しあわせな読書時間 ―北欧スウェーデンの絵本・児童書めぐり―

スウェーデン・フィンランド・ノルウェー・デンマーク・アイスランドにゆかりのある作家の書いた絵本・児童書、むかし話を中心に紹介します。小学校や図書館での「読み聞かせ」の記録も。

カテゴリ: 東日本大震災・福島第一原発事故

東日本大震災が発生してから5年がたちました。が、被災地域はまだまだ復興途上です。今回は、この震災を題材にして描かれた絵本を取り上げます。




この写真絵本には、東日本大震災後の岩手県宮古湾の海底で生きる生物のたくましさが刻まれています。

水中写真家・鍵井靖章さんが震災の3週間後に海に潜ったとき、魚はいなくなり、かわりに生活用品などの人工物が海底に沈んでいたそうです。

その時に見つけたのが小さな小さなダンゴウオ。

大人の親指の爪くらいの大きさで、泳ぐのが苦手でおなかの吸盤で岩などにくっついて海の中で暮している魚だそうです。

鍵井さんはそれ以後も海に潜り、海底の様子を撮影し続けてきました。

絵本には、次第に魚や生きものたちが戻ってきて、残された人工物を受け入れて、新しい命が育まれていく様子が記録されています。

困難を乗り越えていく生きものたちの生命力に、ひたすら驚かされます。

でも、あとがきにも書かれていますが、生きものたちが人工物を受け入れて暮らしているからといってそのままにしていてはいけないのです。

人工物は、粉々になったり、有害な物質をだしたりするので、海を汚してしまうのです。

途方もない作業ですが、人工物を取り除く努力は今も続けられているそうです。



ど根性ひまわりのき~ぼうちゃん
漆原智良
第三文明社
2015-06-28


東日本大震災で壊滅的な被害を受けた石巻。
地震の1ヶ月後には「がんばろう」の看板が立てられます。
やがて看板の下のがれきの中から、どこからか運ばれてきたひまわりの芽が伸びてきました。
この芽は夏になると花を咲かせ、やがてたくさんの種が採れました。
この種をまいて花を咲かせることで、被災地を元気づけることができるーー。
そう考えた人々により、この花はど根性ひまわりと名付けられて各地に広められ、今では全国で、そして海外でも、東日本大震災復興のシンボルとして大輪の花を咲かせている、というお話です。

実話に基づいています。

まだまだ震災の爪痕は深く残り、だからこそ風化させてはいけないという思いが伝わってきます。




東日本大震災後、津波に襲われた海岸に、時がたつにつれて動植物たちが急速に増えていき、やがて、復興工事とともに消え去っていった様子を記録した写真絵本。

被害があまり大きかったために目を向けられることもありませんでしたが、何もかもがいなくなったと思われた海岸でも、時がたつと花が開き、虫、鳥、獣たちがたくましく生きる姿を見せていたのです。
生きものたちの楽園が戻りつつありました。
けれど、人間はそれを悲しい光景だと、震災前の姿に戻し、生きものたちは姿を消しました。
著者は問いかけます。
「自然豊かな海辺を、そのまま未来に残す知恵は本当になかったのでしょうか」

この写真絵本の舞台は、手つかずの自然が残されていた地域ではなく、既に人間の生活が営まれていた場。
東日本大震災で受けた被害からの復興を考えた場合、まずは可能な限り速やかに生活を元通りにすることが最優先されてしまったのは仕方がないと思います。
未曽有の事態だったのだから。
けれど、こうして生きものの視点から見た変化を世に知らしめることは、もちろんないに越したことはないけれど、次に大災害に見舞われた時の判断に生かせるのではないかと思います。
重く貴重な記録です。




昨年1年に発行された絵本は少なく、その内容は震災後の変化や取り組みを伝えるものでした。

世間の関心が薄れないよう、事実を、現状を伝える意義は決して小さくないと感じています。
 




『ふくしまからきた子』の続編です。

前作は原発事故の後、福島から広島にお母さんと避難した小学生の女の子が、少しずつ笑顔を取り戻していくお話です。




今作は、その少女がおじいちゃんの誕生日のお祝いに福島に帰り、前に通っていた小学校の卒業式に顔を出します。

卒業生代表が答辞で6年間の思い出や、震災や原発事故の後、ふだんの生活を取り戻そうとして努力してきた人たちへの感謝や感動を語ります。

事故後に転校してしまった少女は、その答辞を体育館の後ろから聞いて複雑な気持ちになってしまったのか、式が終わらないうちに帰りかけます。

でも、式の後、少女に気づいた元同級生たちに大歓迎されるところで絵本は終わります。



描かれている子どもたちの笑顔からは、住み続けることを選び、自分たちの手で安全な暮らしを取り戻す努力をしている人たちを応援する作者のあたたかな眼差しが感じられます。

作者の松本春野さんは、福島に何度も足を運び、現地の人たちの声を聞き、その中で感じたことをこの本の中に込めたそうで、下のインタビュー記事を読むとうなずけることも多いです。

松本春野さんのインタビュー記事
http://mainichi.jp/feature/interview/news/20150407mog00m040010000c.html 
 


ただ、避難生活を続けている人はいまだに多いんですよね。
その人たちのことを忘れ、切り捨てるようなことがあってはならないと思っています。
 








福島第一原発の事故は生態系にどんな影響を及ぼしているのか。
誰もが知りたがっている真実を写真とわかりやすい文章で解説した本です。

放射線量の高い地域でモンシロチョウの姿を見かけなくなったと聞けば、その体に放射能が直接何らかの作用を及ぼしているのだろう、と考える人は多いと思います。
けれどそれは、人がその地域を離れて耕作が行われなくなったため。
モンシロチョウの幼虫が食べているアブラナ科の植物が別の草に覆われてしまったことが原因のひとつだと考えられています。

逆にヤマトシジミには放射能による影響が出ているという研究も紹介しています。
事故現場周辺で採集したヤマトシジミに目がくぼんだり脚が変形するなどの異常が見つかり、また放射線の影響を受けていない沖縄のヤマトシジミに放射性物質を含んだ餌を与えて飼育したところ、異常のある個体が見つかったそうです。

体のつくりも大きさも人間と昆虫では比較にならないほど違い、また人間は放射線の影響を受けた食品を避けることもできるので、小さな生き物に起きたことがそのまま人間に当てはまるのかどうかはわかりません。

けれど、この本を読んでわかることは、放射線による影響は小さいとは言えない、ということ。

いたずらに恐怖心を掻き立てているわけではありません。
むしろ、語り口は冷静です。
だからこそ、放射線による影響の大きさを改めて思い知らされました。

東日本大震災が発生して4年です。
もう4年、まだ4年。
感じ方は置かれた立場で異なるのでしょう。
今回は2013年、2014年に出版された絵本を中心に紹介します。

【紹介作品】
はなちゃんのはやあるきはやあるき/ぼくは海になった/はしれさんてつ、きぼうをのせて/はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ/噴砂/松の子ピノ/つなみのえほん





はなちゃんの通う保育園では、月に一度、避難訓練があります。でも、はなちゃんは、いつも遅れてしまうので、ふだんから早歩きをするよう心がけていました。
そんなある日、突然大地震が起こり津波が迫ってきました。
でも、保育園児たちは訓練のおかげで難を免れます。
あの日から4年になります。
西日本に住んでいる私はこの絵本を読み、震災を過去のものとしていたのではないか、反省させられました。
自分の命を守るのは自分。
その大切なことを思い出させてくれます。





ミニチュアダックスフントのチョビは飼い主のお母さんとともに流されてしまいます。
チョビは海の上で目を覚まし、お母さんの居所を知らせるために陸に向かいます。
チョビは飼い主の少女を見つけますが、少女はチョビに気づきません。
そう、チョビは見えない存在となってしまっているのです。
少女を見守るチョビ。
少女がお母さんと悲しい再会をするのを見届け、チョビはお母さんのもとに戻るのです。
当時、海の上で動物たちを見つけても、連れて帰ることはしなかったそうです。
命に順番のない世の中になりますように。
そしてどうか、理不尽に命が奪われることのない世界になりますように。





震災では線路、橋梁、駅舎などが破壊されるなど、鉄道も大きな被害を受けました。
三陸鉄道の被害も大きなものでしたが、5日後に、一部運転を再開します。
そしてそれから厳しい状況の中、復興に向けて努力を続け、2014年春に全線が開通しました。
この絵本ではその物語を書いています。
復興に向けて頑張る人たちに励まされ、胸が熱くなります。




上の絵本と同様、乗り物の絵本ですが、こちらの絵本は震災直後に福島・郡山に燃料を輸送したディーゼル機関車の活躍を描いています。
主役はディーゼル機関車ですが、それを動かした人たちの思いを垣間見ることができます。


噴砂
おぐろよしこ
復刊ドットコム
2013-06-10


東日本大震災の被害は、津波や原発などに目を奪われがちですが、液状化現象によっても大きな被害が出ています。その被害と原因、復旧の様子について教えてくれる絵本です。
津波で家を奪われたり、原発事故のために故郷を離れなければならなかった方々に比べるとたいしたことはない、と思われがちですが、対策により被害を減らすことのできるものです。
危険性を発信していってほしいと思います。




津波に襲われながらも一本だけ残った松の子ピノ。一方、バイオリンづくり名人のおじいさんは津波で流された松を使ってバイオリンを作ります。おじいさんがそのバイオリンを奏でたとき、ピノの周りに7万本の松たちが集まり、「私たちは音になって今でも生きているのよ」とピノにメッセージを残し・・・・・・。
津波に耐えて残った陸前高田の奇跡の一本松。一本松は震災からの復興のシンボルとなりました。また、バイオリン・ドクターの中澤宗幸さんは流された松でバイオリンを製作しています。この一本松と中澤さんの活動をもとに創作されたファンタジー。悲しみと希望、そして音楽の力を感じられる物語です。



つなみのえほん―ぼくのふるさと
くどう まゆみ
市井社
2012-05-25


津波から逃れ、避難所で暮らした体験を、文と絵と五行歌で伝える絵本です。
見たこと聞いたこと、感じたことが素直につづられています。穏やかな語り口なのですが、それゆえに被害の大きさや痛み、そして多くの命を津波から守りたいという作者の願いが心の奥にまでしみこんでくるような気がしました。

まもなく東日本大震災が起こってから4年になります。
そこで今日は福島第一原発事故に関連する絵本を新しい順にまとめました。
以前紹介した絵本も載せています(【再掲】とわかるようにしています)。

絵本はさまざまな視点で描かれています。
原発について考えるきっかけになれば幸いです。

【紹介している絵本】
ひかりのりゅう※1/希望の牧場/ほうれんそうはないています/とどけ、みんなの思い 放射能とふるさと/げんばくとげんぱつ/はしるってなに/ウリンボー/土の話※2/おじいさんとヤマガラ―3月11日のあとで/いつか帰りたい ぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内からきたねこ/ふくしまからきた子/みえないばくだん/美しい朝に※3

※1 3/8追記 ※2 2/12追記 ※3 2/16追記



ひかりのりゅう
小野 美由紀
絵本塾出版
2014-12-03


王様が村に竜を連れてきた。
竜は特別な石を食べるときれいな光を出す。
この光によって村人たちは豊かになる。
「このりゅうこそ、かみさまじゃ!」
ところが、ある日、雷が落ちた拍子に竜のお腹が破裂し、毒が村にあふれだした。
こうなったのは誰のせい?
王様のせい?
大臣や商人たちのせい?
光を欲しがったみんなのせい?
この絵本は原発事故をモチーフに描かれたものです。なぜ原発が必要とされてきたのか、何が問題なのかが簡潔に示され、人間が扱いきれない高度な科学技術とどう付き合うのか、豊かさとは何か、どう生きるのか、という課題を読者に突きつける内容となっています。
と詳解すると堅苦しく感じられるかもしれませんが、どこか無国籍風の絵が幻想的で親しみやすい雰囲気を醸し出しています。
小学校高学年ぐらいのお子さんたちにすすめたくなりました。





福島原発の事故により立ち入りを禁じられた区域にある牧場。
そこには牛が残されています。
この本はその牛たちを飼育し続けている「牛飼い」の物語です。
この牧場はいつしか「希望の牧場」と呼ばれるようになりますが、「牛飼い」は牛を飼い続けることに意味があるのか問い続ける、という実話を基にしたお話です。
牛飼いの語り口は淡々としたものですが、無念さと未来への決意の両方が感じられます。





原発事故で放射能に汚されて、ホウレンソウも米もカレイも食べてもらえなくなりました。
「ぼくらはちゃんとたべられたかった」と、食べ物の無念をストレートに力強く描いた絵本です。
生き物は食べ、食べられることでつながり、決して人間が独立して生きていけるわけではありません。
チェルノブイリの放射能汚染地帯への支援活動をする作者の強い思いが伝わってきます。





ネコの視点から、福島第一原発の事故によって変わってしまった街の様子や親しく接してきた家族や仲間の動物たちへの思いが描かれています。
そして、こんなことが二度とあってはいけない、みんなのふるさとが、いつまでもふるさとでありますように、と主人公のネコは祈るのです。
声高に原発反対と唱えるかわりに、しあわせとは何か、と問うています。
福島の風景が希望を感じさせる明るく優しい筆づかいで描かれているのが切ないです。



げんばくとげんぱつ
増山 麗奈
子どもの未来社
2013-10-18


【再掲】長い間、山の中にいたりっぱな石「ぼく」は、東京に運ばれた。
ぼくの体に丸木俊・位里夫妻が絵を描き、筆のあとを広島や長崎で被爆した人たちがノミとハンマーで彫った。
孤児になった人、足が不自由になった人、妹を失った人、結婚を断られた人……。
被爆した大勢の方たちの思いが刻まれ「ぼく」は、原爆の犠牲者の追悼碑になった。
「ぼく」は平和を願っていた。
なのに、福島の原発が爆発した。
そのせいで体調の優れない人もいるようだ。
「ぼく」は原爆と原発の記憶を伝える石になろうと思う。
広島・長崎の原爆と東京電力福島第1原発事故による放射能汚染を重ね合わせて、被爆について語る絵本です。
追悼碑を主人公にすることで、広島・長崎の被爆者に被爆の恐ろしさを語らせて、原発事故の危険性を示しています。
こんな手法もあるんですね。



はしるってなに (とぴか)
和合亮一
芸術新聞社
2013-06-25


【再掲】東日本震災の津波と、福島第一原発の爆発で、故郷の富岡町を離れ、青森の浅虫の親戚に身を寄せた少年が、走ることを通して自分を見つめ、悲しみを乗り越えていく姿を描いています。



ウリンボー (とぴか)
荒井良二
芸術新聞社
2013-06-17


大昔から人間とかかわりがあり、体の中に放射能を少なくする道具を持っているらしい(と文中に書いてあります)イノシシに、フクシマの原発事故によって放射能汚染された食べ物を食べつくしてもらい、人の住めなくなったフクシマは30年後、イノシシ王国になった、というファンタジー。
表紙のかわいらしいイノシシにひかれ、何げなく手に取って読んでみたら、原発事故を題材にしたお話で驚きました。
文明社会への警鐘としても読めますし、復興への祈りも感じます。
読んでからしばらく経ちますが、どのように考えたらいいのか、いまだこの本の感想をまとめられないでいます。



土の話
小泉 武夫
石風社
2013-03-01


土。
海の近くで多くの生きものとのんびり暮らしてきた土。
その土に人間が作物を植え、家や道路を作り始め、とうとう放射能で汚染した。
土は怒る。
しかし、放射能がなくなったら、そのときこそはともに生きようと語る。
「にんげんどものやってることなんざあ、ちっち、ちっち」と。
福島第一原発から40キロ圏内、第二原発から30キロ圏内に位置する町に生まれた発酵学者、小泉武夫さんが福島県人の怒りを、福島の言葉を話す土の独白という形で表現しています。
黒田征太郎さんの絵も必見です。
ただし、何もしなければ何百年、何千年、何万年もかかって半減する放射能を、微生物は10年ぐらいで消すことができる、とあります。
これって科学的に正しいことなのでしょうか?
ひっかかりを感じてしまいました。





大地震が起こり、続いて原子力発電所が爆発し、大量の放射性物質が大気中に漏れ出しました。
原子力発電所からいくつか山を越えたところに住み、毎年、ヤマガラのために巣箱を作り、ヤマガラのくるのを楽しみにしていたおじいさんでしたが、ヤマガラに原発が事故を起こしたことを知らせる方法がなく、心を痛めます。
翌年、巣箱に来るヤマガラも減ってしまいました。
人は危険があれば避難することができますが、動物たちはそれを知る手立てがありません。
動物たちの声なき声に耳を傾ける大切さを静かに訴えています。





写真家の大塚敦子さん(本書の著者)が引き取った、福島第一原発から20キロ圏内に残された一匹のねこの目を通して被災の現実を伝える写真絵本です。
まずは知ること。
知ったら考える。
そこからです。



ふくしまからきた子 (えほんのぼうけん)ふくしまからきた子 (えほんのぼうけん) [大型本]
著者:松本 猛
出版: 岩崎書店
(2012-03-08)

【再掲】原発事故のために福島から広島に引っ越してきた女の子と出会うだいじゅ。公園でサッカーに誘いますが、「私、やらない」と断ります。福島はまだ放射線量が高く、外で遊べないからだと言います。一方、だいじゅにも原爆で被爆した先祖がいます……。
あとがきでは原発をなくしていこう、という強い意志が感じとれますが、物語自体は二人の子どもの交流を通じ、原発の危険性について考える、という絵本です。



みえないばくだんみえないばくだん
著者:たかはし よしこ
販売元:小学館
(2011-12-20)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

【再掲】「ばくだんになるもの」とは原子力発電所のこと。
原発のおかげで生活が便利になり、仕事が増えました。
けれど、その危険はえらい人たちにはわかっていたはず。
そうして大地震と津波が「爆弾になるもの」のスイッチを押して、放射能をまきちらしました。
その結果、……。
二度とこのような事故を起こしてほしくない、という気持ちから生まれた、原発の「真実」を知らしめるための物語です。



美しい朝に
葉 祥明
自由国民社
2011-08-10


少女と子羊、花の咲く野原、という光景に突然、黒く四角い物体が現れます。
いつしかその物体は煙を吐き出し、生きものたちは死に……。
チェルノブイリ原発の事故に衝撃を受けて描いた絵に、東日本大震災後に加筆し出版されたもの。
静かで優しいタッチと色彩とは裏腹に、描かれた風景が現実のものにならないように、という作者の祈りに触れる絵本です。

東日本大震災で被災されたみなさんが少しでも前に進めるように、と大勢の方が立ち上がりました。
今回ご紹介する本も、表現を通して被災者を力づけようとしたプロジェクトの一部です。

明けない夜はないから
新田新一郎
フェリシモ出版
2013-02-28



『明けない夜はないから』は被災地の子ども達が主人公になった舞台のテーマ曲。
この歌詞に込められた想いを荒井良二さんと被災地の子どもたちが形にしたのがこの絵本です。
つなぐ道具の象徴としてボタンがたくさん描かれています。
明けない夜はない、でも、夜が明けるのを待っている人もまだ大勢います……。


旅するクジラ
前野博紀
木楽舎
2013-04-06



華道家の前野博紀さんとその仲間たち「平成のはなさかじじぃず」はがれきからオブジェを組み立て、花や被災した子どもたちの絵を飾り、子どもたちの笑顔を取り戻す活動をしています。
そのオブジェを見たある子どもが「クジラみたい!」と言ったことから、そのオブジェはクジラと呼ばれるようになり、前野さんは「旅するクジラ」というNPOを立ち上げ、支援を続けています。

この絵本は、このクジラの由来をファンタジックに描いたものです。
大地に美しい花が、子どもに笑顔が戻りますように。


きぼうのかんづめ
すだ やすなり
ビーナイス
2012-03-11



こちらは石巻の缶詰工場が、遠く離れた東京のラーメン屋さんやボランティアの支援を受けながら立ち直るまでの姿を描いた絵本です。
実話です。

缶詰工場は大津波に襲われ、缶詰も泥だらけになります。
工場をたたむ決心をしたけれど、この工場と取引のあった東京のラーメン屋が言います。
「缶詰を掘り返して持ってきな! 石巻サバ缶ラーメン! 食べたい人がたくさんいるんだから!」
缶詰は東京に運ばれ、店の常連さんが中心になって洗いました。
店ではそのサバ缶を使ったラーメンを「きぼうの缶詰ラーメン』として売り出します。
ラーメンは評判になり、石巻の工場には希望が生まれ、立ち直っていった、ということです。

「希望を取り戻す」。これがスタートですね。

ハナミズキのみち
淺沼 ミキ子
金の星社
2013-05-31



津波で亡くなった息子が子どものころの思い出を振り返り、震災後は避難の目印にハナミズキを植えて、と母に願う物語。

なぜあの時、と後悔する作者が「ハナミズキの木を植えてほしい」という息子さんの夢を見たことが絵本を書くきっかけだったそうです。
私には後世に伝えていく、という役割があると。
その思いにたどり着くまでにどれだけの葛藤があったのか。


かあさんのこもりうた
こんの ひとみ
金の星社
2012-10-31



被災地のお子さんに時を越えて、震災で亡くなったお母さんからお手紙が届いたという実話から生まれた絵本です。
家族はつながっているんですよね、いつまでも。


はしるってなに (とぴか)
和合亮一
芸術新聞社
2013-06-25



東日本震災の津波と、福島第一原発の爆発で、故郷の富岡町を離れ、青森の浅虫の親戚に身を寄せた少年が、走ることを通して自分を見つめ、悲しみを乗り越えていく姿を描いています。


月の貝 (どんぐりえほんシリーズ)
名木田 恵子
佼成出版社
2013-02-27



不思議な少年から手渡された月の貝。月が真上に上るとき、この貝が金色に輝き、母を失くした少女の悲しみも……。


くまのリッキーとにじいろのたまご
ジョナサン ウィルソン
イーブック出版
2012-02-23



くまのリッキーは胸にイースターエッグを付け、海辺の町のおもちゃ屋さんで売られていますが、ある日、大津波に巻き込まれますが、ボランティアに拾われ、以前からリッキーを欲しがっていた、避難所にいる女の子のもとに届けられます……。

キリスト教の精神に基づき、被災者・地域の救援、復旧活動をしている団体の代表者が震災直後にクマのぬいぐるみを見つけたことから生まれたお話です。
あとがきによれば、キリストの復活を祝うイースターは、希望を意味しているとのこと。代表の方は、出会ったくまの胸にイースターエッグがついていたことに、希望を持つことの大切さを教えているのでは、と感じたそうです。



震災で大切な人を失った方たちが、悲しみを乗り越えて前に進めますように、との作者の祈りが聞こえてきそうな作品たちです。

げんばくとげんぱつ
増山 麗奈
子どもの未来社
2013-10-18


長い間、山の中にいたりっぱな石「ぼく」は、東京に運ばれた。

ぼくの体に丸木俊・位里夫妻が絵を描き、筆のあとを広島や長崎で被爆した人たちがノミとハンマーで彫った。

孤児になった人、足が不自由になった人、妹を失った人、結婚を断られた人……。

被爆した大勢の方たちの思いが刻まれ「ぼく」は、原爆の犠牲者の追悼碑になった。

「ぼく」は平和を願っていた。

なのに、福島の原発が爆発した。

そのせいで体調の優れない人もいるようだ。

「ぼく」は原爆と原発の記憶を伝える石になろうと思う。


広島・長崎の原爆と東京電力福島第1原発事故による放射能汚染を重ね合わせて、被爆について語る絵本です。
広島・長崎の被爆者に被爆の恐ろしさを語らせて、福島の原発事故の危険性を示す。
追悼碑を主人公にすることでそれが可能になっています。
こんな手法もあるんですね。





東日本大震災・福島第一原発の事故により被災した子どもたち15人の作文と、その一編一編に込められた子どもたちの思いを画家・絵本作家が絵に表した画文集。
自分の体験を言葉にすること、似たような体験をした子どもの声を聞くこと。
そういったことが、未来を切り開く子どもたちの力となることを願わずにはいられません。

およぐひと (エルくらぶ)およぐひと (エルくらぶ) [単行本]
著者:長谷川 集平
出版:解放出版社
(2013-04-19)

カメラを持った男が、スーツ姿で泳いでいる男を目撃する。
泳ぐ男は、「早く帰りたいのです」と言い、そのまま透き通って消えた。
カメラを持った男は、電車で赤ん坊を抱いた女の向かいに座った。
女は「できるだけ遠くに逃げるのです」と言い、そのまま遠ざかって、消えた。
カメラを持った男は家に帰り、娘に聞かれた。
「テレビや新聞は見たけどさ、あれがすべて?」と。
男は「まだ言葉にできそうもない」。
「わかった。待つよ」
娘は言った。



現実には語れること、語りやすいことだけが取り上げられてきたのでしょう。

その結果なのでしょうか、もうすぐ3年が立ちますが、被災者のみなさんの現状は人々の記憶からこぼれ落ちているように思えてなりません。

縁あって避難してきた方たちとお付き合いするようになり、自分と照らし合わせてそう感じるのです。

でも実際には3年間の間に進んだ時間が違うのです。

この絵本に書かれている言葉は多くはなく抽象的で、もしかしたら難しいかもしれません。

だからこそ、ひとつの事柄を捉えて「かわいそう」などという表面的な感想ではなく、たくさんの宿題を背負わされた重さが体の中に残ります。

ご一読を。

東日本大震災が起こってからもうすぐ3年になります。
今年もまた、東日本大震災を取り上げた絵本を紹介します。




東日本大震災の津波による死者・行方不明者が1000人を超す釜石市で、小中学生99.8パーセントが生き残り、「釜石の奇跡」と言われました。
本書は大津波をみんなで生きのびた釜石の子どもたちのドキュメント。

これから起こる自然災害に備えて命を守るための心構えや訓練が必要性や、子どもたちの感受性や生きる力への感動から、作者はこの絵本を制作したとのことです。

本来、被災者を応援する側にいるはずの私ですが、本書で描かれた子どもたちの力に励まされてしまいました。



てんでんこ―大津波伝説
ひつじ あかね
講談社ビジネスパートナーズ
2012-02-25



大津波による悲しい記憶も、時がたつにつれ次第に薄れていきます。
しかし先人達が伝えようとしたことがただの伝説となった時、再び大津波が襲うのです。
歴史は繰り返す……。

だから大津波が来たことを千年後にも伝えていかなくてはならない、という作者の決意をひしひしと感じます。

ちなみに作者の本名は昭和8年の三陸津波で命を落としたお父様の養母から付けられたのだそうです。




「てんでんこ」とはてんでんばらばら、というの意味です。

「津波てんでんこ」とは、「津波が来たら、今そこにいる場所からそれぞれ「てんでんに」逃げなさい、ということ。

利己的な意味ではなく、大切な人もきっと逃げていると信じて自分も逃げなさい、という助かる知恵を伝えたもの。

絵本に描かれている釜石の子ども達はみんな助け合っていますし、他の地域でもそうだったのでしょう。

そうできるようにするのは日ごろの心構えと訓練。

その大切さを認識できる2冊だと思います。
(『てんでんこ 大津波伝説』は小説などの単行本サイズなので、大勢の前での読み聞かせには向かないかも。)

先に東日本大震災を取り上げた絵本を紹介しましたが、今回の震災を題材にしたものは被災者の気持ちに寄り添うよう内容のものが多いように感じます。その点、過去の津波災害を取り上げたものは後世への教訓として伝えていくという役割を持っているためか、津波や津波に襲われた人々の行動が生々しく表現されているように思いましたので、紹介します。


津波 TSUNAMI!津波 TSUNAMI!
著者:小泉 八雲
販売元:グランまま社
(2011-12)
販売元:Amazon.co.jp

小泉八雲の「生神様」がベース、つまり、下の『稲むらの火』と同じエピソードを取り上げた作品です。コラージュの技法で描かれた波はうねり、暴れ、迫ってくるものがあります。


津波!!命を救った稲むらの火津波!!命を救った稲むらの火
著者:小泉 八雲
販売元:汐文社
(2005-04)
販売元:Amazon.co.jp

津波!!稲むらの火その後津波!!稲むらの火その後
著者:高村 忠範
販売元:汐文社
(2011-08-17)
販売元:Amazon.co.jp

1854年の安政の東海地震で浜口儀兵衛が収穫前の大切な稲村に火をつけて津波の襲来を伝え、村人を救うというお話が『津波!!命を救った稲むらの火』。その翌日、さらに南海・東海地震が起こって再度津波に襲われ、儀兵衛は村の再建のために防波堤を建設する事業を起こし、その費用(現在の金額で5億円)を負担したとのことです。


おばあちゃんの紙しばい つなみおばあちゃんの紙しばい つなみ
著者:田畑ヨシ
販売元:産経新聞出版
(2011-07-14)
販売元:Amazon.co.jp

1933年の昭和三陸大津波を経験したことから、その経験を子どもたちに伝えていくために紙芝居にして地域の小中学生に読み聞かせてきたものを絵本にまとめたものです。


『南海地震津波の絵本 シロのないた海』
飯原一夫 絵・文
徳島県海南町



昭和南海地震(1946年12月21日)が発生した時の徳島県の海沿いの町の様子が描かれています。大地震が起き津波に襲われたその瞬間の人々がリアルなのではないかと思います。動画がありましたので貼っておきます。


満月の百年 (立松和平との絵本集)満月の百年 (立松和平との絵本集)
著者:立松 和平
販売元:河出書房新社
(1999-12)
販売元:Amazon.co.jp


とある南の小さな島が突然大地震と大津波に襲われ、多くの人が命を落とします。が、残された人々は、苦しみから立ち上がり、精一杯生きていく、というお話。実話ではありませんが、津波を表現する言葉に圧倒され、ここに載せました。

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