コンサルティングとファイナンス

コンサルの仕事や書籍から得たコンセプトのメモ

2013年07月

なぜ会計を学ぶのか

「会計の勉強したいんだけどさ、なんか良い方法無い?」

これまで何度もこのような問い合わせを受けてきた。

毎度感じるのは、そもそも「なぜ会計を必要としているのか」きちんと考えることが重要だと思う。



では、会計の利用目的としては何があるだろうか?


僕は会計の利用目的は「投資家目線」「債権者目線」「経営管理者目線」の3つしか無いと考えている。

1.投資家目線なら、事業買収や株式投資の判断が目的(要は割安で買えるか)

2.債権者目線なら、融資判断又は引き上げの判断が目的(要はきちんと金が返ってくるか)

3.経営管理者目線なら、事業価値向上に向けた施策立案が目的(主にはどこにコスト削減余地があるか)

例えば、

•M&Aを担当者は、買収先の判断のため財務会計や管理会計ともに広く知っておくべきであろうし、特に組織再編会計の知識は必須であろう(投資家目線)

•営業担当者にとっては、取引先の信用状態の判定ため、BSを見て安全性をわかるくらいの知識はあった方が良いだろう(債権者目線)

•とある製品グループの損益責任者にとっては、税効果や組織再編に関する会計知識は不要かもしれない。むしろ必要なのは管理会計の知識であろう(経営管理者目線)


いずれも会計数値を見て「いかなる意思決定を下すか」が肝であって、例えば「会計数値を見て会社の状態を理解しよう」というレベルだとお勉強の域をでない。

この「理解することが目的」では「どこまで勉強すれば良いか」ゴールが不明瞭になる。

まず行うべきは「誰の立場で」「いかなる意思決定につなげていくか」を明確にすることである。
これこそが会計を学ぶ上での前提条件となる。

意思決定を起点にすることにより、ぜひ会計知識を実務でお役に立てて頂きたい。

課題の構造化をいかに行うか

課題の構造化について、コンサルでも本当に理解されているかは怪しい。
なんとなくの重要性は感じることが出来ても、腹落ちさせることは容易じゃない。

目の前の事象に対して枠組みが使えるようになるには、じっくり頭を使って考える必要がある。

とはいえ、課題の構造化については多くの書籍で触れられている。
具体的な実施手順としてわかりやすいのは「ザゴール2」と「全体最適の問題解決入門」。
ただ、恐らくこれだけでは理解できない。

理論的なところではバーバラミント「考える技術•書く技術」が秀逸。
ただ、残念ながらこの本は「わかってる人には非常に分りやすい」類いの本であって、これでも理解することは中々難しい(売れてる本ではあるが、挫折した人の数も凄まじいはず)。

書籍をお読み頂く前に、エッセンスをお伝えしておく。
本質的には大した話では無い。

それは、
1.「二つの問いに答えること」
2.「一つの前提が満たされること」
3.「一つの基本姿勢を貫くこと」
これらに尽きる。

1.二つの問いとは「So What?(だから何?)」と「Why So?(なぜ?)」
2.一つの前提とは「何を達成したいのか?」という観点が固まっていること
3.一つの基本姿勢とは「MECEを貫く」ということ

具体例をあげる。

「上司が官僚的である」という現象が見られたとする。

ここで試しに「So What?(だから何?)」と問うてみる。

これは良いことだろうか?悪いことだろうか?何か問題だろうか?




答えは「なんとも言えない」。

なぜなら前提条件である「何を達成したいのか?」が明確で無いからだ。

まず大事なことは、良いか悪いか判断するには必ず「観点」がいるということ。
これが前提条件である。

ここで「会社の離職率が高い。離職率を下げたい」という観点から見た場合、同じ問いをするとどうか?

「上司が官僚的である」「だから何?」→「従業員の主体性が発揮されない」「だから何?」→「離職率が高い」という因果関係が成り立ちうる。

観点を置くことで始めて「上司が官僚的である」という事実の解釈が出来るようになった。

ここで第一の問いである「だから何?」が生きてくる。

結果「上司が官僚的である」という現象が「離職率低下」という目的の阻害要因として位置付けられたことになる。

So what

これこそ構造化の一つである。

当然これだけでは問題解決には至らない。次に問うべきは「Why So?(なぜか?)」である。

「上司が官僚的である」「なぜか?」→「人事評価システムが減点方式である」「なぜか?」→「かつては固定的な経済環境で品質の安定が最も求められていたから」となり、先ほどとは逆の因果関係が成り立ちうる。

結果「離職率低下」の本当の原因は「昔の経済環境下を前提とした旧い人事評価システム」にありそうだ。
Why so

「よし、原因はわかった。それでは早速人事評価システムの変更に着手しよう」

…果たしてこれで本当に良いのだろうか?

最後に「MECEを貫く」基本姿勢が求められる。

例えば「従業員の主体性が発揮されない」原因は「上司が官僚的である」だけだろうか?他にもあるのではないか?

確かに「権限移譲がなされていない」という現象も原因かもしれない。
であれば、職務権限の変更も必要かもしれない。

matome

MECEを検討する上でのポイントは、実際に起こっている現象に立脚すべき、ということだ。「理屈の上ではこんなことも要因として考えうる」とすると、思考の範囲が不必要なまでに広がってしまうからだ。

観察されている事実から、真因と思しき範囲を狭めていくことが肝要だ。

「So What?(だから何?)」で、上方向に抽象化し「Why So?(なぜ?)」で下方向に掘り下げつつも、「他にも要因が無いか」と横方向へも問い続ける。

これを何度も何度も繰り返すことで、課題の構造化が完了する。

二つの問いと一つの前提条件、一つの基本姿勢を念頭に、書籍にチャレンジして頂けると幸いである。

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス
ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス [単行本(ソフトカバー)]


全体最適の問題解決入門―「木を見て森も見る」思考プロセスを身につけよう!
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考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則
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