2007年09月25日

逢坂浩司さんインタビュー

19eba03a.jpg逢坂浩司 おうさかひろし Disc.3-jacket Illustrator HIROSHI OUSAKA


PROFILE
アニメアールにおいて谷口守泰作監回で多くの原画を手がけ、『ドリームハンター麗夢』、『鎧伝サムライトルーパー』で作画監督を担当。シャープかつ、巧みなキャラ芝居で人気を博す。その後、現アールの吉田徹と共に『機動戦士ガンダム0083』の作画監督を務め、そのハイクオリティーな作画レベルはガンダムシリーズ中ベストと評される。その実績を買われ『機動戦士Vガンダム」、『機動武道伝Gガンダム』とキャラクターデザインを歴任。 現在はBONES(ボンズ)取締役に就任。『カウボーイビバップ』、『鋼の錬金術師』、『獣王星』等の多くのBONESのヒット作を手がける。 最新作は『天保異聞 妖奇士』作画監督。
http://www.bones.co.jp/

現在、ボンズ取締役という要職に就き、数々の話題作を陣頭指揮するヒットメーカー。 その回想と現状を見つめる真摯な眼差しは、アニメーターとは、 アニメーションの楽しさとは何かという示唆に満ちた、前線からの回顧録である。


●作監としては『麗夢供戮最初で?

逢坂 作監としては『(星銃士)ビスマルク』が最初で、その後に『(蒼き流星SPT)レイズナー』をやった後だと思うんです。ちょうど『麗夢供戮函悒屮薀奪マジック(M-66)』が同時期位だったんですよ。

●『ブラックマジック』は沖浦(啓之)さんがつきっきりで。

逢坂 あれはもう沖浦くんがベッタリで、だから『麗夢供戮里箸はちょっと原画を手伝ってもらってという感じですけど。

●ビデオとしては『麗夢供戮初作監。

逢坂 ビデオとしてガッツリやったのは『麗夢供戮初めてだったと思います。一本まとめる仕事をTVシリーズじゃなくビデオとしてできたってのは大きいですね。

●版権イラストも多くありました。

逢坂 そうですね。版権も一杯描かせてもらったし。今観ると若いなって(笑)思いますけど。あの当時は今みたいにデジタルなんてまったくなく、セルでどこまで表現できるんやろうって、イラストで挑戦してた感じで。

●セル表現での光の差込のグラフィックは?

逢坂 それは谷さん(谷口守泰)が考え出したことです。

●光がスーと。

逢坂 そうなんですよ。ビシッと入るんです。よくこんなこと考えつくなあって思いました。まあ昔、谷さんがデザイナーみたいな仕事をしてたんで、その辺の仕事の発想からきてると思うんですけど、アール以外ではやってなかったですね。

●様式的な装飾は?

逢坂 それも谷さんですよ、やっぱり。谷さんのデザイン的な流れるような模様の描き方が大好きだったんです。谷さんの影響が多大にあると思うんですね。今回のジャケットもその辺も狙っています。

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逢坂 そうですね。『死神博士』はもう井上俊之さんとか、そうそうたるメンバーで、うわーとか思ってて、その後だったんでさすがに。

●プレッシャーが成長させてくれた。

逢坂 『麗夢』は時間がまったくなかったんですけど、作監のやり方はすごく勉強になりましたね。時間のない中で、どうカットをあげていくかっていうのは。

●同じものを描いていてもダメだというのはあった?

逢坂 僕のいた頃のアールっていうのは、メンバー見れば当然なんですけど、作品全体のクオリティーが高くてあたり前っていう人間ばっかりだったんです。時間は時間として置いといて、その作画の見せ方であるとかがものすごい。その中で埋もれるわけにもいかないし、同じ作品やっていてもそれぞれ皆、微妙に方向性が違うんで、なんて言うんですか、せめぎ合うって言うんですかね。あの状況は。あれは面白かったですね。

●原画レベルでも個性がありました。

逢坂 ええ、もう。柳沢(まさひで)くんとか沖浦くんとか小森(高博)くんのところなんか、ほぼ修正入れてません。

●キャラクター的には?

逢坂 その時は一生懸命やったつもりなんですけどね。後で見直すと甘いところが一杯あるんですよ。今観たらたぶん、とてもじゃないけど…。

●芝居的には原画を生かす方向で?

逢坂 今はレイアウトチェックの時に、キャラクター乗っけてある程度統一を図ってから原画を描いてもらうんですけど、あの時にはソレがなかったんですよ。だからあがってくるまで、どういう画がくるのかわからないっていう状態で。あがりに対してこっちがどういうアプローチを掛けるかっていうやり方ですね。もう原画マンの画のクセが、そのものズバリ出てる。

●兇離▲丱鵐織ぅ肇襪覆秒口さん以外のなにものでもない。

逢坂 そうですね。あれはもうアニメじゃないですよ。絵ですよ絵。これ動かすんかっていう。

●あのタッチの影響は?

逢坂 やっぱりアールに入ったのは谷さんの絵が好きだからなので、あの時は絵の基準がすべて谷さんでした。『レイズナー』の時はかなり意識したっていうか、意識してあたり前なんですけど。

●『麗夢』では毛利(和昭)さんというモチーフもありますが。

逢坂 毛利さんの絵は描けなかった。あのなんていうんですか、キャラの持っている肉感っていうんですかね。麗夢の足が全然描けなくて、あれは無理でしたね。あれはもーさん(毛利和昭)しか描けない。もうあれは真似しようと思ってもできませんね。あの線の質感で肉を描くっていうのは、なかなか難しいですよ。

●毛利さんといえばエフェクトの美しさも。

逢坂 僕がちょうどアニメアールに入った時に『(装甲騎兵)ボトムズ』をやってたんですよ。それで、もーさんがたまに『ボトムズ』描いてる時なんか、ソレまわしてもらって(笑)。動画やったりとかしてました。

●そのエフェクトへの意識は?

逢坂 もーさんのセンスが抜群なので、意識とか真似とかじゃなくて盗んでやろうと。それと吉田(徹)さんのエフェクトも独特だったんですよね。あの二人からはああいう描写の仕方をかなり教えてもらったということです。

●入社前、谷口さんのファンであったという時はどの作品で。

逢坂 『(太陽の牙)ダグラム』それと『ボトムズ』、あとは『さすがの猿飛』とか、あの辺でもう、なんじゃこりゃって感じで。僕が一番びっくりしたのは、『さすがの猿飛』で炎の表現を原画2枚だけでやってるんです。後で知ったのですが、実はそれをやってたのはもーさんで、いやあホント巧い人は火の表現も2枚で描けるんや、そうかあ、そうなんやって思いました。

●逢坂さんの画風にはクールさを感じます。

逢坂 それは多分に谷さんの影響があると思うんですよ。僕どちらかというと元々泥臭い絵を描いていて、もう沖浦くんとかにも「泥臭い泥臭い」って散々言われてたんですよ。アールで仕事してると、谷さんの絵というのを常に意識しないといけない。キャラの描き方も一から十まで谷さんの物真似っていうとヘンですが、アール入ったんだから谷さんの絵に似せなきゃっていうんじゃなくて、谷さんの絵が描けなきゃいけないだろうって。だからね、今でも小森くんとかと笑うんですけど、小森くんと僕がキャラ表作るじゃないですか、そうすると横顔の輪郭にね、どうしても谷さんの影響が出るんですよ。

●谷口さんの描く横顔はホント美しいですね。

逢坂 普通はあんな風に決まりませんね。あごのラインって特に難しいんです。締まるんですよ、谷さんの横顔は。それで『(機動戦士)Vガンダム』の時、鼻がツンとなってて唇が尖っててあごが出てる横顔をキャラ表に描いて持って行ったら、富野(由悠季)さんに「逢坂君はどこのスタジオに居たの?」って聞かれて「アニメアールです」って答えたら。「あ〜あ〜あ〜」って言ってましたからね(笑)。キャラの作り方って俺やっぱアール出身やなって思いましたけどね。

●アールといえば手の描き方も印象的でしたが。

逢坂 谷さんの描く手は綺麗なんですよ。とにかく!手の表情が。手を描くことを意識させられたのは、やっぱり谷さんからですね。谷さん以外にも好きなアニメーターさんが一杯いたんですけど、手にあれだけ魅力というか表情があるっていうのは群を抜いてますね。

●『麗夢』でも意識しました?

逢坂 当時作監する時に、その谷さんの描く手、谷さんの描く脚はとにかく会得しなければって。

●アールの面白さって、そのいわゆる動かし系作画と谷口さんのクールなキャラ芝居との世界観の両立ですね。

逢坂 それは、そのどちらも好きな人間が関わってるというのが、一番の要因だと思うんです。それに谷さんが作監の時には、僕ら原画は一転してキャラを似せることを意識しないで、動きの方に全神経を集中できるっていう。

●谷口さんの作画方針が活気ある作画を生んだ。

逢坂 だと思いますよ。谷さんもそんな細かいことに口出しする人じゃなかったんで。

●でもきっちり自分の色に仕上げる。

逢坂 ええ、あの修正は絶妙でね。なんで輪郭だけ直してるだけやのに、谷さんの絵になるんやろうと思いました。ですから僕も『(鎧伝)サムライトルーパー』やるときだったかな、宣言したんですよ。キャラは塩山(紀生)さんには似せません(笑)って。

●『トルーパー』のムックでは塩山さんの絵に準じましたとのコメントを読みましたが。

逢坂 いや、準じてることは準じてるんですよ。でも、似せると準じるってのは微妙に意味が違ってて、自分を出しながら(似せない)塩山さんの作ったキャラからは外しません(準じる)っていう。

●それって谷口キリコの方法論ですね。

逢坂 そうです!まさにそうなんです。あのまんま描くことでいいの?っていう疑問はずっとあったんで。今でも貫き通していることではあるんですけど、人の作ったキャラを作監する時もやっぱり、そのままじゃなくて自分なりのアレンジっていうのをどこかに入れるというのは、かなり意識しています。

●それは『麗夢』の時も。

逢坂 『麗夢』ではキャラを近づけこと云々より、自分が試されてるっていう感覚があったんですね。ここでしくじったら先の自分がないかな、っていう危機感があって、もしアールの中で“適当”な仕事をし“適当”なものをあげたりしたら、もうアールの人間からは多分認められないやろうな、と。とにかくまず身近な人間に認めささんことには、次の仕事がない。『トルーパー』でそれを言ったのも、もう有象無象の中に埋もれていたくないっていうのがあったんで。だから、もう似せませんとか、前面的に自分を出しますってのは、賭けなんですけどね。『トルーパー』も色々好き勝手やらせてもらって、そしてダイレクトに反応が返ってきたので、やれてよかったなって思っています。

●『トルーパー』はすごい人気作になりましたし、逢坂アレンジのキャラはもちろん、アール影も存分に楽しめました(笑)。

逢坂 入れましたねえ。ええ、もう今やっとかんとって(笑)。

●当時、印象的な演出家は?

逢坂 (高橋)良輔さんは、すごく自由にさせてくれる人で、『レイズナー』の時も、あがったものに対してなにも言わずに見ていてくれる。富野さんは細かいときには指先の芝居まで言ってくるという、正反対の監督ですね。どちらもそうなんですけど、まとめるという監督本来の業務で考えると、やっぱりすごいなあと思いますよ。監督の意向は確実に反映されてる。誰が描いても富野作品は富野作品ですし、良輔作品は良輔作品じゃないですか。ファースト『(機動戦士)ガンダム』どっぷりの世代で、良輔さんの作品も『ダグラム』から全部観てるし。まさか富野さんとも良輔さんとも一緒に仕事できるとは思いませんでした。

●奥田(誠治)監督は?

逢坂 奥田さんもね、自由にさせてくれたんですよ。『麗夢』は僕が新人の頃から始まってる作品ですよね。最初は全然名前なんて出ていない。でも奥田さんがその後、けっこう僕を使おう使おうとしてくれたんです。あれはすごい嬉しかったんですよ。奥田さんは、全然違うもんと違うもんを引っ付けて新しいもんを作るという、あの発想が面白いなあと。

●奥田監督のコンテは?

逢坂 アポイントでは手が入ってるんですけど、そのポイントの入れ方が絶妙で、まとめ上げるっていう感じですね。なんていうか監督やなあっていう。

●大御所との付き合いが続きましたが。

逢坂 そうですね。その辺はやっぱりアールの流れで続いている、谷口さんが付き合って来た人達と知り合えてるんで、よかったなあっていうのが(笑)。

●逢坂さんのアールでのアニメの関わりって、アニメが一番面白く活気があった時代では。

逢坂 そう、あの頃はそれほど制約がなくて、自由にやらせてもらえました。だから、今の子みてると可哀想やなって思うんですよね。

●レイアウトでカチっと決められちゃう。

逢坂 そうなんですよ。

●若手の頃は目立つ仕事がやりずらい?

逢坂 今は特にそうかもしれませんね。僕らの時はとにかく、もう自分のところさえよけりゃいいや、でやれてた仕事なんですけどね。その辺考えると、活気はあったし自由やったしアニメが一番よかった時期かなっと。うん。

●ただ今の画をコントロールする仕事も大変やりがいのある、現在にあってはとても重要な仕事だと思います

逢坂 自分らはもう、作画的には管理の部分に入ってるんですよ。この子のこの部分、ホントは出してあげたいんだけど、このキャラはこの芝居しないんだよな、とかでやっぱり抑えてしまうこともあったりする。できるだけ、個人個人のいい所は残すようにしてるんですけどね。その辺がすごく自分がやってきたことと今やってることと相反するんでちょっとジレンマなんですね。

●アニメのクオリティー自体は上がっている。

逢坂 それもね、危ういところではあるんです。今、アニメーターになりたいって子は二つのパターンがあって、純粋に絵を動かしたいという子。綺麗な絵を描きたいという子。綺麗な絵を描きたいっていうのは、ちょっとアニメーターとして入ってくる動機としては危ういなあと思うんです。特に、今は美少女ものが多いじゃないですか。あれってやっぱり絵が綺麗でないと、作品の趣旨として成り立たないっていうことがあって、受け手もそういう見方だと…。

●バラつきを許さない。

逢坂 そうですね。今、結構聞くのが観てる側からのクオリティーという言葉。僕らが観てる頃はクオリティーとかじゃなかったんですよね。例えば金田(伊功)さんの作画は、運動の法則からしたら無茶苦茶なんですけど、あのなんていうか爆裂した動きであるとか、あの絵の持つ力感であるとか、空間であるとかがすごいなあ、と。面白い!アニメってこうだよねっていう、ああいう魅力に取り付かれた人間からすると、その受け手側からのクオリティーっていう意味合いが変わってきてるという感覚が…。

●同感です。では、最後にDVDを買って下さったファンへ一言お願いします。

逢坂 とにかくがむしゃらにやった仕事でもありますし、当時の熱気みたいなものや、今とはまた違ったアニメの美少女もののテイストっていうんですかね。その辺をまた楽しんでもらいたいなっていうのはありますね。

●反応は気になります?

逢坂 いやあ、なりますねえ大いに(笑)。



※前回のブログで触れました、逢坂浩司氏の貴重なインタビューです。
『ドリームハンター麗夢 DVD-BOX 1』ブックレットに収録されたテキストの改訂版です。
収録日は2006年9月、収録場所は東京都杉並区某所。
『天保異聞 妖奇士』の作監作業中の貴重な時間をさいていただきました。

※画像は『ドリームハンター麗夢掘抂坂浩司氏、書き下ろしジャケットイラスト。


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この記事へのコメント
お久しぶりでございます。
すごいですね。
すごい長編じゃないですか、読みごたえありますね。
あとでゆっくり読まさせて頂きます。

最近は麗ちゃんのイベントにも参加せず申し訳ないです。
お体に気をつけて頑張ってください。
Posted by ヨッチャン at 2007年09月26日 19:10
逢坂浩司さん残念ですね。
まだまだ若いのに。
TVアニメなんて有名なものばかりですね。
すごい懐かしいです。
これからはアニメも見方変わります。

冥福をお祈りします。
Posted by ヨッチャン at 2007年09月26日 19:33
逢坂さんの作品は私の知っているものばかりです。特にVガンダム。ガンダムテレビシリーズの中で一番好きです。私の幼い時期に影響を受けたアニメでした。天海麗サンを通して思い出したことに感慨深いものがあります。 ご冥福祈ります。
Posted by 宇都宮の人 at 2007年12月18日 12:03
ダグラム・レイズナー・0083・さすがの猿飛びも観てました!「か〜み〜か〜ぜ〜の〜じゅ〜つ〜!!」「恋の呪文は!すきときときす!逆さに呼んでもすきときときす」あの黄金アニメ時代を本当に作ってくれてたのですね。あ〜あの時代のアニメまだまだ出てきそうですね、本当にありがとうございます((涙))
Posted by 宇都宮の人 at 2007年12月22日 07:05
そういう事だったのか・・・・・・。
逢坂浩司さん、冥福をお祈りします。
Gガンダム超最高です。
Posted by あっくん at 2011年08月21日 18:09