2017年12月

本日の薬用植物園

本日は水やり等で出てきております。

現在は閉園しておりますが、
現況について、簡単ですが写真にてご紹介します。

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キンカン
果実を利用します。生薬名:金橘(キンキツ)
風邪や咳止めに良いとされています
それにしても、良く実ります。

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オリーブ
随分としなびてきましたが・・・
オリブ油は日本薬局方に収載されており、皮膚の保護のためなどに利用されています。
何より、料理用としてのオリーブオイルの原料で、健康志向のために輸入量は拡大しています。

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シロミノナンテン
果実を利用します。生薬名:南天実
咳止めなどに効果があるとされています。
見た目の問題で、
より一般的な赤い実よりも白い実の方が重宝されているそうです。

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クチナシ
果実を利用します。 生薬名:山梔子(サンシシ)
黄連解毒湯、清肺湯などの漢方に配合されています。

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土を耕して軟らかくなっていることもあってか、
冬の間は鳥たちがやってきます。





シンビジウム

 シンビジウムと言えば、一般的に理解されるのは
洋ランの一種であり、豪華な花を咲かせる交配種のことです。
 年末の花屋さんにもおなじみで、
かつては贈答用としても人気がありました。

 また、日本の山野に自生するシュンランやカンラン、
中国に自生するスルガランやキンリョウヘンも属名はCymbidiumです。
(これらの多くは東洋ランと呼ばれます)
 一部の種は薬用として用いられてきた歴史があり
薬用植物事典などでも紹介されています。

DSCN2023

 交配種のシンビジウムは寒さに強いこともあってか、
ご家庭で育てておられるのを目にします。
 しかし、育てるためにちょっとしたコツが必要であること、
さらに、もともとは低温性のラン(≒暑さに弱い)で
夏に生育が停滞することもあってか、思ったような花が咲いてくれません。

 良い花を咲かせるために、特に夏の暑い関西で咲かせるためには
以下のような方法が考えられます。

 1.大型種や中型種ではなく、小型種を育てる
 2.花付きの悪い個体(品種)は避ける
 3.次の新芽(リードバルブ)は晩秋から冬に出たものを利用する
 4.基本に忠実な管理を遂行する(特に芽欠き、施肥)

1.について
 シンビジウムには大型種、中型種、小型種(花だけでなく
株の大きさも異なります)と区分けされており、
大きいほどリードバルブの完成に長い時間を要します。
 よい環境で育てても、大型種で9~10か月、中型種で8~9か月、
小型種なら6~7か月などというように。
大型種を立派に育てるとなると、関西では相当に厳しいです。
(生産者は夏の間山地の涼しい場所に鉢を移動させます)
 かつて、夏の涼しい地域で育ててみたことがありますが、生育の違いに
愕然とさせられました。
従って、見た目の小さな品種が圧倒的に家庭向きです。

2.について
 個体(品種)によっては花が咲きにくいです。
芽(バルブ)が十分に太ったのに、あまりに花が咲かないのなら
違う種類に変えるのも十分ありです。

3.について
 特に中型種以上では10~11月頃に出た新芽を翌年用に育てたほうが良いです。
秋に新芽を出すと、花立ちが悪くなるとの話もありますが、メリットが大きいと思います。
 冬にひんやりした場所で管理している方は、晩秋以降4月頃まで新芽が出ないことも
多いので要注意です(一年管理すれば、どの時期に新芽を出す種類なのか見えてきます)

4.について
 ご家庭できちんと咲かせている方は、少ないと思われますが、
失敗の原因の大半が「芽欠きを行っていないこと」と「肥料不足」です。
ランを育てるには基本を十分に理解することが必要です。
(もちろん、応用も利かせます)

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2016年10月頃に出たリードバルブを育成中
(植え替えのため1バルブより2リードを育成)

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2017年12月時点で、その2リードバルブは昨年のバルブ並みに大きくなった

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これは比較的咲かせやすいと思われます。
1リードにつき、花芽が2つずつ立ち上がっています

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花芽と葉芽。葉芽はバックバルブから出ていますが、これを育てるのもありです。
大型種などでは新芽の出にくい個体もあります。





ニホンズイセン

天気の良い日が続いています。
お昼間は少し動くと暑く感じてしまうほどです。

 さて、本日は園内で開花しているニホンズイセンのご紹介です。
少し早い気もしますが、一部の個体が開花しました。

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 ニホンズイセンは「ニホン」の名がついているものの、元々日本にあったものではありません。
古く、ペルシアからシルクロードを通って中国にもたらされたものが
海流によって日本に渡った、または人為的に運び込まれたとされています。
学名はN. tazetta var.chinensisで「chinensis」は「中国の、中国産の」という意味です。
(由来の説が正しければ中国原産でもないのですが・・・・)

 薬用としてはすりおろしたりん茎を外用薬として用いていたようですが、
りん茎自体には毒があり、口に含むことはできません。
ヨーロッパでも、1世紀に書かれた本草書「De Materia Medica」(薬物誌)に
2種類のスイセンが記載されているように、古くから利用されていたようです。

 日本へ渡来したのは平安時代の終わり頃とされ、色紙に描かれたものが残されているそうです。
その後、生け花など観賞用にも用いられ、全国へ広がっていきました。


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 大阪の和泉市では古くからスイセンの栽培が盛んでした。
100年以上も前、この地の人々は夏の間、かまどの上に吊るした球根が
そうでない球根に比べて早く開花することを見つけました。
 かまどの煙に含む植物ホルモン「エチレン」によって開花が早まったのですが、
その促成技術の発見により、誰よりも早く出荷でき、大いに利益を上げたそうです。
(スイセンについての記述はこちらでもご覧いただけます。)

 さて、薬用植物園では自家採種を行い、秋~春にかけて
播種、苗育成を行っています。
写真はさやからタネを取り出す作業。
苗や種子の入手が困難な種類も多く、
また、(意図的ではないが)選抜により、この地に合った個体が得られるとの
ほのかな期待も込めて、地味な作業を行っています。

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応援に来ていただいている業者さんが主に行っていますが、
長時間続けると目が疲れてしまいます。
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ほこりのような種子

参考:小学館 園芸植物大事典

キカラスウリ

 本日は暖かく、少し体を動かすと汗ばむ陽気となりました。

 さて、植物園ではエノキの木にキカラスウリをからませています。
落葉も進み、気温の低下とともに果実の色もより鮮明となったこともあって
ずいぶんと目立ってきました。

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 これは2015年6月にタネを播いたものです。
1年目は鉢の中で放任状態だったことを考えると驚異的な成長力です。
根(塊根)も大きく発達しています。
 花はカラスウリと同じくレース状の花弁が特徴で、
夏場に次から次へと開花し続けます。

DSCN7771
撮影は9月1日

 かつてこの根は天花粉(てんかふん)の原料として使用されてきました。
天花粉はあせもやかぶれ防止のためのベビーパウダーのような存在だったのですが、
材料の入手や調達費用の問題で、他の材料に取って代わられたそうです。

 しかし根は、現在も日本薬局方収載の生薬として利用(生薬名:栝楼根=かろこん)
されており、柴陥湯や柴胡清肝湯などの漢方処方に配合されています。
また、種子も生薬(栝楼仁=かろにん)として利用されてきました。

 これからさらに落葉が進むと、一瞬にして鳥のえさとなります。
正月明けには跡形もない状態となっているでしょう。

 最後に本日の作業の様子です。
堆肥を混入して土壌改良を行いました。
機械も使用しますが、クワやレーキも使います。
もう少し変えていきたいとも思います。


DSCN1985

ジギタリス

12月も中旬に差し掛かろうとしていますが、
ジギタリスが季節外れの花を咲かせています。

DSCN1979

そこで、ジギタリスについて少しご紹介いたします。

ジギタリス(Digitalis purpurea:ジギタリス プルプレア)
はヨーロッパに自生する二年草または短命の多年草で、
強心、利尿作用があり、強心薬:ジギトキシンの製造原料として利用されてきました
(利用部位は葉となります)。
植物そのものは猛毒であり、個人で利用できるようなものではありません。

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ラベルはゴマノハグサ科となっていますが、現在はオオバコ科に変更されています

観賞価値があることから、ヨーロッパでは庭植え用としてメジャーな存在であり、
国内にも園芸品種が導入されて苗が販売されています。
また、種間交雑により花色も豊富になり、株の寿命も長くなる傾向となっています。
(販売されている多くは交雑種です。)

元々は冷涼な気候を好むのですが、関西でも育てることができます。
最も好ましい条件は、

・午前中のみ日が当たる(1日当たっても生育可能です)
・水はけ良い、軽めの土であるが乾燥しないこと


となります。
入手は容易ですので興味があればお試しください。

DSCN0597
5月上旬頃より開花します(写真は5月13日)


近畿大学薬学部薬用植物園
開花状況の他、行っている作業
など現在の様子をお伝えします

大阪府東大阪市小若江1-9-7
E-mail:yakuso@phar.kindai.ac.jp
(@を半角にしてください)
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