プロジェクトの過程を通じてクライアントとも、チーム内でも多くの議論がなされる。

この際に非生産的になる要因として感じたものを3点、記しておく。


①言葉の定義の問題
言葉の定義がメンバー内で齟齬が生じていると議論は生産的にならない。
最近あった事例として「グループ内取引の利益配分」の議論がある。

ある意味「利益をどの企業にどの程度残すか」といった議論であるが、一人のメンバーは「議論する価値のない論点だ」といった。
なぜならば、グループ内での利益をいくらいじったところで企業価値の向上には何もつながらないからだ。

これは至極まっとうな意見である。

ただ、あるメンバーはこれを業績評価指標(KPI)の議論としてとらえた。

グループ内取引の結果が各社の業績評価(ひいては経営者報酬)に影響をするとなれば、きちんと議論しなければならない。

この定義によれば、グループ内取引の利益水準を決めるドライバーが企業価値向上に資するか、といった論点も出てくるだろう。

一つに「グループ内取引の利益配分」と言っても、この用語から想起される認識がそれぞれ異なれば、議論としてはかみ合わなくなってしまう。

こういった「言葉の定義の問題」は非常に多いと感じている。

②粒度の問題
つい先日議論でもあったが、製品群レベルの話をしているのか、製品レベルの話をしているのか、部品レベルの話をしているのか、わからなければ議論は進まない。

我々コンサルタントにとっても、各用語が具体的にどこに位置しているのか、わからなければ議論ができない。

したがって、粒度(次元)を統一させる必要がある。
(一般的にはロジックツリーを用いて、同一次元の話をしているのか整理すると良い)


③マグニチュードの問題
利益影響1%の議論をしているのか、それとも10%の議論をしているのか、よく把握されないまま議論がなされることは多い。

通常いかなる争点にもメリットとデメリットがあるため、こうしたマグニチュードの指針がないと、結論は導き出せないはずである。

一時期ニュースで頻繁に報道された「リフレ論争」も、このマグニチュードの前提が抜けている気がしてならない。

例えば為替。
「円高が良いか、円安が良いか」など、定性的な情報だけでは判断できないはずだ。

円高であれば、輸入産業や海外旅行を頻繁に行う日本人は有利であり、円安は全く逆である。


マグニチュードを把握していれば「現状の日本の産業構造では円安によるメリットが多い。したがって金融緩和を一層推進して円安になるような政策を行うべきだ」という、当たり前の結論に至るはずである。
(説明の便宜上、話を極度に簡略化している)

マグニチュードの把握で議論の余地がなくなることさえも非常に多い。


以上、こうした点を押さえることで非生産的な議論を無くしていきたいと思う。