2006年10月13日

179 解決 不定愁訴、不明愁訴 眼の痛み5

不定愁訴、不明愁訴解決 不定愁訴、不明愁訴 眼の痛み
東京医科歯科大学 非常勤講師、 清澤眼科医院 清澤源弘
管理頁
図は先の本コースを纏めた出版物です

第60回臨床眼科学会

はっきりした原因が見つけにくい目の痛み、眼窩の痛み、眼の奥の痛みと表現される一群の疾患がある。神経眼科の立場で見逃したくないものを紹介する。

ムコセーレ1、蓄膿症(mucocele, pyocele):
•症例 ”鈍い痛みを伴い眼球が前に出てきた”と中年男性がCTとMRIをもって受診。
30年前の交通事故で意識喪失が遷延する重傷を負い、顔面に複数の骨折。顔面皮膚には古い瘢痕がある。
• 診断:外傷に伴う副鼻腔の術後貯留性嚢胞
• 手術後の瘢痕や鼻茸などで、副鼻腔の排出路がふさがれると、粘液が貯留し出口を求めて中の圧力を高める。
• 粘液嚢腫が眼窩に穿破すると、まず骨膜下膿瘍を作り、やがて眼窩蜂窩織炎になる。眼科の対応は迅速にしたい。
• 院内の耳鼻科は、粘液嚢胞mucoceleと診断して抗生剤を経口投与した。手術の緊急性は認識していない。視機能への危険を示し、早急な排膿を求める事とする。

• 蝶型骨洞後部のOnodi cellの炎症では小さくても特に視力が脅かされることに注意が必要である。

眼瞼痙攣2、眼瞼痙攣
•症例:目頭の収縮と痛み
 1年ほど前から目頭から鼻の付け根にかけてぎゅっと収縮し痛む症状が続く。眼の疲れから始まった。痛みで不眠になる。ひどいときは眼球が動かしにくい。

• 眼科では、疲れだから気にしなければ良いと言われたのみ。新潟県から受診
• 眼瞼痙攣とは?:◎ 眼瞼痙攣は眼瞼に痙攣がおこる疾患で、眼瞼周囲の筋肉(眼輪筋)の不随意な収縮がおこる局所ジストニア。◎ 「まぶたがピクピクする」と痙攣を思わせる訴えでなら診断は比較的容易だが、訴えは「眼が乾く」などのドライアイを疑わせる訴えや、眼が開けづらいことから「みえにくくなった」など視力低下を疑わせるものまで様々である。

眼眼瞼痙攣の自己診断(若倉の基準、この表は図の本に掲載してあります)
• ( )瞬きが多い
• ( )外に出ると、または室内でもとてもまぶしい
• ( )眼を開いていられない、目をつぶっていたい
• ( )眼が乾く、「眼がしょぼしょぼする、痛いなどいつも目のことが気になる
• ( )人ごみで人や物にぶつかる
• ( )電柱や立ち木、停車中の車等にぶつかったことがある。
• ( )太陽や風、会談の昇降が苦手で外出を控えている。
• ( )危険を感ずるので車や自転車の運転をしなくなった
• ( )手を使って目を開けなければならないときがある
• ( )片目をつぶってしまう

丸が0個は正常、1−2個は眼瞼けいれんの疑い、3個以上では眼瞼けいれんの可能性が高いと判定する。

眼瞼痙攣の痛みへの治療
• 眼瞼けいれんに伴って瞼の動きがぎこちなくなり、ドライアイを発生すると、瀰漫性表装角膜炎が生じ、まぶしさと痛みを訴え、あけていられないといった症状を加えて訴える場合がある。
• 眼瞼けいれんがあり、ドライアイによる痛みが強く、涙点プラグなどでもその痛みがとれない場合、ベノキシールで一時的症状改善を見て、ラクリミンを与えると良い場合がある。三叉神経ブロックも選択肢。そののちボトックスでの治療にかかる。
• リボトリールやアーテンの投与も行われるが私は勧めない。

ccf3、脳硬膜動静脈シャント、(CCF)
• 68歳女性が右眼の徐々に増強する充血と、複視を主訴に来院。
鈍い痛みが球後にあり、夜間に血管雑音が聞こえるという。
• 受診時の視力右(1.0)、左(1.0)。眼球突出は右が27mm、左が22mmと右眼突出。眼圧は右25mmHg、左19mmHgと右高値
• 右球結膜に血管拡張(メドゥーサの首と呼ばれる:図)。眼底には異常なし。
メドゥーサノ首脳硬膜動静脈シャント、(CCF)= red eyed shunt syndrome、赤眼短絡症候群
• 海綿静脈洞部の動静脈瘻(動静脈ろう、cavernous arteriovenous fistula)の多くは結膜の充血が強く、時には複視を示す。
• 本態は海綿静脈洞壁での脈動静脈のシャントによる海綿静脈洞圧の上昇。
• 海綿静脈洞の壁面で神経が圧迫されれば外転神経麻痺、動眼神経麻痺ないし滑車神経麻痺を示すことがあり、痛みを伴うことも有る。
• 高い静脈圧が前方に広がれば、結膜充血など直接的な眼球での症状が発現する。
脳硬膜動静脈シャントの治療
• 眼圧が上昇している期間が短く、視野が緑内障性の変化を示すことは少ない。動静脈ろうが自然に消退し、眼症状は寛解を見ることが多い。複視が3月以上持続することも少ない。
• 最近では脳外科で、カテーテルを上眼静脈経由で海綿静脈洞まで直接入れ、そこから海綿静脈洞に金属の細線を挿入して海綿静脈洞に血栓を発生させ、吻合血管の閉塞を誘発する治療が行われて、比較的良い結果が得られている。
• しかし自然治癒もあるので、この手術治療には全例に直ちに行われなければならない治療法ではない。


片頭痛4、片頭痛• 片頭痛は発作性の頭痛を特徴とする疾患。
• 15歳以上の人口の8,4%(840万人)を占める。男性3,6%、女性 12,9%と女性に多く、年齢別では30歳台が多い。

•片頭痛の特徴
●「ズキンズキン」と脈打つような激しい痛み。両側でも良い。
●頭痛の起こる回数は、月に1回から、週に2回
●痛みは1〜2時間でピークに達し、吐き気やおう吐を伴うことが多い
●仕事や勉強などもできず、寝込んでしまうこともある

•閃輝暗点などの視覚性前兆を伴い受診する場合も多い。
•頭痛の原因である血管の拡張の前に血管攣縮が起こり、後頭葉の視覚領域に一過性の虚血が生じると、閃輝暗点が出現する。ジグザグ模様の光が、多くは視野の中心部分から次第に広がり、20-30分で消失する。

•閃輝暗点は必ずしも頭痛を伴わないので、患者に対して片頭痛という語を使う際は、誤解されないような注意を要す。私はミグレインと説明している。

片頭痛の治療
•予防薬:ジヒデルエルゴタミン(ジヒデルゴット)、カルシウム拮抗薬(ミグシス)など
•アウラ:エルゴタミン(早期のことが必要)
•軽度発作:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、エルゴタミン、経口トリプタン剤など
•重症発作:経口トリプタン剤(イミグラン:話題の新薬)、スマトリプタン剤皮下注

5、Tolosa-Hunt症候群  
Rev Chil Neuro-Psiquiat 2002; 40: 258-62の図

•海綿静脈洞の肉芽性炎症による疼痛性眼筋麻痺
•自然寛解や再発もある
•ステロイド全身投与で48時間以内に症状軽減
•診断は除外診断に拠るから(リンパ腫なども考えて)慎重な経過観察が必要

帯状疱疹6、帯状疱疹
•水痘では発疹が生じ、この水痘の発疹はやがて小水疱となって破れる。痂皮は発症から2週間以内に剥がれ落ちる。
•免疫が弱まると、この水痘ウイルスは帯状疱疹として再度活性化されてV!など末梢感覚神経の分布従って皮疹を発症する。
•皮膚の痛みを帯状疱疹と気づくのが遅れることがある。
•皮膚科でゾビラックス投与をしてもらう

動脈瘤7、動脈瘤(IC-PC分岐部動脈瘤
:動脈瘤は破裂に先行する拡張時に痛みを示し、ことにICPCでは圧迫で動眼神経麻痺を起こす。

動脈瘤疑い症例への注意(高橋洋二先生のコメント)
1) 散瞳・持続する頭痛は脳動脈瘤も考慮。
2) 「動脈瘤疑い」のコメントを添えて脳外科へ。
3) 入院精査も考慮し、病院の管理下に。
 「動脈瘤疑い」のコメントを添えてMRA を。
 →3次元可視化法を駆使MIP, 3D-CTA(SR, VRによる立体画像)

8、その他:脳腫瘍
;脳腫瘍は髄液圧の上昇による頭痛を訴える場合と髄膜の刺激による頭痛を訴える場合がある
•昨年お盆の夕方、頭痛と見難いという訴えで受診した22歳女性の一例
•Glioblastomaであった
•この様な例は、即時画像診断へ送る

adie9,Adie 緊張性瞳孔
患側のまぶしさを主訴とし、
〇尭珪態、
対光反射の消失、ただし瞳孔括約筋の部分的な動き(iris streaming)が細隙灯レベルでは見られる、
6畍反射はあるがゆっくりとした応答である、
0.1%ピロカルピン試験陽性(過敏性縮瞳)を特徴とする瞳孔疾患。
焦点調節の障害も伴う。(これが眼の深部痛をおこすらしい)

20-40歳の女性の片眼に多く、深部腱反射を伴えばAdie症候群と呼ぶ
病巣は毛様神経節を考える。(新潟大学高木先生の図)
眼科に関連する頭痛の分類 (まとめ)

本日示した症例は、
I: 機能性頭痛
1、片頭痛:前兆を伴う片頭痛、眼筋麻痺性片頭痛、網膜片頭痛
2、緊張性頭痛
3、群発頭痛

II: 症候性頭痛
1、頭蓋内病変:脳腫瘍くも膜下出血(動脈瘤)、髄膜炎、巨細胞動脈炎、脳硬膜動静脈奇形(CCF)など
2、局所性病変:眼疾患(急性緑内障、眼精疲労など)眼窩疾患(Tolosa-Hunt症候群など)副鼻腔疾患
3、神経痛:三叉神経痛、帯状ヘルペス
4、その他:眼瞼けいれん

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。

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この記事へのコメント

1. Posted by smile-kazuyo   2007年05月08日 00:15
清澤先生 
ブログを拝見し、トラックバックさせていただきました。
ご報告が遅れまして、失礼いたしました。
今後も、分かり易い情報提供を期待しております。

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プロフィール
院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜午後の神経眼科外来を担当)、2006年国際神経眼科学会副会長。日本眼科医会学術部委員
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