しあわせな読書時間 ―北欧スウェーデンの絵本・児童書めぐり―

スウェーデン・フィンランド・ノルウェー・デンマーク・アイスランドにゆかりのある作家の書いた絵本・児童書、むかし話を中心に紹介します。小学校や図書館での「読み聞かせ」の記録も。

カテゴリ:スウェーデンゆかりの作家 >  セルマ・ラーゲルレーヴ

ふしぎなよる
セルマ ラーゲルレーヴ
女子パウロ会
2013-09



クリスマスの夜、おばあちゃんが話してくれたふしぎなお話。
ある真っ暗な夜、ひとりのおじさんが「赤ん坊が生まれたのです」と火をくださいと一軒一軒お願いしました。
でも、誰も起きてきません。
遠くの野原にかがり火を囲んで眠っている羊の群れを見つけました。
火をもらおうと走っていくと、番犬がとびかかろうとしてきました。
でも犬はほえもとびかかることもしません。
気が付いた羊飼いが目を覚まし、杖を投げつけてきましたが、おじさんを避けて横に飛んでいきました。
火がほしいというおじさんに、羊飼いは好きなだけ持っていっていいと言うと、おじさんは火をマントに包んで持っていきました。
でもやけどもしないし、マントも焦げません。
ふしぎに思って羊飼いが後をつけていくと・・・・・・。



これも先日紹介した『ラーゲルレーブのおばあちゃん』同様、作者が祖母から聞いた話をもとに書いたクリスマス物語が原作になっています。

神様が喜ぶような優しい目を持つことができたら、羊飼いが見た光景を私たちも見ることができる、とのこと。

今からでもそのような目を持つことができるでしょうか・・・・・・。




おばあちゃんと二人きりのクリスマス。
なんとなく寂しい気持ちになっていると、おばあちゃんがお話をしてくれました。

月も星もない、真っ暗な夜。
男の人が家々の扉をたたいて、火を少しいただけないかとお願いしていました。
けれど、どの家も扉を開けてくれません。

男の人が家のない野原まで歩いていくと、遠くに小さな火が見えました。
火のまわりにはたくさんの羊たちが眠っていました。
男の人が火をもらおうとしたとき、そばにいた犬たちが男の人を噛もうとしても噛めず、目を覚ました羊飼いが、男の人に向かってつえをビューンと投げてもあたらず、男の人は真っ赤な炭を手で持ってもやけどもしません。
羊飼いは男の人の不思議な力を感じ、あとをつけていくと・・・・・・。



優しい気持ちになった羊飼いは、これまでに聞くことのなかった音楽を耳にし、見たことのない景色を目にします。
この奇跡は心の目が開いたからなのです。

そしてこの絵本にも、奇跡が起きます。

物語の合間に「どうして どうして」「それから それから」と尋ねる少女と「聞いていればわかるよ」と答えるおばあちゃんのやり取りがはさまれ、少女とおばあちゃんがいる部屋の様子も描かれているのですが、だんだんと花や動物などが増えていくのです。

言葉では何も説明されていませんが、少女の心の目が開いたことを暗示しているのでしょう。



『ニルスのふしぎな旅』を書いた北欧の女性作家ラーゲルレーヴが祖母から聞いたお話をもとに書いたクリスマス物語です。
 




いたずら好きな男の子、ニルスはいたずらが過ぎて、家に住む小人の妖精に小人にされてしまいました。
ニルスは飼っていたガチョウのモルテンの背中に乗り、ガンの群れとともにスウェーデン中を旅することになってしまいます。
小さくなったニルスは動物と会話ができるようになっていて、いじめていた動物の話を聞き、心を入れかえ、旅の道中、鳥達の危機を何度も救います。
次第に鳥達に仲間として認められるようになりますが、はたしてニルスは家に戻れるのか、元の姿に戻れるのか?

アニメにもなったおなじみの物語がマンガになって登場しました。
世界の名作を、子どもたちに親しみやすいまんがで紹介するシリーズの1冊です。

小人にされてから家に戻るまでの大冒険のエッセンスをわずか150ページにおもしろくまとめています。
原作は長いので、どんな内容か、簡単に知りたい人に向いています。
これで満足されたら困りますが、導入としてはいいのではないでしょうか。



小学生の頃、お話の絵を描く時間に、ニルスとモルテンが森の中にいるという「ニルスのふしぎな旅」の1シーンを描きました。
がちょうという鳥がどんな形なのかよくわからず、首の短い白鳥のような姿になってしまったのを覚えています。
ニルスもがちょうの背中に乗れる大きさなのに、がちょうとニルスは同じぐらいの大きさになっていましたし。
見て描くのではなく、頭の中で想像して描くことは当時の私には難しくて(今でもですが)、あとからああすればよかった、こうすればよかった、と思うことも多く、だからこそ印象に残っています。

絵を描くのは苦手だったなあ。

巨人と勇士トール ニルスが出会った物語6 (世界傑作童話シリーズ)巨人と勇士トール ニルスが出会った物語6 (世界傑作童話シリーズ) [単行本]
著者:セルマ・ラーゲルレーヴ
出版:福音館書店
(2013-02-20)


スウェーデンの中西部(ノルウェーとの国境地帯)にあるイェムトランドは山、森、湖、川、湿地に彩られた美しい光景が広がる地域でした。
神々の時代、この地はただだだっぴろいだけの荒れ地で、人間は住むことができませんでした。
ここには巨人たちが住み着き、横暴にふるまっていたから。
そこに、敵対する神族の勇士トールが巨人に会いにやってきます。
巨人の女房は蜜酒の樽の栓を引き抜くとトールに言います。
「樽に栓をしろ!」と。
しかしトールはどうしても栓をすることができず、蜜酒を流すための溝やためる穴を掘りました。
次に巨人の女房はトールに石臼で麦をひかせます。
トールはありったけの力を込めてようやく石臼を一回転させました。
巨人に会うために待つというトールに、女房は寝床をこしらえますが、何やらごつごつしてトールは寝られません。
だから、ごつごつした部分をトールは投げ飛ばしてしまいます。
翌朝、巨人の女房はトールに言います。
「蜜酒は山から流れてくる雪解け水で、掘った溝や穴は川や湖になった。
臼でひいたのは石灰岩と頁岩で、岩は粉々になって肥えた土地になった。
寝床のごつごつした部分は頂のとがった山で、いくつもの山をこの地方にばらまいた」
こうしてイェムトランドは美しい肥沃な土地になったというわけです。


北欧神話をもとにしたエピソードはこれだけで十分に興味深いですね。
北欧神話には「巨人」というものが登場し、神に敵対するものとして描かれています。
「巨人」といわれても、あまりピンとこないのですが、本書では巨人の女房が迫力満点に描かれています。
全編を通して、絵が清々しく見ごたえがありますね。

さて、このシリーズはこの巻で終わりです。
ニルスがどうして小さくなってしまったのか、どうしてがちょうの背中に乗って旅をしているのかは本文ではなく、各巻の前書きでちらりと説明され、6巻のあとがきでニルスのその後にごくごく簡単に(しかも肝心なところが書かれていません!)触れているだけです。
ニルスが家に帰ってもとの大きさに戻れるのか、それは『ニルスのふしぎな旅』を読んでのお楽しみ、ということです。

よし、ニルスにまた会いにいこう。

ワシのゴルゴ ニルスが出会った物語5 (世界傑作童話シリーズ)ワシのゴルゴ ニルスが出会った物語5 (世界傑作童話シリーズ) [単行本]
著者:セルマ・ラーゲルレーヴ
出版: 福音館書店
(2013-01-16)



長い長い物語『ニルスの不思議な旅』から選ばれたエピソード集の第5巻では、ガンのアッカとニルスがストックホルムで出会い、はぐれた仲間を追って一緒に旅するワシのゴルゴとの関係が明かされます。

ニルスの旅が始まる前、アッカは巣に1匹だけ残されたワシのヒナにゴルゴと名づけ、わが子同様、大切に育てます。
ゴルゴもアッカを本当の母親だと、そして自分をガンだと信じて育ちますが、成長したアッカはやがて本当のことを知ります。
そして、アッカとの間の壁を越えることはできないと悟り、ゴルゴはアッカのもとを去り……。



ゴルゴにガンとして穏やかな生きてほしいと願うアッカとワシとして生きる決意をしたゴルゴ。
その切ない別れは、自分の存在や親との葛藤に悩む青年となかなか子離れのできない親との関係を描いたようにも見えます。

思春期の子ども達は、この物語をどう読むのでしょうか。

ストックホルム ニルスが出会った物語4 (世界傑作童話シリーズ)ストックホルム ニルスが出会った物語4 (世界傑作童話シリーズ)
著者:セルマ・ラーゲルレーヴ
販売元:福音館書店
(2012-10-10)
販売元:Amazon.co.jp


「ニルスの不思議な旅」から抜粋されたお話の第4弾。

漁師からニルスを買ったクレメントはストックホルムにある野外博物館でバイオリンを弾いています。
けれど、クレメントは遠くの故郷が懐かしくて帰りたくてしかたがありません。
そんなクレメントの前に立派な紳士が現れ、アザラシの皮をかぶった海の乙女が現れたことをきっかけにストックホルムという町ができたと語り、ストックホルムはスウェーデン国民全員のもの、すべての国民にとっての家なのだ、と言い残して去っていく、というお話です。

このお話の中ではニルスはあまり活躍しないので、ニルスの冒険を楽しみに読み始めると肩透かしを食ったような気持ちになるかもしれませんが、なぜストックホルムという街が美しいのか、その理由がわかる物語です。
光に満ちて神々しささえ感じられる絵にうっとりします。

クマと製鉄所 ニルスが出会った物語3 (世界傑作童話シリーズ)クマと製鉄所 ニルスが出会った物語3 (世界傑作童話シリーズ)
著者:セルマ・ラーゲルレーヴ
販売元:福音館書店
(2012-09-12)
販売元:Amazon.co.jp
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スウェーデン中部の高山地帯の上空を旅する途中、がちょうの背中から落ちてしまい、クマの巣に落ちてしまったニルス。
クマはニルスに向かい、命を助けるかわりに、山の中にできてクマたちの生活を脅かしている製鉄所を焼き払うように命じます。
人間の生活が鉄に支えられていることを知っているニルスはどうするのでしょう?



自然と人間の共存の難しさを、声高でなく静かに説いています。
100年以上も前に書かれた本ですが、テーマはまさに今、問題になっていること。
ラーゲルレーヴに先見の明があったのか、それとも人類は一向に解決しようとしてこなかったのか。
あ、でも今書かれた本なら、ニルスは別の方法を選んだかもしれません。

風の魔女カイサ ニルスが出会った物語2 (世界傑作童話シリーズ)風の魔女カイサ ニルスが出会った物語2 (世界傑作童話シリーズ)
著者:セルマ・ラーゲルレーヴ
販売元:福音館書店
(2012-06-20)
販売元:Amazon.co.jp
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いたずら好きの少年ニルスがトムテによって小人にされ、ガチョウやガンと一緒にスウェーデン中を旅する『ニルスの不思議な旅』は、子どもたちがスウェーデンの地理を学ぶことを目的に描かれ、世界中で愛されている物語です。その物語の中から6編を選び、それぞれ独立したお話として刊行された「ニルスが出会った物語」シリーズの2作目が本書です。

4月下旬ニルスはガチョウのモルテンのとともにエーレブローにやってきました。
ここにはカイサという魔女がいて、ケチでいじわるの人にはおしおきを正直な人、貧しい子どもたちには味方になってくれるという言い伝えがあります。
ニルスはガンたちとエーレブローの街はずれに来ていました。
夜も遅く大雨が降る中、市で売られていた動物たちは小屋にも入れず、外で雨に濡れて一晩過ごさなければなりませんでした。そこで1頭の年老いた馬がニルスのところにやってきて、動物達が寝られるように昔の飼い主である若い農場主の持っている小屋の鍵を開けてほしいと頼みます。はたしてニルスは鍵を開けることができるのでしょうか?

この本ではニルスが大活躍するというわけではありません。魔女カイサの出番もほんの少し。農場主が静かに自分と父親の生き方について考え、やがて、考え方を変えていく、というお話です。

静かですが、大切なことについてじっくり考えることができる1冊だ思います。

まぼろしの町 (世界傑作童話シリーズ)まぼろしの町 (世界傑作童話シリーズ)
著者:セルマ・ラーゲルレーヴ
販売元:福音館書店
(2012-05-09)
販売元:Amazon.co.jp
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『ニルスの不思議な旅』の全訳は分厚すぎて、子どもにはなじみにくい、ということでニルスが旅先で出会った物語を6編選んで作ったシリーズの第1冊。
この絵本は、海に沈んだヴィネタの町が一晩だけ海上に現れるというお話です。
ある夜、ニルスが迷い込んだその町には、優雅な衣装を身にまとう人々、装飾の美しい建物、にぎわう市には繊細な模様を施された布……。
しかし、町は消えてしまい……。

幻想的な世界が広がっています。
これまでニルスの世界に触れたことのない方にはもちろん、ニルスファンの方も、美しい挿絵がより深いニルスの世界に連れていってくれます。

挿絵は「カストール」シリーズでおなじみのラーシュ・クリンティングさんが挿し絵を担当された下記の絵本(邦訳されていません)に雰囲気がよく似ています。
下記の絵本とニルスの服装はまったく同じ。
全体的にはこの本の方が、もっとカラフルなのだけど。

The Wonderful Adventures of NilsThe Wonderful Adventures of Nils
著者:Selma Lagerlof
販売元:Floris Books
(1992)
販売元:Amazon.co.jp
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聖なる夜聖なる夜
著者:セルマ ラーゲルレーヴ
販売元:ラトルズ
発売日:2007-11
おすすめ度:5.0
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クリスマスの夜、赤ちゃんを産んだ妻のため、火をもらおうとした男と、火を与えた羊飼いに起こった奇跡を描いています。

これは『ニルスのふしぎな旅』で知られるスウェーデンを代表する作家のセルマ・ラーゲルレーヴがおばあさんから聞いたというお話です。

「神さまのすばらしさを見ることができるのは、ろうそくやランプの光があるからではなく、月の光や太陽の光があるからでもない。大切なのは、そういう目をもつことなのだよ」

これは、本書の最後にある言葉。生きるために大切なことは何か、私たちに問いかけているように感じられました。クリスマスという特別な夜だからこそ、身近にいる人と一緒にページを開きたくなる……。幻想的なブルーの色調の挿絵の美しさも手伝い、そんな気持ちにさせてくれる絵本です。


以前には、同じ話が別の画家の挿し絵をつけてスイスで出版されており、それが日本でも翻訳されていました(下の本)。こちらの絵は色鉛筆でていねいに細かく描かれ、厳かな中にもあたたかさを感じます。

きよしこのよる
著者:セルマ ラーゲルレーヴ
販売元:新教出版社
発売日:1992-10
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