鎌倉の世界遺産登録を考える

鎌倉市在住のジャーナリスト高木規矩郎による公式ブログ。鎌倉の世界遺産登録をめぐる動きを追っています。

洞門の救世主になれるのか(行政現地司令官に聞く2)

(2月24日)北鎌倉隧道(緑の洞門)安全対策検討委員会がトンネルの運命を握る存在として浮上してきました。文化庁からの指示に基づいて「尾根を残す」ことになり、昨年11月と今年2月と3月に委員会を開催し、新年度も引き続き同じ顔触れで洞門にかかわることになりそうです。検討委員会は住民の期待を担って洞門の救世主となるのでしょうか。行政の現地司令官である鎌倉市都市整備部道路課の森明彦課長に検討委員会の存在の意義と将来について聞いてみました。カッコ内は高木の質問です。

≪新年度の検討委員会≫
 私たちは尾根が残せて、安全が担保できればいいのですから、それがどういう工法になるのかというのは、検討委員会の先生方の意見を聞かないとわかりません。委員会について3回開催と決めたのは、「今年度」の案件という期限を考えてのことです。ただ今年度では終わらない可能性もあります。この3回の委員会では工法の概略までは何とか決まるでしょうが、細かいところまでは決まらないと思っています。

 どこをどうやって残せばいいのかといったことについては、新年度に改めて委員会を作る必要があるのではないかと考えています。今年度の委員会そのものが延長されるのか、それとも新たに設立するのかはまだ決まっていません。(でも一連の動きの中で考えると延長のかたちになるのではないか)先生方もせっかく文化庁から紹介していただいた方なので、第一人者でしょうから、先生方に引き続きお願いしたいとは考えています。

≪委員会の顔ぶれ≫
 検討委員会の構成は(開削の方針を決めるきっかけとなった2015年8月の北鎌倉隧道安全性検証等業務履行報告書作成にかかわった)第三者委員会(4人)のうち土木関連の先生3人は同じ顔触れです。残る1人は呉(広島)におられ、遠方のため委員になっていません。当時の西村和夫委員長(首都大学東京・都市環境学部教授)、小泉淳委員(早稲田大学理工学術院教授)、真下英人委員(日本建設機械施工協会施工技術総合研究所長 )が土木専門で検討委員会にもかかわっておられます。

 文化庁から紹介していただいた文化財の先生は3人です。検討委員会の澤田正昭委員長(東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター長)、長田昌彦委員(埼玉大学理工学研究科環境科学・社会基盤部門准教授)、河野眞知郎委員(鶴見大学仏教文化研究所学外兼任研究員)です。河野先生は鎌倉市文化財専門委員会委員会長をやっておられます。

≪結論と方向性≫
 3月の検討委員会で方向を決めることになっており、どういう方向になるかははっきりすると思います。全体構想をまず決めて、それから細かいところを詰めていくことになるのではないのかと思っています。どういう形での安全がいいのか、どこがどれだけ史跡として大事なのかを整理してもらわないと、土木の先生もどういう方向ならいいのか提案もできませんし、史跡としての価値をどう捉えるかというところもあると思います。

 その前に出来るだけ早く仮設工事をやりたいと考えています。仮設工事というのはトンネルの中にトンネルを入れるようなものです。その内側に鉄骨を入れて鉄板でトンネルの中にトンネルを入れるということになります。ここを人が通れるようにしようというもので、ライナープレートというものです。1㍍75㌢の高さですから私がぎりぎりになると思います。地権者の方と話し合ってこの方法で仮設工事を進めようと思っています。

あいまいな洞門の「本設工事」

(2月21日)「隧道が存在する尾根の文化財的価値の保全方針(案)」について市民の「意見を聴く会」が11日、鎌倉市役所で開催されました。あくまでも「意見を聴く」ということで、市民は一切の質問はできず、行政の一方的な意見聴取に終わり、「アリバイ工作、ガス抜きに利用されただけではないか」と市民側に不満を残しました。「聴く会」では、トンネルの安全対策に向けた「仮設工事」のあとの「本設工事」の実態解明に関心が寄せられていましたが、行政が何を考えているのかまったくわからないまま閉幕しました。
緑の洞門画像
       通行禁止になる直前の緑の洞門(高木治恵撮影 2015.04.26)

 「聴く会」には130日に行われた「第2回北鎌倉隧道安全対策検討委員会」の6委員のうち澤田正昭(東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター長)委員長と西村和夫(首都大学東京都市環境学部教授)副委員長の2人が参加しました。参加した26人の市民のうち15人の市民は、緑の洞門(北鎌倉隧道)を含む尾根筋の文化財的価値と保存を求めるものでした。これに対して6人は開削支持の立場から「病院に行くのに不便」「救急車が入ってくることができず困る」などと、日常生活をベースにして意見を述べていました。

 

「本設」については公開された検討委員会では、配られた資料の表紙に「本設に向けた文化財的価値の保全方針の検討について」とまるで衆知の事実であるかのように、触れられていました。「緑の洞門を守る会」共同代表の出口茂さんの「聴く会」での発言から本設についての意向を探ってみました。発言はいずれも昨年78日の文化財専門委員会の結論を原点にしています。

 

❶仮設工事に続く本設工事もまた文化財専門委員会の精神と矛盾することなく、首尾一貫したものであるよう願います。「緑の洞門」は長年にわたって人や自転車が通れるための素掘りのトンネルとして親しまれてきたものです。

❷本設において、洞門の山側の岩肌を相当削って車を通れるようにするというのは、安全対策とは何の関係もないことです。安全対策と関係のない掘削を本設の前提にすることは、文化財専門委員会の意思に反する愚挙に他なりません。

❸人が通れるよう仮設が早期に実施できさえすれば、本設は拙速でなされる必要はありません。本設のためにはこの3月以降も検討委員会をさらに継続し、検討を積み上げ、じっくりと時間をかけて安全対策工法を練り上げれば良いと思います。

 

行政側の工事関係者は本設について概要を語ってくれました。

「現在審議中の内容は尾根には文化財的な価値があり、これを残すこと、そのためにはトンネルを残さざるを得ないこと、取り急ぎ人の通行を再開できるようにすること、およびその暫定的な方法(仮設)です.次年度から本設についても検討してゆくとのことです。いずれにしても尾根を残すことが大命題ですので、本設は景観に配慮した上でトンネルをどのようにするかが話し合われると思います」

 

「できれば地山が一部でもいいので見えるようにすることになろうかと思います。開削はあり得ません。逆に極端なことを言えば、トンネルは全面的にふさいでもよいということです。ただし人と最低限の車を通す必要も認めざるを得ないため、全面的にふさぐことも開削と同様にあり得ないということになります。仮設にしても本設にしても,安全第一は譲れないということでしょう」

 

(コメント)

 傍聴した「第2回北鎌倉隧道安全対策検討委員会」の資料で、初めて「本設」という言葉を見つけたのが、そもそもの不安の発端でした。資料では「本設」がいつ、どこで決まったのかもあいまいなままで終わりました。市民が洞門保存の意義を踏まえて慎重な対応を求めていたのに、「聴く会」の閉会にあたり「(必要なのは)やっぱり安全」という検討委員の一言で、今後の展開が不透明になるのではないかという不安は嵩じてきました。

 

 そこで「守る会」の共同代表や行政の工事関係者(匿名)らに、同じ質問をぶつけてみました。そこで分かったのは「仮設」があるのなら「本設」は当然あるという単純な理屈でした。「守る会」の出口代表や「匿名」の回答は、「本設」を客観的に分析していることを示しています。3月の検討委員会や市議会の動きなどを通してどんな本設のシナリオができのか、見守っていきたいと思います。

2つの陳情が示す課題(大規模商業施設建設計画66)

(2月20日)由比ガ浜の大規模商業施設建設計画は、まちづくり条例手続が終了し、開発事業条例に基づく各課協議に入っています。建設計画の縮小や敷地内での駐車車両の削減など商業施設建設事業者の(株)大和情報サービスの懐柔策ともいえる動きが目立っています。でも最大の課題である建設予定地周辺の交通問題などは行き詰まったままで、地元住民を中心に建設計画に反対する動きが続いています。こうした情勢の中で住民から市議会に出された国道134号線交差点右折レーン増設と計画地西側の赤道払い下げ見直しを求める2件の陳情が、22日の建設常任委員会で報告されます。

≪右折レーン増設について≫
 建設常任委員会への付託が決まったのは、事業者側の右折レーン増設計画にからむ第69号陳情です。商業施設の建設計画地に隣接する由比ガ浜4丁目にお住まいの原正己さんから提出されたもので、「(国道134号の海浜公園前交差点に右折レーンを増設するという)計画によると交通渋滞はもとより歩行者等の安全を観点からも重要な課題があり、事業者はじめ関係機関に見直しをしていただきたい」と(陳情の要旨)で述べています。

 まず(陳情の理由)では「(海浜公園前交差点周辺には)多くの観光客が訪れ人と車で溢れる状態です。また当該交差点と滑川交差点との短い距離の間に県営地下駐車場の導入路が左右にあり、道路幅員が制約された状況になっています。こうした背景の中で、歩道幅を削減し、路線を湾曲させ右折レーンを増設させる計画が住民への説明もなく、一事業者の思惑で勝手に計画されたことは誠に遺憾であります」と問題点を指摘しています。

 次いで「国道134号線は鎌倉市民の生命線であり、この計画により道路環境がさらに悪化し、通過車両が地下駐車場入口の外壁へ衝突する可能性もあり地域住民の安全や通過車両の危険、交通渋滞に問題があるという懸念について不安が募るばかりであります。関係機関におかれましては、歩行者ならびに車両の安全な通行が両立できるように見直しを行うことを陳情する次第です」と陳情に至った理由を述べています。

≪赤道の払い下げについて≫
 陳情第71号(由比ガ浜4丁目の住民4人から提出)では、「(交通渋滞悪化や住環境悪化、屋上駐車場建設など不安定な状況であるにも関わらず)新たに計画地西側の赤道(市町村が管理を移管されている国有地の公道)の鎌倉市から事業者への払い下げといった計画追加・拡大案が存在し、それに対して鎌倉市が明確な不認可判断を行っていないことは到底容認されません」と問題を指摘しています。

 (陳情の理由)としては、❶2015年11月に公示された事業計画では「赤道および地番1185-13(以下当該地)については記載されておらず(計画されていない)、住民への周知も住民説明もなされていません。従っていわゆる「なし崩し的」に当該地を既存の計画に含めて同一事業とすることは許容されません。❷赤道には10㍍を越える高木が複数存在し、周辺住宅への防音、防砂、防風、緑環境などに多大な貢献をしており、伐採や当該地の事業利用(駐車場など)は、周辺環境への侵襲が多大です――などを指摘しています。

 なお2014年に(陳情した個人が)住宅建設をした際、赤道の部分取得を申し出たところ、鎌倉市の担当部署において十分な検討や説明もなく、無下の拒否されたとの経験を述べています。その上で「鎌倉市担当者の『市民には厳しく、外来事業者には甘く』の対応には到底納得できません」として、当該地の鎌倉市からの事業者への払い下げについては認可されないよう陳情の理由を記しています。

(コメント)
 事業者側が進めてきた建設計画の見直しによって施設の規模などは、部分的に縮小されたものの、新たに共同住宅が建てられることになっており、計画縮小の意味をも根本的にないがしろにしかねません。さらに交通シミュレーションを重ねておりながら交通問題解決の意欲はまったく伺えません。シミュレーションも住民懐柔策の一環としか思えません。

 現地住民の1人が共同住宅事業者であるNTT開発担当者に直接「どの時点から大和情報との集合住宅計画が持ち上がったのか?」と詰問したところ、「企業間の情報管理上、返答できない」と返事で愕然としたそうです。もしかすると、計画変更以前、もしやすると計画初期段階からからこの集合住宅の計画が存在したのでは? と言っておられました。事業者と住民間の溝は、工事の規模縮小にもかかわらず、むしろ広がっているのではないかとの印象を持ちました。

学校施設、市民の活用できる空間として保存活用(御成小旧講堂について教育長に聞く1)

(2月20日)鎌倉市教育委員会では御成小学校旧講堂を学校施設として、保存活用していく方針を固めました。20年にわたり泥沼化していた旧講堂保全問題は、これで解決の糸口となるのでしょうか。旧講堂の文化財としての価値はどのように生かされるのでしょうか。安良岡靖史・教育長に旧講堂保存活用計画の内実と将来について、展望を伺いました。

≪御成小旧講堂の中長期的展望≫
 学校施設として保存活用するということで、松尾崇市長から話があり、保存活用計画を作ることになりました。市長の判断の背景には御成小の児童数の増加とそれに伴う教室不足があります。1998年12月の御成小改築の時には1学年2クラス規模だったので、その規模に応じて教室を作っていましたが、今は1学年3クラス規模になり、プレハブで2教室増やしたものの普通教室・特別教室が不足しています。
旧講堂保存管理計画(画像)
                     「御成小学校旧講堂保存活用計画案」より

≪特別教室と市民のための集会室として活用)
 2015年11月に学識経験者や御成小校長らで構成された旧講堂保存活用策定委員会が設立され、検討を重ねてきました。その報告書では旧講堂の特徴である高い天井と演壇も含めた独特な空間は、保存すべき価値があるのではないかということで、演壇のある半分側を小さな集会室としての活用を軸に考えています。残り半分は教室として2部屋を作り、特別教室として図画工作室、コンピューター室などを検討しています。

 御成小では学校開放施設として体育館と多目的室の2か所を開放しています。それと同じような方法で旧講堂を利用できないかと考えています。旧講堂を学校開放施設として活用するようになった場合、これまで使っているところが使えなくなるということではありません。会議室などで市民に活用していただきたいと考えています。こうした活用計画については昨年暮パブリックコメントを実施しました。

≪学校施設としての工事への配慮≫
 内部構造など工事関係では、どういうところを直さなければいけないのか、これからいろいろ議論を重ねていかなくてはならないところです。現状では窓枠などはかなりいたんでいるので、修理しなければいけないでしょう。また土台なども強度は十分ではないとのことです。今後多く人が使うようになれば、防火基準に合うような防火設備にしていかなければいけないので、そうした改修工事も必要です。

 2015年の現況調査報告の中では、耐力評価は低く倒壊の可能性が高い結果となっていますが、構造体は強固で劣化や損傷が見られず健全であるとの結果でありました。今後の課題としては、耐震改修工事を行えば引き続き使用が可能というものでありました。あわせて、市議会からは屋根材にアスベストが含まれている部材があるので、教育施設における安全確保から早急の対応を図ることの指摘を受け、屋根材の金属板への全面交換を行いました。(つづく)

失望に終わった「意見を聴く会」

(2月15日)「隧道が存在する尾根の文化財的価値の保全方針(案)」について市民の「意見を聴く会」が11日、鎌倉市役所で開催されました。あくまでも「意見を聴く」ということで、市民は一切の質問はできず、行政の一方的な意見聴取に終わったことで、「アリバイ工作、ガス抜きに利用されただけではないか」と市民側に不満を残しました。

 「聴く会」には定員ぎりぎりの30人弱の市民が集まりました。行政側には「北鎌倉隧道安全対策検討委員会」の6委員のうち委員長の澤田正昭(東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター長)委員長と西村和夫(首都大学東京都市環境学部教授)副委員長の2人が参加しました。また一昨年夏の「開削」を決める根拠となった中間報告と「検討委員会」の資料を作った「日本トンネル技術協会」関係者が司会を務めました。

 澤田委員長の挨拶に続いて30人の市民のうち15人がトンネル保全の立場から意見を述べました。意見は文化財保全の立場から景観保全の立場へと多岐にわたっていました。中には鶴岡八幡宮裏の御谷騒動で作家の大佛次郎が書いた言葉を引用して、住民が主体となって開発を止めたいきさつに触れトンネルの保全を主張していました。これに対して6人が開削支持の立場から「病院に行くのに不便」「救急車が入ってくることができず困る」などと、日常生活をベースに意見を述べていました。

 「聴く会」で注目されたのは、トンネルの「仮設工事」のあとの「本設工事」の実態です。折角、市民が洞門保存の意義を踏まえて慎重な対応を求めていたのに、閉会にあたり「(必要なのは)やっぱり安全」という副委員長のたった一言が、暗雲を想起させました。公開された第2回安全対策検討委員会では、配られた資料の表紙に「本設に向けた文化財的価値の保全方針の検討について」とまるで衆知の事実であるかのように、「本設」について言及されていました。でも「本設」については何の説明もなく、いつ、どのように決まったのかも謎のままで、「聴く会」に目が向けられていたものです。

北鎌倉駅裏トンネル激動の1年(行政現地司令官に聞く1)

(2月14日)北鎌倉駅裏のトンネル(緑の洞門)をめぐって安全対策として「開削」を決めていた行政は、文化庁からの指示に基づいて「尾根を残す」工法に転換しました。その過程で問題のトンネルが存在する尾根の文化財的価値の確認と保全方針等の検討が行なわれれることになりました。住民、行政双方で1年を越える論争を重ねた結果でもあります。工法転換に大きく舵を切った行政側の意向といきさつについて、昨年12月末に現地司令官の(鎌倉市都市整備部道路課)森明彦課長に行政側の意向を聞きました。
●●●はく落対策の土嚢
               新たなはく落に備えて並べられた土嚢(日本トンネル技術協会報告書より)
≪工事着工9カ月に及ぶ工事の遅れ≫
 2016年1月に契約して、4月4日から現場の方が入ったのですが、その時には急傾斜地等で許可がないということがあり、すべて許可がおりてからにしましょうということで工事を止めました。その後4月のうちに文化庁からトンネルの上の尾根について価値があるのか、ないのかというお話がありました。その後やはり文化庁から専門家を入れて、歴史的価値を検討したらどうかと指示があったものですから、7月に鎌倉市の文化財専門委員会を開催して、円覚寺の境内絵図に描かれているといわれているトンネルの上の尾根について、文化財的価値があるのかどうか検証していただきました。

 文化財専門委員会からは、現在は国指定史跡ではないけれど、今後指定に向けた動きが出てくると考えられるほど「尾根としては価値があるのではないかというご意見をいただいたわけです。それが7月8日でした。その後、文化庁に行って開削工法を見直し、できる限り尾根を残す形で、安全対策を検討するという報告をしました。それをもって11月に斎藤建設とは開削工事の契約を打ち切りました。10月31日に検査をして、11月1日に現状の引き渡しを受けたわけです。

≪その後の動きについて≫
 その後11月10日に鎌倉市の専門家委員会に言われたこともあり、できるだけ尾根を残した工策を検討するために、「北鎌倉隧道安全対策検討委員会」(注)を開催して今後の方針を検討しました。第3者委員会の時の委員だった先生方も加わっておられます。第2回は1月30日に予定しております。もう1回、3月に開催を予定しています。(注)検討委員会(6人)委員名簿:(委員長)澤田正昭(東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター長)、(副委員長)西村和夫(首都大学東京都市環境学部教授)、(委員)長田昌彦(埼玉大学理工学研究科環境科学・社会基盤部門准教授)、小泉淳(早稲田大学理工学術院教授)、河野眞知郎(鶴見大学仏教文化研究所学外兼任研究員)、真下英人(日本建設機械施工協会施行技術総合研究所長)

 第1回は初めての先生もおられるので、これまでの経過を説明して、あと文化財的価値の保全の方針と、工法が決まるまでは時間がかかると思われるので、仮設工事の整備について検討をお願いしました。仮設につきましては隧道の中に鉄板で内部を囲むようなライナープレートの工法で概ね了承が得られて、一応文化庁からもこの工法で仮設についてはやってよいという了解が得られたところです。11月15日に文化庁に行って、内容報告をしています。

 仮設工事については了解が得られているので、先生方には最終的な報告はしますが、この検討委員会の次元とは別に平行する形で進めていきます。あくまで検討委員会は尾根を保存して、なおかつ安全に通れるようにという工法の検討ですから、本設は仮設と次元は一緒ではないですね。でも検討する人の方は同じ委員会で同じ先生です。仮設についてはOKをもらいましたから、あと詳細な構造計算だとか、専門家もおられるので確認していく中で、個別に先生方に聞くことは当然ありますが、検討委員会に題としてあげていくことはありません。

≪安全対策「開削」から「仮設工事」へ≫
 今後の工事の形が決まって、概ねこの形でいいよという了解を委員会の先生方と文化庁からいただいています。でもご存知の通り、あそこは鎌倉市の道路でもあるし、半分はJRの土地で、山側はお寺さんの土地でもあり、手前は他の方の土地でもありますから、その方たちと土地の協力について、話をしているところです。そこで了解が得られて初めて予算化という形になるかと思います。

 文化庁から指摘を受けて、鎌倉市文化財専門委員会にトンネルのある尾根の価値を聞きました。そこはできるだけ尾根を残すべきだというご意見でした。仮設工事はあくまでも仮の工事ですから、仮設工事になったわけではありません。開削がどういう形になるのかは、検討委員会の中で検討してもらうことですから、開削工事がどうなったかはまだ決まっていないということです。

 (そのまま開削が行われることもあるということか)検討委員会の中で、文化財の先生もいれば、土木の先生もいて今いろいろとやってもらっているわけです。結果的にどういう形になるのかというのは、先生方の話を聞いて、これなら安全も保てるし、文化財的価値も保てるのではないかという結論をいただいてから判断することになると思います。

どうなる洞門の将来(「緑の洞門を守る会」共同代表に聞く6)

(2月10日)「緑の洞門を守る会共同代表(鈴木一道さん)に聞く」のブログ連載中の1月30日、「第2回北鎌倉隧道安全対策検討委員会」が開催されました。委員会報告を2回にわたって挿入したので鈴木さんの分析は、先送りになりました。今回は傍聴した委員会の動きを途中にコメントとして加えながら、最終回「どうなる洞門の将来」をまとめました。太字部分は鈴木さんの発言です。

     昭和42年当時の北鎌倉駅ホームと洞門のある尾根(第2回委員会資料より)
≪仮設と本設≫
   昨年11月10日の検討委員会は非公開だったのですが、第2回、第3回にはわれわれも出てどのような暫定的な工事をするのかということを見守りつつ、最終的な洞門の残り得る姿を見極めていこうと思っています。様子を見るということになります。委員会の開催はあくまでも「仮設工事」のためであって、「恒久対策工事」ではありません。「恒久対策」の前にトンネルを利用していた人たちの便をはかるため、安全な空間を確保しようというものです。ここで考えなくてはいけないのは❶いつになったら「恒久的対策の終了」ということになるのか❷「仮設工事」にしてもいつからいつまでか分からないことです。

(コメント1)第2回委員会開催の4日前、鈴木さんと「洞門問題について共通認識を持ちたい」ということで話し合いました。そのとき鈴木さんは「仮設」だけで「本設」のことが伝わってこないいらだちに触れておられました。着工の時期や仮設の期間についても何も伝わってきません。勘ぐれば「仮設」で住民の反発をやわらげようとしているのではないかとも考えられます。

 ところが傍聴した第2回委員会の資料には、表紙に「本設に向けた文化財的価値の保全方針の検討について」とまるで衆知の事実であるかのような「本設」の登場です。でも委員から改めてこの意味を問いかけることもなく、議事は淡々と進んでいきました。傍聴人は質問を禁じられているので、激論になることもなく委員会は時間通りに閉会しました。「本設」については、非公開の第1回委員会の際にすでに何らかの申し合わせがあったのかも知れません。

≪意見を聴く会の開催≫
 2月11日に市主催で市民の意見を聞く場が設けられます。「守る会」としても、何らかの意見を述べたいと思っています。もともと「公聴会」という言い方をしていたのですが、それだと硬すぎるからということで名前を考えているようです。今のところ名称未定です(注:昨年末のインタビュー時。現在は「意見を聴く会」と名称が決まっている)。第2回と第3回の検討委員会の間に市民の意見を聞くということです。地元の「北鎌倉駅裏トンネル安全対策協議会」の意見しか聞いていないといった批判で、市民の意見を聞くという形になりそうです。

 (コメント2)第2回委員会で明らかにされた「意見を聴く会」開催の趣旨は、「隧道が存在する尾根の文化財的価値の保全方針(案)について市民の意見を聴く」というものです。募集人員は30人(市役所都市整備部道路課への電話で受け付け)、1人5分間を上限として意見を受け付けることになっています。あくまでも「意見を聴く」ということで、出席委員及び事務局への質問はできないこととされており、堅苦しさを感じます。司会は委員会資料を作成した日本トンネル技術協会」が行うとされています。結果は第3回委員会の検討資料とするとのことです。

≪最終的に開削という不安≫
 今の検討委員会も基本的にはトンネルを守るというスタンスです。間違っても2回、3回でトンネルをぶっ壊せということにはならないとは言っているのですが、あくまでも仮設工事は暫定対策なので、恒久対策がどうなるのかという不安はあります。最後の最後でまたうっちゃりを食らうのではないかという懸念は今も消えません。われわれとしては2回、3回と続く検討委員会が打ち出す方向性に則って、今後の仮設工事の工程を明らかにしてほしいですね。

≪守る会のこれからの役割≫
 トンネルが今のようになって困っている住民の方々に正しい情報を提供して、理解してもらうことがわれわれ「守る会」の役割だと思っています。そうした方々にも戦力に加わってもらいたいですね。そこでできる限り洞門に行って、いろいろな方たちと話をしています。それから今までは地元の山ノ内公会堂でいくつかのイベントを行ってきましたが、今後は鎌倉地区「緑の洞門」の啓蒙活動を行い、運動を広げていきたいと思っています。
 
 (コメント3)2013年12月末に発足した「北鎌倉史跡研究会」(出口茂代表)が、15年3月はじめに「緑の洞門を守る会」を立ち上げてからすでに2年。その2か月後の4月末に洞門は通行禁止になりました。次いで8月20日には洞門開削の市長決裁がなされ、2016年4月4日に「北鎌倉隧道安全対策工事」の着工、すぐに休工状態となりました。それから年末まで「守る会」は、現場で見守り活動を続けてきました。

 この間、一貫して安全通行の確保と開放のために地道な運動を展開してきた主役が「守る会」だったのです。行政はトンネルを残して安全通行の措置を講ずるとは言っていますが、将来どのような形で残すのかは明確にはなっていません。2月11日の「意見を聴く会」の開催、3月の最終回(第3回)の安全対策検討委員会の開催など住民とともに見守っていく必要があります。「守る会」そのものの真価が問われています。

仮設工事のあとはどうなるの?(第2回北鎌倉隧道安全対策検討委員会報告2)

(2月8日)先月30日に行われた北鎌倉隧道(緑の洞門)の安全対策について第2回検討委員会では、「ライナープレート仮設工の検討」、「文化財的価値の保全方針の検討」の報告と検討が行われました。「文化財的価値」についての後半部「地盤・地質状況に関する見解」、「本質的価値と国指定史跡円覚寺境内保存管理計画における保存管理の考え方と課題」、「文化財的価値の保全方針(案)」の概要です。いずれも日本トンネル技術協会が検討資料として提出した既往調査及び今年度の地表踏査結果です。
トンネル坑口部の経過写真(平成25年度業務報告書より)
     (平成18年2月➡平成26年3月➡平成28年8月の両坑口の景観の変化(第2回委員会資料より)
≪地盤・地質状況に関する見解≫
(平成27年度「安全性検証等業務報告書」より)(今後もはく落の可能性がある両坑口部の状態などから)現状では大地震等の外圧があれば大きく崩壊する可能性があり、トンネル道路の通行の再開のためには最低限、両坑口をコンクリート等で固めるなどの対応とJR側の側壁の補強、トンネル上部の樹木を伐採し、表土を落とした上で亀裂や地山状態を確認し、補強対策を実施することが必須である。山の景観を維持することは困難と考える。  

 (平成28年8月11日のはく落状況についての平成28年9月6日の専門委員による現地指導より)(今後の対応)●水平方向のひび割れがJR側斜面に通じているようであれば問題である。必ず確認したほうがいい。ひび割れが下の方にはっせいすると大きな崩落につながる可能性がある●一番大事なのは人命。現時点で見えている落ちそうな岩塊は落とした方がいい。いつか必ず落ちる。残すのは無駄が多い●割れ目に変位計を取り付け、ひび割れが開口すればランプが点灯して、危険を知らせる等の措置を取る。

 (平成28年度地質踏査「岩盤性状」より)鎌倉側トンネル坑口部の山側に開口したクラックが見られる。①山側側壁に直交するもの、②トンネル側面に平行なもの、③層理面に沿った低角度(20°程度)の分離面の3つが見られ、これらのクラックで囲まれた範囲で8月11日に坑口部岩盤のはく落がはっせいしている。①のクラックにさらに鉛直方向に延びているが、上方の状況については、草木が茂り確認できない。②のクラックに沿って、面的に植物根の進入が見られ、クラック沿いの岩盤の劣化、ゆるみが著しい。③の分離面沿いに浮きがあり、はく落が懸念される。

≪本質的価値と国指定史跡円覚寺境内保存管理計画における保存管理の考え方と課題≫
 (保存管理の考え方)トンネルの所在する尾根とトンネルにわけて、尾根については本質的価値を損なうことのないよう適切な保存管理を行う。トンネルについては周囲の景観や風致を損なわないよう管理を行う。保存管理にあたっては円覚寺境内保存管理計画に依拠して復旧・管理、(樹木の根系等については)保全を優先させた対策、(崩落、落石、土砂流出等が予測される場合の)適切な植生管理、災害防止措置、(擁壁等工作物の設置が不可避の場合)史跡への影響を最小限に抑え、景観に配慮した工法とする。

(植生管理についての課題)(略)

≪文化財的価値の保全方針(案)≫
 見解・課題に続いて保全方針(案)を整理した。
(文化財的価値の保全)トンネルが所在する尾根は、「中世の人口地形及び丘陵、谷戸の自然地形」といった「円覚寺境内保存管理計画」の「本質的価値を構成する諸要素」を備えている。●残っている自然地形を極力現状の形状に残すことに努める。●現在の尾根の形状をできる限り保存するために必要な方策を実施する。●元々の尾根の形状に関する資料が十分でなく、その後の改変が防災対策、宗教活動に資するために実施されたものであるため、地形の復旧は行われない。

 トンネル、墓地、擁壁は「近代以降に造成された墓地、寺院以外の建築物、構造物等(市道、擁壁等)」といった「保存管理計画」の「その他の要素」とみなされる。そこで周囲の景観や風致を損なわない方策(工法)を用いて、トンネルの安全な通行を確保するための対策を行う。

(地形の改変)保存すべき尾根の形状とは何か。地形の改変はどこまで認められるか。給料の自然地形である尾根の岩盤形状は本質的価値を有するものと解する。また堆積土中には鎌倉時代の遺構や遺物が埋蔵されている可能性がある。尾根を構成する岩盤は保存すべき要素であるため、できる限り岩盤の整形や岩塊の除去等は行わない。ただしトンネル本体の補強や現在の通行機能を確保する上で必要となる場合には、一部の開削も含め内壁を構成する岩盤の掘削はやむを得ないものと解する。

(植生の取り扱い)、(工作物等の設置)、(用地等の制約)保存対策方針案(略)

(コメント)
 検討委員会委員の小泉淳・早稲田大学理工学術院教授は、先月30日の第2回安全対策検討委員会のあと挨拶した私に、「住民のみなさんの意向に沿うような方向で解決がはかられているようで、よかったですね」とおっしゃっておられました。確かに開削を前提として工事着工の動きが前面に出ていたころと比べると、「隧道の保全」が軸となった現在の動きは大きな変化が見られます。

 でも昨年11月の第1回委員会は非公開で行われました。公開で傍聴もできた今回の第2回委員会は日本トンネル技術協会がまとめた委員会資料に対して、6人の委員側からの強い反論もあまりなく、シャンシャンで議事が進行した形でした。でも資料をよく読むとまだまだ疑問が残ります。その1つが仮設工事の時間や仮設工事後のトンネルの状況で、明らかにされていないことが気になりました。

 何の説明もなく、「本設」という言葉が使われています。資料のタイトル「本設に向けた文化財的価値の保全方針の検討について」の「本設」とは、何のことなのでしょうか。「仮説工事」に対する「本工事」のように受け取れますが違うのでしょうか。そうだとしたら「本設」でどこにどのように手を加えるのでしょうか。傍聴人からの質問が禁止されていたため、ただ推測するだけです。鎌倉市は2月11日に鎌倉市は「意見を聞く会」を開きます。市民、住民の疑問が少しでも解消されればいいのですが、このままだとまだどんでん返しがありそうです。

トンネルに史跡円覚寺境内保存管理計画準用の妥協案も(第2回北鎌倉隧道安全対策検討委員会報告1)

(2月3日)北鎌倉隧道(緑の洞門)の安全対策について第2回の検討委員会が1月30日に鎌倉市役所第4庁舎で行われました。委員会では業務委託された「一般社団法人日本トンネル技術協会」からの報告内容が鎌倉市側から提示され、6人の委員によって検討されました。トンネル協会資料の要旨を報告します。専門的な公文書ですが、洞門がどうなっているのか真相を探る重要な内容だと思います。報告にあたっては工事関係の数字の羅列部分は省略して、洞門保全を考える上で重要なポイントをあげました。
原型を変更しない断面模式図
     トンネルの原型を変えないで通行を可能にする断面図(第2回委員会資料より)
≪ライナープレート仮設工≫
❶仮設工検討(略)
❷仮設工内空断面の検討(隧道が存する尾根及び隧道本体が将来の史跡指定を前提とし、文化財的保全等の検討を行うものであり、仮設工は原型を極力変更しないことが望まれる。しかしながら道路構造令及び道路トンネル技術基準に準拠したトンネル断面では、現況トンネル断面を侵すことが確認された)
❸仮設工構造計算(略)
❹裏込め充填材の検討1(仮設工を設置した際にライナープレートと背面地山との空隙は、裏込め充填材により埋める計画としている。北鎌倉隧道の本対策時にはライナープレートと裏込め材は撤去するため、史跡保護の観点からセメント系材料は撤去時にトンネル内面地山を傷つける恐れがある。そのため発泡ウレタン材料を基本とした検討を行った)
裏込め充填材の検討2(発泡ウレタンの注入時の事前措置として●トンネル内部に点在する丸穴や地層に沿った凹みを紙の詰め物や粘土などにより埋める●地山表面に和紙を貼り付ける●和紙の貼り付けは、天然由来の糊を使用することとする)

≪文化財的価値の保全方針の検討≫
❶第1回検討委員会で出た意見とそれに対する対応案
文化財的価値の保全
(意見1)尾根は国指定重要文化財の円覚寺境内絵図を彷彿させる円覚寺境内の境界を示す地形が残っている。大分削られているのかも知れないが、史跡としての本質的価値を有する要素であり、重要なものである。出来る限り残すべき。
(対応1)本質的価値のある尾根については、基本的に現在の地形(岩盤形状)を残す●表土等についても遺構や遺物が残っている可能性があるため基本的には残すが、尾根の斜面などで安全面を考慮した場合に崩落の危険があると判断されたものについては、事前に調査確認を行った上で掘削し除去する。

(意見2)トンネルは近世に作られたものであり、直接文化財的な価値があるものではない。ただし景観的な視点でどのようにするのかの調整が必要となる。
(対応2)通行の安全を最優先する中で」、景観に配慮した対策を行う。
(意見3)将来の尾根の史跡追加指定を見据え、尾根の文化財的価値保全の考え方を整理するのは構わないが、現状は史跡ではなく、管理基準をそのまま適用するのは難しい。道路の通行の安全確保との兼ね合いで、どのようにするのかは行政の判断が必要になる。
(対応3)尾根については本質的価値を構成する要素であると判断されること、追加指定を目指す方針であり、その場合は既往の史跡区域の拡大となるため、国指定史跡円覚寺境内保存管理計画の考え方を準用する●トンネルについては尾根の一部に作られた構造物であることから、その他の要素と位置づけ、国指定円覚寺境内保存管理計画の考え方を準用する。

(意見4)尾根を残すとすればトンネル構造とせざるを得ず、坑口などの安全対策を図る必要がある。
(対応4)トンネル本体の補強(JR側側壁を含む)、坑口部の安全対策を実施する●本体の補強にあたっては、現在の通行機能の確保(歩行者及び小型自動車の通行)を前提とする。
(意見5~7)(対応5~7)(略)

はく落
(意見1)鎌倉側の坑口は時間をおかずはく落が起きる。落とすべきところは落とした方が良い。
(意見2)落とすのは究極の判断である。今(仮設段階)は慎重に対応する必要がある。
(対応)本質的価値ではないトンネル及びその周辺の壁面については、景観に配慮しながら、本設については落としてしまった方がよい岩塊は安全確保に必要な範囲で落とした上ではく落対策等を行う。

植生管理
(意見1)トンネル上部の尾根の樹木は、できる限り早く措置した方が良い。
(対応1)間伐、枝払い等の植生管理を行う●尾根の形状保存及びトンネルの崩落に悪影響を与える恐れのある支障木の伐採を行う。
(意見2)伐採後は亀裂を補修し、岩塊を保護する必要がある。
(意見3)樹木管理は重要なファクターであるが、伐根まで行うかは慎重に検討すべき。
(対応2~3)木の根が土砂を抱えて保護している面もあるため、伐根は設計段階で個別に検討する●樹木伐採後に必要に応じて、岩盤亀裂への充填等の対策を行う。(つづく)

 次回ブログで日本トンネル技術協会報告「本設に向けた文化財的価値の保全方針」の❷「地盤・地質状況に関する見解」❸「本質的価値と国指定史跡円覚寺境内保存管理計画における保存管理の考え方と課題」❹「文化財的価値の保全方針(案)」(要旨)を送ります。

(街角の風景)闇に包まれた文化財

(2月1日)夕闇に包まれた長谷観音の境内、真夏の深夜の黒地蔵縁日で黙々と木像に見入る信者たち、大晦日の深夜から開放された鎌倉大仏では闇に浮き上がるご尊顔は、日中とは打って変わって心の内面を見透かされるかのように厳しいものでした。そういえば鎌倉の地下の闇に中には古代・中世の膨大な埋蔵文化財が人知れず眠っています。「鎌倉の魅力とは」と考えた時、思いついたのが「闇に包まれた文化財」のたたずまいです。
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     ライトアップされた長谷観音
≪かきがら稲荷大明神≫
 昨年暮れ、長谷観音の歳の市に行きました。年々客足がまばらになる四季の光景です。日が暮れた境内からは、ネオンが最小限度に抑えられた落ち着く長谷界隈の町の夕暮れの景観が一望できます。本堂(観音堂)をライトアップするダークブルーのLEDも迫りくる宵闇と違和感を感じさせません。鶴岡八幡宮や大仏など神社やお寺の宵の景観に惹かれてよく回っていますが、とくに長谷観音は魅力的です。
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     境内の片隅にあるかきがら稲荷大明神(いずれも高木治恵撮影 2016.12.18)

 闇に惹かれて鐘楼の裏側に回り込んでみました。赤い布に「かきがら稲荷大明神」と書かれた3、40本の奉納旗に囲まれたお稲荷さんでした。私たちが長谷に住み始めて20年で初めての出会いです。日中だったらおそらく気にも留めない境内の片隅ですが、闇の導きで吸い寄せられていきました。とりあえずどんな由来があるのか妻に撮影させました。行き慣れたところでも夕闇に包まれると、まったく新しい感性で新しい魅力にぶつかります。

 有縁の地を求めて大海を漂白していた御本尊、長谷観音はその付着した「かきがら」の導きで当地に光臨したといわれています・・・家で拡大してみた案内板には観音様とのつながりやいわれが記されていました。長谷寺の学芸員は「今の稲荷社は昭和50年代に作られました。江戸時代後期に境内の別の場所にあったようで、新編相模国の長谷寺の項に荒神社がかきがらを祀っていたとの記録があります」と言っておられました。

≪覚園寺と鎌倉大仏の闇≫
 「鎌倉の夏の風物詩となっている深夜の黒地蔵(地蔵菩薩立像)縁日で、国史跡覚園寺を訪ねました。ここでは積極的に闇を取り入れています。地獄の罪人の苦しみを和らげようと鬼に代わって火を炊いたため、「黒くすすけている」と伝えられる黒地蔵が深夜の参拝客にやさしいまなざしを注いでいました。闇の大仏は昼間の穏やかなまなざしと違って沈思黙考を迫る厳しさがみられます。

≪地下に眠る埋蔵文化財≫
 イコモス勧告で挫折した世界遺産登録では、鶴岡八幡宮、建長寺、円覚寺など神社仏閣や、永福寺跡、和賀江嶋など寺院跡・武家屋敷跡、港跡・切通など21の構成資産で推薦書が作成されました。だが大倉幕府跡とか御成小学校地下の武家屋敷跡など膨大な埋蔵文化財が地下に眠ったままです。登録が失敗したのはこうした埋蔵文化財の存在を明らかにすることなく、「武家の古都・鎌倉」というコンセプトを証明できなかったためでもありました。

 そこで考えてみたのが「鎌倉の魅力」を構成する埋蔵文化財も含めた「闇の文化財」で、中世鎌倉を再構築することです。工事が進む(仮称)鎌倉歴史文化交流センターでの企画として埋蔵文化財の立体模型図を作成して展示できれば、市民の関心も高まり世界遺産再挑戦を支えることにもなるはずです。そこに夕闇や深夜のお寺の魅力を合わせて考えれば、「闇の文化財」に市民を振り向かせることも夢ではないはずです。

 「長谷観音の闇ですか」と長谷寺の学芸員は浮かぬ顔でした。確かに「闇」では「闇社会」のイメージにもつながりかねません。全体構想をもう一度建て直す必要がありそうです。
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