コンサルティングとファイナンス

コンサルの仕事や書籍から得たコンセプトのメモ

2013年06月

コンサルタントにはクラフト(匠の技)が必要

私はパワーポイントが苦手だ。

なぜならPPTの作成自体に付加価値はないし、配置や色合いをきれいにするにはそれなりに時間がかかる。
私は構成をがっちりと固めるまで作成したくない。

やり直しはかなりの時間を無駄にするからだ。


しかし最近、プロジェクトマネージャーより「綺麗に作ろうとし過ぎ。そんな簡単じゃない。」と言われた。
おそらく私がOutputを形として残せずにいたのを感じてのアドバイスであろう。

「早くプロトタイプを作って何度も回せ」と。

今回しぶしぶスライドに落としてみた。
すると形が出来上がるにつれて、アイデアも整理されていくことに気付いた。

さらに、枠組みだけでも粗く作っておくことで、チームメンバーからも、意見を浴びれるような状況になった。

見切り発車で進んでサバイバルレート数%といったことになるのは良くないが、とはいえ、形にしないと見えてこない物もある。

一定の仮説があるならば、作った方が良い。

それでもやり直しを苦とするならば、結局それはPPTのスキルの問題に尽きる気がする。


作って、壊して、を繰り返さないと良いものはできない。

また作って、壊して、を繰り返すうちにスキルも身についてくる。
やり直し自体が大したストレスで無くなってくる。


経営学の巨匠ミンツバークによれば、戦略策定には「サイエンス(分析)」と「アート(直観や発想)」に加えて、「クラフト(匠の技)」が必要であるという。

ExcelやPPTが苦手で良いコンサルタントはいない。


クラフトが必要なのだ。

製造間接費の配賦は経営管理に役立たない

原価計算をするにあたって、必ず悩みとして付きまとうのが「間接費の配賦」である。
私自身、メーカーの会計監査において、この論点が出なかったことは無いくらいだ。

きちんと配賦基準を設定して、適切に製品に按分しているか否か?
チクチクと細かくチェックした。

在庫評価損の計算にだって関わってくるし、大変重要な論点だと信じて疑わなかった。

しかしである。

今回プロジェクトで検証してわかったこと。
「配賦」という行為事態が経営管理に役立つことはほとんど無い。

これはあくまで財務会計の要請であり、製造間接費配賦後の製品原価をベースとして「高いor低い」と判断するよりも、間接費は間接費として別個に科目別に管理した方がよほどわかりやすい(下手に分けるな、と)。

また、現場の管理指標としてみたいなら、配賦後金額ではなく、配賦基準(コストドライバー)たる作業時間等で直接管理した方がよほど直感的だ。

わざわざ科目別に色々な配賦基準(作業時間、稼働時間、面積等)なんかを作って、一生懸命配賦計算しても、かえって実態がみえづらくなるだけだ。

しかも、生産量に応じていくらでも単品当たり原価なんて変わってしまう。

そう、あんなに一生懸命にやってきた配賦計算であるが、経営管理に資することはほぼ無いのである。

会計監査でハマる要因

なぜ会計監査でハマるのだろうか?

私自身、幾度となくハマってきた。何度徹夜したかわからない。

なぜハマるのか?
なぜあんな遅い時間まで働かなくてはいけなかったのか?

原因がわからないことには、適切な対応策が打てない。


今回、会計監査でハマる要因(※)について検討したので、共有したいと思う。
...
※「ハマる」「ひっかかる」「詰まる」といった表現の他、私の所属していたチームでは、あまりに複雑な会計処理の監査に挑むことを「入山」と呼んでいた。
挑んだら最後、帰って来れなくなることがあるからだ。

まず、そもそも会計監査とは何だろうか?

会計監査とは「クライアントが採用した会計処理が、ビジネスの実態を反映しているか否か、所定の基準に照らしてチェックすること」と考える。

この定義に従えば、会計監査においてハマる要因は実は3つしかないことになる。

1.クライアントが採用した会計処理(AS IS①)
2.ビジネスとしての実態(AS IS②)
3.基準に照らしてあるべき会計処理(TO BE)
(これはコンサルでもよく使うAS IS(現状)とTO BE(あるべき)の枠組みである)

先ほどの定義を言い換えると、会計監査とは「1と2と3が全てイコールならば『適正である』と結論付けることが出来る業務」と言えよう。

では、1~3それぞれのハマる要因としての具体例とは何か?

AS IS①
1.の具体例としては、会計情報がぐちゃぐちゃ、ベタ打ち、つながってない、といった現状の会計処理が理解できない状態だ。
会計士たるもの、クライアントの作成したExcelの意味がわからず、徹夜したことが一度ならずあるだろう。
この数値は一体どうやって出したんだろうか?、と。

AS IS②
2.の具体例としては、、複雑なストラクチャー、かつ関与者が沢山いて「誰が何を意図して組んだ取引なのかよくわからない」といった状態だ。

TO BE
3.の具体例としては、そもそも基本的な会計基準の考え方が頭に入っていない状態だ。
退職給付や組織再編の会計処理なんかは、会計士でも知識が怪しい人は結構いるはずだ。

では、具体的にどう対処すればいいのだろうか?

私の浅い経験に基づけば、3.の「基本的な会計基準の考え方」をきちんと理解してないことにより、ハマっているケースが意外に多かったと思う。
実は3.がよくわかっていれば、1.についても当たりがつくし、何が間違っているかどうかもわりと早くわかるものだ。

一番ハマるパターンで多いのは、クライアントの算出ロジックに沿って、あるべき会計処理を理解しようとする状態。
つまり、仮説無し(期待値無し)で挑んでいるケースだと思う。

従って、
・まず、3.に関連して、自分でExcelで簡単な数字を使って算出できる程度まで会計基準・会計処理の理解を深める。
・次に、1.に関連して、自らあるべきロジックにて試算して、クライアントの算出結果と比較する。
といったアプローチが非常に効果的であった。

要は、順番は常にTO BE→AS ISであって、AS IS→TO BEと逆にしないことが大事だ。

最後に2.であるが、ストラクチャーの理解において最も重要な視点は「経済合理性」と思う。
要は「誰がどれだけ儲かるのか?」といった視点だ。こうした誰がどれだけ儲かるのか仮説を作った後に、取引を意図した人物にインタビューするのが良いだろう。

以上。

ハマった時にまず問うべきは「そもそも基本的な会計処理が頭に入っているかどうか?」だと思う。

コンサルティングプロジェクトの勝ちパターン

コンサルティング・プロジェクトの勝ちパターンとは?

ここを攻めれば「付加価値を出しやすい」というパターンを3つ、考えてみた。

以下、新鮮さは無いだろうが、いずれも具体的な事例が存在するものである。

①組織の視点
■よくある問題点:クライアントは部分最適になりがち
・ヨコ:クロスファンクショナル(部門・グループ企業間)な視点を提供することで付加価値が出しやすい
・タテ:現場の情報をマネジメントへ、マネジメントの考え方を現場へ提供することで付加価値が出しやすい

■失敗例:
×特定部門(例、社長室や経営企画)の情報に依拠して偏った提案を行う
×非連結のグループ子会社へコストを押し付ける

②顧客と競合の視点
■よくある問題点:クライアントは内部情報に依拠しがち
・顧客:インタビューを通じた顧客に関する情報を提供することで付加価値が出しやすい
・競合:競合に関する情報の分析をすることで付加価値が出しやす

■失敗例:
×内部情報に依拠して、市場における需要の前提が欠けた予測を行
×戦略の前提を変えてしまうような競合の重大な取り組みを見逃す

③時間の視点
■よくある問題点:クライアントは近視的になりがち
・過去:過去数十年間に渡るトレンドを分析することで付加価値が出しやすい
・未来:将来数十年に渡るビジョン策定を支援することで付加価値が出しやすい

■失敗例:
×過去数年間に渡る分析しかしないことで長期的な悪化や循環的な傾向を見逃す
×極めて短期的な成果を志向したコスト削減施策の実施(R&Dや広告等)

上記以外にも「商流(SCM等)」や「エリア」といった切り口もあるかもしれないが、私自身に勝ちパターンとなるイメージが無いので挙げていない。

失敗例に当てはまるプロジェクトは非常に多いのでは無いかと思う
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