の実績で調べると、1kmあたりほぼ十億円を使っているのだ。したがって、

  • 10億円×800km=8000億円

という膨大な金額になる。この分の費用が浮くのだ。

送電・変電のためだけで、日本で最大級の原発でさえ2基作れる費用である。

金の話の三番目に、もうひとつ別の観点から考えてみよう。これまでの補償金や送電線の費用が不要になれば、電気料金全体が低くなるのだから、だれにとっても嬉しい話だ。

しかし原発候補地の実情は厳しく、笑って迎える人がほとんどなくなってきているので、このままでは原発が建たなくなる。そこで、建ててくれた土地の人には、電気料金を大幅に割り引いてくれる制度がある。さきほどの保証金や送電線の費用がなくなって電気料金が安くなったところへ、さらに割引きの利得が得られる。東京に建てれば、東京都民の電気代がぐっと安くなるのだ。大阪に建てれば、大阪の人が「もうかりまんな」と挨拶できるのだ。これが交付金方式である。

以上の三点の他に、何か巨大なコストを見落としているのではなかろうか?

そのとおり……重大なことを忘れている。オイルショックのため電気料金が大幅に値上げされたとき、電力会社はなんと釈明しただろう。

「石油が値上がりしたので」と、言ったはずだ。

ということは、都市型原発はお湯(温排水)として莫大なエネルギーを生み出すから、この日本では巨大な油田の発見と同じ意味をもってくる。

そこで、この油田から湧き出すオイル円を計算してみると、つぎのような驚くべき金額になる。

日本では1986年現在、石油に換算しておよそ4~5億kl(キロリットル)ぶんのエネルギーを使っている。その一割近いエネルギーが温排水から湧き出てくれば、石油は現在の超安値と超円高の中で1kl で約2万円としても、これを単純にかけ算してみると、

  • 2万円 × 4億kl × 0.1 = 8000億円

となる。

この金額こそ、都市型原発の未来をうらなう最も重要なポイントである。交付金のようなミミッチイ話でなく、国家全体のエネルギー財政を一大転換させる莫大な資金が、ここに隠されている。

その莫大な財宝を引き出すには、地方から大都会の中心地に原発を移したほうが得だという結論が導かれる。

都市に原発を建てるべき理由 1

都市に原発を建てるべき理由 1

都市型消費との合理性にかなうから。

地方の農村や漁村は、かつてのめちゃくちゃな開発が、少しも自分たちの利益にならな いことを悟り始め、「もう都会人のエゴイズムにはうんざりだ。ゼニを貰っても、結局 は生活がみじめになった」と、巨大な開発に怒りをぶつけるようになってきている。

それは、都会における明るい開発とは違って、騒音、危険性、ゴミ、爆発といった都会 の排せつ物を押しつけられる汚い開発だからである。

「私たちに漁業権を売ることはできても、子供や孫の健康まで売る権利はない。自然を 守ろう」と、人々は呼びかけ、多くの住民を動かし始めている。

大都会にこのような原子力発電所を建てる土地はいくらでもある... 注目すべきは、土 地があるかないかではなく、土地の質にある。原子力発電所が地方の美しい自然を次々 に破壊し、すばらしい漁場を奪っているとすれば、これはわが国全体が考えなければい けないことである。単に漁民の死活問題であるだけでなく、魚を食べている日本人全体 の食糧問題でもある。この点、都市型原発はすでに巨大なビルが林立している都会に組 み込まれる機械であって、自然の景観をそこなうことがない。

地方から都会へ電気を送るには、膨大な数の変電所と、気の遠くなるような長い送電線 が必要だが、もし消費地と生産地が同じであれば、これらのものはいらなくなり、畑の 上や山間を走る送電線がなくなった時、どれほど自然が自然らしく見えるかは想像にが たくない。

今は、東北で発電した電気を東京で使うという、土地とエネルギーの無駄を平気でおこ なっているのである。

また、原子力発電は、本質的に都会に適した発電法である。都会は"不夜城"として夜中 でも人びとが動き回り、酒を飲み、弁論に花を咲かせているが、そのためには電気が絶 えずなければならない。夜を不夜にするための電灯、つまり昼をあざむく明るい照明が 、空腹をいやす冷蔵庫が、深夜の底冷えを暖めるヒーターが、必要になる。

そして原子力発電は、いったん発電をはじめると、簡単には止められない機械である。 ウランの核分裂を少しずつ調整し、タービンが回り始めるのに長い時間がかかる。その ため、発電をはじめると、これまた不夜城として原子の怪しく輝く青い光が、ほぼ1年 間止まらないのである。

原子力発電の支持者は、大都会に圧倒的に多く、反対者は数えるほどである。精神的に も受け入れ態勢は完全にととのっていると見てよい。

東京原発 [DVD]

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

記事検索
危険な話 チェルノブイリと日本の運命 原子炉時限爆弾 東京に原発を! (集英社文庫)
月別アーカイブ
カテゴリ別アーカイブ
livedoor プロフィール
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ