プロジェクトが進むにつれて視野が狭まってくると、基本的なクライアントの数値を忘れることがある。
(さすがに売上高といったレベルは忘れないが、利益率や設備投資額といった数値はパッと出てこないことがよくある)
こうした数字がディスカッションの場面でも引き出せると、非常にプロらしく見えるものだ。
そのため、今回は数字を忘れない方法を述べたいと思う。
とは言っても大したことではない。「頭の中で簡易的なシミュレーションを行う」ことだ。
シミュレーションにより、頭の中で有機的につないでおくと忘れない。
そしてシミュレーションを行う指標として、オススメはFCF(フリー・キャッシュ・フロー)÷有利子負債倍率である。
理由としては、FCFがB/SとP/Lの重要な数字を含んだ数字であること、この倍率は金融機関の融資基準にも密接に絡んでいる指標であることによる。
(私が再生コンサルに属していることも影響しているが、一般論として役立つはずだ)
まず前提を確認しておこう。
FCF=営業CF-投資CFである。
営業CFは、営業利益+減価償却費+運転資本増減であり、投資CFは必要となる設備投資額だ。
FCFを有利子負債との関係を取れば、有利子負債÷FCF=××年となる。
一般論として10倍~15倍程度が健全な水準である。
では、仮に有利子負債50億であるとし、シミュレーションを行ってみよう。
この場合、10年で償還とするとFCFは5億円必要となる。
ここで必然的に、営業利益と設備投資、減価償却費は頭に入っていないといけない。
仮に、営業利益は▲2億円、減価償却費は4億円、設備投資は毎期3億円必要であるとし、運転資本の増減は加味しないとする。
FCF達成に必要となる営業利益額は、
営業利益(X)=FCF5億円-減価償却費4億円+設備投資額3億円
X=4億円となる。
したがって、営業利益を6億円(▲2億円→4億円)改善することが必要となる。
その場合、人件費含む固定費削減施策で4億円、増収施策で(売上10億円*限界利益率20%)で2億円施策で積み上げる・・・
―――
というようなことを「そら」で行うのだ。
こうして有機的に数字がつなげておくと忘れない。忘れてもどこかの数字が頭にあれば逆算できる。
(そもそもコンサルティングの過程においては、「あとどれだけ施策を積みあげる必要があるか?」といったことを常に頭に入れておくのが重要である)
このシミュレーションは、非常に有効な方法と感じたので共有させていただいた。