2013年12月08日

2013年 秋の見世物小屋を追う(新宿花園神社 酉の市)

 今年も早いもので新宿花園神社の11月の酉の市も終わり、冬の気配が近づいてきました。この数年に渡って定点観測的に行ってきている見世物小屋の見物メモですが、状況を振り返ってみましょう(何だかちょっとテンション低い)。

 「いつまでも見られるものじゃない」「もうすぐ絶滅する」と言われて久しい見世物小屋の興行ですが、2013年時点で興行を行っているのは大寅興行さん1社のみ。大寅さんは春夏秋冬を通して各地の祭りでオバケ屋敷などの仮設興行を生業とし、秋の花園神社の酉の市では見世物小屋を出していて、その舞台裏に密着取材したドキュメンタリー映画『ニッポンの、みせものやさん』が昨年に公開されました(私からの感想文は拙ブログのこの辺を参照)。

 見世物小屋の興行の状況を文献で探ると、1990年代初め...根本敬さんの著書(特殊ルポルタージュと言うべきか)の『人生解毒波止場』には花園神社の見世物小屋の木戸口で見聞きした話として、後継者がいないので存亡の危機に瀕していること、4件あった興行社が3件になったこと、ヘビ女=お峰太夫が最後の看板スタアであったこと等が伺えます。

 2005年頃に出た秋山真志さんの著書で、後継者の少ない業界の方々を取材したルポルタージュ『職業外伝』においては、大寅興行の大野裕子さんが「お峰太夫が引退したら見世物は終わり」という、変わり行く時代の中での覚悟(当時の心境)を感じさせる言葉を語りつつも、当時お峰さんの直弟子として小雪太夫がデビューしたことや、入方勇さんという奇特かつ蛮勇な人物が大寅興行に入ってきていた様子が語られてました。

 そして2000年代の半ば頃の数年間...上記の文脈で言うところの「見世物小屋の後継者」であった入方勇さんの入方興行が、同じく後継者=「お峰太夫の直弟子」である小雪太夫をフィーチャーし、ゴキブリコンビナートデリシャスウィートスを始めとするいろんな「怪しい人たち」とのコラボレーションもしながら各地で興行を行い、一部の好事家筋でマニアックな人気を博すようになります。

 春の府中くらやみ祭り、初夏の札幌まつり(中島公園)、夏の靖国神社、初秋の川越まつり、福岡の放生会(ほうじょうや)、晩秋の新宿花園神社、冬の浦和の十二日市...後継者のいない見世物小屋稼業に後継者が現れた...東京近郊で行われる興行にはできる限り、自らの足を運んで見物に行くのが私のライフワークになっていた時期がありました。

 2010年、実質的に後継者として活動していた入方勇さんが亡くなってしまいます(当時の私の心境を綴ったブログ記事はこちらを参照)。つい最近になってようやく入方さんが亡くなった当時の詳細事情を、「見世物学会」という団体が出している学会誌の『見世物5号』において、生前の入方さんとも親交のあった飴細工職人の坂入尚文さん(前述の『職業外伝』でも紹介されている)が寄稿した追悼文で知ることができました。自殺でこの世を去ったらしいことはネット上の噂で聞いてはいましたが、この追悼文を読んで初めてその溜飲が下がる思いがしました。

...と言いますのも、「見世物学会」という団体のWEBサイトも存在するのですが、実際にお祭りの見世物小屋の舞台で体を張ってきた入方さんが亡くなったことに関して、何の追悼コメントも発表してこなかったことに違和感のようなものを感じていたからです。例えるならプロレスラー三沢光晴さんのリング上での事故死に何のコメントも出さないプロレス研究会のようなもの...当時の素直な心境としては、そのように思えたのです。

 まぁ、それはともかく単なる一ファンとして、こうして入方勇さんのことを書き記すのは見世物〜仮設興行の歴史の中では短い期間ではあったとしても、自らの体を張ってお祭りの見世物小屋の舞台に立って「芸」を見せてくれた=怪しい異世界への幻想を抱かせてくれた彼のことを、実際に観た人には忘れてほしくない、観てない人には知っておいてほしいという想いがあるからです(ちなみに上記の見世物小屋のドキュメンタリー映画に入方勇さんは登場しません)。

(入方興行が見世物小屋の内部撮影に制限をかけてなかった頃の動画はYouTubeなどの動画サイトで今も閲覧できます)



 例によって前置きが長くなりましたが、今年の新宿花園神社の酉の市(一の酉〜三の酉までの3回、それぞれ前夜祭と本祭の2日ずつ)の見世物小屋は、夏の靖国神社に引き続き大寅興行フィーチャリング・ゴキブリコンビナートの形で行われていました。

 プロレスを知らない人にはわかりにくい例えですが、老舗のプロレス団体(全日本プロレス、もしくは新日本プロレス)を観に行ったら興行をやっていたのは老舗の団体ではなく、新興のインディー・プロレス団体だった...それもデスマッチ系のハードコア団体だったような感覚です。

 お峰さんや小雪さんに会えないのが寂しかったり、ヘビちゃんたち(シマヘビ、ニシキヘビの花子ちゃん)がいなくて金運のご利益が薄い感じではありましたが、アマゾネス・ピョン子ちゃんとゴキコンの皆さんは頑張ってました...「頑張ってました」と安い言葉でまとめるのは非常に語弊がありまして...もう、何でそんなに頑張ってるんだか意味わかんない!!と言った方がよいでしょうか。

 これは決してバカにしたり貶したりしているのではなくて(褒めてもいませんが)、今のようにネットやスマホで何でも検索して理解しちゃったような気分になる人が多い時代に、わざわざ混雑する祭りに出かけていって「意味わかんない」けど「何だか凄い」ものを観てザワザワと胸騒ぎのようなものを感じたり、幻想を膨らませることは、とても大事なことに思えます。

私が観に行った時の演目は以下の感じでした。

・へび女
・巨大な寄生虫を体に飼う男
・特別ゲスト 串を刺した中国人
・逃げ遅れた病気老人
・メコン川流域の首狩族
・ジャングルウーマン アマゾネスピョン子
、口中火炎の使い分け〜大火炎噴射

 詳細は夏の靖国神社での見世物小屋を見物したメモ(これ)を参照して頂ければと。



 人それぞれにいろいろな事情があるように、見世物興行にもいろいろな事情があるのでしょう。毎年、秋の花園神社でお峰さんのお元気な姿を確認するのが年中行事になっている身としては、彼女のお元気な姿を見ることができなかったのが心残りではあります。

 現在、逃亡説とか休業説とかいろんな噂が(ごく一部で)飛び交っている小雪さんですが「人間として」幸せに暮らしているのならば、それはそれで良いのかなぁ....とも思います。

 見世物小屋、果たして来年も観ることができるのでしょうか.....

Posted by kimlucky at 00:18│Comments(0)TrackBack(0) 風俗・都市伝説 

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