(5月19日)「緑の洞門」開削工事は、着工直後からの休工が1か月半たった今も、現場での混乱が続いています。工事の決め手となった昨年夏の日本トンネル技術協会の報告書作成に関わった第3者委員会の早稲田大学理工学術院小泉淳教授に委員会で何があったのか聞いてみました。小泉教授の応援メッセージは、開削に反対する地元住民の心の支えになっています。
早稲田大学理工学術院で会見に応ずる小泉教授西早稲田キャンパスの研究室で会見に応ずる小泉教授(2016.05.06)
 保全に向けて柔軟な姿勢を見せていた松尾市長が、第3者委員会の報告書を見てなぜ態度を豹変させて開削を決めたのか。住民集会で差し迫った危機はないと言っておられた小泉教授をはじめ4人の専門家が加わる委員会は、なぜ開削を認めるような報告書を出したのかなどの質問に対する発言を詳報します。第1回は「第3者委員会での小泉教授の意見と報告書の結論の相違について」がテーマです。

≪結論ありきの第3者委員会≫
 はじめからこういう方向で処理をしたいという結論がなくはない状況でした。前に(問題の隧道を)切通にするのだという答申を出したサンコーコンサルタントが事務局をやっていました。形の上ではトンネル技術協会が事務局なのですけれども、その資料をコンサルが全部出していました。自分たちが出したのと反対の結論は出てこないというのが初めから分かっていました。もともと結論ありきだったように思います。

 何が何でも隧道は崩れないということではありません。東日本大震災級の地震が来れば、今何も手を入れないでも問題がないということではないでしょう。でも洞門の根元はしっかりしています。少し手を入れれば十分に耐えられるような構造にはなると思います。一般にどのような地震の場合にも絶対ということはないですね。相当な地震が来ても大丈夫なように若干手を入れるということです。それは可能だと思います。

≪岩盤の植生整備が必要≫
 岩盤の上に木が生えていて、木を切ってしまえばいいわけですが、根っこは毎年太ってきます。岩盤の間に入り込んだ根が太れば、どんなに硬い岩でも砕くことができます。それが一番の問題です。まずは木を切ること、根を枯らすことは簡単にできます。大きな地震がきても壊れないように、隧道の坑口をきちんとすることが必要ではないかと主張してきました。洞門を開削してしまわなければ危険という状態ではないというのが私の認識でした。

 第3者委員会が始まる前に洞門を見せていただいたときには、洞門の上に生えている木を切り,その根がこれ以上太らないようにしてから表土をかけるとして、アジサイなどで植生し直せば、根があまり入り込まないので、景観も維持できるのではないかと(住民説明会で)お話しました。このようにすれば皆さんが愛着を持つトンネルも守れるだろうというのが、昨年5月8日に最初に現地を見た時の印象でした。話は聞いていたし資料も送ってもらったのですが、やはり現場を実際に見てみないとわかりませんねということで出かけた次第です。

≪コンサルの言動に違和感≫
 洞門問題は随分前からあったという話なので、その時に切っておけば、全然問題にはならなかったのでしょうねと言ったような気がします。やはりトンネルを壊したいのでしょう。昨年6月25日の第1回目の委員会では、私はどういう方が実際にコンサルとして入っておられるのか分かりませんでした。委員会の後、懇談しました。そしたらサンコーコンサルの方だというので、ちょっと違和感を覚えました。

 委員会のあとで(とくに最初や最後)事務局を交えて懇談することは、なくはありません.第三者委員会の事務局の判断です。その場にコンサルがいることもあります。多くは第三者のコンサルです。前に答申を出しているコンサルが状況を一番よく知っているので、最初の委員会に来て「開削」に決めた経緯や計測されたデータなどを説明する、というのも問題ないように思います.しかしその委員会での資料や発言は、実情の説明だけではなく、何らかの方向性を示しているように感じられました。そのコンサルが飲みながらもそのような主張をされたことに違和感を感じたものと思います。

≪もやもや感残した行政≫
 3回ぐらいあるだろうと思っていた委員会は、7月17日の2回目が最後で、結論ありきみたいな形でした。委員会での指摘に対して、いろいろと対応して結論をまとめ、最後の委員会を開くのが普通なのですが、2回目の委員会が終わったあと市長がお見えになり、道路課の職員が結論として岩盤を切って開削すると述べて、「そういう風に決めましょう」ということになりました。2回の委員会でまだ問題がありそうなのに何で終わってしまうのかなという感じがしました。

 そのときは7月末までに報告書をだすということでした。8月になってどうなっているのかと事務局に聞いたら、急きょ最終報告書が出ました。ほとんど中間報告と同じもので、何かおかしいなと思いました。また委員は4人ですが,第2回目には3人しか出席していません。たった4人の日程調整ですので、なぜ3人の日に第2回の委員会を開いたのか、なぜ結論を出したのかもよくわかりませんでした。何となくもやもやした感じでした。

(コメント)
 小泉教授の発言は穏やかで丁寧な言い回しながら、第3者委員会での鎌倉市の対応には強い憤りをもっていることが伝わってきます。とくに❶初めから結論ありきの委員会の状況❷無視された岩盤の樹木伐採の要望❸委員会終了後に設営されたコンサルタントとの飲食❹報告書の遅れについては、「それ違うのではないのか」「何かおかしい」などと首を傾げておられました。委託を受けている第3者委員会にも疑問を残す行政の対応だけに、開削に反対する住民にはあの手この手で事実を覆い隠そうとしているのではないでしょうか。