＊『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』及び関連作品のネタばれを含みます。ご注意ください。＊

2010年12月03日 01:27

このブログについて【批評のスタンス】

当ブログが目指す方向、および基本的なスタンスについて。
また当ブログが考える「批評とは何か？」について。

　一口に「批評」と言いますと、なんだか上から目線で作品に対して良いだの悪いだのごちゃごちゃ口を出す……そんなイメージを持たれる方もいるかもしれません。
　しかしながら、私の書いていきたい批評というのは、そのような作品の価値判断じみたものではなく、「新しい切り口を提供する」ものであると考えています。

　ライトノベル『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』は、深読みできる細部が非常に豊富な作品です。今この時も、我々が誰も思いもよらなかったような読み方が、きっとどこかに眠っていることでしょう。そうした読み方を皆さんと共有し、また皆さんからも提供しあって頂くことによって、作品はより豊かな彩りをみせるようになると思います。

　もっともっと『俺妹』を楽しんでいきたい。そのための「批評」をしていきたいと思います。

　さて、そのように作品を読んでいく上での、いくつかの基本事項を皆さんにもご了解いただきたく思います。
　まずこのブログは作中キャラである高坂桐乃を応援する目的もございますので、扱う話題も桐乃関連のものが多くなりますし、当然読み方も桐乃というキャラに主な焦点を当てたものとなります。他キャラのファンの方には申し訳ありませんが、あらかじめご了承ください。

　また、作品の読み方について。
　『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』という作品は、桐乃の兄である高坂京介の一人称視点によって語られています。この事実は、『俺妹』を読み解く上で決して忘れてはならないことです。
　京介によって、作品内の出来事を読者に解説し語っていくという形式ですが、京介自身は作者の分身でもなければ作品を俯瞰する神様でもありません。つまり、当然のことながら京介の解説は間違うこともあるし、事実を取り違え、勘違いしたまま読者に語る事もあります。まだ高校生であり、また男性ゆえの鈍感さも備わっている人物である高坂京介は、このラブコメ作品の中に生きる上で、女心を察せなかったり、女の子に（特に妹に）ヒドイ事を言ったのに全然気付いてなかったりもします。不可解な出来事に対しては、早々に結論付けて考えるのをやめてしまう事もあります。

　つまり、彼の語りには必ずしも客観性が備わっているわけではないため、彼の言葉を全て信用していては、作中で起こっている「本当のところ」を取り違える危険があります。このような語り手を「信用の置けぬ語り手」といいます。
　そうした語りの形式を用いる事によって、女の子の気持ちに気付かない主人公、というラブコメにおける心情のすれ違いの効果を最大化しているのが、この作品の狙いの一つです。また、読者をわざとミスリードさせ、桐乃の人物性をはじめ様々な事象について先入観を与えるトラップとして、この視点を活用している場合もあります。
　ですので、読者は京介の言葉だけを信用せず、作中の色々な手がかりから「本当のところ」を探す必要があります。そこからが「批評」の出番なのです。それぞれの読者が、独自にこの作品の「深さ」を発見していくことで、『俺妹』の新しい一面を発見していくのです。

　何せ桐乃の恋（？）にとっての最大の障壁は、京介が「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」とすっかり思いこんでることです。桐乃好きにとってのラスボスは他ならぬ京介じゃないかと思います（笑）ので、桐乃の心情を考えるときは京介の解説なんて真っ先に疑うべきものです。京介が大好きな方には申し訳ありませんがそちらもご了承ください。

　また、「京介視点によって生じる誤解」を暴く事のみが批評・読解の対象ではありません。この作品は至るところに配置された何気ない舞台装置が、実は裏で大きな意味を持っているなんてこともあります。例えば作中のゲーム『妹と恋しよっ♪』には意外な意味が潜んでいることを論じたのが【俺妹批評】「おかえりなさい、お兄ちゃん」です。このような小さなモノを探していくのもまた、作品の面白さを引き出す試みの一つだと思っています。

　以上が、当ブログにおける作品批評のスタンスとなります。遅筆につきまだ一篇しか書いていない上、あまり頻度の高い更新もできなくて申し訳ありませんが、どうぞこれからの「俺の妹研究室」をよろしくお願いします。