青森駅を夜しずかに動きだした夜行高速バスが
ぼくらの逃亡劇の始まりであったか
現実というあまりに重くくだらない常識や理屈から
まんまと逃げおおせたと安堵する

誰かが追いかけてきやしまいかと
バスのカーテンをそっと開けて
もう来ることのないふるさとの夜の街に
さよならを送った


何度か夜中に目覚める
桜前線はどこで通過したろう
今年の桜は真夜中に東北自動車道の
どこかで眠りのうちに過ぎてゆく


いきなりの朝
いきなりの新宿バスターミナル
拘束された甘えた情の鎖から解放され
自由の街に立った

歌舞伎町で朝マックしようか
重い荷物は次々と捨てて軽くしたら
コインロッカーに放り込んで
それから桜の過ぎた暑い初夏のような都会に
紛れてみる
誰にも見つからない
旅の始点だった