保護を与えられたサダム  フセイン

 イラク攻撃の教訓というのは依然専門家の口の端に上らない。いかに負い目になっているかよくわかる。サダム フセインはブッシュ政権から48時間以内に退去すれば済む話だと最後通牒で通告を受けていた。

 降伏は天国への階段のはず

 金正恩が突如態度を豹変させ、米朝会談の中止をにおわせている。孤独な独裁者が突如心を入れなおして「いいやつ」になることはまずないので、ここで強気にでればアメリカは譲歩するだろうと勘違いしている可能性が高い。少々狼狽したトランプ氏は核合意が成立すれば「保護」を与える、という話を口走ったが、驚くには値しない。前例があるからである。査察の結果が思わしくなかったイラクのフセイン政権対策に、ブッシュ政権は最後通牒をだしたが、それはフセイン氏へのバクダッド退去命令であった。バクダッドを離れれば命は助けてやると言うわけだったのだが、、、

 体制の保証などアメリカには無理

 核合意がなされれば体制は保証すると幾度もトランプ政権は表明しているが、金正恩が敗北者として統治能力を維持できることはまず有り得ない。これこそまさに歴史の法則である。ムッソリーニも吊るされた。だから、アメリカは保護する という言い方をしたが、本来、これはあまりにも自明すぎて説明することは無いだろうが、半島有事は無いと決めつけたまま専門家はまず理解はしないだろう。半島は既に危機だからこそ、金正恩の動静に世界の関心が集まっていると言えるし、また現状の経済制裁も戦争行為レベルという重大な事実を無視している。つまり金正恩にとっては、取引では無く、勝ち負けの問題なのだし、手のひらを反して韓国政府を無能呼ばわりしたのは、単に文在寅が勝者として忖度してこないので、お前はクビだ、と尊大にも言ってきただけである。アメリカにとって金正恩を保護することは可能だが、体制の保証など到底無理だ。天国暮らしと引き換えにピョンヤンを退去せよ、場所とお金は容易すると言うぐらいトランプ政権からしてみればどうという事も無い。

 フセインは勘違い

 米グラム上院議員は金正恩は勘違いしている、と警告したが、これはイラク攻撃の教訓を考えれば非常に納得のいく話である。アメリカは攻撃しないと勘違いしたままだと、イラク攻撃の悲劇を繰り返す運命にあるからだ。金正恩がアメリカの攻撃を覚悟した場合、戦って負けるか、戦わず負けるが自分は亡命という選択しかない事になる。

 中途半端な妥協はもうない理由

 アメリカの攻撃は無いとほぼ断定している専門家ほど、アメリカは中途半端で日本の国益を損ねるような譲歩をするのではと恐れているーーしかしこれは日本にはまだ核武装、敵基地攻撃能力獲得という最後のカードが残っていることを忘れている。北朝鮮の核恫喝が「公認化」する事態となれば、それは日米安保条約の終わりであり、軍事強硬派が急速に擡頭するだろう。憲法9条学者はこうなるとタダの引きこもりに過ぎない。