(6月28日)住民として世界遺産登録の行方を考えるとき、最大のハードルとして横たわっているのは交通渋滞や祝祭日の観光客の激増による市民生活への影響です。登録されたら町がパンクしてしまうとの思いが、すんなりと登録支持につながらない現実があるのでしょう。一般質問で長嶋竜弘議員は、「歩行者の安全」で行政の対応を聞きただしました。たった2人の議員の質問と行政の答弁を知っただけですが、世界遺産登録の難しさを改めて知った思いです。
大仏通りの渋滞
         車と歩行者であふれる大仏通り(高木治恵撮影2012.06.23)
(長嶋)大仏の通りは歩道が狭く車が多い。県道だからと言っても放置できない問題です。車両と人のすみ分けの改善は考えなければなりません。
(山田都市整備部長)大仏通りは観光客等にとって危険だとの認識に立っています。修学旅行の生徒の歩行も多く、地元商店街からも歩行者の安全確保を図ってほしいとの要望が出されました。それに応じて平成14、15年度事業として地元商店街、鎌倉市、神奈川県の3者で現地立会いを行いました。その上で横断歩道、交差点、民地の出入り部などの切り下げ、カラー舗装をしました。転倒事故などは減少しましたが、用地の問題でなかなか取得できないこともあり、県の協力をあおいで、今後よりよい方策を考えていきたいと思っています。


(長嶋)鶴岡八幡宮前の交差点での信号待ちは、(大勢の観光客で車道にも)人があふれており危険です。
(山田)スクランブル交差点なので、信号が変わると一斉に横断します。八幡宮に向かって車の左折時に巻き込まれる危険性が高いのですが、ここでも用地の取得が困難でガードレールの設置も進まず、歩行者の注意、マナー待ちの状態です。県に要望して安全性の向上を図っていきたいと思っています。

(長嶋)基本的には車両の流入量を規制するのが一番いいのではないかと思います。北鎌倉の明月院では、休日には交通規制しています。でも平日でも観光客が非常に多く、危ない状況です。土日並みの規制をかける必要があるのではないでしょうか。
(嶋村・防災安全部長)曜日・時間帯の車両通行規制については、最終的に県公安委員会が決めるものです。でも地域の利用実態からは住民の利用もあり、難しいと言う意見もあります。

(10回の鎌倉市議会シリーズを終えて)とくに交通問題についての答弁では、「鎌倉市交通計画検討委員会での検討」というフレーズが繰り返されました。委員会の存在そのものが行政にとっては駆け込み寺のような役割をはたしているのでしょう。でもそれ以上の追及もなく、他の議員からの応援質問もないままに型どおりで終わってしまい、歯がゆさを感じざるを得ません。

 交通問題の解決にあたっても世界遺産登録は願ってもないチャンスだと思うのですが、具体的な進展はなかったという市議会の実情です。イコモスの調査員は観光客で溢れる大仏の歩道をみたら、どのような評価を下すのでしょうか。でも世界遺産に絡む問題の所在を明らかにさせてくれたという意味で安川健人、長嶋竜弘議員には拍手を送りたいと思います。これからの議員としてのご活躍を期待します。