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第2節 状況判断及び決心

2209 要旨
 状況判断は、指揮官が任務達成のため、
最良の行動方針を決定するために行うものであり、
決心は、状況判断に基づく最良の行動方針を
実行に移す指揮官意志の決定である。
 指揮官は、継続的に状況判断を行い、適時適切
に決心しなければならない。

2210 状況判断
 1.要旨
 任務を基礎とし、何を、いつ、決定すべきかを至当
に判断することは、状況判断の基礎的要件である。
 状況判断は、不断に変化し、かつ、推移する状況に
即応するように、継続的に行わなければならない。
このため、作戦の進展に伴い必要な事項を適時に
判断し、あるいは既に結論を得た事項についても
その結論に影響した要因の変化に応じて所要の修正
を加えることが必要である。
 状況判断に当たっては、状況並びに部隊の地位
及び特性等に応じ、考察すべき要因の時間的・空間的
範囲を適切に選定することが必要である。

 2.状況判断と幕僚見積の関係
 指揮官は、状況判断を行うに当たり、適時各幕僚に
指針を示して見積もりを行わせ、その成果を活用する。

 3.状況判断の要領
 (1)状況判断にあたっては、任務を基礎とし、任務
達成に影響するあらゆる要因を論理的に考察して
結論に到達する。このためには、卓越した戦略、戦術
能力が必要である。この際、先入観に陥り、あるいは
根拠のない直感に頼ることは厳に戒めなければならない

 (2)任務の分析にあたっては、任務に基づき具体的
に達成すべき目標とその目的とを明らかにする。
任務は、通常上級部隊指揮官から達成すべき目標
またはこれと目的とをもって示される。
 任務の分析

2.指揮官の自主責任的な任務の遂行
 指揮官は、状況の急変により適時これに
応ずる命令を受領できない場合にも、全般の
状況を考察し、新たな状況に応ずる上級部隊指揮官の
企図及び自己に与えられる任務を明察し、状況の変化に
応ずる最良の方策を決定し、あらゆる困難を克服して
自主積極的に任務を遂行しなければならない。
 特に、部隊が分断孤立し、通信・連絡が途絶する等
の真に困難な状況に陥った場合にも、指揮官は、遅疑逡巡
することなく、積極的に打開策を講ずる等、自主的に行動
することが極めて重要である。

2203 指揮の要訣
 指揮の要訣は、指揮下部隊を確実に掌握し、明確な
企図の下に適時適切な命令を与えてその行動を律し、
もって指揮下部隊をしてその任務達成に邁進させるに
ある。この際、指揮下部隊に対する統制を必要最小限
にし、自主裁量の余地を与えることに留意しなければ
ならない。 
 指揮下部隊の掌握を確実にするため、良好な統御、
確実な現況の把握及び実行の監督は、特に重要である。


2204 統御
 良好な統御は、部隊及び隊員をして上下一体となって
その任務を忠実かつ積極的に遂行し得るよう感化を与え
その能力を最高度に発揮させる。
 指揮官は、良好な統御を基盤として効果的に指揮権を
行使し、任務の完遂を図らなければならない。


2205 指揮系統
 1.指揮系統の厳守
  指揮系統を確立し、常に指揮権の所在を明確にする
ことは、作戦・戦闘行動の統一を図る根本である。
 2.指揮系統を異にする部隊の指揮関係
  (1)指揮系統を異にする部隊を同一目的に向かって
   行動させる場合に、これを一指揮下に統一するか、  
   または、相互の協同連携に任せるかは状況によるが
   戦闘にあたっては、通常一指揮下に統一する。
    いずれの場合においても、上級部隊指揮官は、
   指揮関係または協同の要領について明示することが
   必要である。
  (2)指揮系統を異にする部隊が、明確な統制を受ける
    ことなく同一地に在って共通の目的のために戦闘する
   に至った場合には、上級部隊指揮官からの命令が下る
   まで、その地に在る上級、先任の指揮官がその戦闘の
   指揮をとる。


2206 指揮官の位置
 作戦・戦闘間、指揮官は、部隊の指揮が最も安易な地点
に位置する。このため、通常指揮所において指揮するが、
必要に応じて緊要な地点に進出する。
 指揮官は、その位置を移動するにあたり、常に指揮所との
連絡を確保するとともに、指揮所における業務の中断を
防止する処置を講じなければならない。


2207 幕僚の活用
 卓越した指揮・統御は、適時適切な幕僚の補佐によって、
その実行を収めることができる。
 このため、指揮官は、幕僚に対し、適時に明確な指針を
示して幕僚活動の準拠を与えなければならない。


2208 幕僚
 1.幕僚は、指揮官を補佐するものであり、部隊を指揮する
権限を持たない。幕僚が指揮官から権限を委任された場合
には、指揮官の名においてこれを行使する。
 2.幕僚活動の根源は、指揮官にある。
  幕僚は、指揮官の意図に徹底及び威徳の発揚に務める
 とともに、上下の意思の疎通を図ることが極めて重要である。

 

十思

1.欲しいと思うものを見たら、足ることを知って自戒することを思い、
2.大事業をしようとするときは、止まることを知って民の安楽を思い、
3.高転びしそうな危ないことを思うときには謙虚に自制することを思い、
4.満ち溢れるような状態になりたいという願望が起これば、老子の
  『江海のよく百谷の王たる所以は、其の善く下るを以ってなり』で、
  満ち溢れる海はすべての川より低いことを思い、
5.磐遊したいと思うときは、必ず限度をわきまえ、一方に逃げ道を
  用意してやるのを限度とすることを思い、
6.怠け心が起こりそうだと思えば、始めを慎重にして終わりを慎む
  ことを思い、
7.自分の耳目を塞がれているのではないかと心配ならば、虚心、部下の
  言葉を聴くことを思い、
8.中傷を恐れるなら、まず自ら身を正して悪をしりぞけることを思い、
9.恩恵を与えるときは喜びによって賞を誤ることがないように思い、
10.罰を加えようとするときは怒りによって重過ぎる罰にならないように思う。

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