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胸痛とは胸部に起こる痛みの総称です。

胸痛は、胸壁からのものと内臓からのものとに分けられ、
胸壁からのものには筋肉・筋膜・骨・骨膜などに由来するものと、
胸神経に由来するものがあり、内臓からのものにはそれぞれ交感神経興奮、
迷走神経興奮、体性神経興奮によるものがあります。

1.胸壁からのもの
〇皮膚、深部感覚(筋、筋膜、骨、骨膜)が関係。
・筋筋膜痛
・胸神経痛
  後枝痛 : 椎間関節痛
  前肢痛 : 肋間神経痛

※肋間神経痛
肋骨に沿って走る神経が痛むもののこと。
つまり筋筋膜痛も肋間神経痛の一つ。
またもっとも多い肋間神経痛は、不自然な姿勢をとる、
運動不足・疲労などによって神経が筋肉や骨に挟まれて、というもの。

2.内臓からのもの
・交感神経興奮 →         心疾患
・副交感神経興奮→         食道上部、気管疾患
・体性神経(肋間神経)興奮→     胸膜炎、気胸

胸痛を起こす主臓器は、心臓・肺・食道・腹部臓器などです。

胸壁からのものは部位が明確で、痛むところを指で示すことができるのと、
体を動かしたときにひどくなるなどの特徴があるのに対して、
内臓からのものは部位が不明確で、体を動かしたときに痛みが強くなる
ということはあまりなく、安静にしていても何となく痛む、違和感がある
といった特徴があります。 

1.胸壁からの痛み
・痛みの部位が明確
・体を動かしたときに痛みがひどくなる
・背中の骨の中心(脊椎棘突起)を圧迫したり、 
 叩いたりすると痛みがひどくなる

脊椎局突起の圧痛・叩打痛がひどい場合(これ自体は胸痛ではない)は、
胸椎の圧迫骨折や胸部変形性脊椎症、
肋間神経(肋骨)に沿った痛みであれば、
肋間神経痛・帯状疱疹後神経痛が考えられます。

それ以外のものには、肋軟骨炎・肋骨骨折・筋筋膜痛があります。

①胸椎圧迫骨折
骨粗しょう症などによって起こります。

②肋間神経痛
原因がわかる続発性のものと、原因のはっきりしない原発性のものがあります。

続発性のものには、帯状疱疹の後に出るもの、脊椎の変形によるもの、
内臓の病変からのものなどがあります。

水疱瘡に掛かると1週間ほどで症状は治まりますが、
その後も水疱瘡ウィルスは神経節(神経の集まっている部分)付近に
何年もの間潜み続けます。

疲れなどで抵抗力が落ちると、そのウィルスが再び活動を始め、
皮膚に帯状の水ぶくれをつくり、これを帯状疱疹といいます。
皮膚症状が回復しても痛みだけが残り、帯状疱疹後肋間神経痛
となることもあります。

他に、帯状疱疹後に起こる神経痛で多いものに、
三叉神経痛(第1枝支配領域)があります。

③肋軟骨炎(ティーツェ病)
肋骨と肋軟骨の接合部が肥厚します。
二十歳代の女性に多く原因不明ですが、自然治癒することが多い疾患です。


2.内臓からの痛み
・痛みの部位が不明確
・体を動かしたときに痛みがひどくなるということはない

①狭心症や心筋梗塞などの心臓症状によるもの
(交感神経興奮)
  心筋が虚血することによる痛みです。

②内臓からの胸痛には、
  食道上部疾患など消化器症状によるもの
(交感神経興奮)、
  胸やけが主症状です。

③気管支疾患・気胸といった肺や気管支などの
  気道症状によるもの(迷走神経興奮)、
があります。
    しかし、咳が長引いて胸の筋肉が炎症を起こすことによる筋肉痛や肺癌、
  肺結核などによって、胸膜が刺激されることで起こる胸痛
  といったものはあります。また自然気胸の場合、突発的に呼吸困難が生じます。

※肺には知覚がないため、肺そのものが痛むということはありません。
  (下気道症状を参照して下さい。)

 
※消化器症状については消化器症状を参照ください。


胸痛を引き起こす急性疾患
胸痛を引き起こす急性疾患には、心筋梗塞・狭心症・解離性大動脈瘤・
急性心筋炎などがあります。

急激に強い胸痛が起こったら、速やかに病院に行ってください。

①心筋梗塞
冠状動脈の閉塞により、支配下の壊死が起こります。
再発作が起こりやすく、
左胸部痛で左上肢尺側(小指側)に放散痛が出たりします。
発作時間は30分~1時間。

②狭心症
一過性の心筋虚血により、左胸痛を起こします。
左胸部痛で左上肢尺側(小指側)に放散痛。
発作時間は5~15分くらい。
ニトログリセリン舌下錠服用で効果があり、
治療および心筋梗塞との鑑別に使われます。
ニトログリセリンには強力な血管拡張作用があります。

・労作性狭心症 : 労作による血管需要増大に、供給が追いつかない状態です。
・安静時狭心症 : 早朝4時前後に冠状動脈の痙攣が起こり、
           内腔が狭まります。
・不安定狭心症 : 心筋梗塞や突然死に至る狭心症のこと。

③心臓神経症
心臓は悪くないのに悪いと思い込みます。数時間から数日感にわたる左胸痛。
生命に異常はありませんが、本人は重篤感を訴えます。

④自然気胸
上胸部、側胸部、背部に突然痛みを生じ、息苦しさを伴います。

⑤その他の心血管系疾患による胸痛
・解離性大動脈瘤
・急性心膜炎・心筋炎
・大動脈炎症症候群

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