由比ガ浜で初日の出を待つ人々(高木治恵撮影 2018.01.01)
≪臭いものにはふたをしないおかしな論理≫
建築基準法では、10㍍以下の高さの建物については、近隣の日照権云々は問題なしです。デベロッパーが拘るのは坪効率だけです。敷地目一杯、限度ギリギリに建築をすることで、近接に戸建てがあろうとお構いなしに建物を造ろうとします。今回の申請案件は、空調だとかトイレの排気システムを全部、隣接戸建ての住宅の直近に置いています。そこから上がってくる臭いや温度や風、振動などを発するシステムを、全部戸建て住宅の近くにレイアウトする計画です。商業施設の場合、普通はこうしたシステムは屋上に設置するものですが、近隣住民からすれば屋上駐車場からのぞかれた上に、臭いものにはふたをしないというていたらく。賛成できる余地は何もありません。
≪買い物が便利になることには反対ではないと少数派≫
住民がもう少しセットバックしてくれと言ったら、二次案では1㍍下がったということらしい。ルールにあるなしにかかわらず、とくに戸建ての人たちの住まいの庭とか居宅内にずっと日陰が及んでしまうことは、絶対やってはいけないということで、市当局が業者に言わないとだめです。交通事情については現認しているようですが、ほかのことでも市にはよく計画を吟味してほしいですね。
≪問題の本質は鎌倉の価値を高めること≫
たとえば古い街道沿いの10軒ずつの民家を市が死に物狂いで国から予算を確保してきて買い取り、そのうち何軒かを旅籠にし、地域産品を販売する道の駅にしたりすること。そうすると馬籠宿のように見事に再生が可能になる。素敵な街並と美しいデザインがあれば、人は必ずやって来ます。鎌倉はいままでのポテンシャリティーに依存しているだけです。
150余もの神社仏閣があり、年間2000万近くの観光客がやってくるといっているけれど、市の観光セクションは、市民との意見交換会の席上で、6年後には来訪者が減少するとはっきり言っています。市の中心部に、安易な開発計画を許認可してしまえば、市の財政や市民のアイデンティティを損ね、鎌倉は衰退していきます。行政は奮起して、新たなランドマークを作るべきです。かつての鎌倉海浜ホテルのような、あらゆるジャンルのセレブが集まるようにすべきです。