2014年03月08日

卒業

卒業式のシーズンです。
春は多くの別れと出会いがあり、その人と数だけそれぞれの
ドラマがあります。
私の人生で最も印象深いのは幼稚園の卒園式です。
大勢の大人が泣く場面を初めて見たのが卒園式だったからです。

悪ガキでイタズラっ子だった私は大人達にウザがられていると
自分でも認識があったのですが、そんな私を担任の先生だけは
いつもかばってくれてました。
その先生はちょっと変わった人で、かなりのキス魔でした。
幼稚園児たちを追いかけては男の子だけにキスをしまくるのです。
今の時代ならすぐに問題になって、園を追い出されるでしょうが、
当時はとても緩い時代だったので、保護者達も先生がキス魔で
ある事を知っていて、微笑ましく見ていました。

私は卒園の意味自体を良く解ってなかったので、式の当日も
先生から追い回されてキスされるとばかり思っていましたが、
いつもと様子が全く異なり、先生は終始涙目でした。

式が始まると先生は子供のように大きな声で泣きだし、
我々園児達もその異常な様子に驚いてしまいました。
最後のお別れの際、証書の入った筒で先生のお尻を叩いて
みましたが、泣き止むどころか、更に大声で泣き始めました。

予想外のリアクションに困ったは私は
「どうして今日はチュウしないの? 何で泣いてるの?
どうしたら泣き止むの?」と質問すると、先生は
「○○君が大きくなったら先生にチュウしてくれると約束するなら、
もう泣かない」と返されました。
言葉の意味は深く考えず、他の園児達に「大きくなって
先生にチュウするって約束したら、先生泣かないんだって」と
皆を巻きこんで約束する事にしました。

その数年後の3月、私は突然の訃報に戸惑いました。
その先生が亡くなったのです。
小学低学年ともなれば、大体の事は理解できていたので、
卒園式の時とは違い、場の空気を読んで、おとなしく葬儀に
参列しました。
最後のお別れの際、私は先生の棺に花を供えて
しばらくの間、動かない先生を見つめていると、卒園式の時に
交わした約束を思い出しました。
心が苦しくなり、私は約束を守る事にしました。
先生の唇の冷たさが、逃れられない大きな悲しみを運んで
来るようでもあり、泣けてきました。
その様子に、会場の大人達はざわついておりましたが、
当時の園長先生が「○○君、約束覚えてくれてたんだ!」と
涙を啜りながら、当時の事を参列者に説明してくれました。
その後、私に続いた元園児達も、先生にキスをして
最後のお別れとなりました。
あの時、私たちは先生から何かを得て、そして、
何かから卒業できたような気がしましたが、それが何かは
今でも言葉で表すことが出来ないのです。


kimama_nahito at 15:24コメント(0)トラックバック(0) 

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