そこで、プリアンプにブリッジ処理を入れることにしました。これなら、ブリッジ回路の変更は、プリだけで済むので非常に楽です。しかし、このことが理由でブリッジ回路をプリに実装したわけではありません。実は、プリ側で処理しておかなければならない理由があるのです。

そして、新次元プリをブリッジアンプ対応に改造したものが出来上がりました。
最初のVer.の回路でも激変です。ブリッジの威力は、相当なものでした。求めていた力が再現されます。音量は小さくても、くっきり、はっきりと、とにかく力があるのです。音量を上げると、力感はもちろんのこと、ブリッジによる、上り、下りの速さの改善とリミッターが取れたようなD-rangeの開放感。スピーカの実力もあったからでしょう。とにかく、ピアノのアタックの上限の壁は消え去りました。ドラムは、瞬時に腹に突き刺さります。振動で感じる低音ではない音波の威力です。予想していた通りの進化を遂げて、全帯域に渡って挙動が揃いました。

この新次元プリと純A級ブリッジの音を聴いて以来、他のほとんどの装置は、ピアノは頭打ちしていて、ドラムは空気の塊が腹に刺さる感じがないことが、聴けばすぐにわかるようになりました。特にピアノは、頭打ちしていない音を体験しないと、ピアノはそういう音として、理解されてしまっているのではないかと思います。

ここでいう頭打ちとは、D-rangeが足りなくて、クリップすることではなく、本来の振幅値まで、波形が上がりきらないで途中で終わってしまうことを指します。
そして、空気の塊が腹に刺さる感とは、これも体験しないとわからないことですが、よく振動伝達成分を伴う低音のことを、腹に来ると勘違いしている方がいらっしゃいますが、あくまで振動伝達がない低音での話です。コンサートホールやライブの客席には、振動が来ない低音のことです。
箱の穴から飛び出す空気は、到達すると腹に来ますが、渦を巻いて前進しているため、速度はかなり遅く、煙などを入れると目で見えるほど遅いのです。340m/sの速さなら、普通の部屋では、瞬時といえるでしょう。

以前に試したアキュフェーズのA20Vも、パワー側にあるブリッジ切り替えでは、あまり威力を発揮しませんでした。プリ側で処理した方が良いのです。もしかしたら、A20Vは、プリ側にブリッジ出力がない場合は、パワー側のブリッジモードで使用するよりも、ノーマル出力で、片チャンネルのみ入力し、MONO AMPとして使用したほうが、A20Vとしては、良い結果が出るのかも知れません。