【事故原因について】

 事故原因・説は大きく分けて三つに分類されるだろう。

(1) 減圧による内部隔壁破損(公式発表説)
(2) 内部原因説
(3) 外部原因説(含・陰謀論)

[ 重要と思われる事実の羅列 ]

 18:12、JAL123便は真南に向けて羽田を離陸、13,000ftまで上昇する。のち24,000ftまで高度をとる承認を得、機首を西に向けて安定飛行に入りつつある18:24:35ころ、胴体後部で何か爆発する(ドンドンという音とも、パーンという音とも)。フライトレコーダーによると、ここで機首が一瞬激しい上下をしている。この間操縦席ではブザーが1秒間鳴動。直後に機長は管制官に向けて「スコーク77」つまり緊急事態を発信。18:31、駿河湾を抜けて北上するころにダッチロールおよびフゴイド運動が激しくなる。フライトレコーダーを確認すると、この5分前後、500m単位で高度が乱高下している。全くアンコントローラブルな状態のまま大月を右旋回にて一周。この18:40からの5分間で、高度が4500m近くも低下している(羽田に向かうために旋回バンクをとった結果、失速して急降下したと思われる)。さらに10分間、1500mから3000mの間を上昇下降を繰り返し、御巣鷹山南に墜落する。18:56である。

[ 公式見解 ]

 まず、事故調査委員会による公式発表は1987年6月、すなわち約2年をかけて調査されたものである。JAL123便の後部圧力隔壁は既にして疲労亀裂が進展していた、というのがその前提にある。元々、当該機は1978年、尻餅事故を起こし、ボーイング社により修理がなされたが、その事後処理が適切ではなかったため、後部圧力隔壁が十全な状態ではなかった、そういう前提だ。そして、1985年に起きた大事故の内容推定はおおよそ次の通りである。
18:24、東京湾を南下しつつあったJAL123便は24,000ftまで上昇、与圧を行い、機内外気圧の差は8.66psiとなった。すでに疲労亀裂が進展していた後部圧力隔壁がこのタイミングで爆発音とともに全面的に破損、機体後部には2m^2の穴が開く。機内には急減圧が発生、逃げ場を求める高圧空気が垂直尾翼内に進展し、尾翼を内側から破壊、方向舵が脱落し、方向舵油圧制御装置もすべてが破損、操縦不能状態に陥り墜落した、とする。
【内部隔壁(圧力隔壁)】
旅客機は多くの場合、気圧の低い高々度を飛行するため、キャビンには与圧を必要とする。圧力を与えない状態だと、酸素ボンベなしで高山に登るのと同様、薄い酸素濃度により高山病のような症状が発生する。或いは与圧なしの急上昇・急下降は鼓膜や三半規管をはじめとした身体器官に深刻なダメージを与える。それを防ぐために、キャビンを耐圧構造とし、エンジンの動力によってキャビン内に気圧を与え(与圧)、地上に居るのとほぼ同じ空気圧としている。


[ 納得と疑問点と ]

 何らかの原因で尾翼が破壊され、ほぼ同時に油圧制御装置も全破損なったというのは、現状まで出てきている物証およびボイスレコーダーからほぼ間違いないと思われる。疑問点は以下の点にある。
・ 尾翼破損は内部要因(B747自体の問題)だったのか、外部要因(何かが衝突した)だったのか。
・ 公式では内部要因説をとり、急減圧からの尾翼破損を論じているが、急減圧はあったのか。

 生存者の証言、および遺書の状態、ボイスレコーダーから類推される状況、などを鑑みて、JAL123便に「急」減圧があったと信用している人間はほとんど居ない。急減圧があった場合(事故調が発表しているが、ボーイング747型機の内圧は8.66psiであり、1m^2あたり6トンの圧力がかかっている)、秒速数百メートルの風が吹いて内部のものを吹き出してしまうが、状況を見る限りその様子はまったくない。
【1m^2あたり6トン】
8.6psiの「psi」とは「ポンド・パー・スクウェアインチ」の略。1平方インチに8.6ポンドの圧がかかっているという意味である。それぞれキログラムと平方センチに修正すると、0.6kg/cm^2となる。さらに1m^2当たりに換算すると、100*100にて6トンという計算になる。

 また、爆発音の直後、客室高度警報音または離陸警報音と思われるブザーが1秒間だけ鳴動している。これは客室内気圧が一時的に低下した際の音である。すなわち、減圧はあったと考えられる。ただし、1秒にて鳴動が止んでいる。鳴動が止んだ理由は二つ考えられる。
・ 鳴動する理由がなくなったので止んだ
・ マニュアル操作にて停止させた
 ボイスレコーダーの様子を鑑みる限り、手動停止したとは考えがたい。機長の最初の異常発言「なんか爆発したぞ?」はその後である。機関士が止めるにせよ、副操縦士が止めるにせよ、何も報告なしで吹鳴停止操作を行うとはさすがに考えられない。ブザーは鳴動理由がなくなったので停止したのである。
 ブザーが客室高度警報音だった場合、鳴動理由がなくなった理由は二つ考えられる。事故調のいうとおり、何らかの理由で2m^2もの大穴が開いたと前提すると、 (1) 客室高度警報音は客室内気圧が10000ft以下になったさいに吹鳴する。これが鳴動→停止したとすると、都合、鳴動直後に高度が一気に10000ft以下に低下することによって内外気圧が調整され、キャビン気圧が異常ではなくなった、と考えられる。しかし24000ft前後から1秒で10000ftというのはとんでもない急降下で、乗っているのが大空のサムライ坂井三郎であってもブラックアウトを起こして全員気絶するだろう。となると (2) そんなに大きな穴ではなく、一瞬内圧が抜けた後、気圧自体は調整され復旧した、と考えるべきなのではないか。
 いっぽう、ブザーは客室高度警報音ではなく離陸警報である可能性もあるが、離陸警報であった場合は墜落原因と密に関連するとはいえないので割愛する。離陸警報であればなおのこと減圧ではないということになる。
減圧について。たとえば生存者のOさんは、高い爆発音のあと「耳がキーンとなる感じ」「もわっと霧が出た」と減圧があったような証言を残したが、同時に「風は流れていない」とも証言している。事故調査委員会は複数回、Oさんに接触、事情聴取を行うが、急減圧が起こった際の強風についての証言はついになかった。
 なお減圧があった場合、客室内には酸素マスクが降下してくる。爆発直後、マスクが降下したのは間違いないが、ボイスレコーダーに残っている操縦席の表現を見る限り、客室に暴風が吹いたという状況もなければ、実際に操縦員がマスクをつけた様子もない。減圧はあったにせよ、事故調査委員会がいうような「急」減圧はなかったのではないか、というのが通説である。むしろ急減圧といっているのは事故調くらいだといっていい。

 ちょっと事故調信用できないね、という雰囲気になってきた。
 では次のエントリーでは、考えられる墜落原因について整理しよう。