映画「スパイダーバース」の公開間近に加え、「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」の予告編も公開されて、スパイダーマン界が盛り上がってきていますね。
  管理人(うぇいど)です。

  さて、あの東映版スパイダーマンとレオパルドンが登場したことと、翻訳版の発売により、日本でもそれなりの知名度のあるコミック版「スパイダーバース」ですが、その続編とも呼べるイベント「スパイダーゲドン」が刊行されました。先日、完結したこちらのイベントですが、読んでみた感想を書いてみたいと思います。

【注意】未翻訳作品とは言え、ネタバレとなってしまうため、知りたくない方はご遠慮ください。

※日本語版の発売決定に伴い、一部の記載を削除しました。

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■概要
スパイダーバースのラストで、別世界に追放されたインヘリターズが帰ってくる。


■あらすじ
以下、だいたいこんな感じ。

(ここに結末まで書いてありましたが、削除しました。)


■感想
 スパイダーマンが大集結するというインパクトある「出オチ」でありながら、「並行世界に存在する様々なスパイダーマンが集まる」というストーリーというアイデアと話題性と、そして内容の面白さから話題になった「スパイダーバース」ですが、更にはCGアニメ映画として映画化までされ、12月に米国で公開されてヒットを飛ばしているようです。そしてそんなアニメ映画に合わせるかのように刊行された原作コミック「スパイダーゲドン」ですが、読んでみた感想は…

「それなりには面白かったです。ただ、あのオチはダメやろ…」

です。

 まず、「スパイダーゲドン」というタイトルに言いたいのですが、「スパイダーマンのハルマゲドンだから、スパイダーゲドン」というのがちょっと無理があると思います。もう少し、他のタイトルは無かったんですか?何にせよ、言うほどハルマゲドンな話でもなかったですし。
 ところで、映画「スパイダーバース」に登場することが決まり、日本でも知名度アップが期待されるスパイダーマン・ノワールですが、今回、なんと、#1で、何もしないうちからモーランに食われてしまうという事態になってしまいました。記憶が不確かなんですが、「スパイダーゲドンでは、ノワールが活躍する」みたいな情報が、スパイダーゲドンの刊行前に出ていた気がするんですけどね。こういう展開であることを利用した、「狙ったガセ」だったんですかね?あまりにもあっさり食われて死んでしまったものですから、「いやいや、映画のスパイダーバースもあるし、これから話題になるであろうキャラがこんなにあっさり死ぬわけないだろ?後半のあたりで復活するんだろ?」と思っていたのですが、最後まで死んで死にっぱなしでした。MARVEL編集部の狙いが、ちょっとよく分からなかったです…
 あと、思ったのが、女性ヒーローのDr.オクトパスと言うべき、アース1104のオクタビア・オットーという、おかっぱ頭のキャラが登場するのですが、「なんか弱そうに見えるけど、後半あたりで何か活躍してくれるんだろう」と思っていたのですが、この人、最後までろくな活躍しなかったんですよね。なんか、機械をいじったりはしていたんですが。もう少し、何かできなかったんですかね?っていうか、この人、スパイダーマンですらないですよね?なんで呼ばれたんですかね?
 そして、ピーターではなく、メイおばさんがクモの能力を身につけてしまった世界のスパイダーマン、スパイダーマムですが、この人、おばあちゃんみたいなコスチュームを着る必要ってありますかね?もっと戦闘に特化したコスチュームを着てもいいんじゃないですかね?
 あと、爆破に巻き込まれて死んだと思われていたスパイダーグウェンが、終盤で再登場し、マイルズに「本当に君なのか?別なアースのバージョンではなくて?もしくはゴーストか何か?」と聞かれて、「いいえ、あたしよ。ただ、『ゴーストスパイダー』ってとこかしら?」と答えたので、名前がゴーストスパイダーになった、というのはちょっと強引ではないですか?コミックのタイトルは「スパイダーグウェン」なのに、劇中では「スパイダーウーマン」と呼ばれてたり、MARVELのアニメの放送にあたり、突如「ゴーストスパイダー」に名前を変えてみたり、忙しいですね…
 ついでになんですが、ジャカルのクローン施設「New U Technologies」って日本語では何て訳せば良いんですか?「新U技術」とかにしておけば良いんですか?意味分かんないですけど。
 それとですね、元祖スパイダーマンと言うべき、アース616のスパイダーマンの活躍が薄いんですよね。スパイダーバースの良かったところに、他の世界のユニークなスパイダーマンに比べて多少劣るところもあり、スーペリア・スパイダーマンに押され気味だったアース616のスパイダーマンが、徐々にリーダーシップを発揮し、インヘリターズとの戦いに挑んでいく、という点があったのですが、今回、アース616のスパイダーマンが大したことしてないんですよね。
 なにより、一番言いたいのが、その結末についてです。スパイダーマンらの命を狙うインヘリターズを殺害してしまうか否かという議論になり、その結果として、インヘリターズを赤ちゃんに戻して、将来、スーパーヴィランにならないように優しく育てることになりました、って、鉄腕アトムの「若返りガスの巻」かよ?!って思ってしまうんですよね。こんな展開は、現代のアメコミとして、安直過ぎるだろ、って思ってしまいましたね。スパイダーバースの良かったところって、「悪人であっても殺しはしない」をモットーとするスパイダーマンらが、インヘリターズをどうするのか?ということで「殺さない」方法をとったところなんですよね。それに対して、今回「記憶を消して赤ちゃんにしたから大丈夫」って、それで良いのかよ?!って言いたくなってしまうんですよね。そうは言っても、こういう展開になったということは、赤ちゃん化したインヘリターズが記憶を取り戻して、再び大人に成長し、スパイダーマンらに敵対する、というのが今後の展開なんだろうと思います。
 全体的に思ったのが、元祖スパイダーバースであった、窮地からの逆転という「熱い展開」や、スパイダーマン同士が互いに励ましあったり、激を飛ばしたりする中での「心に響く言葉」みたいなのが少ないんですね。スパイダーバースの斬新で、かつ面白かったポイントって、並行世界にいるスパイダーマン全てに危機が迫り、ほぼ全てのスパイダーマンが集結するが、それが返って全滅の危機を生んでしまう…追い詰められた状況からの逆転はなるか?という点なんですね。そういうのが今回のスパイダーゲドンでは弱かったんじゃないかと思います。というのも、今回は「ダン・スロットの脚本を元にした」作品であり、「ダン・スロットが書いた」スパイダーバースと比べると、やっぱり色々と物足りないんですよね。

 ただ、面白かった点もそれなりにはあります。
 なんか気になってしまったのが、アース11580の、自分をピーター・パーカーだと思い込んでいる数千のクモである、スパイダーズマンなんですよね。アラン・ムーアによる、自分をアレック・ホランドだと思い込んでいる沼の怪物「スワンプシング」のパクリやんけ!って思いました。(ちなみになんですが、この「沼の怪物」は、同時期に死んだ男と同一の存在なのか、違う存在なのか、という例えは、哲学者のドナルド・デイヴィッドソンという方も述べているみたいんですね。どちらが先出のアイデアなんですかね?)似たようなところだと、「野原ひろし 昼メシの流儀」に登場する「自分を野原ひろしだと思いこんでいる一般人」とか、もしくは、「SSSS.GRIDMAN」に登場する「自分を響裕太だと思い込んでいるグリッドマン」かよ?!なんて思っちゃったりしてしまうんですよね。また、「自分をピーター・パーカーだと思い込んでいる数千のクモ」なんですが、途中でクモに分裂して行動してたりするんですね。ピーター・パーカーだと思い込んでいるのか、クモであることを自覚しているのか、どっちなんだよ?と思ってしまいました笑
 また、スパイダーバースでは、自分はスパイダーマンのバリエーションの一つではないかと落ち込んでいたスパイダーインディアことパビトルが、自分もまた特別な存在なんだと気付かされるシーンが、僕はすごく好きなんですよ。そんなスパイダーインディアが、アース50101で必死に強盗と戦っているのを見れたのが、良かったです。
(ただ、スパイダーバースで彼を励ましていたスパイダーUKの方は、今回、首を折られて死んでしまいましたが…この人、スパイダーバースのラストで出身の世界が、星間戦争で消滅して帰る場所が無くなり、今回はあっさり死ぬし、かわいそうな人ですね…)
 それから、我らが日本のスパイダーマン、東映版スパイダーマンとレオパルドンの見せ場もそこそこあって良かったです。ハリウッド映画としてのスパイダーマンが定着してしまった今となっては、あのスパイダーマンが巨大ロボットに乗って戦うなんて、ギャグにしか思えないのですが、スパイダーバースや、スパイダーゲドンを読んでいくと、山城拓也もまた、悪と戦うスパイダーマンのうちの、立派な一人なんだと思えてきます。
 ところでなんですが、ヴォルト・オブ・スパイダーズで描かれた時は、突然「第78章」になってたんですが、いつの間にそこまで話が進んでたんですかね?東映版スパイダーマンのことはよく知らないのですが、モンスター教授って死んだんじゃなかったのですかね?笑 っていうか、「モンスター教授」がパワーアップして、「モンスター首相(Prime Minister Monster)」になりました、ってちょっと名前がダサくないですか?笑
 あとはやっぱり、マイルズですね。序盤は大したことをしていなかったのですが、やはりラストのエニグマ・フォースの力を受けて覚醒し、レオパルドンのソードビッガーを投げつけてソラスを倒すシーンが、すげー良かったです。
 そして何より、本作で一番良かったのが、スーペリア・オクトパス改め、スーペリア・スパイダーマンです。自身がいつでも復活できるように構築したクローン施設が、インヘリターズに悪用される可能性を指摘されても、「私はオットー・オクトビアスだ。決して『間違った』りなんてしない。」と言い切ってしまう、過剰なまでの自信によって、今作のような事態になってしまったのですが、それでも開き直って、インヘリターズに立ち向かっていく様子は、もはやカッコ良さを感じてしまいます。僕はどちらかと言うと弱気な人間で、自分の考えていることや、自分の意見は、人から見たら正しくないのではないか?こんなことはするべきではないのではないだろうか?みたいなことが常に気になってしまい、思うようなことができないことばかりです。そんな僕からスーペリア・スパイダーマンの自信に溢れ、常に自分を信じている言動を見ていると、尊敬のような気持ちまで感じてしまいました。
 こうしたことから、様々な並行世界のいずれのスパイダーマンにも、それぞれの良さがあるのだと思わせてくれました。

 翻訳本のおかげで、スパイダーバースは結構な人が読んでいるみたいですが、この感じなら、スパイダーゲドンも近い将来、日本語で読めるようになると思っています。それまで待つか、もしくは英語版を読んで、様々なスパイダーマンの生き方を見てほしい、そんなことを思ってしまいました。

 よろしくお願いします。