2006年11月10日

210 マイボーム腺の話題(霰粒腫、麦粒腫ほか)

マイボーム腺の疾患(管理頁


1、マイボーム腺機能低下症、MGD meibomian gland disfunctionマイボーム腺機能低下
眼瞼(まぶた)の辺縁にあるマイボーム腺からは、涙が角膜上で乾燥するのを防ぎ、涙を長く角膜上に留まらせるために油性の分泌液が分泌されています。この油の層は涙液の3層構造のもっとも表面をなす薄い層ですが、涙の水分蒸発を抑えて正常な涙液層を維持するにはぜひ必要なものです。何らかの理由でマイボーム腺機能が低下し、マイボーム腺からの油性の涙液の分泌が減少すると、涙の蒸発が増えてドライアイとなり、その結果眼の表面への刺激が増して随時流涙を訴えることにもなります。

2、マイボーム腺梗塞
マイボーム線の分泌が低下すると、その分泌管の中に米粒を思わせる楕円形で白色透明、適度な硬さを持った芯が生じます。瞼の縁が少し盛り上がってスムースでなく、少し赤いようなときに瞼をひっ繰り返してみるとしばしばこれが見つかります。これが必ず感染につながって麦粒腫や霰粒腫になるわけでもないでしょうが、あまり目立つ時には点眼麻酔をして注射針の先を少し曲げて結膜を引っかくように切り、中の芯を取るようにします。次の受診時までに跡形なく消失します。

マイボーム腺機能不全
3、マイボーム腺炎 meibomian gland dysfunction: MGD
マイボーム腺の分泌が乱れると、まずマーボーム腺の出口に汚れが見られるようになり、瞼の端をやわらかいピンセット(吉冨式ピンセット、2007.4.13の質問の回答へリンク)で圧迫すると練り歯磨き状の異常な分泌液が見られるようになります。(図)またモラーアクセンフェルド菌などの感染が少し加わればチーズ様の異常な分泌液が自然にマイボーム腺から湧き出すようになります。なるべく異常な分泌物を圧出したうえで抗生剤の点眼を処方します。自宅では、入浴時の蒸しタオルでの湿潤と、石鹸(通常の石鹸でもよろしいですし、ジョンソンジョンソンのベビーシャンプーなら目にもしみなくて良いです。)での分泌管開口部の洗浄、それにその後のシャワーでの洗い流しを推奨します。

ホルデオールム4、麦粒腫(図の出典)
この感染が著しくマイボーム腺(モル汗線などでもよろしい)の中に膿がたまって、急性の発赤と痛みを伴うようになったのが麦粒腫です。治療としては皮膚と結膜からの麻酔注射をした上で、出血を抑えて患部を保持するための挟瞼器で押さえて小さな切開を瞼の裏または表から行います。排膿の後、内部の炎症組織を掻き出し、軟膏をつけて圧迫止血します。この処置には約10分を要します。小児で局所麻酔での切開の安全性に問題があったり、患者さんが嫌がる場合には、経口と局所の抗生剤を投与し自然排膿か吸収を待ちます。

霰粒腫
5、霰粒腫 (図の出典
マイボーム腺に梗塞を生じ、これが無菌的な異物反応を起こすと、内部にゼリー状の肉芽を生じて、痛みと発赤を伴う散霰腫(カラジオン)とよばれるものを作ります。

先の麦粒腫とこの散霰腫をあわせた物が、ものもらい(めっこじき:長野県のことば)などと通称されるものです。

(この”ものもらい”という語が標準語化しているそうでこの言葉の分布を研究したページもあります。⇒ものもらい呼び名地域別ランキングにリンク

その治療には局所への局所麻酔剤注射の後、挟瞼器で挟んで血液の流出を防止した上で出来れば裏側から瞼縁に直角に分泌腺の導管を傷つけないように注意しつつ3-5ミリの小切開を置きます。その上で鋭匙を用いて中のゼリー状の肉眼組織を充分に取り去ります。

その後には軟膏をつけ、私は衣服を汚さないようにと説明して眼帯を1時間程度かけていただいています。

(最近は術後のクレームがいやで霰粒腫も切らない眼科医も増えているともいわれていますが、私は膿がたまって切るべき時は切ったほうが直りが早く確実と信じています。)

再発を繰り返す中高年の患者では眼瞼の癌が隠れていることがあるので、その内容物の病理検索をしておくことが薦められています。

簡単にケナコルトなどのステロイドを注射して炎症を抑える方法も有ります。


今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
管理頁
清澤眼科医院通信最新ページへ(リンク)します


kiyosawaganka at 06:51│Comments(2)TrackBack(0)角結膜、前眼部 

トラックバックURL

この記事へのコメント

2. Posted by かえで★   2010年10月17日 14:15
清澤先生、はじめまして。

麦粒腫と霰粒腫について興味があり、
記事を読ませていただきました。

ちょっと専門的で難しかったですが、
参考になりました。

ありがとうございます。
お答え:興味を持ってくださりありがとうございます。厳密には瞼の汗腺の霰粒腫(肉芽性炎症)と麦粒腫(感染性炎症)なのですが、現場では実際にはそれほど厳密には区別されてはいません。まれに老人の”ものもらい”に混ざっている眼瞼の悪性腫瘍を見逃さないことなどが注意点です。疲れをためたり、寝不足をすると出来やすいようですね。入浴時に蒸しタオルで暖めて汗を誘発し、石鹸を指につけて瞼の縁のマイボーム腺開口部をよく洗って、この後シャワーで流すとものもらいは自然治癒することも多いです。、
1. Posted by 鈴   2009年11月26日 20:43
私は62歳の男です。昨年(平成20年)師走から、両眼の結膜浮腫で茨城県古河市のY病院眼科に通うようになりました。フルメトロン等の薬を試しても効かず、J大学を紹介されました。そこでは内科の受診を勧められ、Y病院内科で血液検査・尿検査等をやり、そのデータをJ大学に持参しました。結果は「様子を見ましょう」でした。そのうち両眼とも痛みを感じるようになり、しかも頭痛肩こり等の症状も出ました。相変わらず、Y病院眼科にも通院していましたが、良くならず、T大眼科に紹介状を持ち、5月に行きました。すると、結膜浮腫の他に、「涙の分泌量が少ない上に、マイボーム腺が機能していない。涙は3秒で乾く。これは現代医学では治らない。治す薬もない。」と宣告されました。それでも、フルメトロン・タリビット・ヒアレイン・0,9%ソフトを処方されました。2ケ月に1回通院していますが、全く改善しません。K大眼科では、「マイボーム腺が機能しなくなったのは肝硬変と同じ、東大で治らないものは治らない。」と言われました。なんとか機能を回復する医術・薬は無いものでしょうか?辛い毎日を送っています。
お答:どうも継続する結膜浮腫というのが腑に落ちません。痛みが角膜のドライアイによる損傷によるものかどうか?ドライアイの再評価をしてみたいです。質の問題か?それとも量の問題なのか?通常、マイボーム腺機能不全では、涙液層破壊時間が短縮し、涙液の表面が不安定になります(涙の質の劣化)が、これに対する対策は温罨法と眼瞼の洗浄でしょうか。涙液量も不足しているのでしょうか?不足してくれていれば、涙点プラグ設置の余地があるでしょう。鬱なども重畳しているかもしれませんね。一度来てお見せください。

コメントする

名前
URL
 
  絵文字
 
 
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

プロフィール
院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜午後の神経眼科外来を担当)、2006年国際神経眼科学会副会長。日本眼科医会学術部委員
診療案内
◎診療時間◎
【月・火・木・金】
・9:00〜12:30 
・15:30〜19:00
【水・土】
・9:00〜12:30

【休診日】
水曜と土曜の午後、日曜と祭日


毎週水曜は院長不在のため、代診の医師による診療となります。

診療終了時間30分前に受付をお済ませください。

診察内容によってお時間のかかる検査をする場合もありますので
お時間に余裕をもってお越し下さい。

Archives