2022年01月

コチョウランを育ててみる2

先週の続きです。

4.春~初夏の管理(5月下旬~6月中旬頃)

1)戸外に出す時期

  大阪では5月下旬以降となります。

  最低気温15℃以上かつ、室温も同程度の時期になると戸外へ出すことができます。室温が常に20℃程度あるご家庭でしたら、もう23℃上がるころまで待つ方がよいでしょう。

  気象庁のHPでは、過去の気象データを閲覧できるのですが、東大阪に近い八尾市で15℃を超すのは5月下旬となりますが、その頃になると、週間天気予報を確認しながら戸外へ出す時期を判断していきます。育てている方の中には、もっと早い時期からお昼間だけ戸外に出し、夕方までに室内へ取り込んで、少しでも生育期間を延ばそうとする方もおられます。

 

2)遮光

  概ね5070%の遮光をして育てますが「寒冷紗」という遮光ネットが販売されていますので、一般にはそれを購入して使用します。では、どの程度の遮光が望ましいかと言えば、時期ごとに異なるのはもちろん、朝の光だけ当たる、昼だけ当たる、一日中当たるなど、ご家庭の環境によって異なってきます(朝の光と昼の光は強さがまったく違います)。

  結論から言えば、葉の色や形を見て判断していただくのが最もわかりやすいかと思います。先述の通り、適切な光管理をされた葉は、ほどよい緑色をしていて、細長くなく、卵型をしており、肉厚となっているでしょう。その色や形のまま、より葉を大きくすることが目標とする葉です。

 

  ・光が不足している場合

    非常に濃い緑色となる

    葉が細長くなってしまう

    葉が薄っぺらい感じがする

    葉が下に垂れてしまう

  光が強すぎる場合

    やや黄ばんでいるような色となる

 

  上記のように葉を観察しながら(購入当初に撮影した葉の写真と比較しつつ)最終的な遮光率を決定します。

  当園では、それほど日照時間は長くないこともあって、50%遮光で管理していますが、ベストは60%ぐらいに感じています。

  なお、戸外に出した直後は、急に強い光に当たることにより葉焼けする場合もありますので、確実に遮光します。

 

3)水やり

  コチョウランの水やりの基本は「十分に乾かしてから与える」です。

ミズゴケやバークがカラカラになっても、すぐにしおれるようなことは絶対にありませんので、乾かすことが大事です。特に、戸外へ出した直後は、気温が十分ではありませんので、表面が乾いてさらに数日待ってからの水やりでも遅くはないでしょう。先述の通り、低温時に水をやりすぎて根腐れさせることが多いように思います。慣れていない方は「ここまで乾かして大丈夫なのか?」と思うくらい乾かすくらいでちょうどかもしれません。

水やりの時間は、気温が上がるまでは昼頃がよいでしょう。しかし、先述の通り、夕方には鉢の周りに散水するなど、湿度を高める水やりも大切です。

6月も終わりが近づき、最低気温が20℃を超すようになると、より積極的に水やりを行い、水やり時間も夕方に切り替えます。それでも(ミズゴケの場合)表面が十分に乾いてからでよいと思います(鉢の大きさによっては毎日。

なお、ミズゴケは乾くと水にはじく性質がありますので、何度も繰り返し与える、バケツに数分漬け込むなどの方法により与えます。

 

4)施肥

  施肥の基本は「成長期に与える」です。

  成長しているかの判断は葉を見て行います(乱暴な言い方をすれば、花は無視してもよいくらいです)。つまり、小さな葉が出て大きくなりつつある時期に行います。戸外では69月がメインの時期となるでしょう。

  肥料の種類は洋ラン用のものを用意し、まずはその記載の通りに与えることをおすすめします。普通の草花のように適当な肥料を与えていては確実に失敗します。そして、もともと多くの肥料を必要としない植物なので、意外なほど肥料の量は少ないです。

  ・液肥

   もっとも入手しやすいです。週1回から2週に1回程度が一般的ですが、愛好家の方たちはそれぞれ工夫して独自の施肥方法を行っておられます。

  ・置肥

   緩効性のコーティング肥料を使用しますが、店頭ではあまり見かけることがありません。専門店やネット販売でなら入手できると思います。液肥と置肥の両方を行っている方やどちらか一方のみの方もおられます。

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吊るすと適度に風も当たって乾きやすくなるので、管理しやすい。
吊るす用の金具も洋ラン専門店で販売されている

 

5.夏の管理(6月中旬~8月)

 最も成長の進むコチョウランにとって大切な時期です。

(1)      遮光

  気温も高く、光も強いことから葉焼けを起こしやすい時期です。遮光率は5070%。先述の通り、葉がやや黄化しているようなら遮光率を高めるとよいでしょう。もちろん、葉が細長く伸びているようならば日照不足の可能性が高いですので、逆の対応が必要となります。

(2)      水やり

  もっとも水の必要な季節ですが、培地への水やりは表面が乾いてから行ってメリハリをつけます。ただし、この季節は成長期なので乾かしすぎには注意が必要です。また、潅水時間は夕方が望ましく、毎夕の鉢周りへの散水や葉水(葉にさっと水をかける)をすることによって夜間の空中湿度を高めてやります(この季節は夜間湿度が比較的高い(平年値で70%前後)季節ですが、都市部は乾燥気味なうえ、コチョウランは夜間湿度80%程度の多湿を好みます)。

(3)      施肥

  液肥や置肥を引き続き与えます。

 

6.秋の管理(910月中旬)

 この時期になると、葉の成長も終わりに近づき、花茎が伸びだしている株が多くなります。

1)遮光

  遮光率は5070%。夏と比較して50%で問題ないご家庭も多いかもしれません。

2)水やり

  9月も終わりに近づくと、最低気温が20℃を切る日も多くなり、やや乾きにくくなりますので、水やりの回数は少なくなるでしょう。また、時間もお昼ごろに変えていきます。さらに、最低気温、温度が15℃程度まで下がると、葉も成長しなくなります。成長期が終わると多くの水を必要としない上、潅水過多で根腐れする場合もありますので、表面が乾いてさらに数日待って与える程度で十分です。

(3)      施肥

  葉の成長が止まるとともに肥料は与えなくても問題ありません。最低気温、温度が18℃程度保っており、日差しも十分確保できる環境ならば夏の施肥量の1/2,1/3程度は与えても問題ないでしょう。

(4)      室内への取り込み

  最低気温が18℃を下回るころから室内への取り込みを意識します。夜間も暖房がかかっており、日差しの入る窓辺の置き場所を確保できるご家庭なら18℃を下回る頃から、その他のご家庭では、15℃近くなる頃から室内管理とします。

次が最終回となります。

コチョウランを育ててみる1

薬用植物とは関係ありませんが、わずかながら園で管理していますので、育て方について思うところを書いていきます。

 

1.特徴

1)高温を好み、寒さを嫌う

 生育適温は2530℃程度で、初夏から晩夏にかけてが、主たる生育期にあたります。葉が十分に生育したら、昼夜温が25/20℃程度となる涼温で花芽をつくり始め、同様の涼しい時期に開花します。。

 寒さには非常に弱く、最低1518℃以上が望ましく、123℃でも可能ではありますが、水やりには細心の注意が必要となります。

 

2)半日陰を好む

 屋外では概ね5070%程度の遮光を必要とします。特に夏の高温を伴う強光下では、短時間で葉焼けを起こすこともあります。

 

3)夜間に水や湿度を必要とする

 コチョウランは夜間にも光合成をおこなっており、その際に水と湿度を必要とします。従って、特に成長期には夕方の水やりや葉水などによる空中湿度の確保80%程度が望ましいとされる)が好ましい生育のために必要となります。

 

4)ミズゴケやバークなどの資材に植えこむ

 コチョウランに限らず、洋ランは洋ラン用の用土(ミズゴケ、バークなど)に植えこむことが鉄則と言ってもよいほどです。

 

2.どのような種類を育てるか

小型種がおすすめです。

 コチョウランはカトレア類などと比較して、それほど多くの種が交配に使われているわけではありませんが、開店祝いで見られるような大型種からマイクロ、ミニなどとも呼ばれるような小型種までいろいろな種類を目にすることができます。

 咲かせやすいのはやはり小型種となります。コチョウランは、ざっくりと言って葉を2枚展開させることができれば開花させることができますが、小型種と比較して大型種は2枚の葉を順調に成長させるのにより多くの期間を必要とするからです。

 多くの家庭では、冬は成長させるどころか、枯死させずに越冬させるのがやっとであると思われます。夜間に暖房を消せば15℃の維持は不可能であるし、たとえ、窓辺に置いても十分な日照時間の確保は難しいかもしれません。従って、自生地などと比較して生育期間を十分に確保することが難しいです。

その点、生育期間が短くても開花可能な小型種であれば、夏の短期間にしっかりした葉を2枚成長させることができます。冬の間に十分な温度と日照量を確保できない多くのご家庭では、小型種の栽培をおすすめしたいと思います。


DSCN2952
育てやすい小型タイプのコチョウラン

 

3.栽培にあたって

1葉を育てる

育てるにあたっては、まずは葉を育てる気持ちで管理していくとよいでしょう。販売されている株は、専門家が育てたものですから、その葉は

 

濃すぎないほどよい緑色をしている

卵型でやや丸みを帯びており、肉厚である

葉は斜め上(理想は45度とされます)に立ち上がっている

 

と思われます。さらに、

 

・贈答用など完成した株では葉は最大に近い大きさとなっているが、小さなポットに植えられた苗では、さらに葉が大きくなると予想される

 

よって、買われた時の葉の姿を維持しつつ、苗ならさらに葉を大きくすることが目指す理想となります(なかなかそのようにはなりませんが)。今後の参考とするために買われた時の葉の姿を撮影されるのもよいでしょう。後述の通り、葉の姿は重要な管理である光の管理(遮光)の大きな指標となります。

 

2根を育てる

どの植物でも同じですが、根が健全でなければ良好な生育は望めません。コチョウランの場合、水やりが大きな影響を与え、多くの方が冬の低温時のやり過ぎによる根傷みによって失敗されているようです。根の状況は植え替え時にしかはっきりわからないことも多いですが、根が十分張っているか気にかけながら管理していきたいものです。植え替え時には根の状態をチェックし(ミズゴケやバークを取り巻くように多くの根があるはず)、特に冬の水やりについて再考する機会とします。

 

 葉と根が健全であれば、おのずとよい花が咲くと思われますので、葉と根を育てるつもりで管理してみてください

来週に続きを記載します。

 

現在の状況220125

みなさんこんにちは。
今週は少し気温も上がり、ほっとしながら作業を進めています。
樹木類の剪定を進め、植え替えや苗の植え付けも行いました。

では、現在の状況についてお知らせいたします。

カワラナデシコ
花茎の切除をしていないこともあって、
冬の間も細々と咲いています。
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ナツメ
鳥も時々食べにくるようですが、
いまいち人気がないようです。
そういえば、今週は気温が上がっているせいか、
鳥の動きが少し活発なような気がします
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フキ
いつも冬の間にフキノトウが顔をのぞかせます。
食用になる水フキです。
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カリン
新芽が膨らみ始めています。
いつも早い時期からこのようになります。
春が近づいているとは思えないですけれど
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カトレア類
最低15℃程度の温室内で咲いています
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マンドラゴラ オッフィキナルム(マンドレイク)
根にはヒヨスチアミン、ヒヨスチンなどを含み、かつては
薬用として用いられていたそうです。
ハリーポッターシリーズに出てくる泣いてしまう植物ですね。
なお、秋咲きの種(M. autumnale)も保持しています。
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ヤブツバキ
ツバキ油が軟膏基材などに使用されています。
開花が閉園中であることもあり、細々と鉢植えで管理しています
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クリスマスローズ
つぼみが見えています
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ニホンスイセン
もう終わりかけとなっています。
ありきたりの種類かもしれませんが、とても香りのよい種です
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キカラスウリ
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トレイにたくさんのオウレン
種子から増やしたものです。多すぎます、、
買った方が安いのかもしれませんが、重要な生薬の基原植物については、
ある程度の増殖方法を確認するようにしています。
タネまきにあたっては、取りまき(まき床を事前に用意して採取後すぐにまく)
をしました。キンポウゲ科の高山植物では、一般に行われる播種方法です。DSCN1085


また、状況についてご報告いたします。

久しぶりの更新です

久しぶりの更新となりました。
お元気でいらっしゃるでしょうか。

しばらく収まっていたコロナウイルスも再び猛威を振るいだし、
大阪も感染者数が急速に増加するなど、油断ならない状況となってきました。
しかし、植物園では、春の開園に向けて淡々と準備を進めております。
現在の状況について、簡単にご報告します。

ダイダイ
少し大きくなったこともあり、少し多めに果実をつけています。
といっても、(同様の管理レベルの維持は到底不可能なので)
農家さんに比べるとかなり少なめにして、
樹体への負担を減らしています。
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ノイバラ
来月上旬には剪定をしてすべて切除してしまいます。
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カリン
昨年は収穫も行いませんでしたので、樹上にも、まだ残っています
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畝づくり、苗植え付け
今回はいつも通りにバーク堆肥を混入するだけでなく、
バックホウで心土破砕も行いました(深い部分も耕す)。
耕耘機だと、どうしても表層部のみ耕すだけとなり、
その下層がカチカチに固まってしまいます。
土壌がよいとは言えないので、今後もできる範囲で
このような作業を行っていきたいところです。
なお、苗の植え付けは晩秋や春に行うもので、
本来は厳寒期には行いませんが、適期の作業はスケジュール上
難しいため、1~2月にも植え付けております。
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一部は畝たてを行いませんでした。
畝たては根の張る深さをできるだけ確保(有効土層の確保)
するために行いますが、作業負担軽減のために今年初めて
このまま植え付ける予定です。
あまり楽観視はできません。
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鳥たちの宴あと
カラスやムクドリなどのようですが。
あちこちにタネがばらまかれています。
この時期は、特にエサが少ないのかもしれません
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ビワ
開花中です。
大きな果実をつけるためには、本当は
10~11月につぼみの一部を摘み取らなければなりません。
枝数も多いかと思います。
次回はもう少し計画的に行いたいです。
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オウレン
タネをまいて3年が経過した株です。
土が悪く、地植えを4年ほど控えていました(鉢植えで保持)が、
今年は久しぶりに植えてみる予定です
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ウメ
これだけ寒いのに、徐々につぼみが膨らみつつあるようです
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シャクヤクとボタン
冬芽は赤みを帯びています。
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ケール
昨春に植えたもの。
春の開花後、種子を実らせ、短い一生を終わらせます
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剪定
これからしばらくは、剪定もメインの作業となってきます
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今年は皆さんにご覧いただけることを期待して、
準備を進めていきます。
これからは剪定のほか、株の植え付けや鉢物の植え替え、タネまき、
工作物の作成などを行っていき、3月中旬には終了させたいと
考えています。
また、現況についてご報告させていただきます。

近畿大学薬学部薬用植物園
開花状況の他、行っている作業
など現在の様子をお伝えします

大阪府東大阪市小若江1-9-7
E-mail:yakuso@phar.kindai.ac.jp
(@を半角にしてください)
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