ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北部にまたがるラップランドにはサーメ(サーミ)と呼ばれる少数民族が住んでいます。
これはスウェーデンのサーメに伝わる昔話です。



サーメの男、ネイネ・パッゲはたくさんのトナカイを飼っていました。
サーメにとってトナカイは生きるために欠かせない、とても大切なものでした。
ネイネ・パッゲにはもうひとつ大切なものがありました。
それは、ひとり娘のチャルミ。
チャルミはとても美しく、かしこい女の子です。
山の上にはひとりの巨人が住んでいて、たびたびサーメが大切にしているものを力ずくで奪うのでたいそう嫌われていました。
ある日、巨人はチャルミを見かけ、ネイネ・パッゲに「チャルミを嫁によこせ」と言いました。
さて、チャルミはこの無理難題にどう立ち向かうのでしょう?



ラップランドの冬は太陽も上らず、気温も零下数十度に下がり、雪と氷に覆われます。
自然の驚異の前に命が危険にさらされることも多かったでしょう。
北欧の昔話には巨人が登場するものが多くありますが、巨人とはおそらく自然の驚異の象徴だったのだと思います。
巨人が気の毒になる結末ですが、これも理不尽なほどの破壊力を持つ自然の驚異を巨人にたとえ、コテンパンにやっつけて笑い飛ばしてきたからなんでしょうね。



絵を担当された平澤朋子さんは実際にラップランドを訪れたのだとか。
サーメの色鮮やかな民族衣装、トナカイとの暮らしぶり、氷河のためにU字型にえぐれた山のある風景などの絵が、読み手の想像を助けてくれます。
巨人は『三びきのやぎのがらがらどん』に出てくるトロル風ですが、ちょっぴり優し気で愛嬌たっぷりです。