2018年05月

マンゴーの植え替え

 最近は雨天の日が多くなっています。
今年の梅雨は雨が多くなるとの予報も出ており、
病虫害の発生だけでなく、作業の遅れも心配なところです。

 さて、昨日は鉢植えマンゴーの植え替えを行いました。
マンゴーの果実は生薬名を檬果(もうか)と呼び、
咳を止める作用などがあるとされています。

 現在は80リットルの大型容器に植えており、温室が小さいことからも
これ以上大きな鉢に植えることはできません。

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 植え替えの際には、土を落とし、根を削ることになりますので、
事前に考えておくことがいくつか出てきます。

 鉢植えの植え替えに際して、どうして根鉢を小さくするかと言えば、
1.古い根を落とすことによって、新根の発生を促す
2.新しい土を入れるスペースをつくる
ためなのですが、

 限られたスペースで生育させるためには、
1.養水分の吸収能力が強いであろう新根の比率を高める
2.新鮮で物理性もよく、十分な養分のある用土が常にある
ことが必要となってきます。

 つまり、植え替えとは、限られたスペースで植物を生育させるために
新しい根を出させ、育てる作業とも言えます。

 上記からすると、できるだけ根を削り、土も落とすことが
鉢植え植物を(鉢を大きくしないで)健全に育てる条件ということになります。
 例えば、バラの鉢植えでは、植え替えの際に土をすべて洗い流し、
根もある程度切ってしまうことが一般的に行われています。
新しい土ばかりになって、新しい根が育つスペースも十二分にありますから、
健全な生育が期待できるわけです。
 もちろん、根を切りすぎてしまっては、生育が遅れることもありますし、
植物の種類によっては、枯死を含む深刻なダメージを負ってしまうこともあります。

 結局、その種類にとって許される最大限のことをすることが
植え替えの際に必要とされることと考えられます
(もちろん、季節や管理体制なども制限要因となり得ます)。

 そのように考えることから、個人的な考えとして
できるだけ根鉢を小さくするようにしています
(もちろん、できないものはほとんど崩しません)。

 さて、今回のマンゴーの植え替えなのですが、
1.温室が低く、あまり枝を伸ばせないので、強く切り戻す
(=実はあきらめる)
2.来年は果実を実らせる
3.植え替えは3年に1度程度としたい
4.ただし、初めてなので無理しすぎない
ことを考慮することとしました。

1.については「かなり強く切り戻し可能」
・葉が少しでもあれば、新しい枝が出てくるので、
側枝が出ずに枯れこむ心配は不要
・マンゴーは晩秋から冬にかけての低温(10~15度程度とされる)で
花芽分化することから、秋の気温低下時までに花の咲く充実した枝を作ることが必要
であるが、下の写真のように弱枝でも(良い果実が実るかは別として)開花し、
ひとまず実はつけてくれるようだ
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(写真は今年の3月26日)

2.については「恐らく大丈夫」
 予定より2週間以上、植え替えが遅れたものの、
・例年、7月20日ごろに切り戻し剪定(今回ほど強くない剪定)すれば、
その後、側枝を発生させ、さらにその頂芽より再度、枝を伸ばしている
(暖房は最低限の温度設定しかできない)
・1.に記載した通り、弱枝でも花芽分化している(少なくとも当園の個体は)
・ただ、さらに頂芽より新枝を伸ばした直後に
(低温により)生育停止となった場合は、開花するのか確認する必要あり

7/20頃までにある程度、側枝は成長していると考えてよいので、
秋までにはそれなりの葉枚数となることが期待できるでしょう。

3.については「施肥管理等を工夫すれば可能だろう」

・株が大きくなると葉が濃緑とならず、薄黄緑色のまま冬を迎える場合もある
・施肥管理その他の管理を改善すれば、
 植え替えしないでうまく生育させることができるでしょう

それなりの管理しかしていないのですが、
その中でも、葉の色はどうにかしたいものです。
ちなみに今回の株も3年くらいこの鉢で育てています。

4.については「根鉢を半分くらいにする」にとどめました

・今回、問題なく生育すれば、次回は植え替え時期を5月上旬とし、
古い土をもっと落として(水で洗い流すことも検討)植え替える予定

 植え替え時期は今回の新梢の発生具合を確認して決めていくことに
なりますが、根を少なくした場合、初期生育の時間は要しますので、
早めの植え替えとなることが予測されます。

 肝心の根鉢の写真を忘れてしまったのですが、植え替え後のようすです。
マンゴーは直根性で細根が比較的少ないとの情報もあったのですが、
思った以上に多くあり、もっと根を減らして植え替えることもできるのでは
と感じました。

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 最後にもう一鉢あるマンゴーのようすです。
まだ果実は小さいのですが60~70日後には完熟となります。

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見学会を開催いたしました

 みなさんこんにちは。
 もう、5月も終わろうとしています。
まさに光陰矢のごとし、おそろしいです。

 さて、薬用植物園では先週の26日(土)に今年度初めての見学会である
カメラ撮影教室を開催いたしました。
定員いっぱいの方にご参加いただき、ありがとうございました。

 植物園では秋にも見学会を開催する予定です。
HP等でも告知いたしますので、興味のある方はご参加ください。


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室内でのプロカメラマンによる説明

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その後、戸外にて、先生のアドバイスのもと各自撮影

いつもの開花情報です。


カワラナデシコ

種子以外にも全草も利用されているようです。清熱、利尿、通経などに
良いとされています。
野草的なイメージですが、性質はかなり強いようです。
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ローマカミツレ
ジャーマンカモミールと違って多年草です。
花から抽出したオイルは化粧品などにも使われています。
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クチナシ
この辺りではおなじみの花。利用するのは果実であるので
八重咲き品種は適していません。
また、果実は天然の着色料としても利用され、
栗きんとんやたくあん漬けにも使われることがあるそうです。
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オカゼリ
水分を好む一年草です。
皮膚のかゆみに使用する蛇床子湯に配合されています。
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ラッカセイ
地味に咲いています。
千葉県産が高級品として知られています。
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キカラスウリ
この根が現在のベビーパウダーである天花粉(てんかふん)
の原料として使われていました。
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ベラドンナ
かつては実から抽出したエキスを瞳孔を開かせるために
目薬として利用していたそうです。
ただ、有毒植物であるので、失明する人も多かったそうです。
現在は根から抽出されたベラドンナ総アルカロイドが
風邪薬などに使用されています。
暑さに弱いので、夏になると相当に弱ります。
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カラスビシャク
塊茎を薬用として利用しますが、半夏瀉心湯、半夏厚朴湯など
60以上の漢方処方に使われています。
冬の間に塊茎を腐らせてしまったので花が少ないです。
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薬用植物園は平日の10:00~16:00(作業員不在時を除く)
に開園しております。
近くにお越しの際にはお立ち寄りください。






自治会の方が見学に来られました

本日は蒸し暑く、夏の兆しを感じるような日となりました。

さて、今週は、月曜日に近くの自治会(町内会)の方々が
見学に来られました。
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(室内での薬剤師の方によるお話しのようす)

 置かれた現状からすれば、地域の方が来られることによって
一定の質が保たれている側面もありますので、
もし、満足していただけたのであれば、ありがたいことです。

 薬用植物園では研修会や見学会、課外授業の受け入れなども行っています。

 最後に、いつもの開花状況についてお知らせします。

ホソバクサボタン
タチセンニンソウに引き続き開花し始めました。
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トウキ
多くの婦人薬に配合されます。
開花後は株ごと枯死するので、毎年新しい苗を植えています。
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クララ
国内にも自生する植物ですが、かなり少なくなっているそうです。
絶滅が危惧されるオオルリシジミの幼虫が、
クララの蕾のみ食草とすることが知られています。
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スペインカンゾウ
医療用として使用されるのは主にウラルカンゾウで、
スペインの方は食品の甘味料などに使用されるそうです。
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ハアザミ
古代ギリシアの建築物ほか、様々な美術品等において
この葉をモチーフとした文様が施されたことで知られます。
「アカンサス文様」などで検索すると出てきます。

ヨーロッパの人たちにとってはなじみのある植物で、
薬草としてもかなり古くから利用されていたようです。
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セイヨウノコギリソウ
これもヨーロッパでおなじみです。
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ザクロ
一定の年齢以上の方は、子どものころに食べた経験をお持ちかと思います。
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タチジャコウソウ
タイムの一種。
ハーブティとして飲まれます。
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スイカズラ
咲き始めは白色、開花が進むと黄色っぽくなることから
金銀花の名前があります。
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これから日に日に気温が上がってまいりますが、
お近くにお立ち寄りの際はご見学ください。









現在の開花状況0509

 ここ数日涼しい日が続いております。
夜温も週末にかけて10度前後まで下がることから、
屋外へ出したものを再び入室したりと面倒なことになっています。

 さて、9日現在の開花状況につきましてお知らせします。
開花状況ばかりですが・・・・・

 こちらはタチセンニンソウです。
クレマチス、テッセンの仲間になります。
根を利用し、鎮痛などの薬効があるとされています。
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 これはムラサキです。
生薬というより染料として知られています(日本三大色素の一つと言われる)。
9月頃に播種して育成しています。
 生薬名はシコン。やけどなどの外用薬である紫雲膏の主原料です。
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 これはコムギです。
品種名は農林61号。かつては国内生産の主力品種であったそうです。
関東から九州でも栽培可能で、麺類に適しているとのこと。
 元々、ウコンを植える予定の場所であったので、
来週くらいまでです。

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 シロバナムシヨケギクです。
アカバナに少し遅れて開花しました。
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 これはボウフウの花です。
播種から3年目の開花となりました。
 防風通聖散が脂肪を落とすのに良い!との広告をよく見かけます。
本当に効くのかはわかりません。
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 アマチャもわずかながら色づき始めました。
ちょっと光が強いようで葉色はいまいちです。
 アマチャと言えば、お釈迦様の誕生日にかけるお茶の原料となります。
発酵によって何とも言えない独特の甘みとなります。
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 これはムラサキツユクサ。
理科の実験で使われます。

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 イトハユリです。
その名の通り、葉の細い華奢な雰囲気のユリです。
生薬名はビャクゴウ(百合)
2016年3月に播種したものです。
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 基本、平日の10:00~16:00に開園しております
(作業員の不在時には施錠させていただいております)
よろしければお立ち寄りください。


現在の開花状況0501

 本日はずいぶんと暑い一日となりました。
 まだまだ体が慣れていないので、
こまめに水分補給するなどの対策を心がけたいものです。

 さて、ゴールデンウィーク最中ですが、
現在の開花状況についてお知らせいたします。

 まずは、花ではなく果実ですが、クワです。
根の皮が漢方薬などに使用されています。
この株は「多胡早生」という江戸時代に作出された品種です。
養蚕用に使用されてきました。

養蚕用品種はたくさんあるようですが、多胡早生は
果実もおいしい品種として知られています。
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 次はダイダイです。
柑橘系の花は香水に使われるだけあって、
ダイダイの花もすばらしい香りです。
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 次はニッコウキスゲです。
春の若芽は山菜として食べられます。
水分を好みます。
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 真っ赤な花が印象的なヒナゲシ。
もちろん、危険なケシではありません。
イギリス人はみな知っている花となります。
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 ジギタリス。強心作用のあることで知られます。
植え替えた影響もあってか、こじんまりとなってしまいました。
現在、新しい苗を育苗中で、これらは今年限りで引退となります。

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 生育が悪くて恥ずかしいのですが、ソバです。
品種は北海道で主力の「北早生」で、春まき、秋まきとも
可能なことから、ここの植栽には便利だとこの品種を選びました。
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 次はマムシグサです。
へんな形ですが、色は悪くない。
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 次は一般のご家庭でもおなじみのユキノシタです。
葉はてんぷらにして食べることができます。
繁殖力も旺盛です。
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 次はナルコユリです。
滋養、強壮効果のあることが知られ、
栄養ドリンクなどにも配合されています。
花弁の先の緑色は悪くありません。
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 これはタンジン。
日本薬局方に収載されたのは比較的最近だったと思います。
サルビアの仲間で、開花期も長く、観賞用としても利用できるでしょう。
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 カミツレ。ジャーマンカモミールです。
著名なハーブ。
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 ピンク色も混ざっていますけど、アカバナムシヨケギク。
かつて、そして現在もわずかながらに蚊取り線香の原料として
使われているシロバナムシヨケギクよりは有効成分が少ないそうです。
しかし、気のせいか、害虫は少ないように思います。
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 これはコンフリーです。
ハーブの一種ですが、帰化が問題となっています。
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 薬用植物とは言い難いものの、スイレンも咲き始めました。
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 カノコソウも満開です。
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 最後は街路での植栽でおなじみのシャリンバイです。
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近畿大学薬学部薬用植物園
開花状況の他、行っている作業
など現在の様子をお伝えします

大阪府東大阪市小若江1-9-7
E-mail:yakuso@phar.kindai.ac.jp
(@を半角にしてください)
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