2012年04月21日

太陽電池業界のアップル

企業はその時勢の「最適化」に成功したところが「No.1」になるが、時勢は刻一刻と変化するので、No.1はそのまま続くとは限らない。「時勢に合わせた変化」こそが、最重要課題なのだが、No.1のために「規模拡大」をすると、デメリットとして「変化の対応に遅れる」こととなる。まさにジレンマ。

太陽電池セルメーカーは「No.1」が、「シャープ⇒Q-Cells⇒ファーストソーラー」と変化した。これらは、研究開発の歴史的な成果やシリコン高騰への対応、格安薄膜太陽電池など、時勢に合わせたビジネスモデルを展開し、「成功モデル」とされた太陽電池メーカーだ。2012年4月現在、それがいずれも、揃って苦境に陥っている。

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 20世紀の経済モデルは「規模拡大による成長」こそが正解だったが、「変化スピード」が大幅にアップした21世紀では、これは「変化対応への足かせ」として、あまりにもリスクが大きいことが明白になってきた。結果として「短命のNo.1」になる。「そこそこの規模」で「ビジネスモデル」「技術開発」の変化に対応し続けるメーカーが、今世紀の「解」となるのではなかろうか。

太陽電池メーカーの勢力図では、2012年以降しばらくは、「中国勢」が上位を独占すると思われるが、これらはいずれも「規模拡大」に走ったことから、いずれ「変化」に対応できず、行き詰まるであろう。

であるならば、「1歩先の高性能化技術開発に成功」、もしくはスマートグリッド技術など「太陽電池発電事業との融合」などのビジネスモデルの最適化に成功し、かつ「そこそこの規模で抑える(≒あえて規模拡大に走らない)」という「スマートなメーカー」が出現するならば、「成長が確実な太陽電池産業」での成功者となるのではないだろうか。

それは「太陽電池業界のアップル」というイメージがぴったりだ(アップルは製造をフォックスコンなどに製造委託)。それが日本発なのか、やはり米国発なのか。もしくは台湾、中国、韓国のアジア勢なのか。法規制を駆使して新しいビジネスモデルの構築が上手な、Q-Cellsの再来のような欧州メーカーなのか。それは、まだ予兆が無いのでわからないが、変化が激し時代なので、数年後には答えが出ているだろう。

数字が語るアップル「デザイン経営」のすごみ 設備投資に5900億円

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モダンデザイン的な要素が随所に見られるQ-Cellsの本拠地(ドイツ)

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2011年08月27日

淘汰の始まり

太陽電池メーカーの淘汰が始まった。『Intelのスピンオフ企業である太陽電池メーカーSpectrawattが倒産』のネット記事が出てされていた。

Intelからスピンオフした太陽電池メーカーが倒産

太陽電池産業は、「参入」は容易だが、「利益を出して事業継続」が非常に難しい。新規参入の太陽電池メーカーは2つの選択を迫られる。

⇒(1)従来構造の太陽電池、or (2)新規構造の太陽電池。

資金さえあれば、(1)は容易に始められる。ターンキーメーカーの装置で作る太陽電池の性能も高くなってきたし、そもそも研究開発の時間がいらず、すぐにでも製品出荷ができる。しかし、「差別化」ができない。つまり、時間とともに利益がでなくなる。事業開始時に国から多額の助成金が得られる「中国メーカー」向きの仕事。この中国事情が「価格破壊」を起こして、太陽電池の産業構造を歪めており、非常に問題である。

欧州、日本、米国の先進国のメーカーが「太陽電池メーカー」として事業参入する場合は、普通は(2)を選ぶ。しかし、これが世の中で思われている以上にハードルが高い。1960年頃に太陽電池が発明から、50年近く、研究開発が進められ、あれこれ試行錯誤が行われてきた訳で、新参者が2〜3年の研究開発で、「新規構造太陽電池」を新たに生み出せるとは思えない。アイデア⇒ラボレベルまでは十分可能とは思うが、量産レベルまで持っていくのが、非常に至難である。通常、アイデアから量産までもっていくのは、たいてい10〜20年ぐらいかかる。

2008年ごろから急速に「太陽電池業界」が伸びつつあるが、そこらから「資金ありき」で参入したベンチャー系企業(米国に多し)が、3年ほどして、そろそろ資金が尽き始め、次々と倒産しはじめるのではないだろうか。

「竹の子」のように、乱立された太陽電池メーカーが、「淘汰される時期」に入ってとも言える。太陽電池業界自体は、まだまだ成長が続くはずなので、「淘汰の混乱」の後に、ある程度安定した時期がやってくるのではないだろうか。それは3年後か10年後かスパンはわからないが・・。


kiwiiz at 14:16|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 太陽電池 

2011年04月30日

脱原発と太陽光発電

福島第一原発の事故後、「脱原発」⇒「太陽光発電」への動きが顕著化してきた。原発事故前後で、日本および世界のエネルギー政策の前提条件が大きく変わってしまった。事故前は、「原発推進か否か」だったが、事故後は「脱原発」は大前提で、「原発以外の選択枝で、どうするか」ということにシフトしている。そういう意味で、「3.11」は「ET革命」において、非常に大きな意味を持つ分岐点となった。

テレビや新聞など従来型の「マスコミ」は、今だ「3.11前」の旧態依然とした論調を引きずっているが、ネットでは続々と「3.11後」を考察する記事が出始めている。「脱原発」⇒「太陽光発電」は、予想されるごく自然な発想であり、以下の記事でその「流れ」が端的にまとめられている。

脱・原発 太陽光発電に脚光(SankeiBiz)

「太陽電池」に関することは、「3.11前」は表だったニュースは少なかったが、「3.11後」は、新規参入や企業買収など他の主要産業では当然起こりうる流動性を伴った大型ニュースが一気に増えだした。それだけ、産業界における「太陽電池産業」の位置づけがランクアップしたということだろう。産業界の「格付けランキング」があるなら、トップに躍り出たのかもしれない。太陽電池は太陽光を受けて作動するだけに、やっと時代の「陽の目」をみた感がある。これから大型ニュースが続々続くだろう。

仏トタルが米サンパワーに約1100億出資へ、株式6割取得で合意

独Qセルズ、日本の住宅用太陽光発電市場に参入(エクール)

台湾TSMC、太陽光・照明事業をスピンオフへ−将来の上場目指す (ブルームバーグ)

「サンパワー」は三洋電機のHIT太陽電池と「市販太陽電池の最高変換効率」の1、2位を争う米国メーカー。「資金難」で苦しんでいたが、大型資金注入が決まり、さらに高効率化に専念できるだろう。一方、三洋電機の方も、パナソニックグループ傘下に入り、こちらも「高性能化志向」の一角メーカーとして、競争体制が整いつつある。パナグループがどのような戦略を描くのか、今後注目の的である。

「Q-Cells」は一時期、世界No.1生産量を誇り、一世を風靡したが、過剰投資による資金難で苦しんでいた。欧州に続く「熱い太陽市場」としても注目が集まる日本市場への参入は必須事項。日本市場は、シャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機の四大結晶Si太陽メーカーが、「設置、施工メーカー」と組んで、強力な牙城を築いているが、そこに欧州メーカーのQ-Cellsが入り込むことができるかどうか。中国や台湾の「安さ」を武器とする太陽電池メーカーと課題は同様だ。

台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、世界最大級の半導体製造ファウンダリー。膨大な資金を持ってもり、その投資先が今後一番ホットと見込まれる「太陽電池」「太陽光発電」に向うのも自然な流れ。半導体や液晶の分野で、台湾メーカーが「選択と集中」により圧倒的な成功を収めたが、そのモデルを「太陽電池産業」にも適用できるかどうか。今年2011年からは、その流れがより顕著化してくるだろう。

「脱原発」という原発が選択枝から外れた「3.11後」の産業界では、あらゆる動向が太陽電池産業(スマート・グリッドを含む)に向かっている。その現状を正確に認識、分析して、日本各社は「自社の強みは、太陽電池産業でどのように生かせるか」に対する解を早期に導きだす必要に迫られている。

3.11を機に、ET革命において「太陽電池」「太陽光発電」は主役に躍り出たのである。太陽電池産業の「熱い時代」がやってきた。

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市販太陽電池で一番高効率とされている三洋電機のHIT太陽電池



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2011年03月21日

35thIEEE(ハワイ)報告書

(財)光産業技術振興協会のウェブサイトで、「主要な国際会議にみる先端光研究の動向調査報告」とうのがある。そこで「太陽電池の国際学会情報」についての報告書(PDF)も読める。

昨年(2010年6月)にハワイで開催された「35th IEEE PVSC(Photovoltaic Specialists Conference、太陽光発電専門家会議)」の報告書もアップされており、内容が興味深い。

■35thIEEE(ハワイ)速報[バルク結晶Si太陽電池]
■35thIEEE(ハワイ)速報[有機薄膜太陽電池]

【特記事項】

・IEEEは電子・電気技術の学会であり、他のシリコン系太陽電池や無機化合物太陽電池では最先端の発表を行い、太陽電池メーカや太陽電池研究機関が「凌ぎを削る」主戦場となっている会議。

・太陽電池を研究している日本の研究機関や研究企業はその認識がない。IEEEでの議論は今後の市場化のポイントを議論する場所として位置づけられている。

・単結晶シリコン太陽電池の高効率化が加速。セルプロセス技術の成熟度は目覚ましい。

・有機薄膜太陽電池はベンチャーが製品を市場にリリースするフェーズ

【発表した主な太陽電池の研究機関】

・ドイツFraunhofer ISE
・米国Sunpower社
・ドイツHagen大学
・フランスCEA-INES (National Institute for Solar Energy)
・Dow Chemical Company
・ベルギーIMEC (Interuniversity Microelectronics Center)
・オランダECN (Energy research Centre of the Netherlands)
・MIT(マサチューセッツ工科大)
・米国NREL(National Renewable Energy Laboratory),

【今後のIEEEの予定】

(1)36th IEEE、2010年9月(スペイン・バレンシア)。EU-PVSECとAsia/Pacific PVSECとのジョイント会議WCPEC(World Conference on Photovoltaic Energy Conversion:太陽光発電世界会議)として開催。

(2)37th IEEE PVSC、2011年6月(アメリカ・シアトル)

(3)38th IEEE PVSC、2012年6月(テキサス州オースチン)


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2011年03月10日

京都と究極エコ

「究極のエコ」と言われる「太陽電池(≒太陽光発電)と電気自動車」の組み合わせ。これが、太陽電池、電気自動車の「技術力アップ、社会情勢の変化」により、夢物語では無く、現実味を帯びてきた。

「ビシネスが成り立つ」という見込みが見え始めると、各メーカーも「太陽光発電」「電気自動車」に力を入れ始めるので、ますます「技術レベルが向上⇒実現の日が近づく」という好循環がはじまっている。

京都には、太陽光発電、電気自動車の分野で力を発揮する潜在力を持ったメーカーが多い。日本での4大太陽電池メーカー(シャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機)がすべて関西という地理的な面もあるし、「電気・電子部品」関係の開発製造も、もともと強い。

■京都発「EV充電」競争 太陽光で究極エコへ(京都新聞2011/3/10)

この記事では、「日新電機、ニチコン、GSユアサ」が取り上げられている。最近の「電気自動車の先駆け」として有名な「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を発売した三菱自動車も技術センターが京都の太秦にある。京都の行政も「京都市EVカーシェアリング事業」や「京都府電気自動車等普及促進計画」など力を入れているようだ。

「街づくりのデザイン」も含めて、この行政の動きには期待したい。企業の研究開発や、NPOなど市民からの動きもからめ、「究極のエコに根ざした京都」を目指したい。

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日新電機



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