12-141213154509
四千万キロメートルの彼方から見た太陽は、鎖につながれた地獄でしかない。それは暗黒の宇宙空間のなかで燃えたぎる、明い光の点にすぎず、地球の子らはそれをあたりまえの光景として受けとり、いともたやすく、無意識のうちに、視野から追いだしてしまうことができる。だが、それだけの距離を経てなお、太陽は人間たちを魅きつける。強制的に、そばに行ってみたいという気にさせる。しかし、そばに行くことは、危険な行為なのである。
〈ブラッドベリ〉から見える太陽の見かけの大きさは、目から一フィート離して手にした、五セント貨ほどもあった。この距離では、光輝があまりにも強烈なので、防眩処置を講じずにはとても見ることができない。地球でときどき人がやるように、この日輪を〝ちらりと見〟ようものなら、目がつぶれてしまうだろう。船長は船の停滞場スクリーンに偏光をかけ、通常の展望窓を閉じさせていた。
 しかし、ラウンジのライオット窓にはシャッターがおろされていなかったので、乗客は目を痛めることなく、生命の源を見つめることができた。
 ジェイコブは、個室のなかで何度も眠っては目を覚まし、まだすっかり目があかないまま、コーヒー・サーバーのもとへ深夜の巡礼に赴く途中、その丸窓の前で立ちどまった。寝ぼけまなこで、ぼーっとして何分も見つめていると、ふいにな声に話しかけられ、はっとして目が覚め謝偉業醫生た。
「水星軌道の近日点からみたあなたがたの太陽は、このように見えるのです、ジェイコブ」ほの暗く照明されたラウソジのカード用テーブルのひとつに、カラが腰かけていた。異星人のうしろにある、自動フード・マシーンの列の上には、時計がかかっており、発光文字が〇四三〇時であることを告げていた。
 起きぬけのせいで、ジェイコブの声はのどにつまりがちだった。「そんなに……げほん……もうそんなに近づいたのかい?」
 カラはうなずいた。「はい」
 異星人の口のなかの自い碾臼はしまいこまれていた。おりたたまれた大きな唇が閉じ合わされ、サ行の音を発音しようとするたびに、息か漏れてかんだかい音になった。薄暗い明かりの下で、その目が展望窓からの光を反射して、赤く輝いていた。
「到着までには、もう二日しかありません」と異