1.定義
①ほてり:身体の全部または一部が、自覚的または他覚的に
熱くなること。皮膚の血管が拡張して血液が多くなって生じる現象。
血管運動反射(中枢は延髄)の異常。
②のぼせ:頭顔面のほてり。顔面や頭部の血管が拡張して起こる現象。
2.原因
熱い風呂に長く首まで浸かっている時、誰でも顔がほてり、
のぼせてきます。これは、首から下の身体が温められているため、
顔や頭から熱を放散しようとして、浅層静脈の血流量が増加している
状態です。 日常においても、身体から熱の放散は行われていますが
身体全部から均一に放散されているわけではありません。
熱の放散は、皮下脂肪の薄い部分や、衣服を着けていない部分から
行うのが効率がよく、頭顔面部と手足関節の末梢(とくに掌・足底・指部)が
これに 適しています。これらは、ほてりを生じやすい部分でもあります。
体幹や大腿や上腕部は放熱効率は悪いです。
1)原疾患による二次的症状
発熱疾患・・・・・体温の上昇を伴います。
多血症(≒血熱)
脱 水(≒陰虚火旺)
※多血症とは、体内に存在する赤血球量(循環赤血球量)が真に増加した
状態のこと。
※陰虚火旺は、体内の水分が減少したため、冷却するための汗を出せず、
体温が上昇します。
2)自律神経・ホルモンの機能異常
〇婦人科系
婦人科系で最も多いのが更年期に伴うものです。
自律神経失調症や不定愁訴症候群では、更年期障害のそれと同様に
多愁訴ですが、周期的発作的に生じるのぼせ・ほてり・発汗異常は、
更年期障害特有です。
卵巣・子宮摘出手術が原因となることもあり、術後に起こります。
〇精神緊張状態に伴う自律神経異常
精神緊張時に大脳は一度に多量の血液が流れ、脳内深部温が上昇し
赤面したり、耳まで赤くなり熱っぽくなったります。
※このような場合、顔面部を冷やす手軽に出来る対処法として
顔面部を冷たい水で冷やすというものがあります。
3.現代医学的治療
更年期障害の、のぼせ・ほてりなどの血管運動神経症状に対して、
婦人科では女性ホルモン(エストロゲン)注射を行います。
※ホルモン補充療法の副作用
月経に似た出血や乳房が張ることがあるようです。
また5年以上続けると乳癌の発生率がやや増加する
という報告があります。
この治療では、直接的にはイライラや抑鬱は改善されないようです。
※血管運動神経症状とは
血管の収縮と拡張を起こす反射のこと。
延髄にその中枢があります。動脈血圧上昇・下降、交感神経の興奮、
血中の二酸化炭素量の増加といった刺激によって、
末梢血管の太さが反射的に変化し、
血圧と血液の体内分布調節に作用します。
4.のぼせ・ほてりの鍼灸治療
鍼灸治療の効果は、一般的な自律神経失調症には期待できますが、
比べて、血管運動神経症状に対してはそれほどではありません。
1)卵巣に働きかける
更年期障害の、のぼせ・ほてりなどでは女性ホルモン注射が有効
ということから、鍼灸でもこの考え方を応用した方法が考えられます。
卵巣は交感神経優位で、副交感神経の影響はわずかです。
脊柱起立筋 : 腎兪(後正中線・命門穴より外側1.5寸)
大腸兪(第4.第5腰椎棘突起間の外1.5寸)
腹直筋 : 大巨(天枢穴の下2寸、石門穴の外2寸)
水道(天枢穴の下3寸、関元穴の外2寸)
帰来(天枢穴の下4寸、中極穴の外2寸)
子宮(奇穴、中極穴の外側3寸)
2)上実下虚
上実下虚の症状(頭痛、頭重、朦朧、眼充実、耳鳴り)
取穴 : 崑崙(足の太陽膀胱経、外果とアキレス腱の間の陥凹部)
立位の方が効果が高いようです。
1月4