この作品の村上にはロマンティストの面影が残る。
蛍を開放するシーンなどどうであろうか。悶絶ものである。
この書は布団に寝転がりながらにやにやじたばたしながら読むのが正しい。
伝播する死と生。キズキは死の極にあり、緑は生の極にある。
キズキの死は瞬く間に直子を飲み込む。直子はキズキが死ぬと同時に生を喪失した。
直子やレイコと触れる“僕”は徐々に死へと近づく。
そこで現れるのが緑だ。性にあけすけで竹を割ったような性質の緑は生の象徴である。
ミドリの生はトオルに、トオルの生はレイコへと伝播していく。
死と生の境界が不明瞭であることは、
主体の存在と客体の存在が曖昧であることと同意である。
私という存在は、実に他者にやすやすと侵食される存在なのであろう。


ノルウェイの森 上 (講談社文庫)ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
著者:村上 春樹
販売元:講談社
発売日:2004-09-15
おすすめ度:4.0
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