2005年10月08日

18 “解決!不定愁訴、不明愁訴3”そのお題は“眩しい”4

“解決!不定愁訴、不明愁訴3”そのお題は“眩しい”


第59回日本臨床眼科学会(10月9日)、で60分の医師教育コースを若倉雅登、山田昌和先生と担当しました。講演では、「過剰な光の曝露を避ける生理的反応」としての「まぶしさ」すなわち「羞明感」を「健常者が眩しいと感じない光を眩しいと感ずる状態」として捉え「まぶしい」と訴えて私の眼科を訪れた諸症例を提示しました。
この解釈は眼科学の中で確立されたものではありません。

1、 サングラスを手放せない眼瞼痙攣の例
◎原発性眼瞼痙攣は局所型のジストニアの一形で、顔の上半分の不随意な痙攣が特徴です。眼瞼痙攣を引き起こす神経学的な機序は判っていませんが、この疾患の患者はしばしば強い羞明を訴えサングラス装用を好みます。

◎偏光眼鏡の有用性も提唱されています。偏光フィルターは光の方向を揃えてまぶしさを減じます。

◎原発性眼瞼痙攣患者の脳ブドウ糖代謝の低下部位をSPMによる全例の表示図で見ると、原発性眼瞼痙攣患者では眼瞼運動に関連した錐体外路関連領域すなわち視床や基底核の代謝の増加ばかりではなく、視覚領での糖代謝の有意な低下(Z≧2.80; p<0.01) が見られます。しかしこの変化とまぶしさの訴えとの関連はわかっていません。


2、 Adie症候群か?として紹介された外傷例
◎少年野球の手伝いをしていた選手の母親が目に打球を受けました。前房に炎症があったので救急外来でアトロピンが用いられましたが、暫く経っても縮瞳せず眩しさを訴えました。Adie症候群ではないかとして私の担当する神経眼科外来に紹介されました。

◎ アディー緊張瞳孔とは次のような特徴のある疾患です。
○持続緊張性散大瞳孔。直接および間接対光反応は,消失または著減する。
○調節力も減弱するが、固視調節中に瞳孔は収縮し,その後の拡張に長時間を要す。
○毛神様体経節の損傷によるものである。
○膝蓋腱反射は消失することがあるが,他の神経学的所見は欠く。
○アディー症候群の患者の大部分が20〜40歳の女性で、通常,片眼に突然発症する。
○ この状態は持続するが非進行性である。

◎ この症例はAdieでしょうか? いえ、言うまでもなく、この症例は縮瞳筋の外傷性断裂です。
その後遺症の診断書を作成し、1%ピロカルピンを処方して対応しました
◎ この患者さんの前眼部写真は撮ってありませんでしたが、Sphincter damage= traumatic mydriasis がトロント大学ホームページに掲載されていました。

3、白内障術後の羞明例

◎某大学病院で左白内障手術を受けた後、耳側にすだれ状の白い光が見えて気になると訴えた患者さんです。主治医に話し、レンズを直径の大きいものに入れ替えてもらったが治らないということです。眼の痛みもあると訴えて受診しました。

◎視力は右0,8(n.c.)この眼はまだ手術してありません。左は1.0(n.c.)です。

◎ 細隙灯、眼底、視野はいずれも著変なしです。右には軽い白内障があり、このため、眼底写真もぼやけています。左のレンズは正中にきれいに入っていました。

◎私が考えた説明は次のようなものです。

○1、レンズの縁が瞳孔に懸かる。(この症例には該当しません)

○2、レンズの中で全反射を繰り返してレンズの端が光る。(これは東大の名誉教授三島済一先生の説です)

○3、人工レンズは薄いので、脇から光が入ると毛様体扁平部が照らされて散乱光を生じていました。前眼部の写真には写せなかったですが、耳側から入れたスリット光は鼻側でレトロイルミネーションを生じていました。この説の証明には動物の眼球を後ろから写す三宅ビューでの記録が必要か?とおもわれます。

4、うっ血乳頭症例の羞明、網膜か中枢か?


◎19歳女性が“2週間前から見づらい、光がやけに眩しい“と訴えて来院しました。

◎ 視力 右1.2(n.c.)、左1.2(n.c.)で“見えているではないか?”と思いましたが、眼底には強いうっ血乳頭がありました。当日CT撮影をし、前頭葉の脳腫瘍が発見されました。即日脳外科に入院させ、治療を開始してもらいました。

◎ 網膜の浮腫は黄斑にかかっていますので、中枢性というよりも網膜浮腫を反映した眩しさの訴えかと考えました。

◎若倉先生が紹介したAki Kawasaki先生の論文には視神経交叉が圧迫された症例では眩しさを訴えることが、また他の論文では視床の病変で中枢性の眩しさが現れるとされているそうです。

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5、視覚領皮質の梗塞による光視症の例

◎75歳男性、2年間にわたる光視症を伴う変視症の既往を訴えて受診しました。

◎ 左右の視野には調和性のある傍中心左下4分の1盲がありました。右後頭葉の先端部の糖代謝は左の64%であり、低下していますが、新しい変化ではありませんでした。患者さんには病状の説明をして納得していただきました。

◎この患者さんは1986年に私が初めて書いた英論文に収載した患者さんです。あれから早くも20年が過ぎました。

◎感想のような結論で恐縮ですが、神経眼科に関連した症例にも、また関連しない症例にも眩しさを訴える症例がしばしば見られます。今年一年、若倉先生から眩しさというお題を戴きそれを捜し求め、またその原因を考えてまいりました。
1、眼瞼痙攣
2、外傷性縮瞳障害
3、白内障術後の羞明
4、うっ血乳頭に伴う黄斑剥離
5、視覚領皮質の梗塞
などなど、眩しさの原因には本当に様々なものがあったというのが実感です。

6.追加:尖輝暗点はこの鑑別に加えておかねばならないものです。脳の視覚領域の血管が病的に収縮しこれが再度緩むときに視覚的には西洋の城の城壁のようなぎざぎざした光が見え、やがてその中心が灰色に抜けます。そのとき多くの症例では頭痛が出ます。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
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kiyosawaganka at 20:33│Comments(0)TrackBack(1)全身疾患と眼、健康一般 

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1. 眼科学  [ 医学のススメ ]   2005年12月02日 07:38
眼科学眼科学(がんかがく、Ophthalmology)目|眼球や眼球周囲の組織 (生物学)|組織に関する疾患を扱う医学の診療研究分野である。.wikilis{font-size:10px;color:#666666;}Wikipediaより引用- Article- History- License:...

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プロフィール
院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜午後の神経眼科外来を担当)、2006年国際神経眼科学会副会長。日本眼科医会学術部委員
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