ZAZEN BOYS 4 / ZAZEN BOYS


遂に。いや、ようやく出た。
世界中を見渡しても、ほとんど他に類を見ないほどの実力を持つ、このモンスターバンドの代表作に相応しいレコードが。

向井秀徳という男の異常な才能は、いわばピート・タウンゼント的なアイデア過多とそれに対する妄執さによって、アルバムという体を成すと、内容がどうにもとっ散らかって焦点が合わないきらいがあったが、ナンバーガール時代の盟友デイヴ・フリッドマンのプロデュースにより、サウンドに一貫性が出たのが大きいだろう。

音質が今までに無いほどに柔らかく聴きやすい。
それでいてZAZEN BOYS特有の刃物の様な切れ味を全く損ねていないあたり、流石は鬼才デイヴ・フリッドマン。といったところか。

M-1『Asobi』は超ダビーなハウストラック。
日本でも最近ハウスっぽいダンスミュージックを演奏するバンドが増えてきたが、それらを全て置き去りにする圧倒的な完成度。
音の配置、リズム、展開や構成の全てがハイレベル。
M-2『Honnouji』、M-3『Weekend』、M-5『Memories』あたりは、ZAZEN BOYSらしい切れ味鋭い変拍子ファンク。

snoozer誌などでは、もっとハウス路線に振り切った作りにすべきだという意見もあったが、個人的にはこのほうがメリハリがあって一枚を通して聴きやすくなっているようにも思う。

だが、やはり圧巻はラストのエレクトロ・ハウストラック2曲。
先行シングルを大胆にアレンジし、倒錯的な甘いムードと切迫感溢れるビート感が同居する、M-8『The Drifting / I Don't Wanna Be With You』。
どこかノスタルジックな寂しさと無常感を感じさせる、M-9『Sabaku』。
どちらも都市生活者の心象風景を映し出すかのような、あまりにも美しく切なく、それでいて少し滑稽な感触も持つ名曲。


それにしても今作でもますます鋭くなっている、向井秀徳の歌詞/言語感覚は本当に凄まじい。
ここまで視覚的な言語表現を出来る表現者は作家を見渡しても稀有な存在だ。
誰もが現実から目を反らし、僕と君という二人称の閉鎖した存在しえない永遠のようなものに安直にすがりつく、想像力の欠片も無い歌詞ばかりが氾濫する日本の音楽シーンに於いて、ここまで真っ当に現実を見据え、しかもリリシズムに溺れない言葉を選べる存在も他にはいないだろう。
(「繰り返される諸行無常 よみがえる性的衝動」という、彼の常套句であるリリックが、その全てを的確に表現している。)
だからこそ、『Sabaku』の最後のリリック「割と…寂しい」というフレーズが、音楽シーンに於ける、表現者としての向井秀徳の孤高さと孤独感の表れとも感じられた。

まぁそんなくだらない妄想はさておき、音の創造性・言葉や表現のセンスともに、他を圧倒する恐るべき完成度。

しかしもっと恐ろしいのは、これほどの名盤を作っておきながら、これすら通過点であると思わせてしまう、このバンドのポテンシャルかもしれない。

2008年の最重要レコード最右翼。
紛れもない超大傑作。



今日の一曲
Honnouji/ZAZEN BOYS