2006年01月08日

39 “緑内障疑“といわれた患者様へ:

“緑内障疑“といわれた患者様へ:                      清澤眼科医院 清澤源弘

はじめに:

gladisc

健康診断の眼底写真で、視神経乳頭の陥凹が大きく、精密検査要と指導され、当院を受診される患者さんがいます。

緑内障と聞くとびっくりしますが、岐阜県多治見市で行なわれた住民調査では、40歳以上の人口の約5.8%が何らかの緑内障です。この数字は大変高く、あなたが40歳以上で、あなたと2人の親、4人の祖父母の誰も緑内障で無い確率は、0.942の七乗で65、8%、さらにあなたの配偶者とその祖父母まで含めればそのだれもが緑内障でない確率は(0,658x0,658で)43,3%と半分以下になってしまいます。現在は優れた点眼薬も開発され、失明に至ることは稀で、正しい診療が始まれば、緑内障を恐れすぎる必要はありません。

分類と説明:

緑内障の多くを占めるのが開放隅角緑内障です。これは眼球内の水圧(眼圧)が正常より高く、視神経が循環障害で神経線維脱落をきたして、視野欠損を訴えます。緑内障の末期で無ければ視力低下や痛みなどは見られません。更に、最近注目されているのがこの開放隅角緑内障のうちでも眼圧が高くない、正常眼圧緑内障と呼ばれるものです。先の調査ではこれが人口の3.6%、つまり日本人の緑内障の62%もいます。そのようなわけで、緑内障患者の8割は、自分の緑内障に気付いておられず、治療もなされていません。眼科検診で“緑内障の疑い”あるいは“視神経乳頭の陥凹”といわれて眼科に見えることになります。このほかに白内症の進行で急性の眼圧上昇を起こす閉塞隅角緑内障があります。

検査項目:

緑内障では、1)眼圧の上昇、2)視神経の形態の変化、3)視野の欠損が起きます。

従って、緑内障が疑われる場合には、1)眼圧の測定、2)眼底検査、3)視野の測定、4)隅角検査を行なうのが標準的です。

このうち、眼底検査では、視神経乳頭の陥凹の評価(cuppingカッピング)や、神経線維層の欠損(nerve fibe bundle defect: NFBD)などを見ます。さらに精密な眼底検査としては視神経繊維層厚測定検査(レーザー光線で網膜の神経線維層の厚さを各部分で測って神経線維層の萎縮の程度を測定する)などもありますが、これは保険診療レベルで個々の患者さんに行うべき検査と言うよりも、大学病院や緑内障専門医クラスの診療施設で行われる”新薬による治療効果の判定研究”のための機械と考えてよいでしょう。(この項2006.6.16追記)

視神経の形態だけで緑内障を診断することは難しいので、見落としをなくすため検診では疑わしいものも指摘します。ですから、精密検診で緑内障ではなかったという例もあります。

緑内障では視神経線維数が減少し視神経の働きが弱り視野欠損が起きます。視神経には100万本の線維がありますが、その50%がなくなるまで視野欠損は起きません。ですから、視野欠損は緑内障が進行した証拠です。視野検査で正常と診断されても、翌年の検診で緑内障疑いと指摘されたら、視野検査は再度行なうのが良いでしょう。

HFA





HVFgla




治療:

キサラタンチモプトールトルソプト








現在の緑内障の治療では、点眼薬治療が中心です。キサラタン、チモプトール、トルソプトなどを使い、眼圧を15mmHg以下に抑えます。(図左からキサラタン、チモプトール、トルソプト、)

眼圧低下が不十分で、視野変化が進行するときは線維中柱帯切除術などの手術も検討します。白内障でレンズ厚が増している場合には白内障手術を勧める場合もあります。

私は緑内障検査の後次のようなサマリーをだします。

本日の判定の要点: 緑内障の有無; 右(有、無)、左(有、無) :有りが異常
○視力右    (  )、左    (   )、
○眼圧 右(   )、左(   )
○隅角の狭細化 右(有、軽度、無)、左(有、軽度、無)  :有りが異常
○視神経乳頭陥凹 右(  )、左(  )。  :0.6以上が異常
○ハンフリー視野の緑内障性変化 右(有、境界、無)、左(有、境界、無)、:ありと境界は異常
○治療の要否(有、無)、  再検要否(有、無) その他(         )




今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
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kiyosawaganka at 11:25│Comments(6)TrackBack(0)緑内障 

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この記事へのコメント

6. Posted by ポム   2012年03月17日 22:14
ありがとうございました。

少なくとも
「今は」緑内障ではないということで
安心いたしました。

こういった相談は 本来なら診察を受けなければできないはずのものなのにと
心から感謝しております。
「緑内障」宣告を受けてからというもの
心配で とにかく情報を得ようと ネットを片端から検索しました。

先生のHPに出会えたのは本当に幸運でした。
アドバイスをいただいてからは 落ち着いて考えることができるようになり、救われました。

命拾いしたような気持ちです。
緑内障は自分とは無関係ではないということを肝に銘じて 毎年の検査を欠かさないようにしていこうと思います。

清澤先生 本当にありがとうございました。
5. Posted by ポム   2012年03月17日 17:27
清澤先生

このたびはいろいろとありがとうございました。

その後 総合病院の眼科で改めて検査を受けてみました

視力 眼圧 眼底検査 視野検査に加え、
ORTという 神経のダメージを測定する検査を行いました
その結果

「ORTでは神経にダメージは認められず、視野検査においても 上部にある
うすいグレーゾーンは瞼がある関係で
もともと見えにくいと判断するので
緑内障とは思わない」

というものでした。

ただ

「視神経の形が 緑内障のそれによく似ていることは確か。緑内障とは思わないけれど、1年後にもう一度検査を受けて」

というものでした。

清澤先生は「緑内障によく似た視神経の形」についてどう思われますか?
今は緑内障ではないけれど 前兆ということもありますか?
それとも 今回の診断結果の通り 緑内障ではないということで 安心してよいでしょうか。

お答え:緑内障は緩徐に進行する疾患であり、神経線維の数が100万本から50何本に半減したときに初めて視野検査に異常が現れると言われています。未だ半分に派なっては居ないということですから今は緑内障点眼薬は出しませんが、数年後または数十年後には緑内障の領域に入ってくる可能性が有ると言う様に考えて、毎年の視野検査を受けて置くことをお勧めいたします。



4. Posted by ポム   2012年03月09日 10:03
5 清澤先生 ありがとうございました。
受診したのは 別の病院です。

清澤先生のおかげでだんだんと冷静になってきました。

確かに初めての視野検査は 光の点滅がひどく淡いものもあるのか 気のせいなのかと判定しづらいものでした。
目を凝らすには 時間はかなり長いようで
疲れて どんどん見づらくなっていきました。 何よりショックから あまり集中できませんでした。

それでも心配なのは ものもらい診察の時点で、お医者様が私の眼の中を直視されたときの
「あれ? 緑内障の疑いがありますよ」
とおっしゃったことです。

それほど顕著なしるしが現れているのか、 では「立派な」緑内障なのかと。

何が見えたのか 気になっていたのですが
こちらのHPの写真のような状態だったのでしょうか。

2週間後に再診の予定です。
たとえ緑内障であっても

「きちんとした治療が始まれば 恐れることはない。失明は稀」

を胸に 冷静でありたいと思います。

本当にありがとうございました。
ーーーーーーーー
お答:この問題(ホスピタルハラスメント)は大きな問題です。私の見解を交えて新たな記事としましましたのでごどうか覧ください。(2012年03月10日「緑内障かもしれないと言う言葉にびっくりしないで。」)

3. Posted by kiyosawaganka   2012年03月08日 23:10
不安にさせてすみません。日本の緑内障患者の8割は自分でもその存在を知らないといわれており、たった2割の患者しか治療はされていないとされています。医師が初めて緑内障と患者に伝える場合、患者を不要な不安に突き落とすというあたりも考えて、あえて控えめに話しますが、確かにそれでも患者さんのショックは小さくはないでしょう。
眼底の視神経乳頭で緑内障はスクリーニングし、次のハンフリー視野が緑内障診断の絶対的な基準ではあるのですが、初回の検査はしばしば成績が「視野検査に慣れている場合」に比べると不良ですから、他所ででも測りなおしてみる価値はあるでしょう。緑内障の点眼薬治療をいったん始めると、いつになったら止めるという事がしにくいので、ごく軽い視野変化の場合には数ヵ月後に「視野再検」として点眼は始めないでしばらくはみる場合もあります。しかし、そうするといつの間にか患者さんが来なくなって、こちらからは見失ってしまうというケースもまた少なくはないのが治療する側からの悩みです。
2. Posted by ポム   2012年03月08日 11:40
4 少し救われました。

ものもらいのため受診したところ
緑内障だといわれ まだ失明していないのに 目の前が真っ暗になりました。
まさしく青天の霹靂


昨年3月の人間ドックでも
視力 眼底検査 眼圧検査
すべて異常なし 評価はA
だったのに まさか なぜ
という気持ちでいっぱいです。

先生には 「深刻にとらえるな」
と言われましたが 進行を止めるしか
方法がなく 失明するかもしれない眼病の宣告を受けて 深刻にならないでいられる人がいるでしょうか

このHPの
「失明は稀。 正しい診療が始まれば
恐れる必要はない。」

という言葉は印刷して壁に張っておきたいほどのものでした。

ひどい花粉症なのに 抗ヒスタミン剤が緑内障の禁忌とのことで 怖くて薬が飲めず、とても辛いです。

今でも 間違いではないかという気持ちが強く 他の眼科を受診してみるつもりです。
誤診ということもありえるでしょうか。
そうであってほしい。

もう一点 程度と失明の確率が伺えればもっと安心できたであろうということで ★4つでした。

私のは ごく初期らしいです。
治療をすれば 失明しないでいられるのか、それだけです。
1. Posted by 田 克   2008年07月04日 04:01
3 とても参考になりました。
お答え:おほめの言葉ありがとうございます。清澤

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プロフィール
院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜午後の神経眼科外来を担当)、2006年国際神経眼科学会副会長。日本眼科医会学術部委員
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