燃えるスカートの少女 (角川文庫)
燃えるスカートの少女 (角川文庫)
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彼女は引き出しを開ける。ミニチュアの釣瓶を取り出す。慣れた手つきで滑車に取り付け、準備完了。大きく口を開け、ゆっくりと縄を降ろしていく。そうやって、胸の奥から涌き出る孤独を汲み上げる。汲んでは捨てて、汲んでは捨てて…それが彼女の日課。彼女の全て。何をせずとも、孤独は胸から湧いてくる。次第に彼女は下腹部に重みを感じ始める。痛みはない。けれどスタイルのいい彼女は、そんな風にお腹が張ってしまうのには耐えられない。だから、彼女は引き出しを開ける。いつの日かのはなし。彼女はもう疲労困憊。あんまり疲れて腕も上がらず、彼女は思わず倒れ込む。お腹はどんどん膨らんでゆく。これでは重くて動けない。降参とばかりに、彼女はそっとお腹を撫でる。そこに穏やかな安らぎを覚える。彼女は自分の孤独に語りかける。身持ちの女性がそうするように。彼女は引き出しを開ける。ミニチュアの鋏を取り出す。拙い手つきでお腹を開く。その手で孤独を抱きかかえ、静かに祝福してあげるために。そうやって産み落とされたのが、この短編集。(H)