1.剪定

-1剪定時期

 鉢花生産に関する書籍では、9月下旬の花芽分化開始の60日前を目安に摘芯を行うとあります。摘芯とは芽の先端部を摘み取ることなのですが、それによって側枝を2本出させて株を大きくしていくわけです。 つまり、生産者は60日あれば、新しい芽を出させ、開花可能にまで枝を充実させることができると判断しているわけです。これは標準的な技術となっているので、きちんとした実験データや信頼できる経験則に基づいているでしょう。しかし、この60日は最高の品種、栽培環境、技術が前提であるので、私たちはさらに早く行うことが必要だと思います。例えば、75日前とすれば7月上旬というように。

 

-2基本的な剪定

a.弱剪定(花がらの切除)

今春伸長した当年枝、つまり花を咲かせた枝の上位23節の位置で切ります(図4)。葉の基部に小さな芽を容易に目視できます(図5)ので、その芽を残すように切れば、最も確実に花を咲かせることができます(大半の種では、一番上の葉の基部には芽ができませんので、2節目以降となります)。苗を植えてそれほど経過しておらず、株を大きくしたい場合はこの方法のみとなるでしょう。なお、木化した部位で切った場合、ほとんど開花は期待できません。

図4
4.基本的な剪定の位置


図5
5.側芽は視覚的に判断できる

 

-3丈を小さくする剪定、その他の剪定

 アジサイの剪定において、最も多くの方が困るのは大きくなり過ぎた株を小さくする方法についてでしょう。質問を受けるのはこのパターンがほとんどです。花が咲くようにしつつ、「どこまで切れるか」が問題になります。花芽分化の特徴を理解しつつ、可能な方法を探ることになります。

アジサイの剪定方法についてもう少し記載します。

 

 b.前年枝の切り戻し

   前年枝の複数の節より枝が出ている場合、その当年枝が充実していれば、先述の通り翌年開花します。従って、図6にある位置で切ることも可能と考えられます(一番下の位置は厳しいかも)。見てわかる通り、ある程度株が大きくなれば枝が増える一方なので、枝数を減らすためにも必要な剪定です。


図6

   図6.切り戻し剪定の位置

 

c.古い枝の更新

 地際から出た枝も4年、5年と経過するとずいぶんと大きくなります。このような枝は地際から切り取ると、多少小さくすることもできますし、立派な花を咲かせる若い枝を育てることにもつながります。何年といった決まりはなく、こじんまり仕立てたければ3年で更新してもかまいません。

 

 d.枝の間引き

 図7を見るとわかる通り枝数が多いために軟弱徒長している枝もあります。徒長した枝は開花しないばかりか、他の枝の成長を妨げます。年々、ネズミ算式に枝が増えていくので、弱い枝を中心に間引いて数を減らします。

 枝を間引く際には、枝分かれの部分や地際で切除します。中途半端に残さず、すっぱり切ることが望ましいです。この剪定は冬でも可能です。


図7

   図7.株の内部のようす

 

e.地際から出た枝の切り戻し

   図3のような茎について、開花した茎と同じく、強く切り戻さなければ翌年に開花すると考えてよいでしょう。図1の茎も昨春に地際から出た枝なのですが、十分な花を咲かせています。切り過ぎた場合に開花する保証はありませんが、全体の草姿に合わせて切除することも考えられます。ただでさえ、丈の高い茎を咲かそうとすれば大きくなる一方なのですから。強く切って、開花しなかったとしても、その茎は今後の有力な開花枝にできますし、次の年には間違いなく開花するからです。

 

f.強い切り戻し

 株の地際やそれに近い位置からバッサリと切り戻す方法です。この場合、翌年は花がほぼ咲かなくなりますので、それを回避する場合は、図8のように半分ずつ2年をかけて切り戻すと良いと思います。ただし、翌春、地際から出た芽に十分光が当たるよう配慮することが大切です。残した枝がもたれかかって被圧しないよう、支柱で支えてやるなどです。2株あれば1株ずつ行うことも可能です。


図8

   図8.強剪定の方法

 

 丈を小さくしたい場合、b,c,eの剪定をきちんと行います。そして残った花がらのついた枝についてaの剪定を行います。もちろん、枝が混むのも避けるべきなのでdも行いたいです。この方法は株をコンパクトにまとめる有力な方法であるはずです。しかし、努力してもいずれは大きくなってしまうので、その時はfを行います。

 きちんと剪定したいという方は、切った位置を写真撮影するなどきちんと記録を残してください。とても大事なデータとなるはずです。切り戻し位置によってどうなるのかを把握できれば独自のマニュアルとなるでしょう。

4.これからアジサイを植えようという方へ

アジサイを大きくしたくないという方は、最初の種、品種選びがとても大切です。それらの特徴を記載しておきますので、参考にしてみてください。

 

-1西洋アジサイ系のコンパクトな品種

 鉢植えで販売されているものをはじめとして、それほど大きくならずにまとまる品種も販売されています。特に、鉢植え用品種は草姿がコンパクトになるだけでなく、開花しやすいものが選抜されているので、図9のように強めに切り戻しても側芽が花芽分化しやすい傾向にあります(この株については、ほぼすべて開花します)。名前もわからないような株でなく、みなさんの目的に沿うように特徴の明確な園芸品種の購入をお勧めいたします。


図9

9.鉢植え用品種の剪定の一例

 

-2当年枝開花の種、品種

 アジサイの剪定について長々と書いてきたのも、入手できる大半のものが前年枝(旧年枝)開花性であるからです。しかし、品種アナベルで知られるアメリカノリノキ(H.arborescens)(図10)や海外から多彩な品種が導入されているノリウツギ(H.paniculata)(図11)ならば当年枝開花しますので、毎冬、地際からバッサリ切っても開花してくれます。図1011ともに晩秋に地際付近で切除、翌春発芽して開花したものですが、毎年、同じ大きさにまとめることができています。また、西洋アジサイにもごく一部ですが、当年枝開花すると謳った品種が販売されているようです。

図10
10.アメリカノリノキ(品種アナベル)


図11
11.ノリウツギ(品種ミナヅキ)


追補(202003.10

当年枝開花するノリウツギの剪定、植え替え

 

鉢植えで管理しているため、地際から切り戻し、コンパクトに仕立てます。
剪定は晩秋から春の萌芽前までに行えればよく、
鉢植えの場合は、植え替えも行いますので、
3月初旬に行いました。

DSCN7010

12.剪定前のノリウツギ

DSCN7012
13.剪定後




剪定はとてもシンプルで、地際から12節を残し、機械的に切るだけです。

春に萌芽してきたら、芽の数を調整して開花させる数を絞ります
(大体でよいですし、軟弱な枝を除去するだけでもよいです)。
え替えも行いましたが、少し根腐れしていましたので、
1周り小さな鉢に植え替えました。


DSCN7016
14.根鉢はかなり小さくした

DSCN7028
15.植え替え終了



根腐れしていたこともあり、根鉢はずいぶんと小さくなりましたが、
鉢増ししないならば半分は土を入れ替えるつもりで、
根鉢を崩してもよいのかもしれません。

なお、下の写真は昨年の開花の様子ですが、
同じく地際近くまで切り戻して開花したものです。
このように、当年枝開花する種、品種では、
任意の位置で切り戻すことにより
容易に草丈の調整を行うことができます。

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