2005年10月10日

毛布

0ee69e26.jpg 煙草の紙袋の底を敲くと、一本のみ冗談の如く放物線を描き音も無く床に転がった。落ちた一本の「バルク」の描いた軌跡は確かに記憶していたが、その剛体の回転に関しては注意を払っていなかったので、両切りのそれはどちらが吸い口なのか判別がつかなくなった。しかしそれは「一本」が両切りであるかぎり考えるだけ意味の無い問題であったし、或いはよくよく煙草の巻紙の"GOLDEN BAT"の印字の向きを考えれば方向に関する議論は明確そのものでその疑問それこそがナンセンスなものだった。

 最近めっきり冷えるようになってきた。毛布のを被っても不快でない季節がやってきたのだ。僕は毛布を頭から被って、片目だけ出して酒を飲んだり煙草を吸ったり本を読んだりするのが大好きだ。暗く小さな隙間から少しだけ隙間を開いて表をうかがいつつぼんやりするのは押入れや天井裏に潜んで己ワールドを展開する小学生の心情にかなり近い。小さな己ドメスティックな空間で喫する酒や煙草の味も高校の便所でやるように秘密の味が紛れ込んでさらに一塩。たとえそれが岩波文庫であったとしても毛布空間で読んでいれば寺の裏でポルノを読むように胸高まろう。夏の間はこれらの胸躍る行為は肉体的な不快さの為に苦行と同義であったが、燃え狂う太陽に落ち着きが生まれた今からはまさに大人のホビーとして存分に堪能できよう。
 
 今夜はこのナイスなスタイルにて本でも読みつつ秋の夜長をひとつ楽しむつもり。 あなたももし毛布があるのならば頭からすっぽり被って己空間を作り出し世の中を片目からこっそり覗いてたのしんでみませんか。それは多分貴方の気持ちをときめかせいつもの生活にひとつのアクセントとなるでしょう。なおこのスタイルで喫煙する際は焼死の危険性と常に隣り合わせであることをゆめゆめお忘れなく。




 なに、ウヰスキーはないのか。毛布を被るのは結構だが、酒がないようならば正しい毛布被りとは呼べぬ。
 


kiti_guy at 22:08│Comments(0)TrackBack(0)

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