最初の変化点は、何十年もJ氏の長年の友であり、オーディオの拠り所でもあった老舗スピーカメーカのユニットを使用したマルチシステムを突然放出したことだ。
きっかけは、E氏の音がオーディオを始めて以来の、相当の衝撃だったことだ。その後、ユニットのグレードアップやアンプの変更を行ったが、求めるE氏の様な綺麗な音は得られなかった。改善の度に、E氏も聴いているが課題を残す。そして、ある日借りてきた小型スピーカに、求めている部分に関してだけでなく、低音の量感にも負けたことが、決め手となった。
「こんな高性能ドライバーの大型システムで、しかもマルチドライブまでしているのに・・・、いや、トータルでは負けを認めざるを得ない。現行のスピーカシステムを退場させる」
E氏は、J氏の突然の決断に驚く。
「もっと色々とやってみると、何か解が見出せるかもしれない」
という意見も一蹴された。
「もう、売りに出したよ」
という潔さに脱帽。常に前を見る人で、未練がましく、くよくよしないところが氏のいいところだ。
ここからが、J氏の納得するスピーカを求めての長い旅が始まる。
E氏は、やや複雑な気持ちになっていた。