急に寒くなり、空気も乾燥してきて、暖房と加湿器が必要な季節となってしまいましたね。
 管理人(うぇいど)です。

 さて、皆さんは10/23(日)に開催された、海外マンガフェスタ2016には参加されたでしょうか。今回は、このイベントでなんとなく買ってきたアメコミ「ウェイワード」を読んでみたので、その感想を書いてみたいと思います。


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■概要
2014年8月より、イメージコミックスから出版が開始されたオリジナルストーリー。
アイルランドから日本にやって来たロリーは、日本に潜んでいた存在に出会う。


■感想
 先月、東京ビックサイトで開催された海外マンガフェスタ2016内のアーティストアレイを歩いていたら、「ウェイワード」というコミックを見つけました。なんか、以前、この本のことを聞いたことがあるし、作者もいるし、サインももらえるみたいだし、なんかの記念だと思って、一応買っておいてみるか…
ぐらいの気持ちで、とりあえず#1~5までを買って読んでみました。その感想は…

「今まで、食わず嫌い的に読まずにいた自分がバカだった。
 こんなアメコミ、読んだことなかった。」

です。

 一昔前だと、「日常からSF・ファンタジーに至るまで、様々なジャンルを題材にした作品がある日本のマンガに対し、スーパーヒーローものしかないアメコミは子どもにしか人気がない」と言う人がいたものの、そんなのはどこ吹く風、映画「アベンジャーズ」や「スーサイド・スクワッド」の大ヒットにより、「アメコミ映画と言えば、スーパーヒーローが主役で、なおかつ大人も楽しめるもの」といったイメージが出来つつあるかと思います。一方のウェイワードは、スーパーヒーローが主人公というわけでもなく、映画化もドラマ化もされていないオリジナルストーリーのコミックであり、名前を知られる機会があまりないのが現状になります。
 日本のマンガの出版体系を考えてみると、一つの雑誌に複数の作品が掲載されており、目当ての有名作品を読むために買った雑誌に掲載されていた作品をついでに読み、こうして読まれた作品の中でも人気の高かった作品は単行本化され、場合によってはメディアミックス化される、という形式は、実は各作品が読者の目に触れやすくなっているんですね。その点では、作品単体で発売されてしまうアメコミという出版体系で、映画化された有名キャラクターが登場するわけでもない、オリジナルストーリーを展開するというのは、色々と課題があるかと思われます。
 また、ウェイワードを出版しているのは、実は、MARVELでもDCでもなく、イメージコミックスです。90年代には上記2大出版社に並び、飛ぶ鳥を落とす勢いだったイメージコミックスですが、最近ではこの出版社自体が不調ぎみで、なおかつウェイワードの日本語版は公式には出版されておらず、日本語版はイベント等で作者が頒布している白黒印刷の同人誌のみになりますが、ページ数に対して、値段が多少割高であり、まさに「薄い本」となってしまっています。また、同人誌版は白黒印刷のため、キャラクターの髪の色等、重要な情報が分からなくなってしまいます。
 では原書で読めば良いかとなると、あまりにきれいに訳された同人誌版を読んでから原書を読んでしまうと、英語版の回りくどい言い回しが妙に気になって読みにくくなってしまいます。
 上記の理由から、なかなか読むためのハードルが高い作品だと言えます。

 しかし、こうした状況を頑張って乗り越え、読んでみれば、このウェイワードという作品がいかにこれまでのアメコミとは違っているかが分かります。
 まず、実際に日本の街を参考にして作画をしているのか、池袋等の日本の風景がそのまま出てきて、海外映画にありがちな怪しい日本とは異なり、親近感が沸きます。(さすがに看板等の字体は一部怪しいところもありますがw)
 ところで、日本のアニメに登場する外国人を思いだすと、「アニメを観て日本に憧れ、マンガを読んで日本語を学んだ」とか言ってみたり、日本語がペラペラなのに基本的な単語に限って英語で言ってみたり、「アニメやマンガで日本語を学んだので、たまに変な話し方をしていまうんです」と言ってアニメの台詞を話し出したり、「日本のここは変です!私の国では~」みたいな説教を始めたりしますが、僕はそういうのを見る度に「そんな外国人いるか~い?!」とツッコミたくなっていました。しかし、ウェイワードに登場するロリーは、期待に胸を膨らませて異国の日本に来たものの、日本の文化に戸惑ってしまったり、自分の語学力に落ち込んだり、人間関係や距離感に悩んだりと、リアルな外国人の描写をしてくれます。
 また、登場人物の能力は、他のアメコミにありがちな、光線を出す、変身する、といった視覚的で分かりやすいものとは少し異なり、感覚的で独特のものが多く、読んでいて新鮮な感じを受けます。
 内面は普通の少女なのに関わらず、家庭環境から少し特殊な事情に置かれてしまった主人公が、謎の少女に出会い、事件に巻き込まれていく様子は、ヤレヤレ系主人公が暴走系少女に振り回されるラノベと、ノイタミア枠のアニメを足して割ったようで、なおかつ、謎や伏線を交えながら進んでいく不思議なストーリーは、まるでアフタヌーンの連載作品のように思わず引き込まれてしまいます。

 海外マンガフェスタ中の講演にて、「これまでのアメコミは、スーパーヒーローものが中心でしたが、私たちが子ども時代に親しんだ日本のマンガを参考にし、スーパーヒーロー以外のジャンルのアメコミを制作していきたいと思います。」といった話を聞きました。
 グッズ販売を視野に入れたデザインされた、カラフルなコスチュームを着たスーパーヒーローが登場するするわけではなく、アベンジャーズのような世界を救うためのチームを結成するわけでもないながら、謎の存在と裏路地での戦いを繰り広げたり、登場人物の過去や秘密に少しずつ迫っていく展開は、まさに新しい形のアメコミです。

 近年の映画の大ヒットにより、MCUやDCEUがアメコミの世界だと思っている人がいるとしたら、また別な形の世界観を持つアメコミである「ウェイワード」を、ぜひ読んでみてほしいと思います。
 ウェイワードの作者は、12月の東京コミコンのアーティストアレイにも出展する予定らしいので、この機会を利用して、ぜひ作品に触れてみてほしいと思いました。

 よろしくお願いします。